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トーラス盤上の(a,b)-Riderの分類

年賀詰で、トーラス盤上の$${P(2024)\textrm{-Rider}}$$がBishopとNightRiderの合成になることを確かめました。

BishopやNightRiderという有名な駒が登場しましたが、これはそもそも珍しいことなのでしょうか?

そこで、$${9\times9}$$トーラス盤上の$${(a,b)\textrm{-Rider}}$$にはどのくらいの種類があるのかを考えてみましょう。

以下、$${(a,b)\textrm{-Rider}}$$のことを$${R(a,b)}$$と略記します。$${(a,b)\textrm{-Leaper}}$$は$${L(a,b)}$$と略記します。

年賀詰で登場した$${R(2,4)}$$は、盤上の駒が充分少ない状況では$${R(1,2)}$$すなわちNightRiderと同じ利きになりますが、厳密には異なる駒です。実際、下図でPが$${R(1,2)}$$の場合はどこにも動くことはできませんが、$${R(2,4)}$$の場合は飛び越えて動くことができます。

今回は、盤上の駒が充分少ない状況(例えば自分自身しかいない)で、利きが同じ駒は等しいとして分類します。

ところで、$${9\times9}$$トーラス盤上の$${L(a,b)}$$は以下の$${15}$$種類しかありませんでした:

$$
\begin{matrix}
L(0,0) & L(0,1) & L(0,2) & L(0,3) & L(0,4) \\
 & L(1,1) & L(1,2) & L(1,3) & L(1,4) \\
 & & L(2,2) & L(2,3) & L(2,4) \\
 & & & L(3,3) & L(3,4) \\
 & & & & L(4,4) \\
\end{matrix}
$$

詳細は下記をご参照ください。

$${R(a,b)}$$は$${L(a,b)}$$のライダー化です。$${L(a,b)=L(c,d)}$$であれば$${R(a,b)=R(c,d)}$$なので、$${R(a,b)}$$は$${15}$$種類以下です。

$$
\begin{matrix}
R(0,0) & R(0,1) & R(0,2) & R(0,3) & R(0,4) \\
 & R(1,1) & R(1,2) & R(1,3) & R(1,4) \\
 & & R(2,2) & R(2,3) & R(2,4) \\
 & & & R(3,3) & R(3,4) \\
 & & & & R(4,4) \\
\end{matrix}
$$

上記には例えば$${R(1,2)=R(2,4)}$$のように等しいものもあれば、$${R(1,1)}$$と$${R(1,2)}$$のように異なるものもあります。上記のうち、具体的にどれとどれが等しくてどれとどれが異なるのかを明らかできれば分類は完了します。

以下の補題が本質的です。

補題1
$${k\in\Z}$$とする。$${k}$$が$${3}$$の倍数でなければ$${xk\equiv1\pmod{9}}$$となる$${x\in\Z}$$が存在する。

証明
 
$${\ell\in\Z}$$を用いて$${k=3\ell\pm1}$$と書ける。$${x=6\ell\pm1}$$とおく(複号同順)。このとき、

$$
\begin{align*}
xk&=(3\ell\pm1)(6\ell\pm1) \\
&=9(2\ell^2\pm\ell)+1 \\
&\equiv 1 \pmod{9}
\end{align*}
$$

となる。

$${\square}$$

命題2
$${a,b,k\in\Z}$$とし、$${k}$$は$${3}$$の倍数でないとする。このとき、$${9\times9}$$トーラス盤において$${R(a,b)=R(ka,kb)}$$である。

証明
 
$${R(ka,kb)}$$の$${1}$$ステップは$${R(a,b)}$$の$${k}$$ステップである。したがって$${R(a,b)\supset R(ka,kb)}$$である。
 補題1より、$${xk\equiv1\pmod{9}}$$なる$${x\in\Z}$$をとる。両辺に$${a,b}$$を掛け、$${x\cdot(ka)\equiv a}$$と$${x\cdot(kb)\equiv b}$$を得る。よって$${R(a,b)}$$の$${1}$$ステップは$${R(ka,kb)}$$の$${x}$$ステップである。したがって$${R(a,b)\subset R(ka,kb)}$$である。

$${\square}$$

命題2を使えば、例えば$${R(1,2)=R(2,4)=R(4,8)=R(1,4)}$$が分かります。整理すると下記の命題が得られます。

命題3($${9\times9}$$トーラス盤上の$${(a,b)\textrm{-Rider}}$$)
$${9\times9}$$トーラス盤上の$${(a,b)\textrm{-Rider}}$$は以下の$${7}$$種類である:

$$
\begin{array}{c|c}
(a,b)\textrm{-Rider} & 別名 \\
\hline
R(0,0) & \textrm{Zero} \\
R(0,1) & \textrm{Rook} \\
R(0,3) & - \\
R(1,1) & \textrm{Bishop} \\
R(1,2) & \textrm{NightRider} \\
R(1,3) & \textrm{CamelRider} \\
R(3,3) & -
\end{array}
$$

証明
命題2より以下が分かる:

$$
\begin{align*}
R(0,1)&=R(0,2)=R(0,4) \\
R(1,1)&=R(2,2)=R(4,4) \\
R(1,2)&=R(2,4)=R(1,4) \\
R(1,3)&=R(2,3)=R(3,4)
\end{align*}
$$

また、$${R(0,0),R(0,3),R(3,3)}$$と上記は相異なる。

$${\square}$$

随分と少なくなった印象です。$${P(n)\textrm{-Rider}}$$は上記のいくつかを合成した駒です。$${n}$$によってどの駒が合成されるのかについては、次回の記事で考えたいと思います。

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