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映画『佐々木、イン、マイマイン』情熱と繊細さと

28歳の内山拓也監督がやってくれた。しびれました。

内山監督作品を観るのは初めてでしたが、爆発的な情熱と繊細な描写に圧倒されました。

佐々木を演じた細川岳と内山監督のオリジナル共同脚本。2020年公開。
MOVIXにて鑑賞しました。

売れない役者の悠二(藤原季節)とその仲間たちの現在と高校時代を描いています。

高校時代の男子だけで過ごす日常。彼らの素のままで交わす会話が本当に素晴らしく、人間的でした。

ヘンな気遣いなどなく、表面的な優しい言葉はけっして言いませんが、ちらちら感じられる相手を思いやる気持ちが泣けてくる。

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佐々木(細川岳)は全裸で学校の廊下を走るような強すぎる存在感のある人間です。アホを演じる人です。佐々木の家はとてもちらかっていて、唯一の家族と思われる父親もほとんど家には帰って来ません。

祖母との二人暮らしをしている悠二は、佐々木と心で深くつながっていました。いつもは佐々木の暮らしの事は誰も触れませんが、悠二が進路のこと、父親不在のことをぼそっと尋ねた時、佐々木の短い返事がいい。

その短いの返事の中に、

もう、これ以上聞いてくれるな、仕方ない、どうしようもない、心配するな、でも、お前だけは夢をあきらめるな。

そんな、気持がこめられているようで。

卒業して数年後、佐々木は一人カラオケで「プカプカ」(西岡恭蔵=象狂象作詞作曲)を歌っている女性と親しくなります。

自分の好きな曲(一般的でない曲ならなおさら)を歌う人って、気になります。とっても佐々木に共感するシーンでした。

佐々木の混乱した部屋には、たくさんの描きかけの絵が残されているのですが、外見からは想像できない彼の繊細さが切ないです。

離れて暮らすようになっても、色々な人に「悠二は役者として成功する」と話していた佐々木。

役者としては夢の途中、ヒリヒリする日常を送っている悠二。

チカラを得てはじけ飛ぶ、ラストの悠二が圧巻で。

日常の感覚を取り戻すのに時間がかかるほど、凄い作品でした。


king Gnuのボーカル井口理が出演しています。場面は多くありませんが強い印象が残りました。









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