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終わりは呆気なく迎えてしまうもので

私の朝食は、いつもシリアルで済ませている。


一人暮らしをしている身として、特に平日の朝ごはんにおいては、なにかと時間をかけている余裕がない。だからと云って、何も摂取をしないで出社するわけには当然いかないのだ。

社会人になってからも、時々朝食をとらないで出社することはあった。案の定、その日の午前中が過ぎるまでの間、思考回路も停滞気味でなおかつ集中力も途切れてばかりだった。

その頃もまだ実家暮らしをしていた私は、学生の時から朝食を抜くことは慣れているつもりでいた。とはいえ、正午を迎えるまで空腹の状態であらゆる仕事をこなすのが、これほど苦なものであったとは…改めて身をもって知った日から、少々危機感を覚えたのであった。

朝に食事と摂るのと摂らないとでは、やはり一日の活動にかなりの影響が生じてくる。特に、頭脳をフルに活用する時間帯でもある午前中が過ぎていく前に、身体のありとあらゆる箇所にブレーキがかかってしまうのは間違いない。

これでいざ一人暮らしを始めるとなったら、自ら本領を発揮するのに支障をきたすことになると危惧していた。たまに抜くぐらいなら良いにしても、毎日はさすがにキツくなるかもしれないとも感じていたのである。


やがて、それを始める準備をしている最中に、どうすればいいかと考えている時に思いついたのが、コーンフレークやオートミール、それにグラノーラといったシリアル食品であった。

ご飯やパンのように、炊いたり焼きあがるまでの時間を待つことがない分、サッと皿に入れ、サッと牛乳をかけて、サッと朝食を済ませる点においては、時間短縮に大きな貢献をもたらす功労者(?)とでも云えるだろう。

以来、一人暮らしを始めてから私の朝食は、シリアルを中心としたものとなっていった。元々小学生ぐらいから食べ始めていたこともあって、毎日続いても苦にはならなかった。


そして、そのシリアルをよそっている皿が、本日を持ってご臨終となってしまったのである。


事の発端は、乾燥し終えた皿を食器棚に戻そうとしていた時だった。食器乾燥機からその皿を持とうとしたところで、思わず手が滑ってしまう。それでもなんとか手に取ろうと、ものの数秒の間で試みたが、あえなく失敗してしまった。

やがて、奈落の底へと誘い込まれるかのように床に落ちた途端、「パリン!」と高い音を立てては粉々に砕かれてしまったのだ。この瞬間、明日の私の朝はシリアル以外で食事しなければいけないことが、強制的に決定してしまったのである。

思えばその皿は、私が一人暮らしを始めてから今日に至るまで、長らく愛用し続けていたものであった。さらに付け足すと、今までほぼ毎朝をその一枚の皿で回し続けてきたために、予備のものや代用できる皿など所持していない。

けれど、いつまでも皿が割れてしまったことによる放心状態に浸っているわけにはいかず、早く片付けなければいけない。咄嗟に指を切ってしまわないよう、床に散らばってしまったカケラを一つ一つ拾い上げていく。

少なくとも翌々朝までには、替えの物を用意しなければならない事態となってしまった。ただ幸い、自宅の近所には百均などが立ち並んでいる。最悪、同じ形のものがなければそこで購入すればいい。


しかしながら、無惨に飛び散ってしまったその破片を拾い上げるたびに、これまで長い年月をかけて共にしていたことも相まって、どこか筆舌に尽くし難いものがあった。

この場合「今までありがとう」であったり「お疲れ様」などと、今まで寄り添ってきてくれたことに対して、労う声を一つかけてあげるべきなのだろうか。

正直なところ、これといって特別な愛着があるわけでもないのに、呆気なく迎えてしまった最大の功労者の最期を目の前にして、なんだかやるせないものも一緒に床に散らばっていると、ふと思うのだった。


最後までお読みいただきありがとうございました。 またお会いできる日を楽しみにしています!