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2021年上半期、僕の心を震わせた「邦楽」ベスト10

ウィズ・コロナ時代、2年目に突入。

いまだに先行きが不透明な状況が続く中で、それでも音楽の届け手たちは、新しい音楽観を提案してくれるような果敢な冒険心に溢れる作品を、今も次々と生み出し続けている。

ライブやフェスの延期・中止という悲しい報せも絶えないが、それでも少しずつ、音楽業界を担う人々の絶え間ない努力の積み重ねによって、ウィズ・コロナ時代における新しい興行のスタンダードが確立され始めている。何より、この5月に逆境の中で開催されながらも、一件の感染報告もなく無事に成功を収めた「JAPAN JAM 2021」「VIVA LA ROCK 2021」は、音楽業界の希望の象徴となった。

たとえ、時代がどれだけ混迷を極めようとしても、音楽には絶対的な存在意義がある。そして、ポップ・ミュージックには果てしない可能性がある。この半年間、僕たちリスナーは、改めてその確信を深めた。

今回は、2021年上半期、僕が特に強く心を震わせられた邦楽10曲をランキング形式で紹介していきたい。このリストが、あなたが新しい音楽と出会うきっかけとなったら嬉しい。


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【10位】
adieu/春の羅針

今さら改めて説明するまでもないが、TikTokや「THE FIRST TAKE」を通して、既に多くのリスナーは、上白石萌歌のシンガーとしての絶対的なポテンシャルに気付いていて、ついに満を辞してリリースされた2ndミニアルバムは、まさに会心の出来であった。この曲の作詞・作曲を務めた君島大空、ミニアルバムのプロデュースを務めたYaffleをはじめ、新時代を担う若き才能が彼女のもとに集結していることは、まさに必然なのだと思う。


【9位】
崎山蒼志/Undulation

この楽曲のタイトルは「うねり」を意味する英単語であるが、まさに、一つの型に収まることを拒むように未知のサウンドフォーマットを模索し続けるアルバム『find fuse in youth』は、新しいディケイドの幕開けを象徴する傑作であった。また、サビの《願いが願いのまま終わるなんて嫌だな/でも僕はそれを感じながら生きていくんだろう》に続く歌詞は、蒼く轟く「ロック」の本質をあまりにも見事に射抜いている。ここから始まるメジャーシーンへの大躍進に期待したい。


【8位】
乃木坂46/Out of the blue

昨年、日本の音楽シーンを鮮やかに彩った"I see..."は、4期生のユニット楽曲であったが、シングル表題曲を超えて今やYouTube再生回数2,000万回を突破した。そして、新たな4期生楽曲"Out of the blue"は、乃木坂46の「次の10年」を牽引する彼女たちを、次のステージへと導く決定打的な楽曲となった。同曲の作曲を担当したのは、"I see..."や、嵐の"Love so sweet"などを手掛けてきたyouth case。J-POPの王道を堂々と歩む彼女たちの姿は、とても輝かしく、そして頼もしい。


【7位】
KID FRESINO/dejavu(feat. BIM, Shuta Nishida)

彼は、最新アルバム『20, Stop it.』のリリース時に、「2020年1月にボン・イヴェールのライブを観て、いい音楽が何なのか分かった気がした。」と語っていて、実際に同作のタイトルは、ボン・イヴェールの『22, A Million』を想起させる。とても大胆で挑戦的な発言だと感じたが、しかし、今作を聴いて納得した。もともと彼は、ヒップホップ・シーンのみに留まるような存在ではないと思っていたが、究極の普遍を目指す音楽家としての姿勢に、改めて圧倒された。


【6位】
秋山黄色/アイデンティティ

あまりにも巨大な才能だと思う。今、このロックシーンにおいて、彼の右に出る若手アーティストは他にいないと断言できる。今年の1月にドロップされた新曲"アイデンティティ"は、歓声を封じられた時代に生まれた新しいロック・アンセムであり、これから先、数々の音楽フェスのハイライトを担う楽曲になっていくはずだ。2021年の日本の音楽シーンに、彼のような新しいロック・ヒーローが生まれたことは、とても希望的であると思う。


【5位】
宇多田ヒカル/PINK BLOOD

緻密なリズムセクション、大胆なシンコペーション、その上を鮮やかに乗りこなしていく唯一無二の歌。そして、徹底的に統制された多層的なコーラスワーク。全ての音楽的要素が、美しい必然のもとに折り重なった同曲は、J-POPシーンにおける絶対的基準を一気に何段階も引き上げてしまった。2018年にアルバム『初恋』をリリースした後の彼女は、更にアクセルを踏み込みながら、自らのキャリアハイを更新し続けているように思える。もはや、恐ろしい。


【4位】
STUTS & 松たか子 with 3exes/Presence Remix(feat. T-Pablow, Daichi Yamamoto, NENE, BIM, KID FRESINO)

この春、ドラマ『大豆田とわ子と三人の元夫』の主題歌として、毎週の火曜の夜を彩ってきた同曲は、コアな音楽ファンの期待に真正面から応えながら、同時に、ヒップホップに馴染みのない視聴者をも強く惹き付けてきた。その理由はシンプルで、この楽曲の歌詞が、「多様性」を前提とした時代における、新しい理想の生き様を表していたからだと思う。5名のラッパーが、それぞれの観点からドラマの物語を再解釈したリリックが、本当に素晴らしい。


【3位】
星野源/創造

これまで星野源は、「イエローミュージック」という新しい音楽観をJ-POPシーンに提唱し続けてきた。その試みは、2018年のアルバム『POP VIRUS』にて一つの結実を迎えたが、それでも彼は、音楽への絶え間ない好奇心をもって新しい挑戦を続け、そして、この"創造"で完全なネクストフェーズへと突入した。これほどまでにパワフルに展開していく楽曲は、彼のディスコグラフィーを振り返っても前例がなく、容赦なく爆発し続けるクリエイティビティに、とにかく圧倒される。


【2位】
millennium parade/2992

僕は、常田大希の音楽活動について、「King Gnu=J-POPシーンへの提案」「millennium parade=コア層への訴求」という2つの軸で捉えていた。しかし、ミレパの1stアルバムを聴いて、それは大きな間違いであることに気付いた。この作品のポップな魔力は、否応もなくJ-POPシーンを侵食してしまうだろう。常田は、2つのプロジェクトを両輪としながら、この広大な音楽シーンに不可逆的な革命を起こそうとしている。King Gnuの『CEREMONY』、そして、ミレパの『THE MILLENNIUM PARADE』は、その始まりの号砲に過ぎない。


【1位】
ONE OK ROCK/Renegades

僕がこの楽曲を聴いて強く心を動かされたのは、ONE OK ROCKが、再び「ロック」路線へと回帰したことを確信したからだ。彼らは『Eye of the Storm』の制作において、世界のポップ・ミュージックシーンで闘うために、完全世界水準のサウンドフォーマットを追求してきた。その結果、EDMなどの他ジャンルのエッセンスを大胆に取り入れながら、ソングライティングの手法とサウンドデザインを変革してきた。その彼らが、今こそ再び「ロック」を鳴らすと決断した。一度は、かつての「ロック」を超越したONE OK ROCKが、この時代にこそ鳴るべき、新しい「ロック」の未来を描き始めたのだ。たとえ、幾度となく「ロックの時代は終わった」と叫ばれようとしても、僕たちの「ロック」は死なない、またここから始まっていく。この楽曲は、その輝かしい確信を僕たちに与えてくれた。「ロック」の未来に、希望はあると思う。



2021年上半期、僕の心を震わせた「邦楽」ベスト10

【1位】ONE OK ROCK/Renegades
【2位】millennium parade/2992
【3位】星野源/創造
【4位】STUTS & 松たか子 with 3exes/Presence Remix(feat. T-Pablow, Daichi Yamamoto, NENE, BIM, KID FRESINO)
【5位】宇多田ヒカル/PINK BLOOD
【6位】秋山黄色/アイデンティティ
【7位】KID FRESINO/dejavu(feat. BIM, Shuta Nishida)
【8位】乃木坂46/Out of the blue
【9位】崎山蒼志/Undulation
【10位】adieu/春の羅針




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