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『前祝いの法則: 日本古来最強の引き寄せ予祝のススメ』ひすいこたろう 大嶋啓介

 「アヤコ🍼“元気“を味付けするエッセイスト」さんから依頼があったため、書評しました。
 どなたからでも書評依頼受け付けているので応募していただけたらと思います。




 さて、今回書評するのは『前祝いの法則: 日本古来最強の引き寄せ予祝のススメ』です。


 
 前祝いの法則、引き寄せ、予祝。

 聞き慣れない言葉が並んでいますが、一体どんな意味なのか。
 読んでいきましょう。




【要約】


 冒頭の一節、本書は印象的な言葉から始まる。
 

『なぜ日本人はお花見をするのか?……実は、お花見こそ、古代日本人が実践していた、夢(願い)を叶えるための引き寄せの法則だったのです』(3頁)


『いま、喜ぶ。いま、喜びに浸る。すると、未来においても、喜びがやってきます。「未来」を変える方法とは、「いまの心の状態」を変えることなんです。』(27頁)




 本書では、物事を成功に導く大切なことは、予祝だといいます。予祝によって、自分の気持ちを上げて前向きに物事に取り組むことができる、としています。

 そもそも予祝とは何なのでしょうか?

 予祝とは、将来の成功をイメージして、そのお祝いを先にする、というものです。

 実際に予祝が、どのようによってされているのか紹介したいと思います。



 小学校の先生が、運動会の前に「予祝作文」を生徒に書かせました。そして運動会の日まで『運動会優勝したぞ!』と毎日ハイタッチを続けました。また、他にも学級通信に優勝した、という内容も載せました。その結果、運動会で優勝することができたのです。
 その時生徒のリアクションは以下のようだったようです。

『「予祝やべええーー!!」
 「予祝どおりーーー!!」
 「予祝!予祝!予祝!」
 と大騒ぎでした。
 予祝をやってみて、間違いなく言えるのは、子どもたちの笑顔が増えたことです。結果、教室の空気が明るくなり、欠席する子もいなくなりました。……とにかく予祝で日本の教育が変わりますよ!』(90頁)



 このように行うことによって物事をポジティブに捉えることができる、というのである。
 スポーツでいうイメージトレーニング、なんていうものに近いかもしれません。
 
 また、数々の成功者も予祝を取り入れていることを説明しています
 まずは、フィギュアスケートの羽生結弦。
 2014年のソチオリンピックに向かう飛行機の中、自分が金メダルを取るイメージをしていました。そのイメージが、あまりにも具体的にできたため、羽生結弦は喜びの涙を流してしまったそうです。
 他にも長嶋茂雄や高校球児等が、予祝の実践を通して、夢を叶えていました。


 また著者は予祝以外にも大切なことがあると述べます。
 成功を引き寄せるためには、「喜び(予祝)」の他にも、「自己受容」、「感謝」が大事だと説明します。


 ◯喜び(予祝)

『空気(雰囲気)こそが大事なんです。奇跡は明るい空気から生まれるからなんです』(198頁)



 どんな逆境でも、楽しめる心を作ることが大事と言います。
 まずは喜ぶ。先に喜ぶことにより気持ちの余裕ができ、周囲の環境が、良くなる、とのことです。


 ◯自己受容

『心の状態がマイナスになる最大の原因、その犯人は自分です。なんであんなことを言ってしまったんだろう、なんで自分はいつもこうなんだろう』(169頁)



 ありのままの自分を認めてあげることも大事なことです。
 自己受容。良いことだけでなく、悪いことのの自分も認めてやることにより、否定をする自分を生み出さずに、何に対しても前向きにチャレンジしていくようになるのです。
 

 ◯感謝

『「なんのために」「誰のために」という動機を見つめ直すことで、悲しみを愛に変えて、感謝を決意に変える。……感謝のエネルギーが「大切な人のために」という決意に変わったとき奇跡の力が沸き起こるのです。……「誰かを喜ばせたい」という思いが、喜びの最上級であり、最大級の予祝なのです』(190頁)



 誰かへの感謝、つまり誰かのために何かしようとする想いは大きな力を生み出すのです。
 それは強い決意となり、自分を突き動かすのです。自分のためだけでは、不可能なことを成し遂げることができるのです。


 この3つを常に意識して行動することができれば、何事も楽しんで、真剣に取り組み、色々なことを成功に導くことができるのです。


【解説】



 自分を変えるためには自己認識を変えるのが一番早い、というのは心理学の常識である。
 ゆえに本書に通底する圧倒的なまでのポジティブ思考は、自分を変えるための1つの手段にはなりうるだろう。
 また、著者はポジティブ思考を生み出すために「予祝日記」(218頁)というものを勧めいてる。
 日記は、普通その日の終わりにできたことを書くのであるが、「予祝日記」は逆である。
 その日の始まりにこれから起きてほしい成功をイメージして、先に喜びの言葉を日記に書いておくのだ。これにより日々の予祝が簡単にできると著者は述べる。
 他には感謝の手紙を他人に書くことも勧めていた。
 これらの手法は、心療内科や精神科において、ポピュラーな治療法である認知行動療法のセルフモニタリングに近い。
 セルフモニタリングは、うつ状態の患者に嬉しかったことや悲しかったことを日々の感情をノートに書かせます。




 ただ個人的にはこの手のものは、どういう危険があるか分からないので、本当に気持ちがしんどい人は、医療従事者の指導のもと行って欲しいな、というのはあります。




 さて、気になるワードが出ています。
 

 『予祝』と『引き寄せ』。
 この2つについて歴史的な経緯も踏まえながら解説を加えたいと思います



 【そもそも引き寄せの法則とはなにか?】


 近年の引き寄せの法則ブームはというのは、2006年に出版されたロンダー・バーンの『ザ・シークレット』の影響によるものとされています。同時期にたくさんの引き寄せの法則がテーマにした本が出版されました。

 しかし、引き寄せの法則自体はロンダー・バーンが生み出したものでありません。『ザ・シークレット』の元ネタはなんなのか?
 確認していきたいと思います。

 
 19世紀後半でアメリカで流行したこの心のあり方身体や現実に影響する、という『ニューソート』という運動がありました。
 このニューソートの運動の中で言われ始めたのが「引き寄せの法則」です。ただこの時の引き寄せの法則はぼんやりと語られるのは程度であり、現在ほど体系的ではありませんでした。

 このようなニューソート運動の隆盛の最中、新聞記者であるナポレオン・ヒルがとある本を書きます。

 『思考は現実化する』(1937年)です。

 鉄鋼王カーネギーの発案に乗り、20年間無報酬で「成功哲学」を徹底的に研究しました。カーネギーが見込んだ500人をインタビューし、彼らが成功していく過程を追跡します。そこに共通する「思考」と「やりかた」を体系的にまとめたものです。
 世界中で2000万部以上の大ヒットになりました。
 『思考は現実化する』をざっくりまとめると、ポジティブな思考をも持っていれば、成功を掴むことができるというような内容になっています。

 そんなニューソートの運動と、『思考は現実化する』に影響を多分に受けていたのが、引き寄せの法則の創始者であるエスター・ヒックス及びジェリー・ヒックスです。
 ちなみに、ジェリー・ヒックスは、あの有名なアムウェイで、『思考は、現実化する』講座の講師をしていました。
 『引き寄せの法則 エイブラハムとの対話』を出版しました。


 本書は出版されるやいなや瞬く間に多方面に名を上げ、世界中に影響を与えました。
 引き寄せの法則、といえば『ザ・シークレット』が有名ですが、元ネタはこっちの方なんですね。


 
【そもそも予祝とはなにか?】



 予祝を辞書からそのまま引用すると以下のようになります。

 『豊作や多産を祈って,一年間の農作業や秋の豊作を模擬実演する呪術行事。農耕儀礼の一つとして〈予祝行事〉が行われることが多い。あらかじめ期待する結果を模擬的に表現すると,そのとおりの結果が得られるという俗信にもとづいて行われる』(世界大百科事典 第2版)


 
 予祝の儀式として、田上正月、繭玉、粟穂稗穂、鳥追、成木責めなどがあります。

 しかし、予祝は儀式だけではありません。
 この予祝を専門にビジネスをした人がいました。
 それは『門付』と言います。


 門付の発祥の根本には、季節に応じて神が祝福に訪れるという民間信仰があった。「祝言人」(ほかいびと)の芸能に由来するとも言われ、これは神を装い、民家の戸口等に立って祝福することば「祝い言」(ほかいごと)を発することで金銭を乞う者である。
 (よくまとまっていたのでウィキペディアから引用させてもらいました)


 で、この門付は10世紀の頃には物乞いとして認定されていました。このことから門付はネガティブに捉えられていたことがわかります。

 それはそうですよね。突然お仕掛けられて、



 『あなたをお祝いします!!………はいっ!5千円寄越せッ!』



 完全に押し売りですよね笑。クーリングオフしたいくらいです。
 商売って今も昔も変わらないんですね笑


【感想】


 引き寄せの法則というと、海外初のものでしたか、それを日本古来の文化による予祝、と掛け合わせるアイディアはとてもユニークであると感じた。

 本書において、花見を予祝と捉えていましたが、それは誤りです。
 花見は当初奈良時代の貴族から始まった、花の鑑賞会であり、豊作の前祝いの要素はありません。事実と異なります。
 日本古来と言いつつも、文化的な背景による言及が少なくエビデンスが弱い印象があったので、そこを改善して理論付けすると、もっと信憑性が増すのかな、と思いました。
 そのせいか、本書の後半はほとんど「引き寄せの法則」に似ており、オリジナリティに欠ける面があった。
 繰り返しになりますが、日本古来の予祝を見つけた視点は良いと思うので、その辺りを練り直して、文化的な背景を書けば面白くなる可能性はあるのかな、と思いました。


 自分の気持ちを前向きにするのは得することが多いので、普通に生きていく実践として捉えれば、総体としては悪くないこと言っているんじゃないか、と思いました。



【参考文献】




https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E9%96%80%E4%BB%98#:~:text=%E9%96%80%E4%BB%98%EF%BC%88%E3%81%8B%E3%81%A9%E3%81%A5%E3%81%91%EF%BC%89%E3%81%AF,%E3%81%84%E3%81%AB%E3%82%93%EF%BC%89%E3%81%A8%E3%82%82%E3%81%84%E3%81%86%E3%80%82

https://japanknowledge.com/contents/nipponica/sample_koumoku.html?entryid=50


https://free-ownedmedia.com/think-and-grow-rich/

 『引き寄せの法則の歴史』エバンジェリストにしき

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