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おだてて持ち上げて何も出なくても

今週もあとわずかとなった。この平日は特に何の変わりもなく、特に一大事になるかもしれないようなトラブルに見舞われることなく、平坦な仕事を進めてきていた。

それでもって職場で私と仲のいい先輩であるKさんは、相変わらず「疲れた〜」という発言を朝昼晩問わず一日中連発してばかりいる。
その姿に対して「頑張ってくださいよ〜」などと宥めるようにして、ある意味消火活動(?)という形で彼のモチベーションを下げないようにお膳立てをしている。

Kさんもやるときはやる方であるものの、これまで共に仕事に勤めていく中で、ダラダラとした様子を何度か見受けられていた。
しかしながら彼自身は私よりも長年そこに勤めている以上、行動ありきで一方的に叱咤してはいけないと言い聞かせている。

お互いに話を交わす中で仕事に関する考え方が共通していたり、これまで仕事のトラブル面などにおいて何度も助けられてきたからこそ、築き上げてきた信頼関係をいっ時の感情によって無下に崩してはならないと、そう内に決めているのである。

時折Kさんの口からは一体何を企ているのだろうか、私を一会社の社長になってほしいなどの絵空事をよく公言している。
それに対して私はお茶を濁すように、最近になってようやく対処法を見つけたばかりのブラックジョークでその発言を一蹴するのだった。

Kさん自身は冗談のつもりで言っているかもしれない…と思いたいが、たまに的を射た発言が飛び出してくることもある。良いも悪いも、一つ一つ繰り出した言葉を真に受けることができないのだ。

内心、そう言い続けてくれることにおいては嬉しくないわけではない。ただ一会社の社長になるということは、どれほどの「モノ」を背負っていかなければならないのかにおいて、私はほとんど理解ができていないのが現状である。

それだけに今までの経験と技量のみで社長になれるとは到底思えないし、計画はまっさらである他その器や志も強くは持てない。
仮に、もしなったとしてどれほどの人が自分の元についてきてくれるのか…想像するだけでも思わずゾッとしてしまう。

以前に悪友と飲みに行った際も、途中から「起業して社長になったら雇ってほしい」と懇求されていたものであった。
酔いがかなり回った状態ながら私はスマートに毒を吐くように冗談を交わすも、何度か頭を下げてきた奴の姿が今も焼き付いている。

ただでさえ今も私自身、いろんな意味で崖っぷちな状態であることに変わりはない。それにも関わらず、彼らがこうしてポジティブに考えて頼ってくるその情は、いったいどこから湧き出てくるのやらと模索せずにはいられない。

と言いつつもその姿勢に、少しは見習わなくてはならないと思うのである。社長になるならないの話はどうであれ、茨の道を冒険し続けていく先に明るい未来が待ち受けているかもしれないと。

夕日がすっかり西の方へと姿をくらましてしまった今日の帰り際に、私はKさんと「お疲れ様でした〜。また明日もお願いしまぁ〜す」という緊張感もなく緩めな挨拶を交わして帰路に着くのであった。


最後までお読みいただきありがとうございました。 またお会いできる日を楽しみにしています!