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金縛られた話
金縛り(かなしばり、英語: Sleep paralysis)は主に就寝中、意識がはっきりしていながら身体を動かすことができない症状を指す。身体が締め付けられるような感覚からこう呼ばれる。また合わせて浮遊感、耳鳴り、くすぐられている感覚があったりするものもある。本来は仏教用語であり、その転用である。不動明王が持つ羂索(けんさく)の威力により、敵や賊(転じて煩悩)を身動きできないようにする密教の修法である「金縛法」(きんばく・かなしばりほう)を由来とする。
先日、生まれてはじめて金縛りに遭った。
布団に入り、意識が離れかけた頃だろうか。
ふと、身体の左から、「トットットッ」と猫が駆け寄るような音が聞こえ、急に下腹部の辺りが重くなる感触があり、そこから中心に全身が硬直していきそうになる。
「あ、これが金縛りか」とはっきり意識することができた。
寝返るは打てるのかな、と気になったので試みる。
あっさりできた。
「あ、今のが金縛りか」と、少し拍子抜けした感もある。
今が丑三つ時であるなら殊更にリアルだろうなと思い、枕元のスマホで時間を見るが、午前0時にも満たず、布団に入ってから40分しか経っていない。
そこからは、興奮することも怖いという感覚もなく、5分と経たず眠りに入ったように思う。
朝まで起きることはなかった。
”夢”という感覚はなくはっきりと感覚が意識できたいたこともあり、はじめての金縛りは話のネタになると思い少し嬉しくもあった。
翌朝、妻に金縛りに遭ったことを話した。
妻は心霊などの話が苦手だ。少しは怖がってくれるかと期待したが、返ってきた言葉は「疲れてるのかもね」の一言だ。
「え、それだけ⁉」と内心消沈したが表情には出さなかった。
職場へ行き、金縛りについて調べてみたところ、そこには霊的なものを根拠とするものは書かれていない。妻が寂しい返事をしたのは原因を知っていたからだろう。
ざっくり調べた内容によると、
「お前、疲れてる。ストレス感じてる。焦ってる」
らしい。
疲れやストレスがゼロとは言わないが、今の僕はそれなりに幸せだし、ストレスも発散できていると思っていたので、まさに青天の霹靂だった。
金縛りに遭ったという事実より、そちらの方が衝撃であるし恐ろしい。
そして、その日の夜、今日も金縛りになるのかな、という淡い期待をしつつ寝床に入る。
やはり疲れているのか、すぐに眠りに落ちたように思う。
しばらく経っただろうか。
夢を見た。
僕は、どこともなく道を歩いていた。
ふと後ろから足音が近づいてきて、横を見ると、知らないおっさんが目を見開いてこちらを見ている。ギョロっとした目でこちらを凝視しながら、僕に並走してくるのだ。少し笑っているようにも見える。
ほんの数秒の夢だったが、あまりに気色悪く目が覚めてしまった。
夢占いによると、知らない男が出てくる夢は、自分の嫌な部分の象徴であり、行動を見つめなおすきっかけだという。
そして、何かに追われるという事は、焦燥感の表れらしい。
どうやら僕の精神状態は、無自覚のうちに結構ヤバいみたいだ。
確かに、日々の疲れや将来の不安などがないわけではないが、
自分ではそれなりに幸せだし楽しんでもいると思っていた。
何より、疲れやストレスが無意識に睡眠時に表れるというのが恐ろしい。
具体的な解決にはならないかもしれないが、
こうして文章にすると、少し自分を見つめられるので良いのかもしれない。
キャンプに行こう。焚火をしよう。
さて、今日はどんな夢を見るのだろう。
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