セパタクロー熱中時代。vol.14
2018年5月、新潟オープンが開催された。代表選考を兼ねた大会でもある。代表候補選手は一足早く集まり合宿をはった。
これまでも彼らと食事を共にすることはあったけれど、このときは初めて同じ部屋に泊まり、同じ釜の飯を食い、一緒に風呂に入り、寝食をともにした。選考のストレスに顔を青くする若手もいたけれど、みんなでイジってリラックスさせて、いつも通り明るく振る舞っていた。
そして、その時を迎えた。新潟オープンの表彰式を終えると、最後に代表選手が読み上げられたのだ。
寺島が可愛がっていたトサーの後輩は4年前の仁川に続き落選してしまった。この他にも若手のアタッカーと「正直、キツイっす」と話してくれたサーバーが漏れてしまった。
発表のあと、控室で写真整理をしていると、合宿に参加したすべての選手が入室してきた。そこに笑顔はなかった。いつものように円になってコーチの言葉に耳を傾けている。
コーチの声は震えていた。
この展開に僕は戸惑っていた。まさか目の前でミーテイングがあるとは思っていなかったからだ。そして、逡巡した。撮るべきか控えるべきか。
そのとき寺島の言葉を思い出した。
「なんでも撮ってください」
このときほどシャッター音を忌々しく感じたことはなかった。しかし、このときほど人差し指に気持ちが入ったこともなかった。きっとこの瞬間を撮るために僕は彼らと5年を過ごしてきたのだ。そう思った。
やっと彼らの気持ちにシンクロできた気がした。
※写真は控室でおこなわれたミーティングの最後にいつも通り握手の儀式をする寺島と落選した坂本竜太郎(上)と合宿中に撮った集合写真。コーチの飯田義隆(前列右から2番目)は選考直後「この写真はしばらく見れないです」と漏らした。
<SPOAL「セパタクロー熱中時代。」を一部加筆修正して転載>
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