見出し画像

「前橋市アーバンデザイン」を読解くvol.4 第1章:はじめに

いよいよ、全148ページにもわたる前橋市の再開発計画「前橋アーバンデザイン」(以下MUD)を章ごとに読解いていく。また、私は前橋市に生まれ、無条件に故郷を愛する立場として「自分は何ができるのか?」という視点で見て行こうと思う。MUD全編の目次は、

1.はじめに
2.現状の整理
3.民間の意見集約
■ビジョン・プラン編
4.まちづくりの方向性
5.⾧期プラン
6.まちの将来像
7.ライフスタイルの提案
■アクション・プラン編
8.アーバンデザイン・ガイドライン
9.モデルプロジェクト
10.実現に向けた取り組み
(全148ページ)

と、前置き部分と「ビジョンプラン編」「アクションプラン編」から成る。今回は「第1章:はじめに」から。

1)策定の趣旨

以前にも前橋市の置かれた地方都市の現状、民間主導のまちづくりへの大胆な方向転換には触れたが、この官民協働でつくったプランを実現するために「ビジョン(理念)の共有」と「民間のアクションに繋げる」を重要視した内容になっているという。「市民、企業、行政の3方それぞれが互いの垣根を越えて自分ゴトとして地域の課題を捉え自主的に課題解決に取り組み行政が側面支援することで、賑わいのあるまちの具現化につなげる」と。
企業と行政はそもそものミッションが地域の課題解決であるので問題ないが、「市民」が自ら地域の課題を捉えて自主的に課題解決につなげるって、相当ハードルが高いと思う。しかも、半分あきらめモードになっている前橋市民をどこまで「動かせるか」が成功のポイントになるのは間違いない。

画像1ちなみに前橋市の人口は現在34万人あたりで推移しているが、10年後には30万人になり高齢者比率が35%になる予想だ。「賑わいのあるまち」をイメージする時には、ついつい若い世代で想像しがちだが、現実的にはシニアが元気に楽しんでいる姿が描けなければならない。

2)MUDの特⾧

①民間主体のまちづくりを推進するため、官民協働で策定
➁ビジョン共有のために図や写真を多用
③固定されないアクション

①は理解できる。②は「これ、わざわざ挙げるって、今まで行政文書みたいのだけでやってたの?」と突っ込みたくなる。民間企業で、意識合わせのためにビジュアライズされた企画書が当たり前になっている私としては、少しショック。③は公共事業を中心とした大きな整備計画ではなく、小さなアイディアも社会実験的にやってみてPDCAを回していくということ。何かやろうと思ったら役所の手続きとか超面倒だったものを、現場に大きく権限委譲して軽快に回していくという事だろう。わざわざ「特長」としてこんな3点を言わねばならないとは先が思いやられるが、保守的な地方都市の役所にしてみたらめちゃくちゃ大きな進歩なのだろう。

画像2

3)MUDの位置づけ

画像3

わざわざ図示しているが、要は役所と民間が共通のバイブルとして使うという事。でも、役所が左側にある事自体配慮が足りない感あり。しかもよく見ると、右側の「市民・企業・団体」との関係は「尊重し、意見を聞く」と実線の矢印があるが、左側の役所との関係は「適宜反映」の矢印が点線になっているではないか!「市の計画には反映しないかも~」って、いさぎわるっ!こういう小賢しい書き方は信頼感を無くすので良くないと思う。どこかでまだ「驕り」や「プライド」が残っているのか。

4)策定区域

今回のMUDの再開発計画は、前橋市全域ではなく中心市街地に特定している。前橋市はJRの前橋駅と商店街が離れているのが特徴。図の下側に駅があるのだが、そこから500mほど北(上)に500m四方の商店街が広がり、その西(左)に役所関係が集まる。この駅~商店街~役所までの158haが範囲。よくある駅前開発のように駅から半径500mのコンパクトシティ開発とは違って、斜めに突っ切っても徒歩30分くらいかかる大きめの開発になる。ただし役所の西(左)には大きな利根川河川敷が広がり、自然を取り込める。交通や市民生活の要所を取り込みながら「ウォーカブルな街」を作るには、この範囲の設定が必要があったのだろう。

画像5

※赤線が策定区域

5)上位、関連計画

「第1章:はじめに」の最後に関連する計画がまとめられている。一番上の位置付けは【vol.3】でも触れた「第七次前橋市総合計画」であり、おそらくこれが「上位計画」という事なんだろう。敢えて「関連計画」だけでなく「上位、関連計画」としているのは、何か意図があるはず。国の予算の問題なのかもしれないし、今までの政策との整合性を保つためかもしれない。MUDの上位に市の計画がある事は、今後どのような影響を及ぼすのか注視していきたい。
関連計画は以下の13計画。

1、都市計画マスタープラン(平成27年3月)
2、県都まえばし創生プラン(総合戦略平成30年3月)
3、前橋市中心市街地活性化基本計画(平成29年3月)
4、前橋市立地適正化計画(平成31年3月)
5、前橋市市街地総合再生計画(令和元年7月)
6、前橋市景観計画(平成21年10月)
7、前橋市地域公共交通網形成計画(平成30年3月)
8、前橋市産業振興ビジョン(平成29年4月)
9、前橋観光の方向性(平成28年3月)
10、前橋市住生活基本計画(平成24年3月)
11、前橋市空家等対策計画(平成30年5月)
12、前橋市緑の基本計画(平成30年3月)
13、前橋市環境基本計画(平成30年3月)

これらは既に予算がついた実行計画だと思うが、今後MUDに沿ってどれだけ柔軟に計画変更や予算執行ができるかが実現のポイントになるだろう。

今回は第1章に関して読解いたが、行政が意識を変える決断をした中にも、まだお役所的な部分が残っているのでは?という印象を受けた。次回は「第2章:現状の整理」について読解きます!お楽しみに~


この記事が参加している募集

#最近の学び

182,276件

#この街がすき

44,097件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?