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『コメンテーター』(奥田英朗・著)

 以前、この「トンデモ精神科医 伊良部一郎」が活躍(?)する話を楽しみました。書架に並ぶ『コメンテーター』(文藝春秋・刊)を迷わず手にしました。
 シリーズ第4弾ですが、前作から17年ぶりとなるようです。

 直木賞受賞、累計290万部の人気シリーズ17年ぶりに復活!
 低視聴率にあえぐワイドショーのスタッフの圭介は、母校のつてで美人精神科医をコメンテーターとしてスカウトしようとする。が、行き違いから伊良部とマユミが出演することに。案の定、ふたりは放送事故寸前のコメントを連発するが、それは暴言か、はたまた金言か!?

 伊良部総合病院は、大学病院並みの大きさで、エントランスとロビーは一流ホテルと見紛うほどの豪華さです。
 ところが、地下一階の精神科は、一転して薄暗く、消毒薬の臭いがします。部屋のドアをノックすると、

 中から「いらっしゃーい」という甲高い声が聞こえ、中に入ると太った中年の医師が一人掛けのソファに腰かけ、目尻を下げていた。
 (略) 椅子を勧められ、着席する。医師の名札を見ると《医学博士・伊良部一郎》と書いてあった。名前からしてこの病院の一族らしい。

ここから、伊良部医師が組んだ゛治療プログラム”が始まります。
 その前に、

とりあえず注射打とうか。気が弱っているときはビタミン注射が一番だから。おーい、マユミちゃん
 伊良部が診察室の奥に向かって声をかけると、カーテンがさっと開き、ミニの白衣を着た看護師がワゴンを押して現れた。…


  さて、それぞれの症状、病状に合わせて、治療が始まります。

「 コメンテーター 」 テレビ局に勤める畑山圭介は、プロデューサーから゛美人精神科医”を見つけてくるように言われ、登場させたのが伊良部医師。そこにマユミちゃんも…。

「 ラジオ体操第2 」 オフィス機器メーカーに勤務する福本克己は、○○をしていると、突然過呼吸発作が起こることがあります。伊良部医師が始めた行動療法は…。

「 うっかり億万長者 」 会社を辞めて2年の河合保彦は、午前9時になると○○を始めます。伊良部医師に゛ナース付き往診”を依頼することになり、その料金1回15万円…。

「 ピアノレッスン 」 ピアニストの藤原友香は、新幹線に乗っていて、得体の知れない不安に襲われます。伊良部医師の診断は「広場恐怖症」、その行動療法は…。

「 パレード 」 都内で一人暮らしをする大学三年生の北野裕也は、リモート授業が続き、同級生と直接会うこともなく3年生を迎えています。赤面症、内弁慶、社交不安障害(対人恐怖症)…。小学生と一緒に治療をうけることになり…。

 あなたにも、心当たりのある症状がありそうです。
 伊良部医師の行動療法を試してみませんか。
 心が、すっきりし…。

 読み終えて,ほっこり,笑顔で,優しい気持ちになれる作品です。

   目次

コメンテーター
ラジオ体操第2
うっかり億万長者
ピアノ・レッスン
パレード


【奥田英朗氏の本】
  ◇『コロナと潜水服』(奥田英朗・著)(2021/03/30 集団「Emication」)


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