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政治講座ⅴ1355「中国経済はデフレではなく、スタグフレーションに陥る」

中国は不動産バブルの崩壊と言われるが、吾輩の視点はちょっと違う。あらゆる事業の「需要と供給」を考えない過剰投資と過剰設備の結果(含む軍備費・EV車開発・半導体開発)が現在の中国であると捉えている。
日本と米国の直接・間接投資と市場開放、世界貿易機構WTOに加盟を促した。日本の進出した企業と合弁企業で、技術力の習得と商品の販路も最初から確保されていたようなものである。そして加工貿易で世界の工場として急激にGDPを右肩上がりに実績を上げた。同時に貿易収支の黒字を膨らませたのである。本当は、このように、世界2位のGDPが、助けられたものと思わず、中国の実力と過信した。その過信が横柄な威圧的態度に変わり、外交は微笑外交から戦狼外交と言われるように態度を豹変したのである。それ以前から努力せずに右肩上がりに業績が上がったところから、過剰設備・過剰投資が始まるのである。苦労して販路を広げたわけではなく日本や米国の企業におんぶにだっこで成長したことを忘れ・恩を忘れ、傲慢になった(覇権主義)。そこで、世界はドン引きし出したのである。海外投資は逃げ出したのである。2011年の東北大震災のサプライチェーンの重要性と今般の疫病コロナ禍でも中国からの生産拠点の見直しが始まって、分散化が始まった。中国のリスクを再認識し出したのである。
特に、習近平政権になってから、共産主義に祖先返りして、資本主義を否定する動きになった。
トランプ政権になってから中国共産党の策略に覚醒したのである。米国証券市場から株式上場して資金を誘導して国力を上げるという、おんぶにだっこ戦略にきがついたのである。しかも、半導体などの知的財産を盗み軍事に転用しているなどの軍事機密や防衛にまで侵略してきたのである。おそまきながら、中国企業の上場禁止・廃止を決めたのである。
今まで潤沢な「他人の褌」で相撲をとってきた中国に証券市場の株式資金が流れなくなってきた。利益を積み上げて自己資本を厚くしてきた体力のある日本企業と違い右肩上がりで「他人の褌」の他人資本のみで積み上げた財務内容は、投資資金がとまり、流動資金が枯渇すると、デフォルトに陥るのである。これが、今の中国の大まかな経済の仕組みである。設備投資した商品の販売益から返済財源が捻出できない事態が起きているのである。中国の外貨準備高464兆5347億円で中国の負債が賄いきれるか?地方融資平台(LGFV)と呼ばれる政府傘下の企業の資金繰りは厳しいようだ。2022年末、地方融資平台の債務残高は66兆元、1元=20円として1,320兆円程度(2019年末から5割増)に達しているという。氷山の一角であり、隠れ債務は想像もできないが、「一帯一路」でAIIB経由で融資した資金は現金化の出来ない収益性の無い事業が多く、これらの資金が焦げ付いて不良債権化していることは想像に難くない。
中国版新幹線は、無軌道な拡大で不採算路線が増え、足元の負債総額は120兆円の大台に達した。今後さらに70兆円超の建設費がかかるとみられ、巨大国有企業が抱える「国の隠れ債務」が、中国経済のリスク要因となる懸念がある。そして、従来から赤字路線が多いうえ、新型コロナウイルス禍で旅客需要も振るわない。22年1〜9月期2兆円近い最終赤字に陥り、改善の見通しはなお立っていない。そして、恒大集団に至っては、負債総額47.8兆円超 過去2年の累積損失は16兆円以上になっている。
そして、碧桂園は流動性危機による痛手をさほど受けていない質の高い業者と見られていたが、2022年以降に経営環境が急速に悪化。 2023年8月7日、碧桂園もドル建て債の利払い(総額2250万ドル)が履行できなくなり債務不履行の危機に直面した。 同年8月30日、同年1月から6月期決算を発表。物件の販売不振や不動産開発プロジェクトの評価損が災いし、純損益が約490億元(約9800億円)の赤字と前年同期の黒字から大幅に収益が悪化した。中国の軍事費は、2023年には前年比7.2%増の約30兆5500億円に達する見込みであるが、これも国民の生活を圧迫して貧困化する要因であり、大きい北朝鮮化すると言われている所以である。今回はそのような報道記事を紹介する。

     皇紀2683年9月12日
     さいたま市桜区
     政治研究者 田村 司

中国の外貨準備高、8月末時点で3兆1601億ドル

新華社 によるストーリー •4 日

中国国家外貨管理局。(資料写真、北京=新華社記者/劉開雄)

 【新華社北京9月8日】中国国家外貨管理局が7日に発表した8月末時点の外貨準備高は3兆1601億ドル(1ドル=約147円・・464兆5347億円)で、7月末から442億ドル(1.38%)減少した。

 同局の責任者によると、8月はドル指数が上昇し、世界の金融資産価格は全体的に下落した。為替レートや資産価格の変動などの要因が総合的に作用し、外貨準備高の減少につながった。

中国版新幹線、負債120兆円 広がる赤字路線のリスク

国有鉄路集団、経済対策で止まらぬ延伸

2022年7月5日 

【大連=渡辺伸】中国版新幹線「高速鉄道」を運営する国有企業、中国国家鉄路集団の路線延伸がとまらない。景気底上げを目指す政府の意向をくみ、2035年に路線を現在より7割増やす方針だ。ただ、無軌道な拡大で不採算路線が増え、足元の負債総額は120兆円の大台に達した。今後さらに70兆円超の建設費がかかるとみられ、巨大国有企業が抱える「国の隠れ債務」が、中国経済のリスク要因となる懸念がある。


恒大集団、負債総額47.8兆円超 過去2年の累積損失は16兆円以上に

8/14(月) 

【CNS】中国の不動産大手である恒大集団(Evergrande Group)は7月17日夜、ついに自社の「会計帳簿」を公開し、2021年、2022年と2022年中期の業績報告書の三つの財務報告書を続けて発表した。
   財務報告書によると、昨年と2021年の2年間の合計赤字額は8120億元(約16兆2053億円)以上に上り、
負債総額2兆4000億元(約47兆8975億円)を超えた。
 恒大は2021年の業績報告書で、6862億2000万元(約13兆6950億円)の純損失のうち、経営損失が約1137億5000万元(約2兆2701億円)であることを明らかにした。
また、開発中の物件及び売却目的で保有する完成物件、投資物件の公正価値の減損が4049億5000万元(約8兆817億円)、土地の返還に伴う損失、金融資産の減損損失、およびその他の非経営的な損失金額が1802億元(約3兆5963億円)、税金控除が126億8000万元(約2531億円)となったことを示している。  
  貸借対照表によると、2022年12月31日時点で、恒大の負債総額は2兆4374億1000万元(約48兆6441億円)に上り、契約負債の7210億2000万元(約14兆3896億円)を除いた金額は1兆7163億9000万元(約34兆2545億円)となる。その内訳は、借款が6123億9000万元(約12兆2217億円)、貿易の未払金およびその他の未払金が1兆22億6000万元(約20兆24億円、うち工事未払金<材料費>が5961億6000万元<約11兆8977億円>)、その他の負債が1017億4000万元だという。  さらに、恒大の資産状況を見てみると、2022年末時点での総資産は1兆8383億4000万元(約36兆6883億円)であり、純資産は約マイナス5991億元(約11兆9564億円)となっている。その内訳は、流動資産が1兆6651億9000万元(約33兆2327億円)であり、全体の大半を占めている。一方、開発中の物件プロジェクトは1兆1360億8000万元(約27兆1579億円)であり、現金および現金同等物はわずか43億3400万元(約864億9493万円)だった。  
恒大は年報で、膨大かつ優良な土地の備蓄は、同社の「保交楼(住宅の確実な引き渡しを保証する)」、債務を段階的に返済し、正常な経営へと回復するための堅固な基盤だと記している。  これら二つの開示を延期していた年報に対し、監査機関の上会柏誠会計師事務所が「コメント不能」との報告を出している。その理由は恒大の持続的な経営に多くの不確実性があることや、期首の比較データに対する十分な監査証憑書類が得られなかったためだ


中国がいよいよ「デフレ経済」に突入…何もかもが落ち込み、「日本化」どころでは済まない「大バブル崩壊」の行く末

真壁 昭夫 によるストーリー •

全てが下がってきている

足許、中国経済に“デフレ”の圧力が高まっている。

2022年10月、川上の物価の変化を示す、生産者物価指数(PPI)は前年同月比マイナス1.3%と落ち込んだ。

それ以降、今年7月まで10か月連続でPPIは下落した。不動産バブル崩壊で鉄鋼やセメントなど、多くの分野で供給能力が需要を上回る状況になっている。

2023年7月、中国の消費者物価指数(CPI)も同0.3%下落した。不動産バブル崩壊によって家賃は下落、家具など耐久財の需要も減少した。

photo by gettyimages© 現代ビジネス

スマートホンやパソコンの需要も弱い。そうした状況下、中国では個人消費にも盛り上がりがみられない。どうしても経済全体でデフレ圧力が強まることになる。

日米欧などでは物価は高止まりしており、むしろインフレ圧力と戦っている。それだけ、中国経済の特殊事情によるデフレ圧力は際立っている。

今後、不動産分野や地方政府傘下の“地方融資平台”のデフォルト懸念も高まることが想定される。それは、中国経済の需要を一段と押し下げることになりかねない。

その場合には、デフレ経済はさらに鮮明化するだろう。景気が長期の停滞に向かう可能性もある。中国経済の“日本化”懸念は高まっている。

テスラやBYDまで…

2022年10月以降、中国経済ではすう勢的に物価の下落圧力が高まった。

2023年3月、PPIの下落率は同2.5%、4月の下落率は同3.6%に拡大し、7月の下落率は4.4%だった。

その要因として、不動産バブルの崩壊などで建設やインフラ投資が減少し、過剰な生産能力の問題は鮮明化した。

消費者物価指数(CPI)の下落圧力も強まった。2022年10月、同2.1上昇したCPIは2023年3月に0.7%に上昇幅を縮め、7月にマイナスに陥った。

品目別にみると、自動車や家具、デジタル家電などの耐久財の価格は下落した。EV分野ではテスラ、BYDなどの値引き競争が激化した。

2022年5月以降は家賃もマイナスだ。飲食、宿泊、交通などに関しても基調として需要は弱含み、価格の下落リスクは高まっている。

6月の端午節連休中に国内旅行に出かけた人は、前年の同じ連休期間比で32.3%増の1億600万人だった。

一方、旅行関連の支出はコロナ禍が発生する以前の2019年の実績を5.1%下回った。

不良債権処理はどうするのか

不動産バブルが崩壊で資産価格が下落したことで、節約を志向する中国の家計は増えたはずだ。共産党政権は、金融緩和や不動産関連の規制緩和など景気刺激策を発表しているが、今のところ持続性のある効果は出ていない。

不動産などの投資を積み増して成長率を高める経済運営が限界を迎えつつある中、中国のデフレ圧力は経済指標が示す以上に強いとみるべきかもしれない。

今後、中国経済のデフレ環境は一段と鮮明化し、景気の停滞も長引く恐れが高まっている。これからの中国経済を考えるとき、1990年初頭のバブル崩壊後に我が国が迎えた経済の展開はそれなりに参考になるだろう。

バブル崩壊後、わが国では不良債権処理が遅れた。1997年には“金融システム不安”が起き、戦後最悪の経済状況に落ち込んだ。

それに伴い、わが国はデフレ経済に陥った。経済全体で債務の返済を急ぐ企業や家計などは増え、需要はすう勢的に下落基調を辿った。

足許の中国経済もよく似た状況にある。不動産デベロッパー、地方融資平台、さらに理財商品のデフォルト懸念は高まった。

それにもかかわらず共産党政権は、今のところ、不良債権処理に本腰を入れる考えを明確に示していない。

中国もデフレ経済が鮮明化

その状況が続くと、わが国が経験したように、徐々に金融システムが不安定化する懸念がある。

銀行などが成長期待の高い企業や個人に資金を融通することは難しくなる。人々が成長への期待を持つことも難しくなる。

景気停滞が長引くと、給料がカットされリストラも増えるかもしれない。そうなると、家計部門はこれまで以上に節約をしなければならない。

1990年代以降、わが国では心理が先行し、デフレ経済は鮮明となり景気は長期の停滞に陥った。これを“日本化”と呼ぶ。そこから脱却することは、政策金利をマイナスにしても需要回復は容易ではなかった。

これまでの歴史を振り返ると、大型のバブルが崩壊した場合、政府は大手金融機関などに公的資金を注入し不良債権処理の促進を図ることになる。

それが遅れると、経済の活力は低下し、デフレ圧力と景気の停滞懸念は高まる。不動産バブルの崩壊が深刻化する中、中国政府はIT先端分野での管理を強化し、家計には忍耐を求めた。中国でデフレ経済が鮮明化するリスクは高まっているとみる。


山東省の2大都市、住宅売買規制を全廃

Reuters によるストーリー •37 分

山東省の2大都市、住宅売買規制を全廃© Thomson Reuters
[北京 11日 ロイター] - 中国で二番目に人口の多い山東省の二大都市、済南市と青島市が住宅の売買規制を全廃した。同国では不動産市場を支援するため、規制を撤廃する都市が相次いでいる。
政府の声明と地元メディアによると、済南市と青島市は全ての地区で住宅の売買を許可する。
青島市はこれまで購入できる住宅の数を2つの地区で制限していた。済南市も同様の措置を講じていた。
先週には江蘇省の南京市、遼寧省の大連市、瀋陽市が住宅購入規制を撤廃している。

習近平の「遅すぎる通達」では中国の不動産バブル崩壊ドミノは止まらない…1320兆円の債務残高を抱える企業と「隠れ借金」

2023.09.04 真壁 昭夫
多摩大学特別招聘教授
プロフィール

1320兆円の債務残高

足許、中国不動産バブルの崩壊に歯止めが掛からない。不動産市況の悪化の影響を受け、地方政府の財政悪化の懸念が高まっている。
特に、地方融資平台(LGFV)と呼ばれる政府傘下の企業の資金繰りは厳しいようだ。2022年末、地方融資平台の債務残高は66兆元、1元=20円として1,320兆円程度(2019年末から5割増)に達しているという。
融資平台が抱える借金はいわゆる“隠れ借金”で、通常、地方政府の借金とカウントされないことが多い。

IMFの予測によると、中国の非金融部門の債務残高は今後も増加傾向をたどり、2027年にGDP比311%に達するという。
その予測が物語るのは、借金で不動産やインフラなどの投資によって経済成長してきた“つけ”が顕在化していることだろう。
地方融資平台の債務について、地方政府などの“暗黙の保証”があると信じる国民も多く、家計部門への波及も大きいはずだ。
習近平政権は、地方政府に傘下企業の債務の肩代わりするよう通達を出したが、それだけでは根本的な解決といえない。短期間での債務問題の解決は見込みづらい。

非公式な資金調達手段を確立

中国経済全体でバランスシート調整、デフレ圧力は強まり、信託商品や理財商品のデフォルトも増える恐れは高まっている。
地方政府の隠れ借金の問題は、中国社会全体に重大なマイナス要因として働くことも考えられる。
中国の地方政府は、税収や土地の利用権譲渡などによって財源を確保した。ただ、中央政府は、地方政府の債券(地方債)発行などによる資金調達を厳格に管理した。
インフラ投資などを進めて経済成長率目標を達成するため、地方政府は地方融資平台を設立し、非公式な資金調達手段を確立。IMFによると2003年時点で地方融資平台の借り入れによる調達額はGDP対比11.5%だった。
リーマンショック後、地方政府は4兆元(約56兆円程度)の経済対策の資金調達を担った。地方融資平台の資金調達は急増し、2008年末の調達額は同16.1%、2014年は同37.1%に達した。
同年の地方融資平台の債務残高についてIMFは、地方政府に支払い責任がある債務がGDP比22%、政府の保証が適用されない可能性がある債務残高は同13%程度と推計した。

中国・習近平主席が抱える完全独裁のジレンマ 有効な打ち手は共産党の自己否定につながり身動きが取れない

マネーポストWEB によるストーリー •9 時間

窮地に立たされた習近平主席(イラスト/井川泰年)© マネーポストWEB 提供

 不動産バブル崩壊・若年失業率の増加など問題が山積する中国。そうした国家の非常事態に中国共産党の習近平・国家主席も有効な対策を打てずにいるようだ。かねてより経営コンサルタントの大前研一氏は、習近平氏による独裁体制について警鐘を鳴らしてきた。今の中国にはどんな問題があるのか、大前氏が分析する。

 * * *

 約49兆円の負債を抱えている中国の不動産大手・恒大集団が、ついにアメリカで破産法の適用を申請した。恒大集団は「正常な債務再編手続きの一環」と説明しているが、この会社は中国政府が裏で支えているから存続しているだけで、事実上すでに破綻している。

 他の不動産大手も苦境に陥っている。碧桂園は今年上半期の純損益が約1兆円の赤字になると発表し、28兆円ものデフォルト(債務不履行)が危惧されている。遠洋集団も今年上半期の純損益が約4000億円の赤字になると発表した。中国の不動産市場は悪化の一途をたどっているのだ。

 不動産バブルが崩壊すれば、かつての日本やアメリカなどのように経済の長期低迷は避けられない。しかも、中国の不動産バブルの規模は日本やアメリカとはケタ違いで1000兆円にも及ぶと推計されているので、崩壊が始まれば、そのダメージは計り知れない。

 不動産バブル崩壊とともに深刻なのが若者の高失業率だ。16~24歳の若者失業率は6月に21.3%となり、記録がある2018年以降で最悪を更新。7月からデータの公表を取りやめた。若者失業率は46.5%に達したという試算もある。

 中国の若者の間では、厳しい競争社会を忌避し、住宅などの高額消費や結婚・出産を諦める「寝そべり主義」「寝そべり族」というライフスタイルが広がっているが、最近は大学を卒業したばかりの若者たちが屋外で死体のように横たわる「ゾンビスタイル」の写真を投稿して話題になった。大学を出ても就職先が見つからず、すぐさま路頭に迷ってしまうからである。

 不満が鬱積している若者に対し、中国共産党の機関紙『人民日報』は都市部から地方や辺境に移住することを勧める記事を掲載した。まるで毛沢東が文化大革命期に失業問題の解決などを目的に都市部の若者を地方の農村に追放した「下放」「上山下郷」政策のようだ。
最近の福島第一原発処理水の海洋放出に対する嫌がらせ電話などは、そうした国民の不満の捌け口を日本に向けるためだろう。

経済も内政も外交も迷走

 いまや最高指導部「チャイナセブン」(中央政治局常務委員7人)は全員が習近平の過去の赴任地で配下だった李強首相ら子飼いの“身内”で固められ、かつての周恩来首相や朱鎔基首相のような良識がある思慮深い側近は見当たらない。

 もし私が習近平だったら、李克強をはじめとする共青団を残して集団指導体制の体裁を取っただろう。そうすれば、自分の政策に効果がなかったら別の意見を採り入れて軌道修正できるし、失策が明らかになっても責任の所在を曖昧にできるからだ。しかし“完全独裁”の場合、失敗したらトップは言い逃れができない。

 そもそもトウ小平が集団指導体制を敷いたのは、毛沢東独裁への反省からだとされる。トウ小平も実質的には独裁だったが、表向きは集団指導体制に見せかけていた。密室政治を象徴する北戴河会議を復活させたのもトウ小平であり、そうやって集団指導体制を“隠れ蓑”にするのが共産党独裁を維持する要諦のはずだった。

 だが、習近平にとってトウ小平は、父・習忠勲を文化大革命期に失脚させた恨み深い相手なので、トウ小平の“置き土産”を全廃しようとしているのかもしれない。

 しかし、習近平の政策は内向き・下向き・後ろ向きで逆効果なものばかりだから、中国は経済も内政も外交もことごとく迷走している。たとえば香港で「一国二制度」(高度な自治を50年間維持するという約束)を反故にしたため、もはや台湾市民は一国二制度による平和的な融和というオプションを信じなくなった。習近平の出方次第では平和裡に「中台統一」を実現できる可能性もあったのに、自らその手を封じたわけだ。

 私は、失策続きの習近平独裁体制がこのまま続くとは思えない。BAT(バイドゥ、アリババ、テンセント)をはじめ世界的にも有望な企業が自由に発展すれば、経済が好転して現下の問題も解決に向かうだろうが、それはティックトックなどのSNSの解放につながり、共産党独裁に対する不満の声が渦巻くことになる。

 つまり、有効な打ち手は共産党の自己否定につながる可能性が高いため、身動きがとれない。したがって、習近平は遠からず、さらに馬脚を露わして「高転びに、あおのけに転ぶ」だろう。

【プロフィール】

大前研一(おおまえ・けんいち)/1943年生まれ。マッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社長、本社ディレクター等を経て、1994年退社。ビジネス・ブレークスルー(BBT)を創業し、現在、ビジネス・ブレークスルー大学学長などを務める。最新刊『世界の潮流2023~24』(プレジデント社刊)など著書多数。※週刊ポスト2023年9月15・22日号

中国、国防費を前年比7.2%増の30兆円に 外部の脅威が「エスカレート」と

2023年3月6日

画像提供,AFP VIA GETTY IMAGES

画像説明,中国の軍事パレード(2017年、内モンゴル自治区)

中国で5日、全国人民代表大会(全人代、国会に相当)が開幕し、2023年の国防費を前年比7.2%増の1兆5537億元(約30兆5500億円)とする予算案が提出された。同国は脅威が「エスカレート」していると警告している。

1兆元超の国防費は、その4倍あるアメリカの国防費と比べればまだ小規模といえる。

しかし、複数のアナリストは中国が国防に費やす額を大したものではないと見せかけようとしているとみている。

経済成長率目標は5%に

退任が確実な李克強首相は、「中国を抑圧して封じ込めようとする外部の試みがエスカレートしている」と述べた。

「軍は全面的に軍事訓練と備えを増強すべきだ」

中国はロシアによるウクライナ侵攻や、北米上空で確認された中国の偵察用気球とみられるものをめぐってアメリカとの関係が悪化する一方で、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領を温かく迎え入れる姿勢をみせている。国防費の増額は、こうした中で発表された。

米政府関係者は、中国が今後数年のうちに台湾を侵略する可能性があると繰り返し警告している。中国は弾道ミサイルの発射など、台湾周辺の海空域における軍事力の誇示をますます強めている。

中国は台湾を自国から分離した省とみなし、いずれは再び中央政府の支配下に置かれるべきだと考えている。

全人代では国防費のほか、今年の経済成長率目標を5%前後と、前年より低く設定することも発表された。

習主席の3期目続投承認へ

全人代ではまた、習近平氏は国家主席として3期目続投が承認され、軍トップの中央軍事委員会主席に再び選出される見通し。

習氏は昨年10月の中国共産党第20期中央委員会第1回全体会議(1中全会)で、党総書記に再任され、中国の権力層における地位を確実なものにした。

李首相の後任も発表される予定。首相は経済や行政面の管理をする立場にある。

現在、上海市共産党委員会書記を務める李強氏が、この役割を担うことが予想される。同氏は習氏にとって最も信頼できる人物の1人で、昨年10月の1中全会で習氏のすぐ後ろを歩いていた。

動画説明,習近平政権3期目が発足、新指導部の顔ぶれや経済問題への取り組みは

(英語記事 China boosts military budget and warns of threats



参考文献・参考資料

中国がいよいよ「デフレ経済」に突入…何もかもが落ち込み、「日本化」どころでは済まない「大バブル崩壊」の行く末 (msn.com)

ベネズエラ危機 - Wikipedia

スタグフレーション - Wikipedia

デフレーション - Wikipedia

山東省の2大都市、住宅売買規制を全廃 (msn.com)

中国・習近平主席が抱える完全独裁のジレンマ 有効な打ち手は共産党の自己否定につながり身動きが取れない (msn.com)

習近平の「遅すぎる通達」では中国の不動産バブル崩壊ドミノは止まらない…1320兆円の債務残高を抱える企業と「隠れ借金」

世界貿易機関 - Wikipedia

中国の外貨準備高、8月末時点で3兆1601億ドル (msn.com)

中国版新幹線、負債120兆円 広がる赤字路線のリスク - 日本経済新聞 (nikkei.com)

恒大集団、負債総額47.8兆円超 過去2年の累積損失は16兆円以上に(CNS(China News Service)) - Yahoo!ニュース

碧桂園 - Wikipedia

中国 国防費 30兆円余 去年より7.2%増加で軍備増強姿勢示す | NHK | 中国 全人代

中国、国防費を前年比7.2%増の30兆円に 外部の脅威が「エスカレート」と - BBCニュース

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