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2020年、僕の心を震わせた「邦楽」ベスト10

ウィズ・コロナ時代、到来。

2020年は、この世界に生きる全ての人にとって特別な年になった。そして、多くの人にとっては、「音楽」の価値や存在意義について改めて考え直す期間になったと思う。

もちろん、そこに唯一にして明確な回答などはないし、そもそも、この混迷の時代がいつまで続くのかさえ、誰にも分からない。その意味で、アーティストと音楽業界、そして僕たちリスナーの逡巡と葛藤、絶え間なきトライアルは、これからも先も続いていくのだと思う。

それでも、2020年に発表された楽曲は、僕たちに「音楽」の可能性を心から信じさせてくれた。まさに新しいディケイドの幕開けを象徴する音楽的冒険心に溢れる楽曲や、ウィズ・コロナ時代に対する力強いアンサーソングが、今もなお、次々と生まれている。そのことが、何よりも嬉しく、希望的である。

今回は、2020年、僕が特に心を震わせられた邦楽10曲をランキング形式で紹介していきたい。このリストが、あなたが新しい音楽と出会うきっかけとなったら嬉しい。


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【10位】
正しくなれない/ずっと真夜中でいいのに。

2020年も、『MIU404』の主題歌"感電"(米津玄師)や、『35歳の少女』の主題歌"三文小説"(King Gnu)をはじめ、痛快なタイアップ楽曲がいくつも生まれたけれど、その中でも、映画『約束のネバーランド』の主題歌であるこの曲に、僕は最も強く心を打たれた。原作、および、映画製作サイドの商業的な要請に最大限に応えながら、あくまでも既存のスタイルを変えず、そして一つのキャリアハイを更新する。そうして生まれた、この残酷な世界に鳴るべき端正なポップソングは、これまで彼女の音楽と出会ったことがなかった人たちへ、きっとリーチするはずだ。


【9位】
TEENAGE VIBE(feat. Tohji)/kZm

この数年間、日本の音楽シーンにおいて隆盛を極め続けているヒップホップ/ラップのムーブメント。2020年は、Creepy Nuts、chelmicoをはじめとするアーティストたちが一気にJ-POPのメインストリームへと踊り出たが、その中でも僕は、この曲に最も強く心を揺さぶられた。クラブやライブハウスが封じられたウィズ・コロナ時代において、新しい「フロア・アンセム」が生まれた事実に、何度も心を打たれる。


【8位】
ラブしい/Kizuna AI & 花譜

VTuberのKizuna AI、そして、バーチャルシンガーの花譜。このコラボレーションには、単なる「共演」以上の特別な意味があると思う。大袈裟な言い方かもしれないが、いつかあらゆる表現の「場」が、バーチャルの世界へと完全に移行し、そこで様々なクリエイターによるリアルな空間を超えたコラボレーションが成り立つ時代が来たら、この曲は、一つの原点として参照されていくことになるかもしれない。何より、川谷絵音が作詞・作曲・編曲を手掛けた楽曲それ自体も、一つの可憐なポップソングとして凄まじいクオリティを誇っている。


【7位】
I see.../乃木坂46

"Love so sweet"をはじめとする数々のJ-POPアンセムを手掛けてきた音楽ユニット・youth case。彼らの卓越したポップセンスが大爆発したこの曲は、乃木坂46の「4期生楽曲」という役割や肩書きを超えて、日本のポップ・ミュージック・シーンの景色を鮮やかに変えてしまった。初めてこの楽曲が発表された時、「まるでSMAPの楽曲のよう」とSNS上で話題となったが、この2020年において、「J-POPの王道」を堂々と闊歩する新しいアンセムが生まれたことは、本当に凄いことだと思う。


【6位】
帰ろう/藤井風

藤井風の大躍進は、まさに2020年の音楽史に刻まれるべき一大トピックスである。その卓越した歌唱/演奏センスと、高度な知識とリテラシーに基づく作曲/編曲の技術は、その気になれば、無数の観点から語り尽くすことができるかもしれない。しかし、そうした各論に終始すると、彼の本質と可能性を見誤る。何よりも特筆すべきは、確固たる総合力をもってして、J-POPの「スタンダード」を軽やかに更新してしまった、その信じられない事実である。鮮烈なデビューの直後に、一発で圧倒的な「普遍」を射抜くことができるアーティストを、僕は宇多田ヒカルと彼の他に知らない。


【5位】
I LOVE.../Official髭男dism

まさに、正真正銘の決定打。"Pretender"でも"宿命"でも"イエスタデイ"でもなく、この"I LOVE..."によって、彼らは真の意味で、新時代を代表するアーティストへとブレイクスルーを果たしたのだと思う。これまでも、その卓越した歌唱力とメロディセンスは破格級であったが、ついに今作では、そこにアレンジの先進性が加わった。海外のポップ・ミュージック・シーンの「最前線」とリンクするサウンドデザインは、間違いなく、J-POPの絶対的水準を何段も引き上げてしまったのだと思う。


【4位】
怪獣の花唄/Vaundy

2020年の日本の音楽シーンにおいて、未だ「ロック」は有効であり、確かに求められている。そう証明してくれたのは、ロックバンドではなく、いくつものジャンルを軽やかに往来し続ける若きマルチアーティストであった。Vaundyの鮮烈なデビューは、あらゆるジャンルの「越境」こそが、2020年代の新常識となることを予感させる。いずれにせよ、新たなロック・アンセムの誕生を、僕は全力で祝福したい。そして、これから先、僕たちが心から必要とする「ロック」は、色と形を変えながらも、いつまでもその輝きを増し続けていくと信じたい。


【3位】
カナリヤ/米津玄師

この令和時代において、CDセールス150万枚を突破したクリティカルヒット作『STRAY SHEEP』。その最後に収められた"カナリヤ"は、まさに混沌のウィズ・コロナ時代を生きる僕たちに届けられた、新しい「愛」の唄であった。あらゆる景色が一変してしまった隔たりだらけの世界で、それでも人は誰かと繋がりたいと願う。その根源的な欲求は、残酷なほどに眩く、そして美しいものである。2020年、そう高らかに謳い上げてくれたこの曲と出会えて、本当に良かった。


【2位】
カイト/嵐

2020年、嵐の5人は、「The Music Never Ends」という至上のメッセージを懸命に届け続けてくれた。そのトライアルは、令和時代に響くべき最新型のJ-POPアルバム『This is 嵐』において一つの美しい結実を見せる。《そして帰ろう その糸の繋がった先まで》という歌詞が象徴しているように、嵐の5人は、活動休止という季節を超えて、いつか必ずJ-POPシーンへ帰ってくる。米津玄師が手掛けた"カイト"は、その温かく揺るぎない確信を僕たちに与えてくれたのだ。だからこそ、何も悲しむことはないのだと思う。


【1位】
うちで踊ろう/星野源

2020年、新型コロナ・ウイルスの脅威に対して、「音楽」はどう立ち向かったのか。この楽曲は、まさに「ポップ・ミュージック」からの一つの回答として、いくつもの時代を超えてプレイバックされ続けていくのだと思う。《全ての歌で 手を繋ごう》《僕らそれぞれの場所で 重なり合えそうだ》この短い歌詞に託された願い、祈り、覚悟、そして、約束。それら全てが、まさに「ポップ・ミュージック」の本質であり、揺るぎない理念なのだ。衣食住に与さない「音楽」は、それでも真の意味で人々を救う。そう信じさせてくれた"うちで踊ろう"は、ポップ・ミュージック史における奇跡の楽曲として、いつまでも輝き続けるはずだ。


2020年、僕の心を震わせた「邦楽」ベスト10

【1位】うちで踊ろう/星野源
【2位】カイト/嵐
【3位】カナリヤ/米津玄師
【4位】怪獣の花唄/Vaundy
【5位】I LOVE.../Official髭男dism
【6位】帰ろう/藤井風
【7位】I see.../乃木坂46
【8位】ラブしい/Kizuna AI & 花譜
【9位】TEENAGE VIBE(feat. Tohji)/kZm
【10位】正しくなれない/ずっと真夜中でいいのに。



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