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「前橋市アーバンデザイン」を読解くvol.3 策定プロセス

今回は「めぶく。」というビジョンから、どうやって「前橋市アーバンデザイン」を作り上げたかについて紐解いていく。

1)第七次前橋市総合計画

2016年8月のビジョン発表を受けて、前橋市で「第七次前橋市総合計画」が策定された。2018年度から2027年度までの10年間の「政策方針」で、まちづくりの目標(将来都市像)を掲げ、それを実現するための行動指針や政策別の指針(まちづくりの柱)などが示された。

せっかく新しいビジョンができたのだが、行動指針で「こういう市民になろう!」的なスタンスはわかるし政策にも紐づいているのだが、具体的にどういうステップで実現していくのかがわからない。「前橋市の未来に夢を持とう」と言いたいのはわかるけど「どんな未来」なのかわからないから想像できないし、どう動いてよいかわからない。という意見が多かったのか、民間が入っての具体的な中心市街地の再開発計画が始まった。

2)なぜ行政主導ではダメなのか?

「前橋市アーバンデザイン」策定の背景と目的はこのようなもの。

人口減少社会やひっ迫する地方行財政等の状況下において、行政主体のまちづくりには限界が見え始めています。その一方で、官民連携でまちに賑わいを取り戻し、これまで使われてこなかった施設が多くの人に利用される事例が複数紹介されるようになりました。本市の中心市街地においても、官民連携の様々な取り組みが始まり、まちづくりの主体が行政から民間へと移行する転換期を迎えています。民間主体のまちづくりを推進する上では、様々なステークホルダーの羅針盤となる理念が必要であることから、官民協働で「前橋市アーバンデザイン」を策定しました。策定により、市民や企業、行政のそれぞれが「自分ごと」として地域の課題を捉え、自主的、または連携して課題解決に取り組むことで、中心市街地の活性化を図ります。

ある意味、画期的です。役所が変なプライドを捨てて、民間主導でないと街の再開発が進まないと宣言したのです。これを英断した市長はすごい。この後も民間が主体となり策定作業が進みます。

3)基本計画はどこが作った?

「MAEBASHI TIMES vol.0」では「ZGF」と「ポートランド」というキーワードが出てくる。「ZGF」は世界でもトップレベルの都市設計事務所でポートランドの再開発計画での成功は、もはや伝説。日本でもスマートシティとして脚光を浴びる千葉の「柏の葉」開発も手掛けている。

※ZGFのポートランド成功事例が学びたい方は、この本がおススメ

ZGFのWebページを見ると、国土交通省受賞記事の中に「パートナーとしての石井設計」とある。石井設計は前橋で100年の歴史を持つ有数の建築設計事務所であり、群馬県内の多くのプロジェクトを手掛ける。また「石井アーバンデザインリサーチ」という、まちづくりに関する調査・分析・計画を専門に研究する部門もあるので、この両者が手を組んで基本計画を策定したのではないかと思う。日本のいち地方都市の計画をこんなに豪華なメンバーで作り上げるとは、本気度が伝わる。前橋の再開発は、前橋だけでなく世界中の都市開発のモデルになり得るということではなかろうか!

4)基本計画をどうやってオーソライズするのか?

「前橋市アーバンデザイン」の策定状況は市のWebページで公開されている。「市民ワークショップ」と「策定協議会」で検討するカタチとしたようだ。「市民ワークショップ」は対象エリア内に住む住民や事業者、店舗経営者、商店街の会長や理事、大学教授、大学生、公共交通機関等の方々を対象に全4回(各回10名前後)合計41名で行った。それとは別に「学生ワークショップ」も実施し、将来を担う人の意見も集約。「策定協議会」は、広く地元関係者や市外部の民間企業、専門性の高い学識者等から意見を聞き、効果的で実効性の高い計画とする事が目的。

上のリンクからワークショップや策定協議会の写真を見てもらえるとわかるが、「おじさん」ばっかり~。女性も若い人もあまり見当たらない。しかも市民ワークショップにしては「参加者のべ41名」って少なすぎじゃね。もちろん世界有数&県内有数の設計事務所の基本案なので間違いないとは思うが、意見を聞くというよりはもっと多くの市民が参加して、基本案を「理解する」というステップを踏んでもよかったのではと感じる。基本案から市民が広く参画する事で、計画実行時の市民の当事者意識は大きく違うと思う。

5)「前橋市アーバンデザイン」の公表

そして、2019年9月13日に公表された。

内容に関しては、次回以降細かく読み解いていこうと思うが、公表後市民への理解促進のために、手作り感満載の「アーバンデザインシンポジウム」が開催されている。参加者はそれほど多くないが、市民に都市計画を「理解して」「共感して」「実行に移してもらう」ためには、地道な活動が重要だろう。

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「第2回前橋市アーバンデザインシンポジウム」には、オンラインで参加したが、オマケとしてあった前橋市市街地整備課 田中 隆太さんの「市街地整備課が推進する”前橋版リノベーションまちづくり”」の小ネタ集が一番面白かった!

次回からは、いよいよ本編の読解きに入ります。まずは「第1章:はじめに」から。お楽しみに~


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