見出し画像

盆の調査 出逢い編

8月の13〜15日は月遅れの盆である。
今年も調査に行ってきた。もうかれこれ23年である。
きっかけはさらに前、最初の大学の卒研の調査であった。

自分は大学を2つ出ている。最初の大学は理学部だった。
幼い頃より生きているものが好きで、土を掘っちゃあ芋虫を掘り出し、デンデンムシを指に這わせ、トンボやチョウの羽を素手で捕まえ、カマキリの鎌が届かない絶妙なところで掴んでいた。虫だけではなく背骨があるものも無いものもすべからく好んでいたので、自分は生物学が合ってると思ったんだよね。実際高校までの生物の授業だけはずば抜けてよかったし面白かった。
たけども、大学の生物科に入った途端気づいてしまった。自分は生物を研究したいわけではなかったのだ。相変わらず生き物が好きだし講義は面白い。たけども、自分は何かの生き物のことを詳しく知りたいわけでもなく、生物で何かを確かめたかったわけでもなかった。
ショックを受けながらも生物部に入部した。生物学科のある大学の生物部という、煮凝りみたいなところだった。その時に会った友人たちとは今でも交流があるし楽しかったけど、自分が何かを研究したいと思うことはなかった。

卒業研究は必修科目であった。なにもやりたいことがなかったが、それでも何かの生き物を指標とした環境評価をやったらどうかと考えていた。外来生物の分布とか、ある環境に特異な生物だとか。果たしてどんな生物がいいか、と思っていたら、バイト先の大先輩にあった。
当時自分は博物館でバイトをしていて、大先輩は大学の学部と部活のOBだった。大先輩はやがて母校の教授となるのだが、それはまた先の話。
その大先輩が、自分が卒研を決める時期だと知っていて、なにをやるのか聞いてきた。指標生物を使った環境評価をやりたいが、肝心の指標生物が決められない、と答えると「子供でいいじゃん」と応えた。ヒトも生物の一種である。
なるほど……子供の遊びを指標とした環境調査か、面白い……などと考えてテーマを決めた。下調べで建築学がある隣の大学の図書館にもぐってアメニティだの都市計画だの子供の遊びだのの本を読んだが、それが後の進路につながるから人生とはわからない。
大先輩の奥方も学科と部活の大先輩だが、勤めていた中学を通して(当時は)町の教育委員会にかけあって3校の小学校での調査を取り付けてくださった。頭が上がらない。

そのうち一校、いまはもう廃校となってしまった分校の調査の折、街道から集落に差し掛かったところに墓地があった。
素人目にしても土葬があった場所だった。
今の自分が見れば「埋墓だ」と判断したと思うが、その実詣り墓だったようだ。
その墓地に、墓石があるところでは墓石の前に、なければ植え込みの前に、ソレはあった。
15㌢くらいの高さで1辺15㌢角の天井がある。脚も天井も植物で出来ているようだが、編み込まれたらしい天井の構造がよくわからない。9月の半ば、植物は茶色く変色していた。盆に設置されたものか、とは思ったが、子供の調査をしなければならないのでそのままその場を離れた。
思えばあれが出会いであった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?