見出し画像

その空気、人体に「笑い」の影響あり

高校生の時、笑いを取ることで有名なNという部活仲間の同級生がいた。

Nは出会った当初からある意味、コメディアンもしくはエンターテイナーと同じぐらい天才の領域に達していた。呼吸をするたびに「笑い」という、空気に似て非なるものを常に発している。

まるでNK細胞の活性剤となるものが、体のどこか仕込まれているかのように思えるぐらいだ。

特に部活の練習や試合など、どんな時でも常に笑いが絶えなかったことを、私は今でも記憶している。彼自身、意識せずに言っているのかもしれないが、口から発する言葉すべてにおいて、ゲラゲラと笑わずにはいられなかった。

それぞれ所属する学科が異なっていたため、同じクラスになることはなかったものの、昼休みやそれこそ部活で共にする時間は多くあった。
とにかく彼はノリもよく、部活帰りや休みの日に某牛丼チェーン店や麺どころ、ファミレスなどの外食に一緒に行くこともあり、唯一気の許せる友人として接していた。

一方で根暗かつ口下手であった当時の私は、Nのことを羨ましく思っていた。なんといっても、口を開けば自然と笑いを誘ってくるスタンスは、友達としてはまさに最高のポジションだ。

彼の言動を一つ一つ参考にして真似したとしても、トレースすらままならないうえに彼の足元にも及ばない。それどころか滑って転んで大怪我して、挙げ句の果てには悪友に罵られてしまうばかりだった。

そんな私の浅はかな行動を、巧みに利用して見事に周囲を自分の笑いの渦に巻き込ませる彼は、まさに金字塔のような存在であることを認識した。

高校卒業した後、しばらくしてからNと会う機会があった。彼は郵便局員として働いていた。その時は特に意識していなかったが、あの頃よりも相当落ち着いた雰囲気だった。

もちろんお互いに勤務中だったということもあり、会話は最小限でしか話さなかったが、その時の彼の顔つきを見て、また一つ凛々しくなってきたということを私は改めて実感したのだった。

それ以来、私が生活の拠点を地元から東京へと移してから現在に至るまで、Nとは一度も会っていないほか、連絡も取り合っていない。

だが彼のことだ。きっと結婚して家庭を持つことになっていたとしても、息をするようにして笑いの絶えない日々を送り続けているかもしれない。

そんなことを、数年ぶりに再会した悪友と居酒屋で呑みながら語っていた。奴もまた私と同じ部活仲間で、苦楽を共にした人物だ。

いつかどこかで再会する機会があるとしたら、Nはきっと当時を凌駕するような「笑い」を何気なく取りにくるだろうなと、笑い合いながらそう言葉を交わした。


そんなNは、お笑いコンビ「ライス」の関町さんと立ち位置がほぼ似ていたなぁと、動画を見ながら思い出していたという話。それにつけても、MVP級のHMPときたら…。

最後までお読みいただきありがとうございました。 またお会いできる日を楽しみにしています!