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YOASOBIの「はじめまして」に込められた、あまりにも深く輝かしい意義について。

【12/5(日) YOASOBI/「NICE TO MEET YOU」 @ 日本武道館】

YOASOBIは「小説を音楽にする」というテーマを掲げたユニットであり、2人の全ての楽曲には、それぞれにベースとなる「物語」(原作小説)がある。

そうした一つひとつの楽曲が秘める音と言葉と映像の「物語」の力は、最新の映像演出を駆使したライブパフォーマンスの場でこそ、何倍にも何十倍にも増幅される。しかし今回、何よりも僕が心を動かされたのは、Ayaseとikuraの2人自身の「物語」であった。



振り返れば、YOASOBIの音楽が世間から発見されたのは、2020年のコロナ禍の真っ只中の時期であった。それは、ライブやフェスの場で自らを音楽シーンにプレゼンテーションする機会を、2人は本格的な活動開始直後にして奪われる形となってしまったことを意味する。

しかしYOASOBIの音楽は、Ayaseが手掛ける楽曲の純然たる素晴らしさと、ikuraの破格の歌唱力によって、即座にして市民権を獲得。2人はライブ活動も大々的なメディア露出もないままに、一気に時のポップスターの座に上り詰めた。

2021年は、それまでバーチャル上の存在として認知を拡大させてきた2人が、テレビ番組への出演やオンラインライブを通して、その等身大の姿を訴求し続けてきた一年間となった。8月の「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」では、初出演にしてトリのスロットが確約されていたが、残念ながらコロナ禍の混迷の中でフェスの開催が中止に。初の有観客ライブの機会を失ってしまったYOASOBIチームは、それでも先行きの見えない状況の中で模索を続け、そして今回、ついに日本武道館公演の実現に至った。



2人は武道館のステージ上で、それまで遠くから応援し続けてきてくれたリスナーと、ついに初めての邂逅を果たした。1曲目の途中で、ikuraは「はじめまして、YOASOBIです! よろしくお願いします!」と叫んだが、それは決して、単なるライブの常套句などではなかった。そう、この渾身の「はじめまして」には、まさに2年分の、あまりにも深く輝かしい意義が宿っていたのだ。

約2年前は何者でもなかった2人は、想像もできなかった日々の中でポップスターとして成長を重ね、そしてこの日、その「物語」は、たくさんの観客に囲まれながら、一つの美しい結実を迎えた。まさに、令和時代を象徴する究極のシンデレラストーリーだと思う。



僕が最も強く心を動かされたのは、至高のポップ・アンセム"三原色"であった。《どこかで途切れた物語/僕らもう一度その先へ/たとえ何度離れてしまっても/ほら繋がっている》と歌う同曲は、まさに2人とリスナーの約束の楽曲であり、その約束がついに果たされたことの感慨はとても深い。

他にもハイライトを挙げていけばキリがないが、ライブ終盤、"アンコール"を披露する前にikuraが語った「この先もずっと、どこまでも、音楽が鳴り続けていますように。」という言葉は、YOASOBIの願いや覚悟を表していたのだと思う。

また、ikuraは「本当にこの空間は愛に溢れている」と語っていた。2人が武道館のステージ上で得た経験や確信は相当大きいものだったはずで、たくさんの拍手や手拍子、何よりも、無数の観客たちの笑顔は、2人を次のステージへと導くはずだ。

ここから始まる、YOASOBIの第2章の「物語」に期待したい。




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