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危うく他人の人生を歩むところでした

「ご主人は福の顔をしている、
  そして奥さんは商売人の顔をしている。
  だから2人が一緒にやるといいんだ。」

ある日、人生の大先輩にそんなことを言われました。
もうこの言葉を聞いてから、1ヶ月以上が経つのですがあまりに印象的で忘れられない日に。

なぜならこの言葉を言われた数日前に、ちょっとモヤモヤすることがあったんです。

👨🏼‍🦲「結局造ってる人と造ってない人の差って…」

夫は最後まで言い切らず、言葉を飲み込みました。意見の食い違いから口を出た言葉に、「マズい」と咄嗟に感じたんだと思います。

どちらの意見も久福を一歩前へ進めるためのもの。でも話せば話すほど噛み合わない。こういう時、身内の言葉だとなぜか話をまっすぐ受け止めることができないんですよね。

目的は同じなのに、手段が違うため、折り合いがつかない… なんてことは雇われの時代から沢山経験してきました。こういう時、これまでだったら折り合いをつけてきたはずなのに。最適解を探してきたはずなのに。

夫が言葉を飲み込んだという事実があまりに悲しく、その日はずっとモヤモヤした1日を過ごしました。簡単に言っちゃえば「結局私のことを‟造ってない人”って思ってたんだ…」みたいな落胆です。


そんなことがあった数日後、冒頭の『彼は福の顔、私は商売人の顔』なんて言われたもんだから、ハッとしちゃったんです。

「そうだった、私たちは役割が違うんだった」


久福のお客様はよくご存知のとおり、久福ブルーイング本島のビールを造るのは夫の担当。妻の私はそれ以外の諸々のことを一緒にやっています。
もちろん意思決定は夫婦一緒にやっていますが、やっぱり商品(ビール)そのものを造ってない分、見えてないことも多いのも事実。

そこにちょっとした引け目もありつつも、スタートしてまだ2年足らず。
正直2人が同じことを出来る必要はないと思っていました。2人で同じことをしていたら、時間がいくらあっても足りないとも思っていたからです。

だから夫が出来ないことをやる、夫では足りないことを私がやることでバランスをとろうとしていたのですが、思っていた以上に『造ってない』という事実は私を苦しめてたんだな。ということに気づきました…

" 商売人の顔 "

そう言われた時、ちょっと救われた気がしました。確かに私は雇われの頃、ずっと商売…いわゆる販売をしてきました。着物を売ったり、不動産を売ったり…

曲がりなりにも真面目に売ってきたことは私の血となり肉となってたのかなぁと。商売人の顔と見られたことで、ビールを造ってない自分に◎を付けることができた、そんな気分になったのです。


思い返せば、私の父も私の祖母も職人でした。商売の才はなんとも言い難い部分がありましたが、祖母と父の仕事は本当に丁寧で美しいと思っていました。
何かを生み出せる人に対する憧れはきっとここから来ていたんだと思います。

けれど、私はそうじゃなかった。

夫婦一緒に始めたけれど、それでもやっぱり夫は他人。私とは全く別の個体なわけで、私は決してビールを造る人ではないのです。
危うく夫の人生を歩むところでした。

久福は今のところ2人で造るものだけど、その中で夫には夫の、私には私のストーリーがある。それぞれの道と交わりポイントを同一のものにしちゃいけないなぁと、改めて。


夫婦経営を始めて、見えてたものがいつしか見えなくなってることに気付いて、なんだか怖っ! てなりました(笑)


早いうちに他者の言葉によって思い出せたので、軌道修正が出来てよかったです。これからは粛々と自分の歩みを進めていきたい所存。


そう言えば、1人目の出産後、まだ子育てに余裕がなかった頃に友人に言った言葉があります。
「悪阻も切迫も超えて、十月十日お腹の中の赤ちゃんと過ごしてきた私とはやっぱり違うから。そりゃ産まれた次の日から「お父さん」を彼に求めるだなんて、無理な話よね」

そう遠くない過去に、私は私が落胆した夫の言葉と大して変わらないことを言ってました。

女って勝手なものですね(私か。笑)


それでは
幾「久」しく「福」を届ける久福より
愛を込めて



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