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痩せる ≠ 幸せ


痩せて細っそりして、いかにも女の子という感じで弱々しければ、守ってもらえる。痩せさえすれば、辛い現実から逃げられる。

私にこんな考えを植え付けたのは元夫だ。付き合っていた時は私のスタイルについて何も言わなかった。結婚したとたん、太ってる痩せろと言い始めた。
この時点で気づくべきだった。人の体型をけなすのはモラルハラスメントである。私は健康で、医学的には痩せる必要などなかった。モデル体型ではないというだけだった。典型的なモラルハラスメント、モラハラだ。当時はモラハラという言葉はなかったし、概念も世間に浸透していなかった。

新婚すぐに夫から「痩せなよ」と言われ、私は人生で初めて「私は太っている」と思い込み、ダイエットを始めた。ウォーキングからはじまって、体重の記録、食事の改善、菓子の制限をした。
このストレスはものすごく、メンタルが不安定になった。でも、ダイエットを止めることはできなかった。毎日腹の肉をつままれたからだ。

必死のダイエットが数か月目に入った時に、私はおかしくなり始めた。無理なダイエットは私を追い込み、菓子類のチューイング(口に入れて咬み、飲み込まずに吐き出すこと)をした。会社で残業時間に一人になるとチューイングをしていたのだから、かなり精神的に危ない状態だった。チューイングのことは、今でも誰にも話していない。

数か月かけて10キロ近く体重を落とした。夫は私の努力をなんら誉めることなく「毎日見ているからわからない」と言い放った。なんのために痩せたのか分からなくなった瞬間であった。

その後、私の心は夫に背を向け、数年後に離婚に至った。痩せても幸せになれなかった。優しくもされなかったし、守ってももらえなかった。
夫はスタイルのいい他の女しか褒めなかった。

この時減った体重はいつも間にか元に戻った。夫から逃れてやっと私の心は楽になった。だが、辛いことがあると「痩せれば世界が変わるはず」という呪いを思い出す。

お読みくださりありがとうございます。これからも私独自の言葉を紡いでいきますので、見守ってくださると嬉しいです。 サポートでいただいたお金で花を買って、心の栄養補給をします。