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ジブリのリバイバル上映で、映画館に恋をした。


「一生に一度は、映画館でジブリを。」

これほんと最高のキャッチコピーだと思うんです。何が響いたのかは全然わからないんですけれども、普段キャッチコピーで動かされるってことにあまり心当たりがない私が、この一発で映画館行きを即決しました。おうちだいすき勢の私が。私とスイートマイホームを繋ぐ強固な根っこもなんのその、超パワーでいとも簡単に引きちぎられ外にひきずりだされました。恐ろしいです。

ということで、スタジオジブリのリバイバル上映を観ての感想です。もっとも、6月上旬から上映を開始しているため大変今更感がありますが、気にしない方向で。


まずは最初に一言言わせてください。関係各者の皆さまありがとうございます。企画してくださって、実現してくださってありがとうございます。本当にありがとうございます。

私は「金曜ロードショーで放映されていると見ることもある。でも映画館に行くほどではない。」という日本の標準ジブリ度にこれでもかというほど当てはまる人間です。

つまり映画館でジブリ作品を見たことがなかったということです。

そんな人間が例のブルースクリーントトロを大画面で見ることができたということで、本当に一生の思い出になりそうです。今こうして感想を書きながら心の思い出ボックスに収納中です。きれいにしまえるかな。こういう思い出って大体いつも感情10000割なんでまとまりきらないんですよね。ゆえに思い出ボックスの中は大体いつもごちゃごちゃです。それだけ心を動かされたってことです。そういうことにしてます。


ところで「映画館で映画を観る」良さっていろいろあるかと思いますが、個人的に好きなのは始まる前に流れるシネアド(CM)。

シアター内に入り、静寂の中自分の席を探し、座る。携帯の電源を切ったり荷物をいい感じに置いたりと、一通りもぞもぞします。体制を整え終え一息ついたところで突如流れ出す爆音。そう、シネアドが流れ出すんです。この爆音一発が私を一気に「映画館」に引き込みます。

不思議なもので、前々から気になっていたあの作品も、普段なら気にも留めないジャンルの作品も、シネアドで見ると全て平等なんです。全ての作品に対して心が動きます。ゆったりと脱力しイスに座りつつ、まもなく本編が始まることへの期待感とシネアドで流れている作品に対する心の動きに身を浸している、あの穏やかさと高揚感の隣り合わせはそうそう味わえません。

またいいのが、シネアドの切れ間。映像が途絶え、照明が落とされ、始まる!と身構えた次の瞬間に流れるのはまたシネアド。始まらないんかーい!と一気に脱力するも結局流れるシネアドにまた見入る。

この切れ間が生まれる仕組みはわかりませんが、始まる!?とある意味騙されてそして脱力、を繰り返すと「ああ、映画館にいるんだなあ」と感慨深くなります。

さあ、そうこうしているうちについに本編が始まります。映像が途絶え、照明が落とされる。

これまた不思議で、同じことをシネアドの切れ間で体験したはずなのに、この瞬間はそれとは全く別の雰囲気を感じます。シネアドの切れ間はお、始まる?!って感じでテンションが血糖スパイクするんですけど、本編が始まる瞬間はあ、これは始まるな。ってなんだかやけに冷静になるんですよね。

無意識に軽く息を吸い込み、一瞬止め、吐き出す。そうしてそこには先ほどとは違う自分がいます。凪いだ心に浮かぶ船。進む先には感情の嵐が見えます。嵐に突っ込むと分かっていても、この船を止めることはできません。さあ、いざ、航海の始まりです。


今回観るは「千と千尋の神隠し」。冷静さと旅立ち前の高揚が入り混じる心地よさの中、ブルースクリーントトロが映し出されます。それを見た私。

なんとびっくり。始まってもいないのに泣き出しました。

映画早泣き選手権、見事更新です。これまでの記録を大幅に更新しての堂々たる一位。観客スタンディングオベーション。世紀の瞬間でした。

その後しばらくは訳もわからず泣いてましたからね。千尋がむすっとした顔で花束持ってるだけですよ。どこに泣く要素があるんですか。友達との別れを思って?ラインでもイプでもなんでもあるでしょう(2020年現在)。意味がわかりません。意味がわかりませんがこれを書いている最中にも思い出して泣きそうです。ちょっとティッシュとってきます。


気を取り直して、鼻をかみながら考えてみたんですが、この企画がなければもしかしたら一生ジブリを映画館で見る機会はなかったからかもしれない、と思い至りました。

自分が物心ついてから、いくつかのジブリ作品が発表されてきました。それらはもちろん映画館で上映されたわけですが、そんな環境の中においても一回も映画館でジブリを見たことがない。これが私の事実です。

何度も地上波放映で流し見し、歳を経るごとに少しづつ意味や背景に考えが及ぶようになり、少しずつ好きになっていった、いや、今でも見るたびに好きになる「千と千尋の神隠し」という作品。それと先のキャッチコピーとの融合。この奇跡が起きたおかげで、今日という日が訪れたわけです。この奇跡の盛り合わせみたいな状況に私の涙腺は耐えられなかった模様です。

今自分は映画館でジブリを見ている。その事実になによりも心を打たれました。ありがとう本企画。キャッチコピーすごい。


そして映画館ってやっぱりすごい。今まではただの映像だったものが、全く違って見えます。千尋一家が歩くトンネルの湿っぽさ、不気味さ、トンネルを抜けた瞬間の草原の草と風の香り。釜爺のボイラー室の熱気と炎の匂い。これらがいとも簡単に頭に浮かびます。

ジブリが持つアニメ映画とは思えぬ現実感、それでも現実ではないと感じるあの絶妙なバランスもこの感覚を覚えた要因ですね。

現実感がなさすぎればあくまでファンタジーの、知らない世界の出来事となり、現実の中で俳優さんがいるような映画だと俳優さんや風景に引っ張られる。いずれも雰囲気を感じる、というところまでいきません。情報量のちょうど良さがハンパじゃないです。人物から風景まで全ての機微を感じられる。

ジブリすごい。映画館すごい。映画すごい。


今までも映画館で映画を観たことはあり、漠然と映画館って素敵だなあと思ってはいました。しかし、今回でそのフワフワした感想が確かな、感情という形を取ったのです。その感情の名は、そう。恋。うん、はい。

スタジオジブリのパワー。ある程度慣れ親しんだ作品。キャッチコピー。すべてが完璧に組み合わさった結果、私はすっかり映画館の虜になったのでした。


ある映画を映画館で観れるのは、こういった人気・有名な作品ならまだしも、基本的には私たちの一生のうちの限られた期間だけです。本来であればもう二度と訪れることのなかった機会に恵まれた。これを奇跡と言わずして何という。再度になりますが関係各者の皆さま、この機会をくださり本当にありがとうございます。

映画館で観るということがいかに特別か、それを実感した今回のリバイバル上映でした。行ってよかった。映画館さん素敵。好き。


「千と千尋の神隠し」という作品の感想についてもこちらで書いております。併せてご覧いただけると嬉しいです。


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