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読書感想文「石、転がっといたらええやん。」岸田繁


日本のロックバンド【くるり】のギターボーカルである岸田繁氏が、音楽誌『ロッキング・オン・ジャパン』で連載したコラムをまとめたエッセイ。

この本を読もうと思った理由

①くるりが大好き

僕がくるりを聴くようになったのは、京都の大学に進学してからだ。

それまで存在は知っていたが、音源を聴いたことはなかった。
たしか、河原町OPAにあるタワレコで、京都バンド特集のようなブースがあり、京都タワーが写ったジャケットのベスト盤があり、上洛したばかりの僕は思わず購入した。

そのアルバムは『ワンダーフォーゲル』から始まり、一通り聴いてみるが、最初のうちはそこまで好きにはならなかった。

しかし、京都での生活に慣れるにつれ、彼らの音楽が京都の街と重なって、一段と好きになっていった。

くるりの単独ライブに行ったことはないが、仕事で行ったあるイベントで生のくるりを観た。やっぱりくるりが好きだし、この街が好きだと改めて気づかせてくれたライブだった。

本のあらすじ

この本は岸田氏が『ロッキング・オン・ジャパン』で連載したコラムをまとめたものなので、一連の流れみたいなものはないが、一貫した彼の思想が随所に見られる。

旅の中で出会った物事。
震災による心の動き。
年齢を重ねるごとの音楽の変遷。

何気ない日常が彼の世界観と言葉で表現されている。

感想

冒頭に書いた通り、僕はくるりが好きであるし、岸田繁の作る音楽が好きだ。
ただ、勝手な僕のイメージで、岸田繁は偏屈な人、という認識をしていた。
そして僕はそんな偏屈な人が大好きなのだ。

本書を読んで、彼に対する解像度が上がったように思う。
おそらく、彼が偏屈な人というイメージは、あながち間違っていないように思う。
直接会ったこともないので、個人の勝手な感想でこんなことを言うのは無礼千万であることも重々承知している。だが、何度も言うが、僕はくるりが好きだし、本書を読んでさらに好きになった。

彼はとても頭の良い人だと思う。
彼の作る音楽はとても論理的であるし、それでいて心に染み込んでくるような音楽だ。

簡単に言うと、重厚ではないのに薄っぺらくない。

狡猾なまでの知的なロジックと、不器用だがそれを受け入れて溶け込ませるようなやさしさ。
まさに京都人を絵にかいたような人。

そんな彼の音楽に通じるものが、この本には詰まっていた。
彼が10年以上続けた連載の中で、変わっていくような、でも変わらないような。
彼自身が滲み出ているような、でも本質は隠されているような。
一筋縄ではいかない、「岸田繁」自身を感じられるような、でも本当は全然違うような。
本書を読んで、やはり彼のことはあまり分からなかったけど、一つだけ言えるのは、彼をより好きになった、ということだ。

ここのところあまり聴いていなかったから、昔のアルバムから聴きなおしている。

河川敷と夕暮れのスーパーには、くるりの曲がよく似合う。


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