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政治講座ⅴ1440「中国市場から撤退する日本企業:君子危きに近寄らず:李下冠を正さず」

国家の安全を重視する中国政府は7月1日、スパイ行為を取り締まる改正「反スパイ法」を施行したが、中国のネット上では「行走的50万(歩く50万元)」という不気味なキーワードが流行している。中国で潜伏しているスパイを指す用語だ。「君子危きに近寄らず」、「李下冠を正さず」などの故事の教養と実践が必要とされる時代になった。誤解を招くような行動は慎むべきだという戒めのことわざでるが、中国の反スパイ法でさらに要人が必要であるが、スパイ行為の摘発により、在らぬ疑い、嫌疑を受けることになる。
スパイ行為の防止又はスパイ事件摘発に重大な役割を果たした人に対して、最高50万元(約1000万円)の賞金が中国政府から与えられることから、スパイは歩く50万元というわけだ。中国政府は「歩く50万元」発見運動を全国に広げることに躍起になっている。家族間の相互告発も奨励していることから、人々は「再び文化大革命のような悪夢が再現する
経済対策に行き詰まった中国政府はこのところ、思想や行動に対する「引き締め」の強化に走っている感が強い。日本企業の従業員はいつ嫌疑をかけられることやら。
今回は中国から撤退する日本企業に関する報道記事を掲載する。中国政府が「国民の感情を傷つける」服装の禁止を盛り込んだ法案を公表。中国国内では「歴史的に重要な場所や記念日に和服を着る人への取り締まりが主な目的だ」との受け止めが一般的である。「日本アニメのコスプレもターゲットになる可能性がある」と報ずる香港メディアもあり、水産物の次はこの問題が日中間の懸案になってしまう可能性はあり、リスク増大中である。

     皇紀2683年10月20日
     さいたま市桜区
     政治研究者 田村 司

三菱自動車、中国市場から撤退へ 急速なEVシフトに苦戦

日テレNEWS NNN によるストーリー •

三菱自動車工業が中国での自動車生産から、撤退する見通しであることがわかりました。三菱自動車は、2012年から中国の湖南省で自動車生産を行っていますが、近く撤退する方向で調整していることがわかりました。
三菱自動車の中国での生産は、ほとんどがガソリン車で、EV=電気自動車はおよそ3%にとどまります。
中国市場が急速にEVにシフトする中で苦戦し、撤退を余儀なくされた形です。近く、取締役会で決定される見通しです。中国市場をめぐっては、その他の日系メーカーも、販売が落ち込んでいます。ことし1月から8月までの販売台数は、去年の同じ期間に比べて日産自動車が26.3%減少したほか、ホンダが24%、トヨタ自動車が5.1%の減少で、各社、戦略を練り直しています。

ドイツ極右に「中国との癒着」が発覚...中国の「脅しと賄賂」に、欧州の政党が屈してしまう理由

ニューズウィーク日本版 によるストーリー •

ドイツ極右に「中国との癒着」が発覚...中国の「脅しと賄賂」に、欧州の政党が屈してしまう理由© ニューズウィーク日本版

AfDの中国接近は「パターンどおり」だが(集会で演説するクラー、9月) CRAIG STENNETT/GETTY IMAGES

<「ドイツのための選択肢(AfD)だけではなく、中欧・東欧の極右勢力が中国やロシアになびく明確なパターンがある>

ドイツで急伸する極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」に醜聞だ。今月、独メディア「ティー・オンライン」はAfD所属の欧州議会議員マクシミリアン・クラーと中国当局との癒着を報じた。

EU懐疑主義、反移民を掲げる同党は来年の欧州議会選で親中派として知られるクラーを筆頭候補に据えている。報道によると、クラーに「非常に近しい人々」が、中国から資金提供を受けていた。

また彼の側近はドイツ国内の中国反体制派グループと中国当局の双方とつながりがあり、前者の動きを後者に注進している疑いがあるという。クラーはこの報道を「事実無根だ」と否定しており、この一件が彼の強固な支持基盤に影響を与えることはなさそうだ。

ただ中国とつながるAfDの指導層はクラーだけではない。過去1年の間に、同党の政治家が数人、当局の招待で中国を訪れたことが分かっている。同党は中国・新疆ウイグル自治区での国家主導の残虐行為や、ウクライナ戦争での中国のロシア支援を受けて中国と距離を取るドイツ政府の姿勢に反対の立場だ。

専制国家への接近は、AfDだけでなくドイツの極左運動にも共通して見られる。しかし同党の親中化はそれよりも、中欧・東欧の極右全体に見られる明確なパターンをなぞっている。

欧州での「ばらまき」をいとわない中国

このパターンは欧州の各勢力に「ばらまき」をいとわない中国の姿勢と、中国の事実上の同盟国であるロシアと極右勢力が概して友好的であることの両方の帰結だ。アメリカやEUが中国と対決姿勢を強めているため、欧州諸国の反米・反EUの右派が中国に傾いていることも背景にある。

例えばハンガリーのオルバン首相や、セルビアのブチッチ大統領は親中傾向を隠さない。チェコではゼマン大統領(当時)が2015年、中国の政商、葉簡明(イエ・チエンミン)を経済顧問に任命したほどだった。

対照的に、西ヨーロッパの極右政党は中国に対して複雑な態度を取っている。フランスでは国民連合のマリーヌ・ルペン党首がインド太平洋における対中戦略を訴える。イタリアではメローニ首相が中国の「一帯一路」構想から離脱する方針を決めた。極右化が進むイギリスの保守党にも強力な反中派閥がある。
中国側からすると、中欧・東欧の極右勢力との協力はイデオロギーの親和性ではなく、便宜上の理由に基づいている。味方になりそうな各国の周縁的な勢力を見つけてはせっせと資金を注ぐことを繰り返しているだけだ

中国にとっては大きなチャンス

とはいえ、ブレア元英首相からシュレーダー元独首相に至るまで、主流派政治家に対してさえも中国が「求愛」するのは以前から見られる光景ではあった。

大筋では、中国は他の大国との間で影響力拡大のゲームを競っているにすぎない。脅しや賄賂が中国の常套手段であることは確かだが、その他の手管はアメリカなどと同じ──政治家の自尊心をくすぐり、外国との取引の機会や、時には資金を提供する──だ。その違いは手段ではなく、中国の人権侵害に対する批判を封じるという目標にこそある。

AfDの台頭は、ハンガリーやセルビアのような小国よりもドイツを重視する中国にとって、大きなチャンスではあるだろう。

ただ本当に危険なのは、欧州のこうした周縁的な親中勢力ではなく、中道政党が権力を得るためそうした勢力と手を結ぶ意欲を強めていることかもしれない。

ジェームズ・パーマー(フォーリン・ポリシー誌副編集長)※画像をクリックするとアマゾンに飛びます© ニューズウィーク日本版

キヤノンの中国デジカメ工場撤退に賞賛の嵐、地元を大切にする企業DNAとは

2022.1.28 4:25 莫 邦富:作家・ジャーナリスト

中国から撤退する外資系企業、地方の役人の心情の変化

 人件費の高騰、中国のライバル企業の台頭、IT技術やAI技術などの進歩、消費者意識の変化など、中国経済をめぐる環境が目まぐるしく変わっている。

 こうした状況で、やむを得ず中国からの撤退に踏み切る外資系企業も多い。撤退するのは製造業だけではない。「21世紀の市場」と称されるほど魅力が増し、重要視されている中国からあえて撤退する小売流通業の大手もある。たとえば、長年、中国進出の成功例と見なされてきた仏資本の大型スーパー、カルフールだ。

 20年近く、日本企業の中国進出をいろいろな形で支援してきた私だが、この10年間は、むしろ日系企業の中国撤退関連の話がいつの間にか相当増えてきて、手伝っている。

 外資企業の誘致実績が人事考課の評価になる中国の現場では、地方の役人は外資系企業の撤退を快く思わない。ただ、近年になって撤退企業が増えたせいか、大きな流れに逆らえないと悟った地方の役人は、ようやく日常事務としてこうした撤退案件に処するようになった。その姿勢も撤退に反対するという頑な態度から、何のトラブルも起こさずに速やかに撤退してほしいという方向へと切り替わった。

 かと言って、撤退する外資系企業に心底から称賛の拍手を送る例は極めて少ない。そんな状況下、1月中旬に意外な事件が発生した。

撤退するキヤノンに中国国内から称賛の嵐

 春節(旧正月)が近づく1月12日、日本流に言えば、中国版師走にあたる慌ただしい時期に、キヤノンが広東省珠海市にあるコンパクトデジタルカメラの生産拠点を閉鎖することが、明らかになった。信じられないことに、この撤退のニュースはあっという間に、中国のSNSウィーチャットや微博、さらに動画系のSNSで、大きな話題になり、キヤノンを称賛する嵐が巻き起こった。それには理由がある。
 1990年に設立された現地法人の「佳能珠海(キヤノン珠海)」は、最盛期に1万人以上の従業員を抱えた、キヤノンのコンパクトデジタルカメラ製造のメインの工場だった。しかしスマートフォンの普及でコンパクトデジカメのシェアは下り坂を転げ落ちる一方だ。撤退は逆らえない時代の流れだろう。
 しかし、中国の労務関連の法律では、従業員を雇用側の都合で解雇する場合、その勤務年限に応じた補償金を従業員に支払う必要がある。基本的な計算は、1年勤務したら給与1カ月分など最大12カ月分を支払うべきだと定めている。32年間の歴史を持つキヤノン珠海はこうした上限を定めず、さらに1カ月分の月給を上乗せして補償金として支給すると決めた。さらに、中国人ネットユーザーの心の琴線に触れたのは、春節の慰労金も全員に支払うということだ。
 中国の法律の規定を大幅に上回る経済補償金と慰労金を支払うため、「これこそ、従業員を大切にする企業だ。日本の企業文化を中国企業もしっかりと見習うべきだ」という声が目立っているのだ。
 日本のメディアも、「従業員に十分な補償ができるタイミングで撤退することが、14億人規模の巨大市場を持つ中国でブランドイメージを守ることにつながる」という北京の日系企業幹部のコメントを取り上げ、好意的に報道している(西日本新聞)。

地元に寄り添うキヤノン、18年前に香港市民の心をつかんだ広告

 キヤノンは消費者、進出先の住民に寄り添う形でブランドイメージを守る意識の高い企業だ。

 18年前の2004年2月、私が訪れた香港は、深刻な不景気に苦しんでいた。香港の友人たちと食事に行ったら、愚痴をたくさん聞かされた。そのしばらく前、私は「香港沈没」というテーマで香港経済を批判するリポートを書いたばかりだった。友人たちは「頼むから香港人を励ますようなものを書いてくれ」と注文した。

 そんな香港取材中のことだったが、中心街の中環(セントラル)にある議員事務所に行こうと拾ったタクシーの車体に、目を見張った。キヤノンの広告が貼ってあり、「Canon、香港加油(香港、頑張れ)」とあった。表現はいたってシンプルだが、ジンと来るものがあった。

 友人たちにやんわりと批判された直後のせいか、このキャッチコピーにこめられたメッセージ、つまり、香港経済の厳しい現状に対する理解や励ましの温かい目線と心遣いをいや応なしに感じさせられた。そして、香港と苦楽を共にしようというキヤノンの示した連帯意識に感動した。

 普段香港を厳しく見ている私も、この広告には心を打たれて、ほのぼのとした気持ちになった。

 香港には日本好きが多い。日本製品もことのほか愛用されている。その日本から励まされると香港市民もきっと感激するだろうと思い、当時、全国紙のコラムに、このキヤノンの広告を取り上げた。多くの中国人の友人からも「いいキャッチコピーだ」という感想が送られてきた。

 こう振り返ると、企業文化には、DNAのようなものがある。04年の香港の広告と今年の珠海撤退には、キヤノンのこのDNAが終始流れており、消費者や進出先の住民に寄り添う姿勢は一貫として保たれている。

 ただ、このような姿勢を保つ企業は厳密に言えば、キヤノンだけではない。

中国の従業員も大切にする日本企業を見習うべきだ

 数年前のある日、C社という大手企業の幹部M氏がお土産を抱えて近況報告という名目で私のところを訪れた。

 上海の近くにある大都市S市に工場を持つC社は、やはり逆らえぬ時代の流れで、工場を閉めることに決めた。M氏はその陣頭指揮者として本社から現場に送り込まれた。成田空港に到着して中国の現場に移動しようとしたその矢先に、ニュースが飛び込んだという。

 同じS市に工場を持つある日本を代表する別の企業が工場閉鎖で従業員ともめ、工場解散の条件をのめなかった従業員たちは街に出て抗議デモを起こしたというのだ。ニュースを聞いて、M氏は相当、ショックを覚えた。やはり既定の方針でやり抜こうと、自分で自分を鼓舞しながら中国へ飛ぶ飛行機に乗り込んだ。

 結果から言うと、C社は、従業員への補償金支給など工場閉鎖関連の一連の手続きを順調に済ませた。閉鎖関連の情報が事前にまったく漏れていなかったため、工場では、かなり先のスケジュールやイベントが組み込まれていた。なので、工場解散後も日本人工場長と解雇された中国人労働者たちは予定通り、一緒に和気あいあいと郊外の遠足に行き、労使関係がすでに解消されたはずの双方は交流と憩いのひと時を楽しんだ。こうした光景があまりにも珍しかったので、地元の労働局はC社に感謝状を出すほど評価した。社命を円満に果たして、日本に帰国したM氏も出社すると、すぐに社長室に呼ばれ、社長から激励された。

 M氏からこの話を聞いた私も非常にうれしかった。「記事にでも取り上げようか。他の日系企業にとっては参考にする価値があるから」と提案した。結局、C社は検討した結果、マスメディアでの露出は遠慮するということになった。

 しかし、数年後のいま、キヤノンは似たような手法で工場撤退に成功したのを見て、やはりC社の事例も読者と共有すべきだと思い、あえてここに公開した。

 日本企業は中国に進出したとき、入社した中国人社員に「愛社精神」を教え込んだ。だから撤退するときには、会社を愛する精神で長年働いてきた社員に、自分の肉親とでも思う気持ちで処遇できるのか問われている。

 夜逃げの形で中国を撤退した外資系の企業もある。撤退の手続きが煩雑で地元の役人も積極的に協力しないといった問題もその背後にあっただろう。しかし、なんといっても長年勤務してきた社員に苦汁を飲ませることは、企業の経営者としては失格だ。

 日本語のことわざには、「飛ぶ鳥跡を濁さず」というのがある。キヤノンとC社の中国撤退は日本企業のあるべき風格を見せてくれた。1万個のいいね、をあげたい。(作家・ジャーナリスト 莫 邦富)

世界の供給網、なぜ脱中国?

2022年10月18日 7:00

2022年10月18日の日本経済新聞朝刊1面に「『世界の工場』分離の代償」という記事がありました。一体化していた供給網から中国を外す取り組みが進んでいます。なぜ供給網を見直す必要があるのでしょうか。

ここが気になる

ホンダは中国製の部品を極力使わずに乗用車やバイクを造れないか探るプロジェクトを今夏に本格化させました。国内企業だけでなく、米アップルも脱中国に動きます。これまでiPhoneなどほぼ全製品を中国で生産してきましたが、インドでの生産比率が、20年の1%から22年は最大7%にまで高まる見通しです。

供給網から中国を外す取り組みが広がる背景には、台湾有事への備えがあります。仮に台湾海峡で有事があれば、企業は中国で事業を続けるか選択を迫られます。ウクライナ侵攻では、企業のロシア撤退が相次ぎました。バイデン米政権は14カ国で「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」を創設し、有事に重要物資の在庫を融通し合う想定です。

中国を供給網から切り離すことによる代償もあります。輸入総額の中で中国から輸入する比率は20年に日本が26%あり、米国などと比べても大きくなっています。部品など中国から日本への輸入の8割(約1兆4000億円)が2カ月間途絶すると家電や車など多くの製品が造れなくなり、約53兆円分の生産額が消失するとの試算もあります。中国での事業拡大と、有事に備えた供給網見直しの両立が必要になりそうです。

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若手編集者が同世代にむけて新聞の読みどころを発信する「朝刊1面を読もう/Morning Briefing」は平日朝に公開します。

この記事をまとめた人:横山龍太郎
2016年入社。大阪で自動車関連や医薬品、造船企業の取材を経て、現在は電子版と紙面の編集を担当。

日本企業で進む「脱・中国」中国進出企業は過去10年で最も少ない1万2000社に

2022.07.29

日本企業の中国ビジネスが曲がり角を迎えている。これまで、日本企業では巨大なマーケット豊富な労働力安価な人件費をはじめとした「世界の工場」としての魅力から、国内外の生産拠点を中国に移設・集約し、強固で複雑なサプライチェーンを構築してきた。

しかし、中国国内での新型コロナウイルス感染拡大と、中国当局によるロックダウン政策などを受けたサプライチェーンの寸断に直面拠点を中国に集中させることのリスクが露呈し、政府も生産拠点の国内整備を後押しするなど、中国への“脱依存”に向けた新たな局面を迎えている。

そんな中で帝国データバンクは、「日本企業の中国進出動向」に関する調査の結果を発表した。

「中国進出」の日本企業、過去10年で最少の1万2千社 「脱・中国」広がる


中華人民共和国(以下「中国」、香港・マカオ両特別行政区を除く)に進出する日本企業は、2022年6月時点で1万2706社判明した。2010年の調査開始以降、中国への進出企業は1万社を超えており、引き続き日本企業の対中進出意欲の高まりがみられた。

しかし、2020年の調査時点から940社減少したほか、過去の調査で最も進出社数が多かった2012年(1万4394社)からは1000社超減少するなど、中国に進出する日本企業数は減少傾向が強まっている

2020年からの推移では、22年時点で拠点の閉鎖など「撤退・所在不明」が2176社「倒産・廃業」が116社となり、累計2292社が中国から撤退した。一方、新たに拠点などを開設した「新規」は1352社判明した。

日本企業では過去40年にわたり、豊富な労働力と安価な人件費をはじめとした「世界の工場」としての魅力から、国内外の生産拠点を中国に移設・集約し、強固で複雑なサプライチェーンを構築してきた。

加えて、近年は14億人超の人口規模が生み出すマーケットとしての魅力度も高まった。そのため、2010年代初頭の対日デモに端を発した「チャイナリスク」米中貿易戦争に直面しても、中国現地生産・販売拠点を積極的に開設する日本企業は多かった。

しかし、近年は人件費の上昇環境規制強化などで「輸出基地」としての優位性は低下していたほか、国家安全に関わる戦略物資の輸出を規制する輸出管理法、データ管理を強化するデータセキュリティー法(データ安全法)の施行など、日本企業も含めた外資企業が負う中国事業リスクは近年急速に高まっている。

また、中国当局のゼロコロナ政策に伴う長期のロックダウンにより、予見できない長期の操業停止物流・サプライチェーンの混乱を余儀なくされたことで、欧米企業などを中心に中国ビジネスを嫌気した「脱・中国」の動きがみられる。

日本企業でも、人件費の上昇で採算が合わず工場を閉鎖するなど中国事業の整理と、東南アジアや日本国内に生産拠点を移設・分散させるサプライチェーン再編が進んでおり、こうした動向も中国進出企業が減少を続ける遠因になっているとみられる。

上海市の減少が全地域で最大、20年比で200社超の減少


具体的な進出先では、上海市が中国全土で最多となる6028社が判明した。日本企業の工場や物流施設、メインオフィスとしての進出が特に多かった一方で、ソフトウェア開発などIT企業の進出も目立つ。

次いで多い江蘇省(1912社)、広東省(1833社)では半数超が製造業で占められ、江蘇省では蘇州市など、広東省では広州市のほか、深セン市や東莞市などに生産工場などが多い。以下、遼寧省(1337社)、北京市(1112社)と、上位5地域では進出社数が1000社を超えた。総じて、進出企業は中国東部(華東地方)の沿岸部に集中している。


前回調査(2020年)から比較すると、減少した省・直轄市・自治区は18、増加は8だった。減少した地域では、上海市の減少幅が最も大きく、2020年の6300社から6028社と、2年間で272社減少した。広東省(2036社→1833社)は203社、山東省(916社→764社)は152社それぞれ減少し、減少幅が100社超となったのはこの3地域だった。大都市部での減少が顕著だった。

 一方、最も増加したのは安徽省(88社→109社)で、前回調査から21社増加した。安徽省は、上海など沿岸都市に隣接する地理的優位性に加え、人件費をはじめ生産コストが低いこと、特に省都の合肥市などでハイテク産業が急速に発展していることも背景に、新たな投資対象として近年注目が集まっている。

陝西省(64社→79社)は15社、江蘇省(1900社→1912社)は12社、それぞれ増加した。総じて、沿岸部では企業数が減少した地域が多い一方、内陸部では増加した企業が多いなど、エリアによって動向に差がみられる。

多くの業種で減少も、教育・ メディカルケアなどの分野では増加


業種別では、全体で最も多いのは製造業の5125社で、全体の約4割を占めた。自動車や電化製品など機械器具製造関連で多く、自動車部品製造(137社)、金型製造(109社)、化学機械製造(79社)などが多く進出していたほか、幅広い産業で用いられる工業用プラ製品製造(153社)も多い。

卸売業は4154社で、製造・卸売の2業種で全体の7割超を占める。卸売業では、工業用の電気機械器具卸売(459社)が最も多く、婦人・子供服(184社)のほか男子服卸(96社)などアパレル産業の進出が目立つ。

サービス業(1722社)は、受託開発ソフトウェア(428社)が最も多く、ゲーム開発などパッケージソフトウェア(101社)も含めると、サービス業全体の約3割をIT産業が占める。

前回調査(2020年)からの比較では、8業種中7業種が減少した。なかでも、製造業は434社減と最も多く、機械製造関連で多く減少した。卸売業(351社減)では衣服などのアパレル産業で減少が目立った。

サービス業(111社減)も、広告・調査・情報サービスなどで減少が多かったことを背景に100社超減少したものの、一方で医療業などのメディカルケアや、教育といった分野では増加した。中国経済の成長に伴い所得が向上したことで、中国国内で教育熱の高まりを受けた進出がみられたほか、高齢化が進んだことで医療や介護に注目が集まっていることも、これらの業種で進出社数が増加した要因とみられる。

一方、金融・保険業は+26社と全業種で唯一の増加となった。銀行など金融機関のほか、主に事業会社を統括する持ち株会社が多く、中国・アジア地域の統括拠点として進出するケースが多い。


不透明な「予見性」を嫌気 供給網の脱「中国依存」進む可能性も

中国による「ゼロコロナ政策」により、中国最大級の経済都市である上海市をはじめ各都市がロックダウン(都市封鎖)された影響で、日本企業の現地生産や物流に大きな打撃をもたらした。

帝国データバンクが今年5月に実施した調査でも、日本企業約1700社を対象に上海ロックダウンが及ぼす企業活動への影響を調査した結果、中国に進出している86社のうち計86%の企業が「マイナスの影響がある」と回答した。

企業からは「中国からの仕入れ(輸入)に影響が多大」「上海での操業が1カ月以上停止し、多大な損失が出ている」など、ロックダウンが企業活動に悪影響を及ぼしているとの声が多くあがった。また、「長期の外出制限で駐在員の心身共に疲弊している」など、現地従業員の健康にも悪影響が及んでいるとの指摘もみられた。

こうしたチャイナリスクに対し、日本企業を含めた外資企業では拠点が集中していた中国からの脱依存を進める動きがみられる。欧州連合(EU)商工会議所が4月下旬に実施したアンケート調査では、23%が中国からの撤退や投資先の見直しを検討、8割弱が投資先として「魅力が落ちた」と回答した。

在中米商工会議所が5月初旬にかけて実施した調査でも、約5割で対中投資を「減らす」「先延ばしする」と回答。日本企業でも同様の動きがみられ、中国・上海市に進出する日本企業の計14%が今後の中国投資を「縮小・延期する」との調査結果を上海日本商工クラブがまとめた。

既に一部の日本企業では、中国での生産比率を引き下げ、中国から輸出する製品については日本やベトナムなどで生産する体制に切り替える動きもある。

日本と巨大市場を抱える中国との間では、多種多様な業種で強固かつ複雑なサプライチェーンが構築されてきたことから、即座に中国と関係を断つことは企業にとって負担が大きい。

ただ、予見性に乏しい中国当局のゼロコロナ政策に対し、中国に拠点を持つ日本企業では不満や不信感が高まっている様子もみられ、今後は「チャイナプラスワン」に向けた調達戦略がより進んでいく可能性が高まっている。


出典元:帝国データバンク

構成/こじへい


日本企業33社の「中国依存度ランキング」 TDK、村田製作所は50%超

中国依存度の高い日本企業ランキング


英BBCが報じた新疆ウイグル自治区での綿花生産におけるウイグル人らの強制労働の実態を受け、スポーツメーカーの米ナイキとアパレルメーカーのH&M(スウェーデン)は「懸念」を表明。以後、ウイグル産の綿花を製品に使用しないこととした。

 だが、世界のグローバル企業が声を上げるなか、日本企業の反応は鈍い。なぜ、欧米企業に比べて日本企業の歯切れが悪いのか。

『経済界』編集局長の関慎夫氏によれば、ユニクロを展開するファースリテイリングは全売り上げの2割超日立製作所やソニーなどの電機メーカーも売り上げの約1割は中国が占め、“市場としての中国”を無下にできない事情があるという。

 日本企業にとって中国市場の“存在感”はどれほどのものなのか──。中国事業を積極的に進める上場企業の株価指数「日経中国関連株50」を構成する50社について調査した。最新の有価証券報告書をもとに売り上げに占める中国市場の割合が算出できた33社をランキング形式にまとめたのが別掲の表だ。

 ランキング上位には電気機器、化学関連のメーカーが目立つ。

「いま中国で市場が大きいのは、自動車とIT関係の部品。例えば村田製作所は自動車やスマートフォン向けの電子部品が主力製品ですが、自動車やスマホの製造国としては中国が圧倒的に強い。必然的に、中国市場の売り上げが多くなり、50%以上を占めています。

 電子部品を扱う企業だけではなく、ファナックのように製造用のロボットを扱っている企業も中国における需要が圧倒的に高い。ロボットメーカーの業績は、中国の経済成長に大きく左右される。日本ペイントHDは自動車の外板の塗装をやっているし、東レもユニクロの工場向けに事業を展開しています」(前出・関氏)

 経済ジャーナリストの磯山友幸氏はこう指摘する。

「小売業や最終製品のメーカーばかりが話題になりがちですが、ランキング上位はBtoB企業が多い。あまり表に出てきませんが、改めて中国市場の存在の大きさを突きつけられます」

ランキング上位の企業に、ウイグル問題への見解を聞いたところ、TDKは「いかなる形の強制労働も明示的に禁止する」としたうえで、ウイグル人権問題への関与については、「調査の結果、強制労働の疑いがあるサプライヤーとは、当社グループのいずれの企業も取引がないことを確認しました」と回答した。村田製作所は期限までに回答がなかった。

 日本ペイントHDはウイグル人権問題への見解については「コメントは控えます」とし、今後の市場展開については「中国市場自体は引き続き会社方針に基づき展開していく予定」と回答。

 中国に大きく展開する日本企業が抱えるリスクについて、関氏はこう指摘する。

ウイグル問題以外にも、チャイナリスクはある。台湾問題で米中間の亀裂が深まり、そこで日本政府が米国寄りの姿勢を強めれば、日本製品の不買どころか日本人駐在員の拘束まであり得るでしょう。企業は地政学的に日本の置かれた立場を考えながらビジネスをしなければならず、その舵取りは非常に難しい

 利益とリスクが背中合わせの中国ビジネス。日本企業は窮地に立たされている。※週刊ポスト2021年5月7・14日号

中国、邦人男性を正式逮捕 スパイ容疑、拘束長期化

共同通信社 によるストーリー •1 時間

 【北京共同】中国北京市でアステラス製薬の日本人男性社員がスパイ容疑で拘束された事件で、中国当局が男性を正式に逮捕したことが19日分かった。日中関係筋が明らかにした。日本政府は引き続き男性の早期解放を中国側に求めていく方針だが、拘束の長期化は必至。日中関係の安定化は遠のきそうだ。

 男性は3月の帰国直前に「反スパイ法と刑法に違反した」として国家安全当局に拘束され、北京の収容施設で監視下に置かれた。正式逮捕するかどうか当局が判断する刑事拘留の措置を取ったと中国側が日本政府に9月に伝え、司法手続きが進んでいた。

スパイ摘発の協力者に最高1000万円 経済政策に行き詰った中国政府は先祖返りするしかない

2023年09月27日

スパイは「歩く50万元」…流行する不気味なキーワード

 経済対策に行き詰まった中国政府はこのところ、思想や行動に対する「引き締め」の強化に走っている感が強い

 国家の安全を重視する中国政府は7月1日、スパイ行為を取り締まる改正「反スパイ法」を施行したが、中国のネット上では「行走的50万(歩く50万元)」という不気味なキーワードが流行している。中国で潜伏しているスパイを指す用語だ。

 スパイ行為の防止又はスパイ事件摘発に重大な役割を果たした人に対して、最高50万元(約1000万円)の賞金が中国政府から与えられることから、スパイは歩く50万元というわけだ。

 中国政府は「歩く50万元」発見運動を全国に広げることに躍起になっている。家族間の相互告発も奨励していることから、人々は「再び文化大革命のような悪夢が再現するのではないか」と恐れている(9月22日付ニューズウィーク日本版)。

 9月に入り、中国政府が「国民の感情を傷つける」服装の禁止を盛り込んだ法案を公表したことにも疑念の声が広がっている。

 どのような服装が対象になるかが明記されていないからだが、中国国内では「歴史的に重要な場所や記念日に和服を着る人への取り締まりが主な目的だ」との受け止めが一般的だ(9月22日付AFP)。「日本アニメのコスプレもターゲットになる可能性がある」と報ずる香港メディアもあり、水産物の次はこの問題が日中間の懸案になってしまうのかもしれない。

参考文献・参考資料

キヤノンの中国デジカメ工場撤退に賞賛の嵐、地元を大切にする企業DNAとは | 莫邦富の中国ビジネスおどろき新発見 | ダイヤモンド・オンライン (diamond.jp)

三菱自動車、中国市場から撤退へ 急速なEVシフトに苦戦 (msn.com)

ドイツ極右に「中国との癒着」が発覚...中国の「脅しと賄賂」に、欧州の政党が屈してしまう理由 (msn.com)

世界の供給網、なぜ脱中国? - 日本経済新聞 (nikkei.com)

日本企業で進む「脱・中国」中国進出企業は過去10年で最も少ない1万2000社に|@DIME アットダイム

日本企業33社の「中国依存度ランキング」 TDK、村田製作所は50%超 | マネーポストWEB (moneypost.jp)

中国、邦人男性を正式逮捕 スパイ容疑、拘束長期化 (msn.com)

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国(とカネ)のためなら肉親も犠牲に...国民が互いを「密告」しあう現代中国の流行語「歩く50万元」とは(ニューズウィーク日本版) - Yahoo!ニュース

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