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テレワークした人は、どれだけいたか?

パンデミックが遺したこと

新型コロナの感染が始まって4年目に入り、世間、世界は、悪夢を超えてアフター・コロナの気分も感じられる。猛暑の中でも電車内にマスクをしている人が、まだ3割、4割くらいいることが、パンデミックの残像だろうか。

でも、このパンデミックを経て世界が変わったこと、変わる力が働いたこともあるはずだ。「働き方」は、その大きな一つのはずだ。

変わる必要のある未来、変わりたくない現実

振り返れば、ヒューマンルネッサンス研究所(HRI)で未来のワークスタイルをテーマに、テレワーク、ワークシェアリング、サテライトオフィス、インディペンデントコントラクター(個人事業主)、半農半X、副業・兼業、マルチハビテーション(多拠点居住)などを、「すぐそこにある近未来」として本気で研究していたのは90年代半ばあたりだ。どのライフスタイルも、SINIC理論の自律社会に向かう暮らし方だと確信して進めていた。

それから約20年、ここに挙げたような働き方の変化は、兆しから本流には太らなかった。「素晴らしい未来像だね。けど、実現するのはまだまだ先だね」と、実現への壁を並び立てるのが、団塊世代を中心とした物知り顔のミドルマネジャーたちだった。変える必要がないなら、変えない方が手間もコストもがかからない。近視眼的な見方だった。

働き方は変わったのか?!

しかし、パンデミックで出社しようにもできなくなった。「変える必要」が生じた。出社できなくても、仕事を進めなくてはならない。やむを得ず在宅勤務はスタートした。広いオフィスにまばらなスタッフという景色が、私のあたり前のオフィスシーンとなった。並び立てられた働き方改革の壁は一気に崩れたかのようだった。

それで、リモートワークは、パンデミックを経て「新しい日常」になった、と思いきや、最近、やたらに朝晩の通勤電車の混雑が激しいことも感じていた。そんな中に、5年に一度、日本国内の働き方の実状を示す「就業構造基本調査」の結果が先日発表された。今回の調査では、「テレワーク」の実施状況や「兼業・副業」状況の質問が加わったこともあり、結果を楽しみにしていた調査だ。

発表されたテレワーク実施率の数字を目の当たりにして、その少なさに目を疑った。全国平均では、この一年間にテレワークを実施した人は有業者の内の19.1%。実施した人であっても、その頻度は勤務の20%未満という人が半数程度だ。この結果を、みなさんはどのように感じるのだろうか?恥ずかしながら、私は周囲の様子から、8割近い人がテレワークを経験しただろうと踏んでいた。まったくの大ハズレ、というか真逆だった。世の中のほんの一部分しか見えていなかった。

東京都の有業者だけでみても40.2%。もちろん都道府県別ではトップの実施率である。しかし、「えっ、その程度?」と感じないだろうか?最低だったのは秋田県の6.5%、東北地方が軒並み一桁台であることが示すように、1次産業、2次産業、3次産業であっても現場の仕事は、テレワークをしたくても、あり得なかった。テレワークは大都市圏の事務作業、研究開発などしか実施されず、さらにそういう職種でも、オフィス回帰の揺り戻しが最近では起こっている。

虫の眼だけでも、鳥の眼だけでも、未来は見えない

ボーッとしていると、ネットメディアの情報洪水に押し流され、リアルな暮らしの現実を見失ってしまう。ネット社会は、ある意味で欺されやすい社会であり、虚像が実像に見えてしまう目くらまし環境なのだ。

だからこそ、誰もが制約されることなく、求める生き方を自律的に実現できる社会、その自律社会の実現に向けて、そういう社会のニーズをしっかりつかんで、創造して、テクノロジーも価値観もまだまだ進化と発展が必要だ。

この結果を目の当たりにして、自らが陥った誤謬に気付き、「自分の見渡せる周囲だけが世界ではない」ことを改めて肝に銘じた。虫の眼で近くの様子を丁寧にみる。同時に、鳥の眼で遠くまで見通せてこそ、未来の眼を持てる。嗚呼、情けなかったと猛省だ。そして、しっかり社会に実装することに関わってこそ、アタマでっかちのThink tankではなく、ボクらが目指し、こだわりたいカラダで汗も流すDo tankだ。

未来をソウゾウするには、未来の「兆し」を見つけることが大切だ。しかし、兆しのままでは未来にならない。それを、いかにして世間、社会、世界にするか、それこそが未来創造、未来研究の大事なところだ。やっぱり感覚だけでなく、データの大切さを感じて初心に立ちかえった。未来のミカタは、360°全方位を足下から遠くまで、地球まるごと見渡せる視界を持って、感じとることだな。

ヒューマンルネッサンス研究所
エグゼクティブ・フェロー 中間 真一






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