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神経たち

8
室温と体温を計測することにとりつかれた男は都内のあらゆる家の女性たちを監視し続ける。ある日男のもとに訪れた旧友が、男にある依頼をすることから、物語の歯車は動き始める。
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2020年4月の記事一覧

神経たち #8

神経たち #8

 軽やかな電子音を鳴らして、ナナコの住むマンションのエントランスのガラス扉が開く。音が明確な警戒の色彩と形状をしていて、切っ先が侵入者である僕の鼓膜に突き刺さるように思えた。僕は拒絶される時の痛みに近い何かを感じてヌメリとした汗を拭いながらエレベータで上に上がり、目を瞑って力を込めて鍵を回した。

音もなくナナコの部屋のドアノブはなめらかに回り、僕を中に招き入れた。ドアを背にホッと一息ついて、鍵屋

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