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ダメな私をどうぞ 〜ホルモン主義〜

会社の研修でケーススタディをやることになった。主人公の佐藤さんは私のようにダメだった。

私は佐藤さんであり、佐藤さんは私だった。みんなして彼か彼女かわからない佐藤さんの「改善点」をホワイトボードに書いて議論を交わす。ねぇ、みんな、みんな。ダメじゃないことを普段普通の顔してやってるのかい。私はこういうダメなこと普通にしちゃってますけどね、なんて思いながら、佐藤さんごめんよ、って思いながら研修が運びやすいように正論を並べたのだった。ねぇ、みんな、みんな。いったい何がダメじゃない普通を誘うの?

研修が終わり、ふと窓を見ると蛾の大群が渦を巻いて宙に消えていった。と思ったら落ち葉が大量に舞っていただけだった。その先に目をやると月の灯りが雲に滲んでいる。吸い込まれたい。そういえばかぐや姫はそうなったな。他の姫も、実は全員月にいたりして。バイオリズムに吸い込まれていった女たちよ、いきなりだが月に代わって私の生理周期を整えてくれ。

私は今おそらく生理前だ。このやるせなさが体内のホルモンバランスだけの問題であれば、人間ってなんて悲しい。目に見えないものに揺さぶられて、目に見える結果がボロボロだ。今あなたが読んでいる文章は、ホルモンが書いているっぽい。情熱だね。

さて、資本主義から逃れるため古本に会いにきた。だが、彼らは市場を一度さらばし、もう一度こんにちはさせられた哀れな存在であることに気づき、そんな哀れな彼らを私は少しづつ引き取るのだった。買われて売られて、また買われて、人間もそういうサイクルの中、資本主義から離脱できない。それで食っているのだから。あー、今日もカレーはうまい。

そうそう、カレー屋にきた。ダルバード推しの店だったが迷わずカレーを頼む。理由はひとつ、カレーはうまいから。オススメはダルバードだと店の案内を見てすぐに分かったが、それでも迷わず、だ。食後のホットチャイも頼む。だいたいこういう店は食後に頼めども関係なく、食べてる途中に「置いとくね〜」という具合。手をつける頃には脂肪分が膜を張った飲み物が出来上がる。…狙い通りである。その膜をすする儀式は誰にも見られたくない、私の幼少期からの癖(ヘキ)だ。冬はつとめて、ホットチャイの膜。

カレーとホットチャイに含まれていた適量のスパイスは、私のバイオリズムを少し整えたので、ホルモンで書いた文章もそろそろ終わりだ。明日また資本主義で会おう。佐藤さん。

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