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ラグビーに教えてもらった。自らを実況中継してボトルネックを解消する方法

こんにちは。企業変革コンサルタントの小野司です。

企業変革に取り組む若きリーダーさん、そしてコロナ禍で、企業変革に取り組まれる企業さまに、変革のヒントをお届けしています。

前回、「お助けパーソン」を決めるということを書きました。

今回は番外編として、実況中継作戦について書きます。

やり方は簡単です。自分の行動を実況中継します。思っていること、感じていることを実況中継します。

まずは、私のラグビー部の時の経験からお話いたします。

前職時代、私は会社のラグビー部に所属していました。チームは、神奈川県会長杯の社会人リーグに参加していました。
メンバーの半分は、大学時代ラグビー未経験者でした。その半ば素人集団のチームが決勝に進出しました
チームで一番徹底したことは、自分のプレーの実況中継でした。
つまり、自分のプレー、自分のやろうとしているプレー、そして相手のプレーなど、できる限り声に出して仲間に伝えることでした。
前の選手のフォローについたら「右に着いたよ」「左、いるよ」と。また、相手選手が後ろに迫ってくれば「相手がきているよ」と。

ラグビーは自分より前にボールをパスすることはできません。自分より後ろにパスすることになるのです。ですから、ボールを受け取る側の選手が、後ろから声を出して、自分の位置を伝えることが多いのです。

その実況中継を、普段から「練習」していました。試合後のミーティングでも、実況中継についても具体的に振り返りました。声の出し方、声を出すタイミング、伝える情報の内容などです。
そのようにして、実況中継はどんどんレベルアップしてゆきました。
仲間の動きの個性は分かるようになりました。例えば、「〇〇さんは、後ろのフォローしているだろう」「もう少しボールキープすれば、〇〇が来てくれるだろう」「〇〇さんのあの声の大きさであれば、振り返ってパスの届く範囲にいるだろう」というようにです。
試合前のウォーミングアップや練習の時から声を出して、自分の「居場所」を伝えることを徹底していました。
仲間が分かってくれるだろうというは確かにあります。しかし、分かっていても実況中継をしました。新たな発見が出てくるからです。
試合には、流れとか、ここがポイントというプレーがあります。それが実況中継を繰り返すとわかるようになりました。
例えば、声のトーンとか大きさなどで、戦況の緊急度、チームの疲労状態などのも、仲間みんなが、なんとなく分かるようになりました。
また、若手が自分の動き方を理解するようになりました。

生産に例えれば、声のトーンなどから、ボトルネックを感じ取れるようになったようなイメージです。

当時、個々のスキルでは相手チームに負けていたところは多かったと思います。しかし、声出し(実況中継)では負けていない、といつも思っていました。

声出しは基本のようなものですので、他のチームも行っています。

なぜ他のチームは、実況中継を徹底しないのかを考えました。
(1)チーム作りの考え方、チーム構成、リーダーの方針によるところがること
(2)実況中継の効果の大きさに気づいていないように思われること。実況中継はトレーニング積み上げることで、戦況を把握する力、若手の成長や意識変変革のようなもの高められるのではと思っていました。

飲食店での事例で説明いたします。

飲食店は、オーダーを受けてからお客さまにお食事を提供するまでの時間が短いほど、たくさんのお客さまをお迎えできます。

お客さまもお腹が空いていますから、少しでも速く食べたいものです。ですから、提供時間が速いほどお店もお客さまもハッピーになれるのです。

ファミレスなどでは、お食事の提供時間を厳しく管理しているところもあります。

提供時間を速くするためには、オーダーにより時々刻々と変わる厨房のボトルネックを見えるようにして、その解消にみんなが歩調を合わせることが大事です。

ボトルネックを見えるようにする方法の一つとして実況中継に取組んだ事例を紹介いたします。
ボトルネックが見えなく、メンバーの動き方がバラバラでした。速くできる料理もあれば遅くなる料理もありました。それを一定にするのに苦労していました。
そのため、厨房のキーパーソンであるシェフに、自分の作業の状況と次にやろうとしていること、考えていることを実況中継してもらいました。

ここでの実況中継とは、心の中で思っていること、考えていることまで声に出していうと言うことです。

年配の方が自分の行動を独り言しているのを見かけることがあります。若者でもブツブツ独り言のように言われているのを見かけたことがあると思います。それと同じです。

ですから、実況中継をすることは、恥ずかしいという方が多いです。特に若い方はそうです。

事例では「肉の準備を始めるよ」「揚げ物やるよ」「レンジに焼き物を入るよ」というように自分行動を実況中継しました。
さらに、思っていることも実況中継されました。「肉、焦げそう」「盛り付けしなきゃいけないけど、時間ない」「手が足りない。誰か手伝って」という感じです。
そうしますと、周りの方は、シェフが何をしているのか、何をしようと思っているのか、さらには感情まで、リアルタイムに共有できてきました。

これをシェフだけでなくみんなでやりました。

新人さんなどは、周りから見ると意味不明の行動をしているように見えることがあります。一方、新人さんも自分なりに考えて行動していることよあります。

ですから、それを声に出してもらうのです。

この飲食店では、これを徹底しました。

また、厨房の動線が交差していましたのでレイアウト変更しました。棚を改修し道具や食材を取りやすくしました。その他、いくつかに取組みました。
最終的には、料理提供までの時間が3分の2以下(生産性で1.5倍以上)になりました。
現場の方に、最も効果のあった施策をお聞きしました。費用の掛かった、レイアウト変更や棚の改修などより、実況中継の方が効果的だったとのことでした。

実況中継は、コミュニケーションの仕組みの改善です。

コミュニケーションの改善は、これほど効果があるのです。

食品加工工場の事例です。60代、70代の女性がメインでした。手作業がメインでした。
そこの方々は、ずっと実況中継しながら作業されていました。現場の方にお聞きしますと、この方が楽だからと言われていました。
そこは、同業より低コストで製造されていました。細かな工夫がたくさんありました。おばあちゃんの知恵袋という本などがありますが、それを実践している感じでした。

もちろん、実況中継は、ハマる組織とそうでない組織があります。昨日までの3回シリーズで紹介しましたように、組織、環境や事業内容によって、使い分かればいいと思います。

若き変革リーダーのみなさま

自分を実況中継することについて、イメージがわきましたでしょうか。

もちろん、業種、生産体制、組織のメンバー構成などによりマッチしないところはあります。

目的は、メンバーみんなが、各自の作業状況や考えていることをリアルタイムに見えるようにすることです。それだけで、生産性は上がることはあるのです。

その見える化の一つの方法が、実況中継です。

実況中継は、秒単位の変化も伝えることができるのです。

さらに、実況中継は、工夫やトレーニングで進化します。

素人集団のラグビーチームが県の決勝まで進んだのです。企業変革につながるのでは、と私は感じています。

みなさまの参考になりましたら、ありがたく思います。



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