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少女な母 その後

母がホームに入居して、もうすぐ1ヵ月になる。

私が安心できる生活ができるようになったかと問われれば、答えは否である。

毎日、母からかかってくる電話に悩まされる日々である。

母がショートステイしたホームが気に入っていたのは確かで、実際今もホームで楽しく過ごしている時間はあるのだろう。

楽しかったから、母はホームの部屋が空いていないかと私に聞いてきた。

だから、すぐにホームに行って空いていた部屋をキープした。

こうして希望通りにホームに入居したのだが、母の中ではどこまでいってもホームは、一時的な場所、であったのだろう。

普段はホームにいて、時々自宅に帰ってくれば良いと簡単に考えていた私がバカだった。

母の帰宅するという意味は、部屋の荷物をまとめて帰ってくることだったのだ。

まぁ、認知症の人が言うことを全て本気にしてはいけないだろうし、私も軽く考え過ぎていたのかもしれない。

「今日、帰ろうと思うんだけど。」で始まる母の電話。

一度家に帰れば、もうあそこ(ホーム)には、戻らないと言われそうでまだ自宅に母を連れて帰ったことはない。

友人にも私と同じように母親をホームに入れていた人がいたので入居した当時のことを聞いてみた。

母と同じように「タクシーに乗って家に帰る。」と言われていたらしい。

母も最近、タクシーに乗って一人で家に帰るから心配ないと私に言ってくる。

ホームの職員が簡単に認知症の母を外に出すはずはないから、実際はない話だと思う。

でも、それほど帰りたいと言っている母を簡単に帰してあげられないことを悪いなとも感じている。

そんな時、もう一度、以前のように母と一緒に暮らせるかと自分自身に聞いてみるが、もうそんなエネルギーはどこにもないという答えしかみつからない。

ホームの看護士さんに母の状況や自分の気持ちをお話したら、
「いきなりご自宅に戻すのはリスクが高いので、まずは外食に行かれる程度にされたらどうでしょう?
もう、十分頑張ってお母様をお世話されたのだから、娘さんはゆっくり休んで下さいね。」
と言って下さった。

なるほど、外食かぁと私が納得していたら、ファミリーレストランのような場所なら、多少お母様が騒いでも大丈夫だと思うとまで言われて何だか気が重くなってしまった。

認知症でホームに入られた方のご家族は皆さん、どうしているのだろう?

ホームに慣れる期間は人それぞれで、一概にどのくらいとは言えないだろうし、とりあえず母がホームに馴染むのをただ待つことしかできないのだろうか。

ホームに入居したらおしまいではない介護の問題、家族の問題。

新たな問題に直面し、今日も母からの電話がいつかかってくるのかに怯えてしまう情けない私である。

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