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映画『ブルーアワーにぶっ飛ばす』空が濃い青色に染まる時間

東京から茨城へ。女子二人、左ハンドルで走ります。「TSUTAYA CREATORS’ PROGRAM FILM 2016」 で審査員特別賞を受賞した企画の映画化。箱田優子監督・脚本。「万引き家族」の近藤龍人撮影。2019年製作。

30歳のCMディレクター砂田(夏帆)と親友・清浦(シム・ウンギョン)の二人が、砂田の地元・茨城に帰省するというシンプルなストーリーです。

砂田はストレスにまみれながらも、東京でバリバリ仕事をこなしています。いかにも善人そうなパートナー(渡辺大知)がいるにもかかわらず、年上のユースケ・サンタマリアとの不倫関係も続いていて、すっきりした状態ではありません。すっきりどころか、心は荒れ狂っています。

同行する清浦は天真爛漫で、良く笑い、とても素直です。やさぐれて素直に感情表現できない砂田のよい味方です。

シム・ウンギョンが魅力的で全くあざとさの感じられない素直な表情で演じています。

砂田は茨城も実家も大キライです。

大好きな祖母を見舞うため仕方なく帰省するのです。

実家の母親(南果歩)は耳が遠いのか、やたら大声で話し、もう食事の準備もめんどうな様子です。

夜に地元のスナックに行けば、一生分の下ネタを聞かされる。

そこで下ネタ全開で歌い踊る伊藤沙莉が私は大好きでした。

ひきこもっていた兄(黒田大輔)は、今は教師をしているらしいが砂田と心は通じ合わない。

兄と砂田の会話は、黒田大輔が上手すぎて笑えませんでした。

茨城の実家に帰ってからのエピソードの数々が、東京で働く砂田の日常とかけ離れていて引きこまれました。

施設に入所している祖母を訪問するシーン。

砂田はおばあちゃんと二人で暮らしていた時期がありました。

砂田がおばあちゃんの伸びた爪を慎重に切るところ

おばあちゃんがティシュでくるんだお金を砂田に渡すところ

あばちゃんが冗談ぽく「サンキュー」というところ

ちょっとこれは反則です。観ていて胸がいっぱいになりました。

東京へ帰る車の中で

「(帰るのに)全然さみしくないことが、さみしい」
「いなかキライ。だっせー」
と言う砂田。
「砂さん、もともとダサイすよ。ダサイの最高じゃないですか。
生きてるよーって感じで」
「私は砂さんの地元に来て良かったすよ」
と清浦。

清浦の言うとおり、地元に来たことでガチガチだった砂田の心は柔らかくなっていました。

このラストで清浦が何者だったかがわかります。

心がとても疲れている時、

自分の味方で、素直に笑って、寄り添ってくれる誰かがいるということは、何よりも心強いです。

ブルーアワーの映像がとても美しかったです。

ブルーアワーは、日の出前と日の入り後に発生する空が濃い青色に染まる時間帯のことである。(Wikipediaより)

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