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セパタクロー熱中時代。vol.10
当初は仁川アジア大会を区切りに考えていたセパタクロー取材だったけれど、一から見直すことにした。
まずは取材方式を変えることにした。選手全員を対象にすることを断念したのだ。選手たちには良くしてもらっていたから、難しい決断だったけれど、取材対象を絞ってテーマをハッキリさせる必要があった。
馴れ合いで作品のクォリティが上がらないままボツになるよりも、写真展で発表することで「セパタクロー」の文字と共に一人でも多くの人に知ってもらうことが重要だと自分に言い聞かせた。
そして、被写体に選んだのは当時、日本人でただ一人、タイのプロリーグに挑戦していたアタッカーの寺島武志だ。国内で唯一の実業団チーム阪神酒販で正社員として働きながらプレーしている彼は、毎年、本場のコートに身を投じていた。
僕が初めて現地で彼を取材したのは、彼がタイに渡るようになって4年目のシーズンだった。この年はバンコクから車で2時間、ビーチで有名なパタヤのチームだった。
初めてタイに挑戦したときは言葉も喋れず、チームに溶け込むことができなかったと言う。お客様扱いのまま何もできなかった自分に苛立ちを覚えた。
感情を全面に押し出すタイプではない。しかし、生来の負けず嫌いだ。諦めるのは好きじゃない。翌年も海を渡る決断に迷いはなかった。それから3年。流暢なタイ語を喋り、チームにすっかり馴染んだ寺島がそこにはいた。
そして、彼を中心に追いかけるようになって2年が経ったころ、写真について新たな指摘を受けた。
被写体との距離感だった。
※写真はタイでの一コマ。
<SPOAL「セパタクロー熱中時代。」を一部加筆修正して転載>
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