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犀川 苑
2024年5月25日 21:50
1 通っていた中学の制服は、田舎の進学校の狭苦しさそのもののようで嫌いだった。男子も女子も野暮ったいチャコールの、学ランともブレザーとも言い難いような首の詰まったブレザーには、公募で決まったという凝った意匠の校章を刻んだ500円玉大のボタンが5つも並んでいる。そして胸元にはやたら深いポケットがひとつと、身頃の左右にもそれぞれ大きなポケットがついていた。中に指定のカーディガンと指定のシャ
2019年12月10日 15:56
その日初めて、夜をつくった。並んだ12色のクレヨンの中から「くろ」を手に取ったとき、なんだかそれが咎められるべき行為のように思えた。画用紙を真っ黒にするのは、 いけないことなのではないのだろうか。林檎の「あか」、蝶々の「きいろ」、葉の「みどり」、海の「あお」、と並ぶ中で特定のイメージを持たない「くろ」は、幼少期の私にとってどこか他の色とは異質な存在であった。文字を書くときの色。輪郭を書くときの