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「完成後には毎年遊びにくること。」おしゃれで本質的な設計条件 【タカの家_その1】

現在、日本家屋の改修デザインに初めて挑戦している。場所は兵庫県。10数年ぶりに、ミラノ留学時代の知人から連絡をもらって、このプロジェクトが始まった。田園のどかな風景が広がり、昔ながらの住宅が、そこに暮らす人たちによって大切に残されている一角に建つ、築50年を超えるの日本家屋。先代のこだわりや、丁寧に扱われてきたことが伝わってくるいい家だ。初めて現状確認に訪れてた時には、このままでも十分に住めるのでは?と思えるくらいだった。

施主は祖父母の家を引き継ぐ形で、現在住む大阪からの移住を決断した。親族の思い出が詰まるこの家を残し、新しい世代へと繋いでいくことが、先代への感謝の気持ちでもあり、自分の役割なんだと思う。と語ってくれた。

そんな施主の想いを真摯に受けとりつつ、まずは、これまで住んでいた大阪の中心部から、田舎に移住しようと思ったのは、どうしてなのか?この家では家族とどんな暮らしをしたいのか?などなど、一通りの希望する条件や将来への思いを聞いた。そして、最後にこんなことを伝えられた。

「あともうひとつだけリクエストしていいですか?
この家が完成した後には、毎年遊びに来てほしいです。これを設計条件に入れてください」

その言葉を聞いた瞬間に、なんて素敵な条件なんだと感動してしまった。

語弊を恐れず言うと、僕たち建築家は建物、空間が完成するまでが仕事で、その後は施主との関係が極端に薄まっていく。住宅にせよ店舗にせよ、建物が完成するまでは、クライアントに寄り添い、クライアントの思いを具現化するために必死に並走していく。一方で、建物が完成してしまったら、一気に手元から離れていく。案件によっては数年間に渡り、苦楽を共にした仲間と、突然の別れがやってくる。もちろん完成後にも定期的に検査などに行くことはあるが、その時はどこか、自分がよそ者のように感じてしまう。

丁寧に扱ってもらえてるかな?と心配したり、おー、君にはそんな一面もあったのか!と産みの親としても想像していなかった使われ方をしていて驚いたり。まるで、新しい仲間を見つけた元パートナーが、元気にやっている姿を遠目から眺めているような感覚だ。実は建築家はセンチメンタルなのだ。

しかし、この「完成後には、毎年遊びに来ること。」を聞いた時には、建物が完成した後も、この家と一緒にいてね。と言われているようで、すごく新鮮だった。一気にこの改修プロジェクトが、自分事へと変化していった。

いつもならどれだけ情熱を込めてデザインし、作り込んだとしても、最終的には手元から離れてしまう空間と、完成後も一緒に過ごせるのかと、想像するだけで嬉しくなった。

一方で、ものすごい責任感も湧き上がってきた。自邸を設計している時の感覚に近いかもしれない。作っておしまいではない。

「作り手でもあり、使い手にもなる。」

この前提があるのとないとでは、設計に対する向き合い方が全然変わってくるはずだ。良い意味で、建築家のエゴや見栄は消え、より暮らしに寄り添う、リアリティーのある本物のデザインが生まれる気がしている。

さらに言えば、いきなり100%の完成を目指さなくていいのかもしれない。必要最低限だけを作り込み、一緒に空間を体験しながらアップデートを繰り返すことだって可能である。

この設計条件には、まだうまく言語化できないけれど、建築家が住宅を設計する時に大切にしなければいけない、本質的な何かが込められている気がする。このプロジェクトを通してその何かが少しでも明確にできるように、きちんと緊張感を持って向き合いたいと思う。

兎にも角にも素敵な施主に出会えて感謝している。僕は運がいい。

【進捗報告】
設計はまずは相手を知ることから。丁寧に現調をしました。


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