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『あなたの日本語だいじょうぶ?』(金田一秀穂・著)

 著者は、有名な“国語学者一族 金田一家”の三代目で、マスコミなどにも登場します。
 数年前、NHKのEテレで『あらためましてベーシック国語』(現在も再放送あり?)で、タレントの滝沢カレンさんを生徒に授業をしており、話題になっていました。
 雑誌に連載された言葉を中心に“SNS時代の言葉力”について述べた『あなたの日本語だいじょうぶ?』(暮らしの手帖社・刊)です。

 巷の日本語は不思議でいっぱい!常に新しい言葉を「採集」し、検証しながら使っていく価値があります。当たり前のように使ってみれば、そこに人間が持っている「気配」が生じる。
 Zoom、LINE、メール、Twitter…。ネット社会の言葉の伝え方。
 あなたの気持ちはしっかり届いていますか?

 新型コロナ禍の生活、日常を暮らすなかで著者が“感じたこと”について、「日本語(言葉)」を切り口にして語っています。
 書き下ろしの第1、2、3章、雑誌連載からの第4章は、いずれも独立しており、どこから読んでも愉しめると思います。けれども、できれば第3章までは順に読み、第4章は気になる項を選んで読むのをお勧めします。


 どの内容も、気になり、気に入りました。納得したこと、そして違う見方をしたこと、それぞれを愉しみました。

 第4章に「あいうえお」の項がありました。
 国語辞典には言葉が“あいうえお順”で載っており、名簿順と言えば“あいうえお順”のことであり、それをほとんどの人が受け入れています。そうした言葉の並びについて、

 いろは順はほとんど使われることなく、あいうえお順が駆逐してしまった感がある。しかし、このあいうえお順も、今やいろは順と同じ運命をたどりそうだというのだ。

と述べています。
 確かに、いろは順が“むかし”は“ふつう”でした。今は、あいうえお順が“ふつう”です。
 ところが、それが“ふつう”で無くなるのです。それは…。

 「えっ。あいうえお順が○○に駆逐されるなんてことないよ」としながらも、生活を見まわし、使っている道具を見…、無いとは言い切れません。むしろ、あいうえお順や△△順では、不都合(?)になっているようです。


 あなたが、何気なく遣っている言葉遣っていない言葉から、日常の暮らし、そしてこれからの生活を考える一冊となるかもしれません。
 手に取ってみませんか。


 読書メモより

余生とか晩年とかいうけれど、みんな死んでから言われる。死ぬ前から、自分は晩年を生きているという人はあまりいない。
○ 体温でもない、匂いでもない。しかし、リモートには「気配」と言われるものがないことに気がついた。相手の「気配」を感じられないことで、対話が生むはずの何か積極的な力が生じていないのだろうとおもうのだ。
○ 試験などでは、政治家の答弁を聞かせて、「この人は結局、この件に賛成しているのか、反対しているのか?」と答えさせるのもいいかもしれない。
○ いい図書館を決める要素は図書の数や種類かもしれないが、何より最も重要なのは、その気配なのではないか、そうしてその気配の作り手は、言うまでもなく図書館で働く職員たちだろう。
○ 以前は当然だったから特別な名前が要らなかったけれど、時代が変わって、それをわざわざ言わなければならなくなって、新しい言葉が生まれる。そのような現象をレトロニムと言う。再命名
歴史文化遺産的保護言葉、なのだ。実態のほうがもうすっかり変わってしまっているのに、言葉だけが変わらず、今も使い続けられている。
○ ただし、「愚かしい」が「おろい」にならず、「小賢しい」が「こざい」にならないのは、「愚かしい」とか「小賢しい」の語彙が若者に使われないからだろう。
○ 新しい言葉が生まれた時、必ずそこには今まで表現できていなかった新しい意味が加わる
○ 言葉はふつう話し言葉書き言葉に二分される。これらに並んで、キー入力で生まれる新しい書き言葉の「打ち言葉」が登場してきたのである。

   目次

まえがき
第1章 失われた気配
第2章 これからの日本語
第3章 リモート時代の日本語力
第4章 不思議な巷の日本語回らない寿司屋/二刀流/あいうえお/落としどころ/投入金が不足しています/歯磨き粉/っす/痛っ/潤い/まじまんじ/乾物屋/真逆/打ち言葉/肉肉しい/街の声/言霊/心が折れる/出口戦略/ハマる/バールのようなもの/おしゃか など 68語

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