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フィクションの名のもとに

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#短編

心のまま(小説)…1回

心のまま(小説)…1回

このトシで参加する同窓会は、まるで不思議な別次元にいるような気分になる。

デパート屋上の小さな遊園地。
例えればそんな空間だ。

昔、気分を高揚させ訪れた場所。お腹の底から笑ったり泣いたり、すねて駄々をこねたりした、裸の自分がいた場所だ。

そんな場所に、昔のままのメンバーでそこに集まる。
懐かしさで盛り上がって笑い合う。心のそこから。

だが、もう遊園地の遊具では遊ばないし、心も踊るわけではな

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こぼれたワインが知らせるいくつかの現実(1)

こぼれたワインが知らせるいくつかの現実(1)

「お前は紛れもなく女なんだよって、
こぼれたワインが私に知らせるの」
梨花子はそう言って顔をゆがませ、ため息をつく。
ワインは比喩で、赤ワイン=月のモノって事らしい。

「へぇ。いいじゃない。順調で。なんで落ち込むの」
と私は返しながら、もう次に梨花子が言うセリフを知っている。

「わたしね、女って大嫌いなのよ。男に産まれたかったな〜」
ひんぱんにこのセリフを繰り返す梨花子は、実は同性愛者

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