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政治(経済・金融)講座ⅴ1776「中国はドル本位制から金本位制へ移行の兆候」

 22年のウクライナ侵略に伴い米国やEUなどはロシアに対して経済制裁をかけた。ロシア中銀が保有する外貨建て在外資産を凍結するとともに、ロシアを国際的なドル決済網から締め出した。米中対立が深刻化する中、こうした西側の動きに台湾に侵攻する野望のある中国が神経をとがらせている。
 いざとなれば米国は基軸通貨ドルの覇権にものをいわせて中国に対しても同様の措置に踏み切るのではないかと心配しているのである。
 そして、人民銀が金の“爆買い”へとかじを切ったのはここからである。その一方で売りまくったのが米国債で、人民銀の外貨準備に占めるドル建て資産の割合は「すでに大幅に低下した」(メガバンク筋)とされている。米中双方のデカップリング拡大・加速は、軍事的衝突へと発展しかねない危険な芽をはらむのである。
 中国の「元」通貨当局はドル本位制から金本位制へ移行を決意したのであろう。
 そしてそれは、不動産バブル崩壊で経済破綻をきたしている中国のような信頼が揺らいでいる国によっては金本位制は有効に働く。
 しかし、逆を言えば、デフレを引き起こしやすく経済は活性化しない。
 今後は中国はデフレ経済へ突き進むことになるのであろう。
逆に、管理通貨制度は、国家的な安定と、民主主義、そして堅牢なシステムを構築し国民の信頼を得なければ成立が難しいです制度であるので、中国には管理通貨制度は導入できないのである。
 
今回は中国経済が金本位制に移行しそうな兆候が見えているような報道記事を紹介する。

     皇紀2684年5月12日
     さいたま市桜区
     政治研究者 田村 司

「金」先物が2400ドル突破!中国・インドが爆買い「近い将来、4000ドルに上昇」強気予測も

真壁昭夫 によるストーリー

写真はイメージです Photo:PIXTA© ダイヤモンド・オンライン

4月19日、金の先物価格が1トロイオンス当たり2413.8ドルで引けた。1970年代以降の最高値を更新したのは、中国とインドの個人および中央銀行が買い増したからとみられる。今後、金の価格がさらに上昇する可能性はあるのだろうか? (多摩大学特別招聘教授 真壁昭夫)

金の先物価格が2400ドルを超えた!

 2022年の夏場以降、「金」の価格が上昇している。24年に入ってからは2月中旬以降、金に向かう資金は一段と増加し、価格上昇の勢い(モメンタム)はさらに強まった。2月14日から4月26日まで、世界の金価格の指標であるニューヨーク商品取引所(COMEX)の先物価格は約17%上昇した。

 金に投資する投資家の中でも、中国とインドの需要増加は顕著だ。00年代以降、両国は工業化による経済成長の影響で、豊かになった一部の人が宝飾品として金を購入した。そして近年は、中国やインドの中央銀行がインフレなどのリスク回避のため金の購入を増やしている。

 ロシアやトルコなど他の新興国でも中央銀行などが金の保有を増やした。主要先進国でも、地政学、政治、経済(特にインフレリスク)の観点から、金への投資の重要性が増していると考える個人や機関投資家が増えている。ある意味、世界的にドルから金へのシフトが起きているともいえる。

 直近では4月以降、金の先物価格が2400ドルを超えると、売り圧力が高くなる場面が増えた。目先では利益確定などの動きが増え、金価格に下押し圧力がかかることはあるだろう。ただ、短期間で中東情勢などのリスク要因が落ち着くかは不透明だ。米国の物価がどのように2%に向かうかも見通しづらい。世界経済を取り巻く不確定要素が増えていることから、長い目で考えると金価格にはさらに上昇の余地があるだろう。

中国とインドはなぜ金の購入を増やしているのか

 4月19日、金の先物価格が1トロイオンス当たり2413.8ドルで引けた。1970年代以降の最高値を更新した。価格上昇の要因の一つが、中国とインドの個人および中央銀行が買い増したからとみられる。

 伝統的に、中国とインドでは宝飾用に金を使うことが多い。経済成長に伴う富の増加や、社会的な地位を誇示するために、個人による金への購買意欲が盛り上がっている

価値が安定している「金」を買い求める中国の富裕層が増えた Photo:PIXTA© ダイヤモンド・オンライン

 また、資産運用の対象をリスク分散するために、中央銀行や機関投資家が金を保有することも増えている。きっかけは、08年9月のリーマンショックだった。

 米財務省とFRB(連邦準備制度理事会)は全米第4位の投資銀行、リーマン・ブラザーズ(当時)をうまく救済することができず、世界経済と金融は大混乱に陥った。中国、インド、ブラジルなど多くの新興国から、米国を非難する声が上がり、世界経済は多極化に向かい始めた新興国の中央銀行は、ドルの価値が中長期的に不安定になることを懸念し、金の保有を徐々に増やした

 その後20年8月、中国では不動産バブルが崩壊し、不動産や株式の価格が下落した。財産を守るために、価値が安定している金を買い求める中国の富裕層が増えた。23年、中国の金宝飾品需要は10%増加し、延べ棒とコイン投資は28%も伸びたという。中国の景気低迷に対して警戒する世界の投資家は多く、それはインドにおける金保有動機を一段と押し上げた。

 ウクライナ紛争が勃発すると、米国をはじめとする主要先進国はロシアに経済・金融制裁を発動した。中国やインドは、ドルに依存した経済運営のリスクをより強く認識したことだろう。それも、ドルから金へのシフトにつながった。

インドが警戒する世界経済の不確定要素

 23年、中国は金の購入量でインドを上回ったようだ。また、主要先進国でもインフレヘッジのため金を選好する投資家が増えた。そうした動きがこの4月、金の先物価格が史上最高値を更新したことにつながったとみられる。

インドでは宝飾用に金を使うことが多い Photo:PIXTA© ダイヤモンド・オンライン

 直近で、インドは一段と金の保有を進めているようだ。準備銀行(中央銀行)のダス総裁は4月、外貨準備の強化を重視する姿勢を明らかにしている。現在、インド経済は好調だ。中国から生産拠点の移転が増加していることなど、直接投資が増えているからだ。中国株を売り、インド株を買う世界の投資家も多い

 また、制裁対象であるロシア産原油の購入も、インドの景気を支えた。夏場の気温上昇で農作物の生育不順が起きるリスクはあるが、過去に比べればインドのインフレ耐性は強くなったとの見方もある。

 それでも、ダス総裁は外貨準備を増強する考えを強調した。背景には、世界経済への強い警戒感があるのだろう。ウクライナ紛争や、中東でイスラエルとハマスの戦闘が継続していることなど地政学リスクは上昇している。

 また、親イラン武装組織フーシ派による攻撃で、紅海およびスエズ運河でのタンカー航行が難しくなっている。イランは4月、世界の原油供給の2割を占めるペルシャ湾のホルムズ海峡を封鎖すると警告した。これが現実のものになると、世界経済へのマイナス影響は計り知れない。

 他方、米国の物価上昇率は経済の専門家たちの予想を上回った。米国では労働市場がタイトであり、賃金は高止まりし、個人消費も増勢を保っている。企業は価格転嫁、つまり値上げを強化した。1~3月期、食品・エネルギーを除いた個人消費支出の価格指数が前期比年率で3.7%上昇した。

 米FRBの利下げ開始の予想時期は後ろ倒ししそうだ。米金利は上昇しドル高も鮮明化している。一方、新興国の外貨準備高はドル高で目減りする。自国通貨の減価は輸入物価押し上げリスクの上昇につながる。そうした動きを警戒し、インド準備銀行は金保有を重視し始めたのだろう。

今後も金価格がさらに上昇する可能性

 短期的には、金価格上昇による利益確定は増え、相場は幾分か調整するかもしれない。ただ、少し長い目で見ると、金の価格はさらに上昇する余地がありそうだ。世界経済を取り巻く不確定要素は増大する可能性が高いと考えられるからだ。
 中東に和平がもたらされるかは非常に推測しにくい。これまでも、イスラエルのネタニヤフ首相はイランなどへの強硬姿勢を強め政権を維持してきた。イスラエルとイランの緊張感はさらに高まり、地政学リスクが上昇する恐れはある。中東情勢の緊迫感が増すと、原油価格は上昇し、世界的にインフレ懸念が高まるだろう。今すぐではないにせよ、金利上昇によって米国の景気は減速し、世界経済の先行きへの不安が高まるはずだ。

 半年後に迫った11月の米大統領選挙で、仮にトランプ前大統領が再び当選すると不確定要素はさらに増えるかもしれない。一つのシナリオとして、米国がイスラエル寄りの政策を強化したとしよう。すると、欧州諸国と安全保障面での足並みが乱れ、ウクライナ紛争の先行き不透明感が高まるはずだ。
 一方、バイデン大統領の下で民主党政権が続いた場合も、米中対立は先鋭化するだろう。状況次第では世界のサプライチェーンが不安定になる恐れもある。インフラ投資などで連邦政府の財政支出が増え米国債の信用格付けの引き下げ懸念されることになるかもしれない。

 地政学リスク、インフレ懸念が再燃するなど経済のリスク、政治リスク、これら3つの要素は互いに影響し世界経済の不安定感を高める。これだけのリスク要因を抱える世界経済は、「1929年の“大恐慌”、1971年の“ニクソン・ショック”(米国の金本位制放棄、輸入品に10%の関税賦課)前に似ている」との指摘もある。

 中国やインドの中央銀行にとって、金の保有割合を増やす重要性は追加的に高まりそうだ。リスクヘッジのため金保有を増やす主要先進国の投資家も増えるだろう。一部で、「近い将来、金の価格が4000ドルに上昇する」との予想もある。時間の経過に伴って調整を挟みつつ、徐々に金の価格水準は切り上がる可能性が高いだろう。

金本位制のデメリットは以下の通り

  • 高価で希少な金を保有しなければいけない

  • 経済や金融危機時に、通貨の発行量を増やせない

  • 貿易赤字になると、金が国外に流出するため、保護貿易になりやすい

  • 金貨が不足した場合には、貨幣単位が安定しなくなる可能性がある  

  • 国家が金貨を貯蓄している間に、国家が支払う貨幣単位が安定しない可能性がある


「金」の歴史的高騰はまだまだ続く…中国筆頭に中央銀行が爆買いするワケ(重道武司)

日刊ゲンダイDIGITAL によるストーリー

バイデン米大統領と中国の習近平国家主席(C)ロイター© 日刊ゲンダイDIGITAL

【経済ニュースの核心】

「ゴールデンウイーク(GW)」なる毎年恒例のお祭り騒ぎは終わったが、本物の金(ゴールド)を巡る市場の熱狂はなお収まりそうにない。

金相場の歴史的高騰が続いている。年初以来、国内外で連日のように史上最高値を更新し、足元では1トロイオンス(=31グラム強)2400ドル前後(ニューヨーク先物)の水準に。ここ1カ月余りの間にも150ドルほど切り上がった形になる。

■「もしトラ」に備えている?

市場関係者の間では「中長期的には4000ドルくらいまで上昇する」との観測も飛ぶほど。1グラム当たりに換算すると約2万円にもなる計算だ。

粘着質な米国のインフレに、ウクライナや中東をはじめとするさまざまな地政学的リスク、さらには「もしトラ」の可能性など先行き不透明感の高まりを踏まえると「金」という実物資産に資金を移しておいた方が「安全かつ無難」といった投資家心理の発露か。

ただ、今回の相場騰勢にはもう一つの要因がある。各国中央銀行による猛烈な「金買い」だ。なかでも積極的なのが中国人民銀行で、購入量から売却量を差し引いた、いわゆる「買い越し」は17カ月連続。金の国際調査機関「ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)」によると、今年3月末時点における人民銀の金保有高は7274万トロイオンスにまで膨らんだ。ドルベースにすると約1611億ドル分で、2月末に比べ8%強の伸びだ。

22年のウクライナ侵略に伴い米国やEUなどはロシアに対して経済制裁をかけた。ロシア中銀が保有する外貨建て在外資産を凍結するとともに、ロシアを国際的なドル決済網から締め出した。米中対立が深刻化する中、こうした西側の動きに中国が神経をとがらせるのは当たり前だろう。

いざとなれば米国は基軸通貨ドルの覇権にものをいわせて中国に対しても同様の措置に踏み切るのではないか--。そんな危機感に駆られてのことだろう。人民銀が金の“爆買い”へとかじを切ったのはここから。一方で売りまくったのが米国債で、人民銀の外貨準備に占めるドル建て資産の割合は「すでに大幅に低下した」(メガバンク筋)とされている。

米中双方のデカップリング拡大・加速は、軍事的衝突へと発展しかねない危険な芽をはらむ。(重道武司/経済ジャーナリスト)

10分でわかる金本位制 – わかりやすく誕生や崩壊の歴史を解説 –

2020/01/26

金本位制とは、お金(紙幣や硬貨)と、金(ゴールド)の交換を認める通貨制度です。

この通貨制度は、第二次世界大戦の前まで維持されていましたが、現在は管理通貨制度となり、銭(通貨)と金(ゴールド)の交換は禁止されている。

金本位制の歴史

金本位制の歴史

世界各国が、当時影響力の強い国に追従する形で通貨制度を変えている。

1816年 イギリスの貨幣法の誕生

今からおよそ200年前のイギリスで金本位制度が初めて法律となった。貨幣法という法律が成立し、ゾブリン金貨とよばれる通貨が、自由に融解して、鋳造することを認められた。

つまり、「金貨を溶かして、再生成しても良いよ」ということである。事実上その硬貨の価値は、その硬貨の成分が後ろ盾にあるということを認めた。そうして金本位制の幕が開く。

1871年 日本も金本位制へ

日本も金本位制へと移行することとなります。

その理由は、イギリスが金本位制を採用したことで、国際的に金本位制がスタンダードとなったためです。日本も世界と貿易を行っていましたから、移行せざるを得ない状況でした。

しかし、当時の日本は、経済基盤が貧弱であり、金貨が大量に国外に流出した。

例えば、外国人が日本に最先端の工業製品を売るとともに、大量の金貨を持ち帰った。金の保有量しか、通貨を発行できませんから、日本は非常に貧しくなったわけです。そこで日本は銀も交えて兌換を許す金銀本位制へと移行します。

1897年 日清戦争で勝利


日本は日清戦争に勝利し多額の賠償金を受け取る。

その莫大な資産を元手に金本位制へと復帰する。国際的な通貨としての地位を取り戻そうとしたことが伺える。

1914年 世界各国が金本位制を中断

第一次世界大戦で多額の財政支出を賄うために、世界各国が金本位制から離脱した。

多くの国が、自国の金の流出を危惧し、金の流失制限と、通貨の金との兌換を停止することとなった。

1919年 アメリカが金本位制へ復帰

第一次世界大戦後に、経済的な安定を機に、アメリカをはじめ世界各国が金本位制へ復帰した。

当時、覇権国であったイギリスは、金とポンドのレートを非常に高く設定したため、国際競争力を失い、アメリカに多額の金が流失してしまった。この頃から、覇権がアメリカへと移りはじめた。

1929年 世界大恐慌が起こる


世界大恐慌が起り、世界各国は再び金本位制から離脱することとなる。

世界大恐慌の原因は、多くの歴史家、経済学者が様々な見解を述べている。そのため、原因を特定して述べることは非常に難しいです。しかし、主要な原因と考えられるのは、世界恐慌の前にお金の供給量が、極端に少なくなったことだと言われる。当時のアメリカの中央銀行の総裁は、流通する通貨や証券は、裏付けとなる物品があるべきだという方針転換をした。それによりお金の供給量が1/3程度になりました。

お金の供給量が減れば、お金の価値が上がりますから、多くの人の商品の買い控えが起った(デフレ経済)。そして、物価が下がり、所得が減り、さらに物価が下がるという悪循環となることになった。銀行は取り付け騒ぎとなり、金との兌換を停止せざるを得なくなった。

物の値段は需要と供給で決まる。それは通貨においても同じです。

1930年 日本も金輸出を停止

各国が恐慌となる中で、日本は比較的盤石でした。世界からの金需要が高まる中で、日本からも金が大量に流出するようになった。

日本政府も、金の輸出を停止せざるを得ない状況となった。

1933年 アメリカは個人の金保有を禁止する


アメリカの大統領のルーズベルトが、国民の金保有を禁止した。国民から1オンス=20.67ドルで買い上げた。

急激なデフレに悩まされるアメリカは、金を買い取ることで、強制的に通貨の流通を増やし、恐慌からの脱却を図った。

1934年 ブレストンウッズ体制へ向けて

1934年からアメリカは、1オンス=35ドルで、世界の通貨当局に金を引き渡すように要請を開始する。

世界各国は、1939年から45年に行われた第二次世界大戦の戦費を賄うために、多くの国が金を引き渡すことになった。それによりアメリカには大量のゴールドが集まることとなり、世界一の金保有国となります。

第二次世界大戦後に、大戦で疲弊した各国は、ゴールドに裏付けられた米ドルとの、固定相場制をとることを決定した。これはブレストンウッズ体制とよばれ、米ドル金為替本位制へと移行することとなった。

1971年 ニクソンショック


アメリカは、第二次世界大戦後に、ヨーロッパ諸国に多額の支援をすることで、ゴールドを抱えることとなったが、そこに陰りが見えはじめた。

ヨーロッパや日本は、戦後に経済復興をするとともに、ドルを蓄財するようになり、またアメリカはベトナム戦争が泥沼化して、多額の財政赤字を抱えることになります。

それとともに、徐々にアメリカの金保有額は減っていき、全盛期の1/3ほどへと縮小しました。そのような状況下で、多くの国がアメリカへの不信感を募らせました。蓄財したドルは、金と交換できるのだろうか?という疑念が広がり、多くの国がドルを手放し、金と交換しはじめます。

その状況を見たニクソンは、米ドル金為替相場制の維持は不可能と判断し、米ドルと金の兌換を停止します。

1973年 固定相場制から変動相場制へ移行

米ドルとの固定相場制が維持されていたが、金との兌換を停止したことで米ドルの価値を維持できなくなった。

そこで、米ドルとの固定相場制を廃止して、各国の通貨需要に応じて変動する変動相場制へと移行した。

これにより、200年以上に渡る、金(ゴールド)を求める呪縛から完全に解放されることとなった。

金(ゴールド)とは何だったのか?

金本位制の歴史を辿ると、本質的な疑問へと行き着く。

それは、金(ゴールド)とは何か?ということです。200年前にイギリスで成立した、1ポンドを金と交換できるという法律は、「金は価値があるものである」という前提が背景にある。

つまり、金とは何か?と問われれば、金とは価値があるものだ、ということは言えそうである。何か煙に巻くような議論ですが、金は価値があるということ自体が、金の本質なのである。

金は非常に珍しく、世界にほとんど存在しません。全世界の金をかき集めても、50mプール3つ分の量しかないと言われています。しかし、珍しいから価値があるんだ!というのも異なります。珍しいものだと、多くの人が認めた時に価値が生まれます。

金は、珍しく、美しく、そして非常に重く、劣化しませんでした。多くの人の共同幻想を作り出すには必要十分と言えました。みんなが価値があるものだという幻想を生んだわけです。

もちろん金は、機能的にも引き伸ばしやすく、細かく細分しやすかったので、価値を測るのには便利でした。これら理由が重なり、金は価値があるという認識を生み出したわけです。

金本位制のデメリット: 金の呪縛

金本位制の如実なデメリットは、重商主義になりやすいと言うことである。

重商主義とは、輸入すればするほど、国外に金(ゴールド)が流出するため国民は貧しくなると言う考え方です。国家は金保有量よりも多くの通貨を発行することがでないから、外国から物品を輸入すればするほど貧しくなっていく。

ちなみに、重商主義の考え方は、経済学の父であるアダム・スミスが批判しています。国民の豊かさは、国に溢れる物品などの富で測られるべきだとしている。

歴史的な推移を見ても、金本位制が維持できているのは、下記の状況のみです。

  • 産業革命によって対外輸出が圧倒的だった19世紀初頭のイギリス

  • 第一次世界大戦後のアメリカ

  • 第二次世界大戦後のアメリカ

つまり、経済的に圧倒的な国が、多くの金を保有可能な状況下において、成立する制度だと言えそうである。もちろん結果的にそうなっただけかもしれないが。

金本位制のデメリットは、さらに言うと、経済基盤が弱い国にとっては、金の保有量が通貨発行量を制限するため、極めてデフレになりやすいという点である。

現に、第一次世界大戦後のドイツでは、多額の賠償金と金本位制により通貨が足りなくなり深刻なデフレに悩まされた。それが、独裁者を生み、戦争を引き起こしたのです。当時の研究でも、金本位制を脱した国の方が経済的パフォーマンスが良いと言う結果もある。

つまり、経済は我々の生活水準に関係するだけでなく、国家間の緊張を生み、戦争を生み出すほど巨大な力を有しているわけである。
我々はこの巨大な力を適切にコントロールしようと200年にもわたって戦い続け、知識を蓄積してきたのだと言える。

金本位制のメリット

金本位制はデメリットばかりではない。

自国通貨を安定させることができると言う側面もある。
私たちが日本円の価値を信じて疑わないのは、日本政府や中央銀行に対しての信頼があるからである。

信頼が失墜してしまえば、通貨の価値が下がり、ハイパーインフレを引き起こすのである。

つまり、国家の信頼が揺らいでいる国によっては金本位制は有効に働く。しかし、逆を言えば、デフレを引き起こしやすく経済は活性化しない。

逆に、管理通貨制度は、国家的な安定と、民主主義、そして堅牢なシステムを構築し国民の信頼を得なければ成立が難しいのである。現に、いくつかの新興国が、米ドルと一定割合での交換を保証している。

管理通貨制度への移行から、世界各国はインフレとデフレを厳格に管理し、国家経済の安定に努めてきた。その結果、大きな戦争が起こらなかったばかりでなく、世界金融危機を乗り越えることができた。

しかし一方で、世界の借金は増え続け、いくつかの国では財政破綻をしている。また、先進国の生産性の伸びは極めて鈍化しています。金利は0%近くに固定化されており、既存の金融政策では限界がきている。我々の歴史の中で管理通貨制度で起きた問題を振り返り、新たな制度を打ち立てるべき時が来たのであろう。

参考文献・参考資料

「金」先物が2400ドル突破!中国・インドが爆買い「近い将来、4000ドルに上昇」強気予測も (msn.com)

【金本位制のデメリットとメリット】廃止の理由等を含めて解説! | 資産貿易(銀投資ブログ) (s-boueki.com)

「金」の歴史的高騰はまだまだ続く…中国筆頭に中央銀行が爆買いするワケ(重道武司) (msn.com)

金本位制 - Wikipedia

10分でわかる金本位制 – わかりやすく誕生や崩壊の歴史を解説 – | クリプトピックス わかりやすい経済学 (vicryptopix.com)

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