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『月と散文』(又吉直樹・著)

 芸人そして芥川賞作家の又吉直樹氏の最新随想集『月と散文』(KADOKAWA・刊)です。
 本書で知ったのですが、オフィシャルコミュニティ『ピース又吉 「月と散文」』で、作品を発表されていました。2021年8月から2023年1月にかけて掲載された文章を加筆修正して単行本化されたものです。

 出版社の紹介では、

 センチメンタルが生み出す爆発力、ナイーブがもたらす激情。
 いろんなものが失くなってしまった日常だけれど、窓の外の夜空には月は出ていて、書き掛けの散文だけは確かにあった―― 16万部超のベストセラー『東京百景』から10年。又吉直樹の新作エッセイ集が待望の発売!

とありました。
 コミュニティの発表は知りませんでしたが、いろいろな媒体で取り上げられていたり、作家・又吉氏の文章に触れる機会があったので、゛10年ぶりのエッセイ集“に驚きました。

 さまざまな体験や考えからのエピソードが、長短いろいろな表現(?)で綴られています。

 「生きてみよう」の項には、喫茶店で携帯電話に保存されていた゛未送信のメール”を見つけたことを述べています。
 そのメールは、1999年の18歳だった自分に向けて書かれたメール『前略』で、6ページにわたる長文です。
 過去の自分に送るメールを書いたのは…。そこに書かれているのは…。
 メールに続いて、次のように記し、項を閉じています。

 なるほど。これが、十一年前の自分の感覚なのか。二〇二二年四十二歳になった僕が二〇一一年に三十一歳だった自分にメールを送るとしたら、どんな内容になるだろう。
  早々

 自分なら、どんな手紙を書くのだろう。書かないかな。
 あなたなら…。


 オフィシャルコミュニティ「月と散文」は、「書き物」「自由律」「実験」の3つのカテゴリーで投稿・発表されているようです。本書は、70本の作品が、【満月】、【二日月】の2章(カテゴリ)で載っています。この゛月”にまつわる2章にしたことについて、インタビューで

 月はカレンダーにもなりますし、満ち欠けがあって、星の中で一つだけめっちゃでかいですよね。夜空を見上げた時に感じることは日々違うんですが、毎日のように何かを作る時も感じ方が違うところが響き合っているように思えて。
 僕の好きな「月」と「散文」を組み合わせてサイト名をつけて、本も同じにしました。月はみんなのものですし、詩人なんてテーマにするのは「雪月花」ですし、普遍的なものだと思っています。

 2章を意識して読むのもよいでしょうし、タイトルから自分の順序で読むのもよいでしょう。

 又吉氏の言葉が、今の自分に響くエッセイに出会えるでしょう。

   もくじ

はじめに
【満月】
 いろいろなくしてしまった日常だけど
 生きてみよう
 昭和最後のヒットソング
 あの声に憧れる理由は
 ……
【二日月】
 始まりの灯り
 洗った手で汚れた蛇口を閉める
 よく喋る脳
 戯・語源辞典
 散文 #64号
 ……
 散歩
 魂を解放してもいいですか?

【関連】
  ◇又吉直樹 (@matayoshi0)(Twitter)
  ◇ピース又吉直樹【渦】公式チャンネル(YouTube)
  ◇ピース又吉 「月と散文」
  ◇又吉直樹さん「月と散文」インタビュー…(好書好日)

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