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台所の中心で愛を叫ぶ

パチ パチ パチ コロ、パチ パチ パラ、パチ パチ トサ。
この夏から我が家で聞くようになった音。

これは


枝豆の鞘(さや)を枝(茎)から切り離している音。
枝豆は私の大好物。

枝豆は袋詰めになった鞘(さや)だけを、スーパーで買うものだと思っていた。当地では農家の庭先で“丸ごと"の枝豆を売っている。根っこから葉っぱまでの姿を、私は初めて見た。
チャリンとお金を払ったら葉っぱを揺らしながら、丸ごと枝豆をむき出しのまま持って帰る。枝豆大好きの私はご機嫌で、♪えっだまめ えっだまっめ♪と鼻歌を歌いながら家に帰る。

枝豆は新鮮さが命。すぐに調理にとりかかる。
まず、根と葉を切り離す。きれいな葉っぱは後ほど花瓶に入れて、感謝をこめて鑑賞する。
次に、枝から鞘を切り離す。園芸用ハサミでひと鞘ひと鞘切っていく。最初に買ったときは時間短縮のために、力任せに手でブチブチと切り離していた。ところが農家のおばあさんが、ハサミで切ったほうが塩が染みるよ、と教えてくれた。それ以来、多少もどかしさを感じながらもハサミで切り離している。
可愛い鞘を夫と二人でパチパチと切り離す。
パチ パチ パチ コロ、パチ パチ パラ、パチ パチ トサ
ハサミを持つ手が痛くなる頃、切り離しが完了する。
自作枝豆の歌を歌いながら塩もみをする。期待が大きく膨らんでくる。
先ほどから湧いている鍋に鞘を入れる。やがて枝豆の香りがして、緑色の幸せに包まれる。
味見という名のつまみ食いをすませ、ザルに一気に開ける。湯気が顔に当たる瞬間が至福だ。

我慢できなくて湯切りをしたザルに手を突っ込む。アチッ、アッチと指でつまんだ鞘を振って冷ます。そして、いよいよ!鞘を押す。つるんとつやつやの豆が顔を出す。
生き生きとした若い緑色はとても美しい。ペリドットのように太陽のエネルギーに満ちた、無邪気な元気色。
キスをするように口に入れれば、ホクホク広がる甘さ。幸せだ、私は最高に幸せだ! 台所の中心で枝豆愛を叫ぶ。おいしいーーー!!

この土地に引っ越してきたからこその幸せ。土と太陽と農家さんに感謝をささげる。新鮮な枝豆は”ちゃんと生きている"エネルギーがある。夏が超苦手な私だが、この異例な夏を枝豆パワーで乗り切りたい。


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