見出し画像

政治講座ⅴ370「ロシアとウクライナの電子戦術の分析・・これで勝敗の行方は決まる」

コンピューターブーム、ITブームになる前から、これからはコンピューターの時代を予想していた。古い話であるが、五十数年前にフォートランやコボルのプログラミングの勉強をしていたので大変興味をそそられる報道記事である。最近おもちゃのように使っているスマホの性能は昔の大型コンピューターに匹敵する性能と能力を持っていることに驚かされる。
以前、兵站つまりロジステックの成果により勝敗が左右される旨を解説した。近年の戦いは「名乗り」ではなく、「隠密行動(傍受・情報収集)」が戦いの運命を決めるようになってきたので報道記事からその解説をする。

        皇紀2682年9月10日
        さいたま市桜区
        政治研究者 田村 司


ウクライナはかつての敵にあらず、ロシアの大誤算は電子戦

西村 金一 2022/09/07 06:00


© JBpress 提供 目標の位置を正確に測定し味方に連絡する
米陸軍の兵士(7月21日フィンランドでの演習、米陸軍のサイトより)

 ウクライナ地上軍は、8月下旬から南部地域で反攻している。その進度は速くはないものの継続している。

 ウクライナ軍の戦闘を左右するのは、精密誘導長射程砲弾である。その砲弾の目標となる情報を提供するのに電子戦が大きな役割を果たしている。

 電子戦は、これまで旧ソ連軍が最強であるとされていた。

 今回の侵攻では、その優越が認められない。今回は、見えない戦争の一つであるロシア軍のウクライナにおける「電子戦(Electronic Warfare, EW)」について、考察する。

 電子戦を地域的な範囲で区分すると、国家戦略レベルと作戦戦闘レベル(戦場での電子戦)とになる。

 今回は、ウクライナで戦われている作戦戦闘レベルのものを主体に記述する。
ウクライナの戦場の電子戦では主に、

①通信の傍受・標定・妨害とこれに連携する攻撃

②レーダーの電子情報収集とこれに連携するミサイル攻撃

③GPS妨害による敵兵器の無能化が行われている。

 今回は、①について、分析し解説する。

(1)地上戦闘の成否に影響を与える電子戦の3方法

(2)戦闘地域での電子戦の攻撃に弱い通信・強い通信

(3)地上戦におけるロシア軍電子戦部隊の能力

(4)ウクライナ軍は、ロシアとは異なる通信機に更新していたか?

(5)ウクライナ軍は、戦闘場面の電子戦では優勢なのか、についてである。

 電子戦は、ウクライナでの戦いの一部であるので、戦い全般での位置づけを知りたい場合は、筆者のJBpressの過去の記事およびウクライナ戦争から見えてきた国防の問題を指摘した『こんな自衛隊では日本は守れない』(ビジネス社2022年8月1日)を、参照してほしい。

1.地上戦闘の成否分ける電子戦3方法

(1)黙って聞き耳を立てる通信傍受

 通信傍受は、敵軍が使用する通信機の周波数と同じものをセットし、その通信回線に入り敵軍の交信内容を傍受することである。

 中枢局(指揮所)と端末局の数が判明し、呼び名や交信内容が暗号化されていなければ、あるいは暗号化されていても解読できていれば、部隊の規模、部隊の軍種(戦車・歩兵・砲兵の区分)や作戦目標を解明することができる。

露軍電子戦部隊がウ軍の通信を傍受する要領(イメージ)

© JBpress 提供

© JBpress 提供 出典:筆者作成(以下同じ)

 電子戦部隊は、通信妨害の命令があるまでは通信組織には介入しない。静かに聞くことに集中するためだ。

 もし、通信を傍受していることが敵にばれると、その後に強い秘匿がかけられるからだ。

 1978年に樺太上空で大韓航空機007便が撃墜された。

 この時、旧ソ連の空軍機が撃墜したことを認めさせるために、日本政府は、情報機関が傍受していた交信内容を公開した。

 旧ソ連は、極東方面の情報通信が日本に傍受されていることを知ったことで、秘匿レベルを高めた。

「日本の情報機関が収集していた通信の秘匿レベルが高められ、情報が取れなくなった」と聞いたことがある。

(2)敵の位置を特定する通信標定

 通信標定は、三角測量の原理で、中枢局と端末局の位置を特定することができる。

 これを傍受した情報と合わせ、自軍に対峙する敵軍の兵種・編成・規模とそれらの展開状況、つまり敵がどのような部隊か、その規模はどうか、というのが分かるのである。

露軍電子戦部隊がウ軍の通信局を通信標定する要領(イメージ)


© JBpress 提供

 敵を知るためには、偵察衛星による写真(リアルタイムには伝わらない)、航空偵察(撃墜される可能性がある)、ドローン偵察(リアルタイムの情報だが電磁波妨害を受ける可能性がある)、地上部隊の潜入偵察(解明には時間がかかりすぎる、部隊を危険に晒す)の方法がある。

 通信標定は、リアルタイムで詳細な位置を特定できる。

 敵通信部隊の位置を特定し、秘匿の必要性よりもその目標が戦術的に重要であれば、火砲やミサイルで射撃し、破壊する場合もある。

(3)通信妨害によって、敵の指揮通信を遮断する

 ボイス通信やモールス通信は、同じ周波数で通信を行うと、傍受・標定・妨害を簡単に受ける。

 その通信に、同じ周波数の強い電波を放射すれば、ボイスやモールスの信号は、その中に埋没(消去)されてしまう。

 簡単な周波数の変更であっても、周波数スイープという手段で、使用している周波数が解明されて、妨害される。

 デジタル通信では、通信内容を秘匿できるので傍受されにくい。だが、発信源の位置標定や通信妨害は行われる。

通信妨害の方法(イメージ)

© JBpress 提供


© JBpress 提供


2.電子戦の攻撃に弱い通信・強い通信

 旧式のアナログ通信で、特に同じ周波数で長時間通信を行うと、瞬時にして攻撃を受ける。

 周波数を数回変えても、敵は周波数をスイープ方式で変更した周波数を早期に探知して、攻撃してくる。電子戦の攻撃に弱い通信である。

アナログ通信の簡単な周波数変更に対する通信妨害(イメージ)

© JBpress 提供

 デジタル通信の場合は、以前は秘匿が容易なので通信内容が傍受されなかったのだが、近年ではデジタル通信も解読されるようになった。

 また、同じ周波数で長時間通信を行っていると、簡単に通信妨害される。

デジタル通信の通信妨害方法(イメージ)

© JBpress 提供


 短時間(約1秒)のデジタル通信(機械通信とも言う)は、通信文を約1秒というデータに圧縮して、通信を行うものだ。

 発見して位置を特定できたとしても、その通信内容は、解読することが極めて困難である。

 その発信位置を特定できたとしても、短時間であることから妨害も難しい。

 かつては、潜水艦のように位置を秘匿しなければならない兵器に使用されていた。現在では、軍のあらゆる基幹部隊で使用されている。

デジタルの短時間(1~数秒)通信(イメージ)

© JBpress 提供


 短時間通信の周波数ホッピング方式は、前述の短時間(約1秒)で送信できるように圧縮されたデータを、100~200に分割し、さらに、周波数を変化させている。

 非常に高度な通信方式である。

 米軍が、2014年ロシア軍のクリミア侵攻から2022年の侵攻以前にウクライナ軍に提供したという情報もある。

 米国は、この通信については公表していない。戦場で使用されているかどうか不明である。

 しかし、米国とウクライナとの間には、使用されていても不思議ではない。米軍の極秘情報を伝えるには、この通信方式か、あるいは秘匿度の高い通信システムを使用していると考えるべきだろう。

前図の短時間デジタル信号を100~200に周波数分割通信(イメージ)



© JBpress 提供

3.ロシア軍電子戦部隊の能力

 ロシア軍の作戦戦闘レベルの電子戦部隊は、ロシアの全土に5個の独立電子戦旅団が展開している。

 ウクライナに投入可能なのは、攻勢正面の広さから3~4個旅団で十分であろう。

 それぞれの旅団は、4個大隊と独立の中隊の編成になっている。

 各大隊の役割は、地上作戦の支援、空中戦闘支援、宇宙作戦支援がある。地上作戦を支援する中隊は、各旅団には、7~9個中隊で合計31個ある。

 中隊の兵員数は約100人、EW車載トラック等が12両、15の携帯妨害機がある。機甲・装甲車化などの旅団に、1個中隊が配属される。

 地上作戦の電子戦には、通信傍受(交信内容傍受)、通信標定(通信発信源の位置特定)、通信妨害(ジャミングによる通信途絶)がある。それぞれの機材の作戦範囲は、30~50キロだ。

 2014年、ロシア軍がクリミア半島に侵攻した時には、ロシア軍とウクライナ軍が使用する通信機は全く同じものであった。

 なぜなら、両軍ともかつては同じ旧ソ連軍であったからだ。この時、ロシア軍はウクライナ軍の指揮通信システムや通信機については詳細に知っていた。

 だから、ウクライナ軍上級部隊から下級部隊への命令・指示の流れ、それに使う通信機器については、ロシア軍に見破られていた。

 このことにより、ロシア軍はウクライナ軍の通信を傍受し、その部隊と位置を特定することができた。

 ロシア軍電子戦部隊は、ウクライナ軍の部隊の種類、規模とその通信内容をすべて聞き取れていた。ロシア軍はウクライナ軍の作戦命令・指示をすべて知っていたことになる。

 暗号でさえも同じ手法なので、解読もされて当然だ。

 ロシア軍の通信妨害により、ウクライナ軍の通信活動を完全にストップさせることもできた。

 ウクライナ軍は、指揮通信活動を完全に読み取られ、ある時には完全に停止させられていたのだ。

 つまり、ウクライナ軍の軍総司令部と地域を担任する軍本部、軍本部と各部隊指揮所との指揮通信機能は完全にストップし、混乱状態になっていた。

4.ロシアと異なる通信機に更新していたか?

 軍の戦闘部隊が使用する無線機は、かつては、音声で話ができるアナログのFM通信機、モールス信号で通信するAM通信機であった。

 FM通信機は秘匿はかかっておらず、同じ周波数に合わせると、交信内容がそのまま聞き取れた。

 市販の無線機で、警察無線や自衛隊の無線を傍受できたのもそのためだ。

 AM通信は、周波数を合わせれば誰でも受信できる。無限乱数という数字を組み合わせて暗号文書を作成する。通信内容を知られないためだ。

 暗号を組む場合は時間がかかるが、暗号作成が失敗しなければ、解読されることはまずない。

 現在では、どの軍隊でもこの通信方式を主要な通信手段として使用していない。

 不測事態に対応するためのバックアップとして準備されるが、通信妨害には極めて脆弱である。

 2014年以降は、ウクライナ軍は音声通話用の通信をデジタル通信に入れ替え、重要な部署には周波数ホッピングができる通信機あるいは衛星を使用したネットワーク通信を導入していた可能性がある。

 たとえジャベリン対戦車兵器を多数導入したとしても、ウクライナ軍の指揮命令が通信傍受で解明されていれば、多くの領域まで占拠されていただろう。

 今では、これらがデジタル通信機に、さらに衛星を介したネットワーク通信(システム通信)に更新されている。

4.ウクライナ軍の電子戦

 これまでロシア軍側の電子戦攻撃について述べてきた。

 逆に、ウクライナ軍から見ればどうなのか。2014年時の侵攻を受けた時のように、完全に受け身なのか。

 ウクライナ軍は、南部や東部での戦いにおいて、精密誘導の長射程弾を使ってタイムリーにロシア軍を攻撃している。

 それも、ロシア軍の急所となる各部隊の指揮所および弾薬庫を破壊しているのだ。

 数十キロ離れた指揮所の位置をどのように発見しているのか。

 指揮所は、壕の中にあって、偽装も十分にされている。衛星やドローンだけで発見するのは極めて困難だ。

 だが、指揮所は隷下の各部隊と命令指示を伝えるために、頻繁に通信を実施する。

 この通信をキャッチして位置を標定すれば、指揮所の概ねの位置を把握できる。この後すぐに、無人偵察機や偵察衛星で見れば、細部位置が判明する。

 この情報を中央司令部からHIMARS部隊などに伝え、直ちに精密誘導長射程弾を発射すれば、命中し、破壊することができる。

通信標定と火砲等射撃の連携(イメージ)



© JBpress 提供

5.戦闘場面の電子戦でもウクライナ軍優勢

 ウクライナ軍には、総司令部から各地域を担当する軍への指揮通信が途絶し、混乱している様子はない。
 南部では、HIMARSなど長射程誘導弾を効果的に使用している。
 さらに、東部でも8月以前はロシア軍に押され気味であったが、防御も連携していたし、後退した場面でも混乱することはなかった。
 つまり、指揮機能が維持されている証拠である。
 ロシア軍の電子戦は、ウクライナ軍を大混乱させることはできてはいない。
 その理由は、公開情報には現れないが、2014年に使用していた旧ソ連製の通信機を破棄したか、あるいは、傍受や妨害を避けるため、改良したものと推測される。

 ウクライナ軍の基幹通信には、米軍のデジタル、短時間、周波数分割しホッピングする無線機が供与されていると推定される。

 電子戦の機器については秘匿度が高いので、公表されることはない。通信情報分析の経験がある研究者に聞いてみたが、「その可能性が高い」と評価している。

 ロシア軍がキーウ正面から撤退し、その後、東部地域では、両軍の一進一退が続く中、南部正面では、ウクライナ軍が反撃を開始している。

 作戦を支える指揮通信機能でも、ウクライナ軍が優勢であるようだ。

 今後、電子戦でロシア軍各級部隊の指揮所や兵站施設の位置を解明し、そこにHIMARSなどの精密誘導の長射程弾を撃ち込めば、指揮機能が崩壊することが予想される。
 作戦では、敵の弱点と急所を狙うことが重要だ。
南部は、鶴翼の陣(JBpress「徹底解説:「鶴翼の陣」の弱点突かれたロシア軍の末路」2022.5.21、https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/70207)で説明したように、孤立しやすい位置にある。  
 事実、この地から反撃を開始し、電子戦で解明したその地の急所である指揮所と弾薬庫、そして退路となる橋を破壊している。

 ウクライナ軍は、完全に頭脳戦を行っている。これから必要なのは、精密誘導の長射程火砲と弾だ。さらに、兵器が供給され、兵士が使い方の教育を受けて、第一線部隊に配備されてくる。

 ウクライナ軍とロシア軍の戦いの行方は、見えているようだ。

ロシア支持のハッカー集団が日本政府サイトを攻撃か…JCBやミクシィも

テレ朝news 2022/09/07 00:03

ロシアによるウクライナ侵攻を支持しているとみられるハッカー集団『キルネット』は6日夜、SNS上に日本政府が運営する行政サイトなどに対して、サイバー攻撃を行ったとする投稿をしました。
ほかにも、クレジットカード大手のJCBや、ソーシャルネットワークのミクシィへの攻撃も主張しています。
デジタル庁は「政府のサイトにつながりにくくなっていることは午後4時半ごろ把握し、午後9時ごろには暫定的に復旧した。原因は調査中」としています。

専門家「反ロシア国家と認識か」親ロシア派ハッカー集団が名古屋港等を“サイバー攻撃”と声明 その目的は

2022/09/07 17:40配信

  • 6日夜、親ロシア派のハッカー集団が、名古屋港などをサイバー攻撃したという声明を出しました。大きな被害は確認されませんでしたが、その目的はいったい何だったのでしょうか。

     6日夜、サイバー攻撃の声明を出したハッカー集団・キルネット。名古屋港を「日本最大の港」と名指しし、貨物の追跡など「すべてのオンラインサービスをブロックした」とSNS上に投稿しました。

     その影響か、名古屋港管理組合危機管理課のウェブサイトが、午後10時すぎから一時アクセスしづらい状態に。しかし、集中していたアクセスを遮断する対応を取り、およそ40分後には復旧しました。

     7日朝、名古屋港では港湾機能への直接的な影響はみられず、情報が抜き取られた形跡などもなかったといいます。

     ロシアのウクライナ侵攻を支持しているという「キルネット」。サイバー攻撃を仕掛けたとされるのは、名古屋港だけではありませんでした。

    松野官房長官:
    「デジタル庁所管の『e−Gov』ほか、計23サイトなどで一時閲覧ができなくなりましたが、情報の漏えい等は現時点で確認されていません」

     政府サイト「e−Gov」などでも6日夜、アクセスしづらくなるなどのシステム障害が発生。キルネットがサイバー攻撃を仕掛けたと声明を出していました。

     松野官房長官は「関連を含め、障害の原因は確認中」と見解を示しています。

     大量のデータを一度に送りつけてシステム不全を引き起こす「DDoS攻撃」が原因とみられる今回のアクセス障害。一体何を目的とした攻撃なのか。ハッカー集団の動向に詳しい専門家は…。

    サイバーセキュリティ会社の担当者:
    キルネットが日本を反ロシア国家であると定めている、認識している可能性があると思っています。日本に対する嫌がらせなのか、何かしらの日本の行動に対する報復なのかというのは、私では計り知れない部分があります」

  •  ウクライナを支援する国の政府や企業などへの攻撃を続けているというキルネット。日本に対する「嫌がらせ」のターゲットに名古屋港を選んだのでしょうか。
     名古屋港管理組合は、詳しい原因を追究し今後警察にも報告するとしています。

My opinion

スマホの性能を考えると改めて人間の英知が生み出し平和利用の発展がもたらした結果であると考える。科学は兵器ではなく平和利用に使って欲しいものである。どんとはれ!

参考文献・参考資料

ウクライナはかつての敵にあらず、ロシアの大誤算は電子戦 (msn.com)

ロシア支持のハッカー集団が日本政府サイトを攻撃か…JCBやミクシィも (msn.com)

専門家「反ロシア国家と認識か」親ロシア派ハッカー集団が名古屋港等を“サイバー攻撃”と声明 その目的は | 東海テレビNEWS (tokai-tv.com)

ここから先は

0字
この記事のみ ¥ 100

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?