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仕様書を作る/ゲーム開発スタート地点

こんにちは「つけらっとゲームス」プログラム担当のとちです。
今回はゲーム開発のスタート地点ともいえる「仕様書」についてお話したいと思います。

どちらかというと「ゲーム作りたい方」「ゲーム開発の裏側に興味ある方」向けの記事かもしれません。

つけらっとゲームスでは、エイコードバンクのゲーム開発部時代に4つのスマートフォン向けゲームアプリをリリースしています。そのゲームの仕様書の一部をお見せしつつ、こんな感じで仕様書を作ってますよーという記事です。

今回はアビスアンドダークの仕様書について……

アビスアンドダーク/プログラマ用仕様書

アビスアンドダークはウィザードリィをはじめとする「3DダンジョンRPG」です。
冒険者(キャラクター)を作成しパーティを組んでダンジョンに潜り、敵と戦い、宝物を手に入れ、自分たちを強くするハクスラとも呼ばれるゲームですね。
以下はアビスアンドダークゼロ「賢王の盟約」のスクリーンショットです。

ダンジョンを歩き
エンカウントした敵と戦い
良い武器や防具が見つかったら嬉しいな

ゲームとしては「大きな目標」(世界を脅かす強大なラスボスを討伐)が設定されていて「大きな目標」を達成できればエンディング!
しかし、その後もレアドロップを求めてダンジョンを歩き回るのも楽しい、そんなゲームです。

こちらのゲーム開発は、グラフィックやBGMといった素材は外注先にお願いしていますが、「プログラム」「シナリオ」「データ作成」「テストプレイ」「バランス調整」等々、わたし1人で作ったモノです。

ですので当然プログラマは1人、言い換えれば「自分が理解できればいい」ので仕様書は不要とも言えますが、実際に何を実装して何が未実装なのか、ゲーム開発は長い時間を要しますので自分でも忘れちゃうんですよね。

そこでプログラマ向け(自分向け)仕様書が存在します。

文章検索しやすいようにIndexも用意しています

アライメント変化

では、それぞれの項目には何と書いてあるのかを見ていきましょう。例として「アライメント変化」について確認してみます。

「ダンジョンズ&ドラゴンズ」や「ウィザードリィ」などのゲームで使われるアライメントとはキャラクターの「性格」とか「価値観」を意味します。

本作においては魔物とエンカウントした際に魔物が友好的な態度の場合、以下の動作をします。以下仕様です。

───────────────────────────────────────────────
   アライメント変化
───────────────────────────────────────────────
◆友好的な魔物にエンカウント後
 「襲い掛かる」「立ち去る」「ネゴシエーション」を選択

・キャラクター毎に判断が必要
・襲い掛かると「善」→「中立」→「悪」と変化
・見逃すと「悪」→「中立」→「善」と変化

・性格変化はD6で1~2なら変化発生(33.3%)

※「ネゴシエーション」は練気術の魔法である。
使用すると性格の変化なしで戦闘を回避できる。
(つまり立ち去るを選択したコトになる)

Abyss and Dark #1 リル・マズアの遺跡・仕様書より

「D6」というのは6面ダイス(サイコロ)を1個振るという意味です。
つまり純粋なランダム(運)で性格変化が発生するように作っています。
わたし(とち)はTRPGも好きなので確率計算はダイス基準になっています。

これを振って1か2だったら性格変化が発生するよ!

不確定品を鑑定する

もうひとつ例を挙げます。
不確定品の鑑定時はどういった処理をしているのでしょう?
仕様書にはどのように書いてあるのか確認してみましょう。

本作では宝箱からアイテムを取得した時点では、そのアイテムが何物なのか判断がついていない状態となっています。
敵を倒して「刀」を手に入れたとしても「なまくら刀」なのか、実は高名な鍛冶師が作った「刀」なのか判断できてないんです。

そこで冒険者たちが「なんでも鑑定団」をするわけです。
以下仕様です。

───────────────────────────────────────────────
   不確定品を鑑定する
───────────────────────────────────────────────
【判別値】=(知力)+(ダイスロール※1)+(クラス補正+種族補正※2)

※1 2D8で「1ゾロの場合」=致命的失敗(恐怖状態になる)
      「8ゾロの場合」=絶対成功
      「上記以外の場合」=出た目をプラスとして集計
※2 クラス・種族補正 3DDRPG資料_04.xls「計算要素」を参照

・鑑定できるのは全職業にしよう!
・(【識別難度】-10)と【判別値】を比べて【判別値】が小さい場合
 >>鑑定したキャラクターは【恐怖状態】になる。
 >>恐怖の度合いは(ダイスロール※1)+10

・【識別難度】と【判別値】を比較して【判別値】が小さい場合
 >>識別に失敗!

・【識別難度】と【判別値】を比較して【判別値】の方が大きい場合
 >>識別に成功!

Abyss and Dark #1 リル・マズアの遺跡・仕様書より

「知力」は鑑定に挑戦したキャラクターのステータスから取得します。
【識別難度】はアイテムデータから取得します。
(クラス補正+種族補正)は別表から取得します。
「2D8」は8面ダイス(サイコロ)を2個振った合計です。

8面ダイスなんてあるの? ええ、これがあるんですね。

これは10面ダイス、他に20面とか色々あるよ!

わたし(とち)はTRPGも好きなので確率計算はダイス基準になっています。
大事なことなので2回言いました。
なんでダイスを使うのか、サイコロを複数個つかうと確率分布がいい塩梅になるんです。

ダイスロール

下の表は6面ダイス(サイコロ)2個振って合計したものを出目とした場合の出現率をまとめたものです。

6面ダイス(サイコロ)2個の合計を出目とします

ご覧の通り出目「7」の組み合わせパターンが一番多いので、当然ですが「7」が最も出やすい目となります。「7」を中心に大きい出目であろうが、小さい出目であろうが出る確率が変化します。

極端な出目はあんまり出ないけど、5~9あたりなら出そう……
これが大事。普段なら5~9あたりが出そう。それを基準にバランス調整ができるんです。

ただ、本作はランダム性が大きいウィザードリィタイプのゲームではあるものの「レベルを上げて物理で殴る」を否定しない作りになっています。

【判別値】=(知力)+(ダイスロール※1)+(クラス補正+種族補正※2)

前述の「不確定品を鑑定する」の計算式

レベルを上げて冒険者(キャラクター)のステータス「知力」を上げれば、その分だけ判別値も上がりますから成長さえすれば大きな問題にはなりません。

仕様書はゲームの方向性を定めるモノでもあると、わたしは思うわけでして……
でもね、プログラム組んでいるうちに「これちょっと違うなー」ってのもあるんですよ。その場合はこっそり仕様書を修正したり……プログラマが1人だから気軽に修正しちゃってますけどチームで動いている場合はチームの皆さんにホウレンソウ大事ですよ!

というわけで、今回はここまでです。
いつも応援ありがとうございます。

アビスアンドダークや、弊サークルのゲームにご興味がございましたら、
コチラ(↓)から購入できますのでよろしくお願いしますね~


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