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簡単だから難しい!?暑い季節にタイそうめん

初めての味

先日、食の活動家のアンさん達に誘われて、私にとって初めて食べるタイ料理のランチ会にお呼ばれしました。

↓シェフじゃなくて活動家って呼んで!て言われたアンさんのお話


おそらく、タイ料理が好きな方はご存知かもしれない”カノムジーン”。いわゆる、米粉でできたおそうめんといろいろな種類のカレースープをかけて、薬味と野菜をたっぷりのせて食べるお料理。私も大好きなメニューの一つです。

ところが、「カノムジーン”サオナム”って食べたことある?」とアンさんに聞かれ、この聞いたことのない名前、しかも他のカノムジーンは温かいカレーソースをかけて食べるのに対して、こちらは冷たいカノムジーンということで興味津々。
「きっとSumacoのブログに書いたら面白いよ。ちゃんとレクチャー聞いておいでね!」
と私の書くことまでに気を配ってくれる優しいアンさんでした。
初めて食べる料理というのは、本当にワクワクするものです。特に、今まで知らなかった組み合わせの食材の場合は、食べる前にその組み合わせることによってどんな味が生み出されるのか想像してみるのも楽しいもの。

カノムジーンサオナム

今回お呼ばれしたお宅は、アンさんの師匠である”ゲーさん”です。そして食事の作り手もゲーさん。

笑顔が素敵なゲーさん
「自分でカノムジーンサオナムの写真とるの忘れてた!」
とこの後、私用によそってくれたこのサオナムの写真を撮っていました。

今回のランチ会のお呼ばれしていたのは私とアンさんだけでなく他の方々も。ふと気がつくと、私以外は何らかの形で食に携わっているエキスパート達でした。
その中でも、今回私にカノムジーンサオナムとは何なのか!?とその詳しい情報をくださったのが、自らもシェフであり、そしてアメリカで数あるタイ料理本の中でも大人気の本を書かれているアンディ・リカーさん。奥様と一緒にこのランチ会にいらっしゃっていました。

↓アンディさんの本のうちの1冊。写真がめちゃめちゃポップで素敵!レシピだけではなく、タイ料理にまつわるお話もとても面白そうです。
私も今度ぜひ読んでみます!

ということで、アンディさんに教えていただいたカノムジーンサオナムのお話とゲーさんから教わった作り方をここからご紹介。

お皿と食べ物が素晴らしく綺麗に合っている。
とっても涼しげな一品。

ゲーさんのカノムジーンサオナム
材料:
・ココナッツミルク
・パイナップル
・干し海老
・生姜
・ニンニク
・ナンプラー
・唐辛子
・ライム
・お好みで砂糖(私は入れませんでした)

他の方のカノムジーンサオナムの材料には、魚のつみれ団子、茹で卵なども加えるところが多いようですが、ゲーさんの材料は本当にシンプルの極みなんです。

以上の材料を切れるものは全て細かく切って、調味料的なものは全てお好みの量を、米粉のおそうめんにかけ盛りするだけなんです!

おぉ…なんて簡単な!!!

器の中で混ぜて食べます。
天然の甘さ、酸味、しょっぱさ、コク、辛みがとてもいいバランスのさっぱりとした味。
大好きになりました!
DANSKのお鍋にココナッツミルクが入っていますが、
特に温めるということはないそうです。

料理と言っても、”調理”部分は切るだけ!?合わせるだけな激簡単なレシピなんです。ところが、アンさんも含め、他の食のエキスパート達も口を揃えていうのが、

「非常に簡単だからこそ”美味しく”作るのが難しいメニューなんだよ」

ということでした。

カノムジーンには、ナムヤー、ナムプリック、ゲーンキヤオワーン、ナムニャオなど、よく知られたいろいろなカレースープメニューがありますが、サオナムはなかなかレストランでも見かけることがないそうです。

サオナムは元々はお寺にいるお坊さんに奉納する食事だったそうです。各家庭で負担なく作られ、お坊さん達の食となったものの、あまりにも簡単なレシピが故に現代では”美味しく”作るのが難しい一品。

食べてみて思ったのは、このサオナムは特にそれぞれの食材と調味料の合わせ方のバランスが重要だということ。
それぞれの素材が、甘さ、しょっぱさ、酸っぱさ、辛さ、コク、風味、香ばしさの役割を担当。自然の食材の味をそのまま使うので、ごまかしが効かないんです。
ただ、言ってみればどの食材もタイ国内であれば簡単に手に入るものばかり。
つまり、いい食材を揃えられないと”美味しさ”が安定しない一品のようです。一般的な食堂・レストランで扱うには難しすぎるのでしょうか?

サオナムは、タイの中央部、特にバンコクを中心とした地域食だそうです。そしてやはり暑い時期に涼しく食べられる冷製の一品。

ちなみに、この日集まった食のエキスパート達に「チェンマイのどこかレストランでカノムジーンサオナムを食べることのできる場所はあるのか」
聞いてみたのですが、皆知らないそうです。この土地のレストランでは一切出会ったことがないんですって。
そして、もし一度も”オリジナル”の美味しさを知らなかったら、自分でそのちゃんと食べたことのない味を表現するのはとても難しいという話で盛り上がりました。もしかしたら、カノムジーンサオナムは将来消えていってしまう味なのでしょうか。

師匠

ゲーさんは、タイの食の活動家の第一人者です。出身はタイの南の地域。

なるべくオーガニックのもの、その土地の食文化、季節のものを考慮した物流のシステム、農家さんの形態、消費者の意識などのことをいつも考え、活動してきました。ただ、お年のこともあり、今は引退して若者にこの意思を継いでもらうよう教育の方に力を入れています。

料理の腕は確かで、食材へのこだわりがあり、食器やキッチン用品にもくわしい方なんです。このサオナムだけではなく、他のお料理も食べさせていただいたのだですが、どれもこれも私の口にとても”美味しい”感じ、思わず

「シェフなんですか?レストランとか経営されていないんですか?お料理の先生??」

と以前私は大真面目に聞いたことがあり、周りのみんなの笑いをいただいてしまったことがあります。そして周りからは、

「ただ”食”が好きなでたまらない人!」

と答えが飛んできたんです。

先ほど上記した”料理の腕が確かで”の一節、
ゲーさん曰く、”私にとっては”ということ。

「Sumaco、あなたはいくつかの私の料理を食べてとても美味しいと思ったんでしょう?それはね、つまりただ私の味のバランス、食へのこだわりが”あなたにも”合ったということだけなのよ。」

確かに..
世の中には私がまだ経験をしたことのない高級・一流レストランの食があったり、私でもたまに手の出せるちょっとお高めのレストランの食、話題の人気店、一般的な大衆食堂、屋台など、いろいろな形で食を提供している場で”美味しさ”を感じることができます。そして人それぞれ”美味しい”の感じ方は違うもの。
私が特に美味しいと感じた場面には、値段に関係なく、いつもご高齢のシェフの存在がありました。

そして今回アンディさんに教えていただいたカノムジーンサオナムの経緯、
昔はお坊さんに奉納するための食だった、つまりきっと昔ながらのサオナムは菜食で本当にシンプルなものだったと想像が簡単にできます。

そしてゲーさんのサオナムはきっとそれに近い形であろうと気がつきました。

私は100歳まで生きた祖母の食で育ちました。家庭では化学調味料など使わなかった食、茶色いおかずがたっぷりだったことをよく覚えています。

国、食文化は違いますが、何かそこに共通するものがあるのでは?といいヒントをいただきました。

近々、ゲーさんには個人的にお宅にまたお邪魔して、もっと食と地域のお話を聞かせていただくことになりました。とても楽しみ!!
そのお話はぜひこちらのnoteでもシェアさせていただきますね。

今度自分でも作ってみようっと!!

今日は熱が入ってなかなかの長文になってしまいました。
疲れませんでしたか?
読んでいただきありがとうございます!



追記:


この記事を書いた後、他のタイ人とカノムジーンサオナムについて話をした際に、どうやら始めはお坊さんへの奉納の食だったというのは違う、という意見をいただきました。
もう少し素材の種類が多い形が原型で、王室用のメニューだったという説を教えてくれました。美味しいものだったので、それが簡単な形になって一般庶民に広がったらしいのです。
本当のところはどうなんでしょう。おいおい探っていきたいと思います。

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