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Nomad Land が良かった、その理由

テキサス州ヒューストンに住んでます。スナダマリコ です。先週ふと思い立って、一足先に映画「Nomad Land」をみてきました。日本は3月26日に公開です。

色々あったこの一年、すっかり映画館から足が遠のいていた。「ガラガラだよ」と噂では聞いていたけれど、その通り。24もスクリーンがあるシネマコンプレックスには巨大な駐車場があるが、車はわずかしかない。案内された小さめのシアターに足を踏み入れると、50席程度のスペースに観客は私一人だった。

清掃の人が消毒している。席に座ろうとしたら、フェイクレザーのリクライニングシートがびしょびしょ。「I am sorry.  The seat is pretty wet now.」と声をかけられた。「That's no problem.  I will wait till it's dry.」と立って待つが、一向に乾かない。

持っていたウェットティッシュで椅子を拭く。濡れているもので濡れているものを拭くってどうなのさ。それでも少しはマシになったので、しばらくして腰をおろす。

大打撃を受けている映画業界の実態を肌で感じる。映画公開のT Vコマシャールはほとんど見なくなった。目にするのは「ストリーミングで見れるよ!」の広告だ。

なのにどういうわけか、「Nomad Land」に関してはTVCMをよく目にした。私が見るニュース局や番組の視聴者をターゲットにしているのかな。対象年齢が高いからかな。

https://searchlightpictures.jp/movie/nomadland.html


一言で表すならば「喪失」の物語。

ある程度の年齢を経ていれば、誰もが何かを失った経験があるはず。近しい人、仕事、故郷、友情、愛。無くしたものがなんであれ、ユニバーサルにわかる悲しみだ。

アメリカに住んでいるから余計なのか。広くて立派な映画館で一人ポツンと過ごしているからなのか。時の移り変わりや、廃れたものの切なさがことさら胸に響いた。

惨めで切なく映し出されるのは、人間が作ったものだ。

逆に温もりを感じるのは人と人とのつながり

情景や人物描写が真っ直ぐで、痛いほど美しい。

自然は美しく、時に怖く。

分断の一片が垣間見れる

分断されたアメリカ、とよく言われる。この巨大な国が抱える問題の一片が、映像とストーリーでよく表現されていて、政治問題やアメリカに興味がある人なら、興味ぶかいのでは。

とはいえ、先ほども「ユニバーサルに理解できる」と書いたとおり、日本の現状に当てはめたり、自然と人間という対比や、産業・政策と言う視点でも眺めることができる。

モノを失っても、つながりで生きる動物としての人間の姿も生々しい。

冷たさと温かさが交互に押し寄せる。過去、未来、そして国や距離を超えて思いを馳せる、そんな静かな感動があった。

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