見出し画像

やさしい物理講座ⅴ99「インフレーション理論の論法の欠缺」

 論理(ロジック)とは、結論を支える理由や根拠を、ただしい順序で示すことである。そのために必要な要素となるのは、「前提」「根拠」「結論」の3つである。
表題の言葉の意味から解説を始めたが、インフレーション理論の内容に入る前に前提条件が整っていないと考えているからである。
「インフレーション理論は、ビッグバン理論が抱える多様な問題を解決すること」を主眼に論理を進めているが、それらの論理は「ビックバン理論」が或る程度正しいという前提条件のもとで展開している。そして、それに矛盾があるから、その矛盾を根拠に論理展開を進めている。
その矛盾とされる問題は「モノポール問題」「真空のエネルギー」「インフレーションによる指数関数的な宇宙膨張」「指数関数的膨張モデル」「宇宙がなぜ平坦か」という「平坦性問題」などがある。
”宇宙のはじまりの瞬間”をとらえた「インフレーション理論」「宇宙背景放射」に現れた特殊なパターン(模様)などのインフレーション理論の決定的な証拠はまだ見つかっていないのが現状である。
「宇宙誕生のときに発生した重力波が宇宙背景放射にぶつかり、そこに独特の渦巻き模様を作り出しているはずだ」と主張している。
しかし、吾輩がインフレーション理論をビックバン理論の屋上屋の理論と呼ぶ訳は原理として確立していない理論を前提条件で論理を進めており、ビックバン理論を前提条件とすることが矛盾を醸し出している。そしてそれが間違えているとするとこの理論の根拠も根底から覆ることになる。
 少なくとも理論の原点の星の赤方偏移の原因まで論理を巻き戻す必要を感じる。
「天動説と地動説」が覆るまで400年もかかった。
 一度権威主義に堕ちいた学問が、自己主張の否定が出来ずに悲しい進展のない学問に陥っている姿を歴史で学んだ。
 今のビックバン理論を前提条件でできたインフレーション理論は嘗ての「天動説」に生き写しである。
 吾輩の主張は嘗てのガリレオ=ガリレイの「地動説」のようなものである。
その論拠を覆す理論として吾輩の主張する「光のエネルギー減衰理論」に行き着く。
今回はそのようなインフレーション理論の報道記事の紹介と自論を再掲載する。

     皇紀2684年7月7日(七夕)
     さいたま市桜区
     理論物理研究者 田村 司

「光のエネルギー減衰理論」

「光のエネルギー減衰理論」の人気の記事一覧|note ――つくる、つながる、とどける。
やさしい物理講座ⅴ77「透過物質中の光の屈折」|tsukasa_tamura (note.com)

なお、「光のエネルギー減衰理論」と「光の減衰の法則」は言葉が似ているが、「光の減衰の法則」は被写体が照らされる明るさ(照度)は光源から2倍に離れると2の2乗分の1に、3倍になると3の2乗分の1になる。 距離の二乗分の1ずつ減衰することから、「光の減衰の法則」は 逆二乗の法則 とも呼ばれるが、「光のエネルギー減衰理論」は、アインシュタインの光電効果からヒントを得て、遠い宇宙の銀河のから届く光(電磁波)は仮想素粒子アクシオンに光子(素粒子)のエネルギーを引渡し、電磁波の振動数を減少させ宇宙空間を伝播していく。その振動数を減少させた電磁波が地球に届いたときに次のように光は分光により赤方偏移として観測されるのであるとする理論である。

そして、これ(赤方偏移)を見た物理学者や天文学者は、短絡的に「光のドップラ効果」と決めつけて、地球から遠いほど光源の「恒星」や光源の銀河から届く光の分光結果の赤方偏移が赤に偏っていたことを光源の移動運動と捉えた。
本来ならここで観測地の地球から遠いほど光の速度に近いスピードで離れているという観測結果に疑問を持つべきである。しかし、「天動説」と同じようなことに疑問を抱かずに、全宇宙の光源が遠ざかっているという過ちの結論を当時の学者は短絡的に決めつけたのである。
 目覚ましい発展を遂げていた量子力学に対抗心を持つ「天文学者」は、相対論(特殊相対論や一般相対論)で活躍するアインシュタインの権威に飛び付いたのである(個人的感想)。
 そこから天文物理学や物性物理の範疇にまで相対論を結び付ける忖度学問となったのである(個人的感想)。
 吾輩はこれらを打破すべく悪戦苦闘しているのである。
 正常な物理学に戻すことを生涯の人生の目的と使命と捉えて、今日もブログ編集と掲載を続けるのである。呵々。
 しかし、今の物理学界は「灯台下暗し」で、遠方を照らすが足元に光が届かないのである。
 光は重力に曲げられるというが、質量「0」の光子には重力が作用しない。今の量子力学では「光は物質によって、吸収・放出するときは粒子として振る舞うが空間を伝播するときは波(電磁波)として伝わる」(原康夫著『量子力学』p4)。つまり、重力は電磁波には作用しない。粒子として捉えたとしても質量「0」であり、光粒子のは作用しない。
 太陽の重力により、光が曲げられたという観測報告があるが、これは一般相対性理論に安易に忖度した結果であり、物性物理の観点から次の通り結論を導き出せるのである。
 重力は、質量のある物質には作用するので宇宙空間ガスの存在は重力の作用でガスに影響を及ぼし濃淡の層を作り出す。その濃淡の宇宙空間ガスを通過する光は「屈折」を起こすことは知られている。

光が重力により曲げられるのではなく、太陽の重力に引きよれられた宇宙空間物質(水素・窒素など)が周りに層を成しておりその層の濃淡が屈折率の差違を引き起こし、下の図のように光は屈折すると考えられる。
 重力は(質量と定義する)物質に作用するのであり、質量0の光はその質量ある物質とは言えないのである。光は電磁波で伝播するときは、電場と磁場が交互に作用しながら伝わる。真空中の光の速度は「c」と定義されているが、これを重力で加速して「c+v」となるかというと加速できない。重力が作用するのは質量がある物質であり、光には重力が作用しないのは質量がないからである。光は素粒子「光子」と言われるが、電場と磁場が織りなす「場」のエネルギーが作りだしたものであり、重力「場」とこの「光子」が作り出す電磁「場」は親和性がない。太陽を取り巻く宇宙空間物質を重力が作り出した層による光の屈折が作用したと考えるのが妥当である。

太陽を取り巻く宇宙空間物質を重力が作り出した層による
光の屈折が作用したと考えるのが妥当である。

この様に物性物理で解決できる現象を「重力は光を曲げる」「重力は空間を曲げる」「重力は時空を歪める」「重力で時間が短くなる」「運動する物体は時間が遅くなる」など理論の暴走を招いているとしか言えない。
 吾輩も「重力」をテーマに研究を進めているが解明に至っていない。手始めに関連の「光」の研究を始めたら、前述したような驚くべき空想論的な理論展開が行われていることには、驚かされたのである。吾輩は、このように現代物理学の行方を案じるのである。

・・・以下報道記事を掲載・・・

インフレーション理論による「宇宙誕生のシナリオ」が革新的すぎる… 厳密な計算が示した「衝撃の結論」

2024.03.02 佐藤 勝彦

宇宙はどのように始まったのか……

これまで多くの物理学者たちが挑んできた難問だ。火の玉から始まったとするビッグバン理論が有名だが、未だよくわかっていない点も多い。

そこで提唱されたのが「インフレーション理論」である。本連載では、インフレーション理論の世界的権威が、そのエッセンスをわかりやすく解説。宇宙創生の秘密に迫る、物理学の叡智をご紹介する。

これが「元祖インフレーション理論」だ

では、私が1981年に考え出した、元祖インフレーション理論を説明していきましょう。

宇宙の誕生直後、四つの力がそれぞれ、真空の相転移によって枝分かれをしたことはお話ししました。実は、これらの相転移のうち、2番目に起きた相転移によって強い力と電磁気力が枝分かれをするときに、まさに水が氷になるのと同様の現象が起きることがわかったのです。

水から氷に相転移するとき、エネルギーは高い状態から低い状態になります。これは秩序がない状態からある状態に変わるからです。水はH2O分子がランダムに動く秩序のない状態ですが、氷になって分子が結晶格子を組むと、秩序がある状態になります。そして水が氷に相転移するときには、333.5ジュール毎グラムの潜熱が生まれます。これは、秩序が「ない」状態よりも、秩序が「ある」状態のほうがエネルギーが低くなるため、その落差が熱として出てくるわけです。

photo by iStock

宇宙は誕生したとき、水と似たような秩序のない状態でした。そして、空っぽのようで実は物理的な実体を持つ真空の空間自体が、実はエネルギーを持っていたのです。このエネルギーのことを「真空のエネルギー」といいます。繰り返しますが生まれたての宇宙は秩序のない状態ですから「真空のエネルギー」は高い状態にありました。

ところで、生まれたての宇宙空間自体にこのようなエネルギーがあるのならば、空間と時間についての方程式であるアインシュタイン方程式にも当然、普通の物質のエネルギーとともに、この真空のエネルギーも代入して計算しなければならないはずです。

そう考えて私が実際に計算してみたところ、この真空のエネルギーは互いに押し合う力として働くということがわかりました。物質のエネルギーのように互いに引き合う力(引力)とは違い、互いに押し合い、空間を押し広げようとする力(斥力)として働くのです。そして、生まれたての宇宙は、この真空のエネルギーの力によって急激な加速膨張をすることが、すぐに計算できたのです。膨張を「インフレーション」と命名

さて、真空のエネルギーが空間を急激に押し広げると、宇宙の温度は急激に下がり、真空の相転移が起こります。このとき、まさに水が氷になるときに潜熱が発生するのと同じように、落差のエネルギーは熱のエネルギーとなります。真空のエネルギーが、熱のエネルギーに変わるということです。しかも、水ならば周辺の空間に熱を奪われることで氷になりますが、宇宙空間ではその潜熱が空間内に出てくるため、宇宙全体が火の玉になるほどのエネルギーになるのです。

こうしたことを考え合わせると、次のような宇宙初期のシナリオが描き出されてきました。
宇宙は、真空のエネルギーが高い状態で誕生しました。その直後、10のマイナス44乗秒後に、最初の相転移によって重力がほかの三つの力と枝分かれをします。いわゆる「インフレーション」は、そのあと10のマイナス36乗秒後頃、強い力が残りの二つの力と枝分かれをする相転移のときに起こりました。真空のエネルギーによって急激な加速膨張が起こり、10のマイナス35乗秒からマイナス34乗秒というほんのわずかな時間で、宇宙は急激に大きくなりました。その規模は、10の43乗倍とされています。

想像することが難しいと思いますが、そのような膨張が起きれば、1ナノメートル(1メートルの10億分の1)ほどの宇宙でも、私たちの宇宙(100億光年レベル)よりずっと大きくすることができるのです。

photo by iStock

急激な加速膨張によって、宇宙のエネルギー密度は急激に減少し、宇宙の温度も急激に低下します。しかし、それによってすぐにまた真空の相転移が起こるため、前に説明した潜熱が出てきて、宇宙は熱い火の玉となるのです。これを「再熱化」といいます。

ビッグバン理論では「宇宙が火の玉になる」といわれていますが、実はそれは、宇宙が最初から火の玉として生まれ、そのエネルギーによって爆発的に膨張したのではなく、真空のエネルギーが宇宙を急激に押し広げるとともに相転移によって熱エネルギーに変わり、そのときに火の玉になったということだったのです。

以上が、インフレーション理論が描き出した宇宙のはじまりのシナリオです。

数々の難問に、インフレーション理論はどう答える?

ではインフレーション理論は、ビッグバン理論がかかえる多様な問題を解決することができるのでしょうか。

まず、「モノポール問題」から見ていきます。モノポール問題とは、モノポール(磁気単極子)というものが理論上、宇宙の中にたくさんできることになってしまうという問題です。このことは、つまるところ力の統一理論から導かれる宇宙像と、現実の観測によって正しいとされているビッグバン理論が描く宇宙像とが矛盾してしまうことを意味しているのです。これでは、ビッグバン理論がつぶれるか、力の統一理論がつぶれるかのどちらかになってしまいます。

宇宙が生まれて以降の発展を示した図「インフレーションによる指数関数的な宇宙膨張」を見てください。

図:インフレーションによる指数関数的な宇宙膨張


この図では、各断面の輪の大きさが宇宙の大きさを表していて、いちばん下の輪が宇宙のはじまりの頃に真空のエネルギーによって加速度的に急激な膨張をした宇宙の大きさです。

数学的にいえば指数関数的な膨張を起こしたことになるために、私はこのモデルを考え出した当初、「指数関数的膨張モデル」と呼んでいました。指数関数的膨張とは、簡単にいえば倍々ゲームで大きくなるということです。ある時間で倍になったものが、また同じだけの時間で倍に、さらに倍に…と大きくなることです。

これは私が高齢の方によく言う冗談ですが、もしもお孫さんが「お小遣いをちょうだい。1日目は1円でいいよ。2日目はその倍の2円。3日目は、その倍の4円と増やしていって、1ヵ月くれたらあとは何もいらないから」とねだってきたとき、最初の額が小さいので欲のない孫だと思って「ああいいよ」と言うと大変なことになります。31日目の額は、2の30乗、つまり10億円を超えてしまうのです。

このような倍々ゲームを100回も繰り返せば、素粒子のような小さな宇宙でも、何億光年もの宇宙にすることができます。
そこでモノポールについて考えると、実は宇宙のはじまりには実際に、多くのモノポールができていたと考えてもよいのです。そこへインフレーションが起きて、たとえばモノポールを含むわずかな空間が1000億光年の彼方に押しやられたとします。すると、1000億光年の彼方には、確かにモノポールは存在することになります。しかし、そんな場所と、われわれの知る宇宙には、直接の因果関係がありません。われわれの知りえる観測可能な宇宙は、せいぜい100億光年とか200億光年ほどの大きさです。

そのようなはるか遠くの宇宙に押しやられたモノポールが、われわれの知りえる宇宙の中にないのは、当然ということになります。つまり、存在はしていても観測できないという矛盾が解決されるのです。

ところで、宇宙の年齢はたしか137億年のはずでは…

ここで読者のみなさんは「宇宙の年齢はたしか137億年のはずなのに、なぜ1000億光年も先にまで宇宙が広がっているなどと言うのか?」と不審に思われるかもしれません。もっともな疑問です。しかし実は、インフレーション(指数関数的膨張)によって、宇宙は光の速度よりも速く膨張していたことがわかっているのです。なにしろ1ナノメートルよりも小さな宇宙が、わずか10のマイナス35乗秒からマイナス34乗秒後の間に、137億光年よりも大きな宇宙へと膨張するのですから。

実は、指数関数的な急激な膨張とはこのように、「困ったものはすべて宇宙の彼方に押しやることができる」という大変都合のいい話なのです。こうした考えを最初に示したのは私と共同研究者のM・アインホルンなのですが、このあたりのことが意外にも世界的にはあまり知られていないのが残念ではあります。

その難問、インフレーション理論が解決!

インフレーションの効能は、このほかにもいろいろあります。

最初の大きな仕事はなんといっても、素粒子よりも小さい初期宇宙を指数関数的膨張によって一人前の宇宙にして、真空の相転移による潜熱を生じさせ、宇宙を火の玉にしたことでしょう。ビッグバン理論では「特異点から始まった宇宙がなぜ火の玉になったか」を、説明することができなかったのです。

それから、初期宇宙には非常に小さな量子ゆらぎしかなかったのですが、これをインフレーションという急激な膨張によって大きく引き伸ばしてやることで、のちに星や銀河や銀河団を構成するタネをつくれることがわかっています。これによってまた一つビッグバン理論の困難、宇宙構造の起源が説明できないという問題を解決したことになります。

「宇宙がなぜ平坦か」という平坦性問題も、インフレーションモデルが解決します。

たとえば、私たちは丸い地球の上に立っている自分をイメージすることはできますが、「地球が丸い」ということを直接的に認識するのはなかなか難しいはずです。自分の体に比べて地球の半径が非常に大きいために、なかなかわからないのです。もし地球の半径が数キロメートルしかなければ、人間にもすぐに丸いことがわかるでしょう。

実は、宇宙も同様なのです。初期の宇宙が曲がっていたとしても、それがインフレーションによって巨大に引き伸ばされれば、人間には曲がっていることがわからなくなってしまうのです。宇宙はもしかしたら、現在でもわずかに曲がっているかもしれません。しかし、宇宙が指数関数的膨張をしてあまりにも巨大になったために、それを観測することができないのです。これで平坦性問題も説明することができます。

このように、ビッグバン理論におけるさまざまな困難が、インフレーション理論によって解決してしまうのです。

現在では多くの研究者によって、インフレーション理論の改良モデルが数えきれないほど提案されていますが、私とグースらが考えた元祖インフレーション理論と呼ばれているものは、このような姿をしています。


見えてきた「宇宙のはじまり」ビッグバン直前の一瞬を説く「インフレーション理論」

掲載日:2015年5月14日

宇宙のはじまりは138億年前。超高温・超高密度の火の玉「ビッグバン」の急膨張により誕生したとされています。では、ビッグバンはどうやって起きたのでしょうか。その謎の答えだとされているのが、ビッグバン直前の”宇宙のはじまりの瞬間”をとらえた「インフレーション理論」です。

図1:138億年前のインフレーションから現在までビッグバン以降は膨張が緩やかになり、徐々に温度も下がっていきます。ビッグバンからおよそ38万年後より前までの宇宙ではまだ高温で光も直進できないため、現在の私たちまで光は届かず観測することができません。しかし「宇宙の晴れ上がり」と呼ばれる38万年後からは温度が下がり光は直進できるようになり、現在の私たちまで光が届くようになります。このときの光が宇宙背景放射です。© 2015 東京大学

1981年に東京大学の佐藤勝彦名誉教授(現・自然科学研究機構長)が発表したインフレーション理論は、宇宙誕生の10-36秒後から10-34秒後という超短時間に、極小だった宇宙が急膨張し、その際に放出された熱エネルギーがビッグバンの火の玉になったと説明する理論。米国のアラン・グースが、ほぼ同時期に同じような理論を提唱しています。

インフレーション瞬間の膨張速度は、シャンパンの泡1粒が、光速より速い、一瞬のうちに太陽系以上の大きさになるほど急速です。その爆発的な膨張速度から、佐藤名誉教授は「指数関数的膨張モデル」と名付けました。

「素粒子物理の理論で宇宙のはじまりを説明したかった」と当時を振り返ります。

真空エネルギーと相転移

素粒子物理学では何もない空間、「真空」にも水が氷に変わる(相転移)ように高いエネルギーを持った真空が低いエネルギーの真空に相転移をするとしています。インフレーション理論は、誕生直後の宇宙は真空のエネルギーが高く、これに互いに押し合う力(斥力)が働いて宇宙は急激に膨張すると説明します。真空のエネルギーに満ちた空間は互いに押し合うことをアインシュタインの相対性理論が示しているからです。急激に膨張した宇宙では相転移がおこり、水が氷に変わるときに熱が放出されるにように真空のエネルギーも相転移によって膨大な熱エネルギーを放ち、この熱によって宇宙は超高温の火の玉(ビッグバン)になったのです(図1)。

インフレーションの証拠を求めて

図2:宇宙背景放射に現れる偏光パターンインフレーションからの重力波の痕跡だとされる、「Bモード」と呼ばれるねじれた渦巻きパターンが宇宙背景放射に現れると考えられている。© 2015 東京大学

インフレーション理論は正しいのか。その証拠を見つけようとする観測研究が活発化していきます。

NASAが打ち上げたCOBE衛星やWMAP衛星の観測によって、2000年代にはインフレーション理論の予測と一致する結果が得られました。これによって、インフレーション理論はビッグバンを裏付ける、宇宙誕生のストーリーとして広く認められることになりました。「観測データがインフレーション理論からの予言と見事なほどに一致しているのを見たときは、本当に感動しました」と、佐藤名誉教授は今も興奮冷めやらぬ様子です。

インフレーションの証拠となる重力波

しかしインフレーション理論の決定的な証拠はまだ見つかっていません。インフレーションほどの急膨張であれば、巨大な星の爆発など、質量を持った物体が運動するときに生じる時空の歪みを光速で伝える「重力波」が生じるはずです。しかし、地球に届く重力波は極めて微弱で、直接の観測は困難です。

理論的には、観測できる最古の光だとされる「宇宙背景放射」に現れた特殊なパターン(模様)から、間接的に「インフレーションの痕跡」を見つけ出すことができると考えられています。宇宙誕生のときに発生した重力波が宇宙背景放射にぶつかり、そこに独特の渦巻き模様を作り出しているはずだというのです(図2)。渦巻き模様が見つかれば、強力なインフレーションの証拠となります。

図3: チリ・アタカマ高地に設置されたPOLARBEAR望遠鏡日本、米国、カナダなどの国際研究グループで、南米チリ・アタカマ高地(標高5200m)に設置された直径3.5mの望遠鏡を使って宇宙背景放射の偏光観測を行う。CREDIT: KEK/POLARBEARコラボレーション

世界では、この痕跡を探そうという観測プロジェクトが10以上もあります。米国ハーバード大学などが南極に設置した望遠鏡「BICEP2」で地上から観測を行う一方、欧州宇宙機関(ESA)が打ち上げた「プランク衛星」は宇宙から観測(全天調査)。日本でも、東京大学や高エネルギー加速器研究機構が中心となって観測に取り組んでいます(図3)。

「重力波の痕跡にはインフレーションのメカニズムに関する重要なインフォメーションが含まれているはずで、未知とされるダークエネルギーについての知見を得るきっかけにもなるかもしれません。超弦理論の裏付けになる可能性もあります。また将来的には、直接重力波を観測できるかもしれません」と、目を輝かせる佐藤名誉教授。インフレーションからダークエネルギー、その先の究極の理論まで。宇宙への思いは、時を経てもなお衰えることはないようです。

取材・文:牛島美笛

取材協力
1945年生まれ。京都大学理学部物理学科卒業。同大学大学院理学研究科博士課程修了。東京大学大学院理学系教授、ビッグバン宇宙国際研究センター長などを経て、東京大学名誉教授、自然科学研究機構長。紫綬褒章受章のほか、井上学術賞、仁科記念賞、日本学士院賞など受賞。国際天文学連合の宇宙論部会長を務めるなど宇宙論研究をリードする。宇宙創生における「インフレーション理論」提唱者の一人。著書『インフレーション宇宙論』(講談社ブルーバックス)ほか多数

佐藤勝彦名誉教授



宇宙誕生を考える。「ビッグバン」の前に起きたとされる「インフレーション」の存在をたしかめる方法とは

7/6(土) 7:05配信

(図:酒井春)

時空の歪みとして捉えられた謎の重力波の存在。世界に衝撃を与えたこの観測事実から宇宙誕生に迫る最新の宇宙論を紹介する話題の書籍『宇宙はいかに始まったのか ナノヘルツ重力波と宇宙誕生の物理学』。
【写真】謎の「ナノヘルツ重力波」の存在。衝撃の観測報告と「時空の歪み」の原因は?
多くの物理学者はビッグバンの前に「インフレーション」とよばれる急激な空間の膨張が起きたと考えています。では、このインフレーションの存在をたしかめるには、どうすればよいのでしょうか。宇宙誕生の物理学を考えてみましょう。 *本記事は、『宇宙はいかに始まったのか』(ブルーバックス)を再構成・再編集したものです。

インフレーションの終わりは?

これまでの記事で見てきたように、インフレーション宇宙モデルは、ビッグバン宇宙論における問題点を解決する魅力的な方法を提供してくれます。しかし、インフレーション宇宙モデルにも問題はあります。 基本的に急激な加速をするよう「アクセル」を踏み込むのがインフレーション宇宙モデルの役割です。車の運転と同じで、アクセルを踏みっぱなしでは、加速し続けてしまい、目的地を通り過ぎてしまいます。 インフレーション宇宙モデルが、永久に加速を続けてしまうと、何もかもが薄められてしまい、物質のない空っぽの宇宙になってしまいます。このことは、我々の宇宙に多様な天体があり、そして、人類が存在することに矛盾してしまいます。 したがって、ビッグバン宇宙論の問題点を解消する程度に急激な加速膨張をしたのち、「ブレーキ」を踏む操作が必要になります。このブレーキのかけ具合の調整が必要で、ブレーキのタイミングが遅すぎると、ほとんど空っぽの宇宙を作ってしまい、一方、タイミングが早すぎる場合、ビッグバンの問題が解消できずに残ってしまい不完全です。

インフレーションを検証するためには?

高エネルギーの物理学実験が進展し、大統一理論のエネルギーでの現象が実験的に確かめられて、次にその現象を説明できる素粒子理論が確立すれば、その確立した理論を「ザ(the)・素粒子理論」として宇宙に適用することができます。 そこから導き出された結論から、唯一のインフレーション理論が作れるはずです。もちろん、現在の人類の知識では、そんな実験は夢物語です。 しかし、提唱される宇宙のインフレーション理論が複数あればどうでしょうか。それらの理論計算を進め、その計算結果を宇宙の観測と比較することで検証して、理論の背景にある素粒子理論を実証することができるはずです。人類は、いままさにその段階に到達しています。 以前の記事で紹介したように、ビッグバン理論では、宇宙マイクロ波背景放射がその存在の痕跡となりました。 では、インフレーションにはどのような痕跡があるのでしょうか?

インフレーションは宇宙に何を残したのか?

原始背景重力波

それは、宇宙のインフレーションの時期に生成した「揺らぎ」を確かめればいいのです。 ここで大きな問題がひとつあります。インフレーション期の宇宙における場は、超高エネルギーの世界なので、原子や原子核などの通常の物質ではありません。 そんなインフレーション期の場の揺らぎが、現在の物質にどう対応するのかは簡単な問題ではありません。また、これには諸説あります。 ここで役に立つのが、これまでの記事で見てきた重力波なのです。 重力波は時空の曲がりの変動で、それ自身は物質でないため、途中で別のものに変換されてしまう(つまり、途中で目減りする)ことがありません。この宇宙には、大昔の宇宙における時空の曲がりの情報が残存しているはずです。 この宇宙初期の重力波が、「原始背景重力波」とよばれます。

原始背景重力波の大きさは求められる?

ここで少し考えてみましょう。インフレーション期に生成される原始背景重力波の理論計算の方法は、以前の記事で紹介した方法と基本的に同じです。 念のためもう一度ふれると、初期の宇宙は今の姿と比べるとミクロなはずです。そうした非常にミクロな宇宙における物理状態は、量子論に従うはずです。実際、ミクロな世界の原子核やクォークは量子論に従っています。 よって、初期宇宙における何らかの物理量が、何らかの場(古典電磁気学でたとえると、電場や磁場など)の量子論の法則に従っていると考えるのが自然です。すると、その場が宇宙のインフレーション時期にどう振る舞うかは、量子論的な計算で求まります。この計算で得られる場の揺らぎを「量子揺らぎ」とよびます。 このインフレーション時期における場の揺らぎは、直接、現在の宇宙の物質の揺らぎそのものではありませんが、原理的には、インフレーション期での揺らぎから、現在の宇宙での物質の密度の揺らぎが計算可能となります。 ただし、ここでは時空に存在する物質的な場の揺らぎを計算したものが、物質の初期揺らぎの起源です。一方、当時の時空の一様等方宇宙からのずれを場の揺らぎとして量子論の法則に従って計算したものが、原始背景重力波です。原始背景重力波をとらえる手段とは!

パルサータイミング法のイメージ(図:酒井春)

ここで、読者から質問が出るかもしれません。 「原始背景重力波の計算では、時空の揺らぎを量子論を使って計算するが、それには『量子重力理論』が必要なはずで、肝心な量子重力理論は完成していないではないですか」と。 たしかにそのとおりです。時空という場そのものを量子論で記述する理論は、量子重力理論とよばれ、まだその理論は見つかっていません。 しかし、量子重力理論が必要とするエネルギーは、10の19乗ギガ電子ボルトのプランク・エネルギーだと考えられています。 一方、当初のインフレーションモデルは、それより1000倍くらいエネルギーが低い大統一理論を念頭においていました。(プランク・エネルギーに比べて)ずっと低エネルギーの現象なので、量子重力理論を用いなくとも、近似的な計算で正しい予言を引き出せると多くの物理学者は考えています。 いずれにせよ、原始背景重力波こそが、インフレーション期の宇宙を見る窓なのです。原始背景重力波という、宇宙の誕生を知るための重力波は、人類が観測するには難しい超長波長の重力波となります。 これまで、この宇宙を見る窓は閉ざされていました。しかし、いよいよ人類はその窓の開け方を考える時期に入ったのです。それが「パルサータイミング法」です。 このパルサータイミング法について詳しく見ていく前に、パルサータイミング法によって解明が期待される、もう一つの大きな宇宙の謎について以降の記事で紹介したいと思います。

浅田 秀樹(弘前大学 理工学研究科 宇宙物理学研究センター センター長・教授)

AIの回答

インフレーション理論は、宇宙の初期に急激な膨張(インフレーション)が起きたとする仮説です。この理論はビッグバン宇宙論の問題を解決する魅力的な方法を提供していますが、いくつかの問題点もあります1。

  1. ポテンシャルの微調整:インフレーションを引き起こす場のポテンシャルを微調整する必要があります。もしインフラトン(インフレーションを起こす場の場の量子)が大きな真空エネルギーを持つ場合、その質量は小さく、コンプトン波長は大きくなければなりません2。

  2. 加速の終了:インフレーションは急激な加速をもたらす役割を果たしますが、永久に加速し続けると物質が薄められ、空っぽの宇宙になってしまいます。この問題を解決するために、適切なタイミングで「ブレーキ」をかける必要があります。ブレーキの調整が難しく、遅すぎると空っぽの宇宙を作り、早すぎるとビッグバンの問題が残ります1。

  3. 重力波の観測:インフレーションが起きれば、光速で伝わる「重力波」が生じるはずです。しかし、地球に届く重力波は微弱で直接観測が困難です。現在、高エネルギーの物理学実験が進展しており、インフレーション理論を検証するための手がかりを探っています3。

これらの問題点を解決するために、物理学者たちはさまざまなアプローチを追求しています

参考文献・参考資料

インフレーション理論による「宇宙誕生のシナリオ」が革新的すぎる… 厳密な計算が示した「衝撃の結論」(佐藤 勝彦) | ブルーバックス | 講談社(1/4) (gendai.media)

見えてきた「宇宙のはじまり」 | 東京大学 (u-tokyo.ac.jp)

宇宙誕生を考える。「ビッグバン」の前に起きたとされる「インフレーション」の存在をたしかめる方法とは(現代ビジネス) - Yahoo!ニュース

私がビックバン理論(宇宙膨張説)を信じない理由 副題 光の減衰理論(仮説)|tsukasa_tamura (note.com)

ここから先は

0字
この記事のみ ¥ 100
期間限定 PayPay支払いすると抽選でお得に!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?