黒い星に宿した本当の意味
年の初め、この時期には私に取ってどうしても忘れられない一つの出来事があった。
2016年1月10日、ミュージシャンのデヴィッド・ボウイが69歳で生涯を閉じた日のこと。
それも2日前にはアルバム「★(ブラックスター)」を発表したばかりだった。
偉大なるロックスターがここよりも遠い星になってから、今年で間も無く8年を迎えようとしている。にも関わらず、未だ忘れられないまま今日に至っている。
私がボウイの存在を知ったのは、学生の頃にほんの一時期だけ見ていた映画「戦場のメリークリスマス」だったと思う。
特に終盤、生き埋めの刑に処せられてしまったボウイ演じるセリアズの元に、坂本龍一演じるヨノイ大尉が彼の髪の毛を切り、目の前で敬礼して持ち去っていったシーンがある。
壮大な曲に乗せたあの光景だけは、今でも自分の脳裏に焼き付いて離れられない。
それから俳優の他にミュージシャンとして活躍していることを知り、代表曲の一つでもある「Let's Dance」をきっかけに、彼の音楽に関心を持っていた時期があった。
だが両親ともにボウイの音楽にはあまり触れていなかったことや、私が学生として謳歌していた2000年代は、表立った活動をあまり聞くことはなかった。
その当時は新譜もほとんど発表されていなかったことから、やがて彼の訃報を目にするまで自らアルバムを手にするどころか、その存在すら忘れてしまっていたのである。
だからこそ悔やむ部分は少なくともある。今もこうして心残りするなら、なぜあの時もっとボウイの音楽に没頭してこれなかったのだろうと。
もしも嫌という程にのめり込んでいたら、仮に流行り物の歌を聴かずにいられれば、一つか二つほど何かきっかけが変わっていたのかもしれないと。
改めてボウイの死後から数日経って、アルバム「★(ブラックスター)」を手に取った時、様々な憶測を感じ取れたのだ。
おそらく彼はこの作品の中で、あるいはこの作品を完成させるまでの間に、自分の死期を悟っていたのではないかと。
これをもって、世界中のリスナーやファンに自ら伝えられる最後の機会なのかもしれないと。
しかし最後を占める曲では、「I can't give everything away」と題名や歌詞に盛り込んでいる。
ただ、当初この曲を聴いては「そんなことはない。あなたは世界で最も偉大なロックスターだった」と言い聞かせていた。
だが年々「★(ブラックスター)」を聴き入れるごとに、アルバムを通してボウイ自身が伝えたかった真意に少しずつ近づいてきていると思う。
また考察しているところよりも異なった点で新たな解釈が生まれ落ちてくるかもしれない。そう考えた時、今まさに自分は大いなるブラックホールに吸い込まれている真っ最中なのかもと咄嗟に思ってしまうのである。
たぶん来年もまたこの時期に差し掛かっても、同じテーマもしくは違ったテーマについてひとり自問自答を繰り返しているかもしれない。
最後までお読みいただきありがとうございました。 またお会いできる日を楽しみにしています!