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「前橋市アーバンデザイン」を読解くvol.6 第3章:民間の意見集約

前橋市の再開発計画「前橋アーバンデザイン」(以下MUD)を章ごとに読解いていく。今回は、前置き部分の第3章について。「民間の意見集約」というテーマだが、「まちの利害関係者延べ200名とともに策定プロセスに応じてワークショップをおこなった。」とあり、200名という数にやや不安を感じたので、内容をよく検証してみたい。

1)ワークショップの体系

第1回:土地利用および街路ネットワーク
第2回:土地利用および建物
第3回:土地利用およびオープンスペース
第4回:中心市街地のエリア分け草案
第5回:第1回~第4回のまとめ
第6回:学生によるまちのトレジャーハンティング
第7回:シチュエーション別のライフスタイル
第8回:通りやエリアのイメージ①
第9回:通りやエリアのイメージ②
第10回:官民それぞれの役割分担
第11回:ワークショップのまとめ

第1回~第5回は中心市街地との関わりが深い方から、課題のヒアリング~まちのニーズの整理。第6回は次世代を担う学生による、まちの魅力や改善個所の意見整理。第7回は将来の素敵なライフスタイルをまとめる。第8回~第10回は、通りやエリアごとにアイデアを実現させるための官民の役割分担の整理。そして、最終回の第11回は、これまでのワークショップ参加者に全体内容の共有と意見、感想をもらう。
これだけ見ると、街のプランを作るには十分なステップを踏んでいるように見えるし、これだけの回数をこなす事務局としての苦労もよくわかる。が、あえて課題をあげてみると「市民の巻き込み方」かなと思う。

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第3回ワークショップの様子(市のHPより)

2)もっと市民を巻き込む

ワークショップの模様は全て市のHPに細かく掲載されている。

内容を読み込むと「なるほど」とか「いいアイディアだな」とか感心するポイントがたくさんある。一方、これだけ良いワークショップをしているが、MUDの基本案をつくり、オーソライズする事に終わっているのがもったいない。市民ワークショップをする意義は、半分は「計画づくり」だが、もう半分は「一緒に前橋を変えていく仲間づくり」だと思う。このワークショップに参加した人は「街づくり」に関して相当意識が高く、ワークショップを通じて色々学んだと思うが、計画を実行するための「街づくりの専門知識を持った専門家」として仲間になっているのだろうか?

3)「アーバニスト」の存在

都市開発や都市再生で成功している地域では「アーバニスト」の活躍がカギになっているらしい。東大で都市工学を研究する中島直人准教授の論文によると、アーバニストとは「その都市を生きながら、都市の課題に応え、新たな価値を生み出していく人々」だという。都市計画は研究者や各分野の専門家によってつくられたもので、計画を実行する市民は知識や経験不足でなかなか理解できないし、実行に繋げる策を見つけるのが難しい。そこで、計画を理解しながら実行する人として「アーバニスト」が必要になる。アーバニストになれる人は、どういうスキルを持った人かというと、

・都市プランナーが地域で活動を行う
・コミュニティビジネスやローカルディベロッパーなどのかたちで都市や地域に深く入っていくビジネスパーソン
・様々な専門家(環境・エネルギー、 農業、ものづくり、教育、政治・行政、アート・文化、社会 福祉、宗教家)たちが都市や地域で活動を起し、その環境づくりにたずさわる
・アクティブ生活者、あるいはアーバン・インフルエンサー(地域で多くの人を巻き込みながら、ことを起し、場を創造していく人)
※上記、論文内から項目を抽出

アーバニストに必要な要素としては「何らかの思想というよりも、都市や地域に接する姿勢」と「都市や地域の課題や可能性を読み取るリテラシー」であるという。MUDのワークショップ参加者も、参加する時点で「都市や地域に接する姿勢」があるのは言うまでもないが、ワークショップを通じて「地域の課題や可能性を読み取るリテラシー」は習得できているので、立派な「アーバニスト」になっていると思う。

4)今後の展開(要望)

私見としては、今後もワークショップを続ける必要があると思う。今回のワークショップに参加した200名に声をかけて、実行フェーズのワークショップをしてみたい。もちろん、新規参加者のための「前橋アーバニスト育成講座」みたいのがあるともっといい。こんな地元マニアックなブログを書いている時点で私も「アーバニスト」なのかもしれないが、個人として、他の地域の先行事例を研究したり、街の小さな課題解決をするワークショップを開催して「アーバニスト」を育成し、MUD実現に協力するのもひとつだなと思う次第です。

次回は、やっと具体案であるビジョン・プラン編に突入。「第4章:まちづくりの方向性」を読解きます。お楽しみに~


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