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政治(金融)講座ⅴ1575「通貨の統一と基軸通貨と通貨価値の安定化」

 浪費と消費は違う。インフレとデフレどちらが通貨の価値の安定があるか。今、銀行金利や国債の金利を5%にあげたら預金者に56兆円の利子所得があるとの報道記事があるが、それと同時に国債発行の利払い金が増えることと、企業の収益が圧迫されて、経済の活性化に寄与しない可能性がある。金利の誘導はその点から難しいのである。国債の金利の補填は税収で賄う必要があるがその余力が国家財政にはあるかと言う問題が発生する。赤字財政を補填するために赤字国債を発行して、実質的な国家予算の使途が狭められるのである。景気が過熱してインフレになりそれを冷却するための金利引き上げ以外、提言報道記事のようになると、通貨の信頼性が毀損され、ハイパーインフレになるのであると考える。
さて、話題は変わるが、現在、中国は「元」の基軸通貨化を目指しているようであるが、「元」を受け取り「元」で何が買えるのか。余った「元」をどのように運用すればよいか? 中国経済において、不動産バブル崩壊に派生する債務不履行(デフォルト)が多発しており、中国の債権・証券・株式に投資するリスクは大きすぎるのである。今、ロシアから購入した石油は「元」建て決済であるらしい。ロシアは中国から「元」で何が買えるのか。「元」で他の決済資金として受け取ってくれる国があるか?
中国のGDPの統計に疑義がもたれており、海外との貿易も縮小し、海外からの投資も減少して中国経済が衰退している「元」を受け取りたいとは常識的に思えない。このようなさも国際的に「元」が流通しているというプロパガンダに注意が必要である。今回はそのような報道記事などを紹介する。

     皇紀2684年1月1日
     さいたま市桜区
     政治研究者 田村 司

はじめに

 国家には通貨発行権があるが、無制限に発行すると通貨価値の毀損がおこる。それが、ハイパーインフレなのである。
日本では、金を裏付けにして通貨発行をしていた。戦後は通貨米ドル保有を裏付けにして通貨発行していた。日本では、バブル崩壊後、銀行の融資は預金と資本金(自己資本比率)の規制(バーセル規制)がかけられた。

兌換紙幣と不換紙幣

 国家に通貨発行権がない場合はどのようなことが起こるかと言うと、経済発展に保有外貨内の経済運営という制約が課せられるのである。そして、金融政策や経済政策も他国の影響を受けることになる。ギリシャの国家経済破綻を思い出してもらいたい。ギリシャがユーロ通貨に加盟したために最悪の経済破綻を経験した。これが自国通貨発行権があるならば為替相場が機能して、国家破綻の緩衝材として機能する。インフレなどの激痛が伴うがそれも自然治癒するものである。
経済発展には通貨発行権が必要であると思うのである。通貨発行権の放棄は従属国家になるに等しいのであり、自ら経済発展を放棄するに等しいのである。
もう一つ解説すると通貨発行は無制限ではないのである。銀行は自己資本比率などのバーセル規制がある。銀行が日銀から融資を受けるときは担保提供しなければ融資が受けられない。銀行が日銀にその適格担保を提出することにより与信を受けられる。そのような経過で最終的には企業に融資される。実質的な通貨発行が行われるのである。輪転機で紙幣が印刷されるなどと表現されて誤解を与える場合が多いが、通貨が紙幣として可視化されるのは、一般庶民の買い物としての決済手段のときだけである。このように通貨価値の安定化が国民生活には重要である。

国家と通貨の力学】自国の通貨を「アメリカ・ドル」にしたらハイパーインフレは収まるのか…?アルゼンチンの「ドル化政策」が意外と面白いワケ

原田 泰 によるストーリー • 9 時間

アルゼンチン大統領が公約する「通貨のドル化」

12月10日にアルゼンチンでリバタリアン(自由至上主義者)でエコノミストのハビエル・ミレイ氏がの大統領に就任した。彼の主要な公約は「通貨のドル化」である。

前編『ハイパーインフレのアルゼンチン、ミレイ大統領の公約が興味深い…!「通貨のドル化」が案外うまくいくと思うワケ』で紹介したように、この公約、私はなかなか正しいのではないかと考える。

アルゼンチンは、ハイパーインフレに悩まされ続けてきた。なぜ、そうした国では通貨のドル化が効果をもたらすと言えるのか、考えてみよう。


米ドル化はアルゼンチンにとって「良策」かもしれない Photo/gettyimages© 現代ビジネス

アルゼンチンは2023年8月の消費者物価指数が前年比2.2倍も上昇した。約30年ぶりのハイパーインフレに見舞われており、大統領選ではインフレ退治を念頭に「ドル化」を公約とした。

もちろん、これまでのアルゼンチンの政権が何もしてこなかった訳ではない。

ドルへのペッグ(ドルとの交換比率を固定化すること)、インフレ・ターゲット、マネタリーベース・ターゲット、100%近い高金利、中央銀行の財政赤字ファイナンスの禁止、為替レート介入の抑止などあらゆることをやってきた(ご関心のある方は、原田泰「なぜアルゼンチン経済は停滞したのか?」NUCBディスカッションペーパー NO:20003、2020年、参照)。

これらすべてについて説明するのは煩雑になるので、ドル化と関係のあるドルへのペッグ、つまり「固定為替制度」についてのみ説明しよう。

ドルへのペッグ(固定)は成功しなかった

1991年に固定為替制度を採用し、デノミによって、1ドル=1ペソとした。

当初は、為替レートが固定化されたことにより、物価が落ち着き、金利も下がって経済が順調に成長した。しかし、やがて貿易収支、経常収支が悪化し、1ドル=1ペソが守れないことが明らかになると、1990年代末、ペソは大暴落、再びハイパーインフレとなった。

アルゼンチンは30年ぶりのハイパーインフレーションに見舞われている Photo/gettyimages© 現代ビジネス

むしろ、90年代末まで、なんとか1ドル=1ペソの状態を保ったのが私には不思議でならなかったのだが、つまり、10年近くこの政策が成功していたように見えたのだ。

1ドルを1ペソとする固定為替制度とは、人々が1ペソを銀行に持って来れば、それを1ドルに交換しなければならないというものだ(もちろん、最終的には政府が交換する)。

しかし、政府と中央銀行は、自国通貨であれば、無限に調達できるが(単にお札を刷れば良い)、外貨であるドルを無限に調達することはできない。すなわち、この約束を守り続けることは難しい。約束を守ることができるとすれば、それは、自国通貨の量とその決められた交換比率で同じだけの外国通貨を持っている時のみである。

しかし、アルゼンチンはそんなにドルを持ってはいなかった。固定為替制度がいつか崩壊することは必然だったのだ。

これを踏まえて、ミレイ大統領の公約である「通貨のドル化」を考えてみよう。

演説するハビエル・ミレイ大統領(右)と副大統領に就いたビクトリア・ビヤルエル氏 Photo/gettyimages© 現代ビジネス

自国通貨をドルにすることで生まれるメリット

国内にドルを流通させれば、もはや自国通貨をドルに交換する必要もない。守れない約束はなくなる。

また、実際に自国通貨よりも他国の通貨の方が流通する国はいくらでも例がある。

ソ連崩壊後のロシアでは人々がハイパーインフレになったルーブルを信用せず、しばらくドルやマルクが使われていた。ミャンマー、カンボジア、ラオスでは、人民元も流通している。ネットの旅行情報では、アルゼンチンの観光地ではドルが使えると書いてある。

さらに、エクアドルやエルサルバドルは、実際にドル化をしている。

自国通貨の信用力が弱くハイパーインフレーションになると困るのは、もちろん、少額の取引でも不便なのだが、高額の取引がまったくできなくなってしまうことだ。

住宅を買おうにも、頭金を溜めている間に、頭金の価値がなくなってしまう。

アルゼンチンでは、不動産など、高額のものは、ドル建てで取引している。金持ちはアメリカにドル建ての資産を持っているし、庶民はドル札を家に隠している。アルゼンチンで、ハイパーインフレで、老後の資金を失ったという人は、実はいない。

日本のように、安心して何千万円ものお金を銀行に預けている人はいないからだ。持っているのは、貴金属かドル札かドル資産か不動産である。国債も社債も自国通貨建てのものはほとんどない。

大きな借金も貸出もみなドル建てである。

輸出企業や観光業の人々はドル建てでの貸借でも構わないだろうが、国内向けの企業は大変に不便である。ドルが流通すれば、住宅の頭金や老後の資金を、庶民もドルで貯金できるようになる。

直接外貨を稼げない企業も、平等にドルにアクセスできる。国内市場向けの企業、ここで働く人々に利益がある。

問題は、流通させるためのドルをどう調達するのかということだ。

通貨が弱くなる国が「ドルを持つ意味」

アメリカであれば、ドル札を刷れば良いだけだが、アルゼンチンは、トウモロコシや大豆や牛肉やワインを売ってドルを稼がないといけない。必要な額はGDPの5%程度だろう。

うまい牛肉やワインをドルという紙切れと交換するのだから、これは確かに大損だ。しかし、安心できる通貨がないとあまりに不便なのだから、そう考えれば大した損ではないと言える。また、実際に富裕層の海外取引や庶民のドル預金を考えれば、アルゼンチンの国内には、既にドルは十分にある可能性が高い。


アルゼンチンはハイパーインフレを抑えることができるだろうか Photo/gettyimages© 現代ビジネス

アルゼンチンは経常収支黒字国で、対外純資産金がプラスの国である。金持ちは十分なドル資産を持っているのだから、それを国内でも使ってくれというだけで、十分ドルが還流するかもしれない。

実際にドル化をしたエクアドルやエルサルバドルは、大した混乱は起きていない。

このような実績を見るにつけ、アルゼンチンでも大きな問題が生じることなく、ドル化が実現できてしまうかもしれない。


人民元利用の国際化・自由化レベルが上昇、日本円を抜いて決済通貨4位に

Record China によるストーリー • 2 時間


金額の統計に基づいたグローバル決済通貨ランキングの中で、人民元が日本円を抜いて世界4位のアクティブ通貨へと上昇し、全体に占める割合は4.61%となった。© Record China

人民元利用の国際化について再び「ビッグニュース」が伝えられた。国際銀行間通信協会(SWIFT)がこのほど発表した人民元月次報告によると、2023年11月には、金額の統計に基づいたグローバル決済通貨ランキングの中で、人民元が日本円を抜いて世界4位のアクティブ通貨へと上昇し、全体に占める割合は4.61%となった。この割合は5年近くぶりの最高を更新し、22年初頭を超えていた。

09年に越境貿易における人民元建て決済がスタートしてから現在まで、人民元国際化は10数年にわたり発展を続けてきた。現在、中国の金融機関、企業、個人が行う越境取引総額のうち、半分近くが人民元建てで決済を行う。主要オフショア人民元市場のストックは1兆5000億元(約30兆円)に達し、人民元建ての金融商品が日増しに充実している。22年5月には国際通貨基金(IMF)が特別引出権(SDR)の通貨バスケットの構成比率を見直して、人民元の割合を16年に決めた10.92%から12.28%へとさらに引き上げ調整して、人民元利用の自由化レベル上昇に対する国際社会の評価を示すこととなった。(提供/人民網日本語版・編集/KS)

日本経済を上向かせるには「賃上げ」より「利上げ」 「サウジの原油より豊かな“鉱脈”」となる高齢層の個人金融資産を掘り出せる

マネーポストWEB によるストーリー • 5 日

「利上げ」が日本経済活性化のきっかけになる理由とは(イラスト/井川泰年)© マネーポストWEB 提供

 日本はいま「低欲望社会」に陥っている。超高齢化と人口減少が加速する中で、“欲なき若者”が増加し、潤沢な個人金融資産を持っている高齢者も将来不安によってお金を使わなくなっている。日本経済を復活させる方法はないのか。経営コンサルタントの大前研一氏が「いま日本がとるべき経済政策」を提言する。

 * * *

 日銀の資金循環統計によると、2023年6月末時点の個人金融資産は過去最高を大幅に更新する2115兆円に達し、初めて2100兆円を超えた。そのうち現預金が52.8%の1117兆円を占めているが、それをメガバンク3行の10年定期に預けていても年0.2%の金利しかつかない。1117兆円だと年2兆2340億円だ。

 しかし、もし年5%の金利がつけば、1117兆円に対する金利は年約56兆円となる。これはサウジアラビアの原油収入の2倍以上であり、日本は世界でも稀に見るキャッシュの“埋蔵量”が豊富な国なのだ。

 ところが、そのキャッシュは雀の涙ほどしか金利がつかない銀行などの預貯金に塩漬け状態になり、メガバンクばかりが儲かる歪なかたちになっている。

 世界では、カネ余りになったら、ふつうはそれを使う。たとえばアメリカ人は、本連載で何度も書いてきたように、若いうちからフロリダやサンベルトなどの暖かい地域にセカンドハウスを買って貸し出し、リタイア後はそちらに移住するというライフスタイルが定着している。1人が2軒の家を所有するから、GDPが拡大するのだ。

 日本人と同じように勤勉で質素倹約のメンタリティだったドイツ人も、近年は住宅が贅沢になり、夏休みを1か月ぐらい取って海外で長いバケーションを楽しむようになっている。

 一方、日本人のライフスタイルは、30年以上も給料が上がっていないこともあって、慎ましいままだ。日本は2023年の名目GDP(国内総生産)でドイツに抜かれて4位に転落する見通しだが、すでにライフスタイルの豊かさではドイツに抜かれているのだ。

 日本は、個人金融資産の3割以上=約650兆円を65歳以上の高齢者世帯が現預金で保有している。それが銀行預金などの“眠れる資産”になっているから、景気が上向かないのである。

 結局、日本は金融庁が「老後30年間で約2000万円不足する」と試算した「老後2000万円問題」(その後削除)などが国民の漠たる将来不安をいっそう募らせてしまい、実際は必要十分な個人金融資産を持っている高齢者も萎縮してカネを使おうとしないのだ。

 しかし、政府が「生活に困ったら国がすべて面倒を見る」と約束すれば(そのための方策については拙著『第4の波』などで詳述)、日本人は将来不安から解放され、個人金融資産が市場に出てきて景気が一気に良くなるはずであり、そうすることこそが政治の役割ではないだろうか。


政府が取り組むべき政策は「賃上げ」より「利上げ」

 ところが岸田首相は、経団連の十倉雅和会長や連合の芳野友子会長らとの「政労使会議」において、デフレ脱却のために春季労使交渉(春闘)で前年を上回る水準の賃上げを実現するよう要請した。これを受けて連合は、2024年春闘の賃上げ要求水準を2023年の「5%程度」より表現を強めて「5%以上」とする闘争方針を決定した。

 もちろん働き手にとって賃上げは重要だ。しかし、政府主導の“官制賃上げ”ですべての企業・従業員の給料が上がるわけではない。しかも、厚生労働省の毎月勤労統計調査によると、物価変動を反映させた9月の実質賃金は前年同月比2.9%減で、18か月連続のマイナスとなっている。

 つまり、日本経済を上向かせるために政府が取り組むべき政策は、「賃上げ」要請よりも「利上げ」なのだ。約650兆円もの現預金を持っている高齢層の財布の紐が緩んで市場にカネが出てきたら、すぐにデフレからも脱却できる。

 このままいけば、アメリカの高金利に引っ張られて日本の長期金利も徐々に上がるだろう。しかし、これから日銀は積極的に金利を上げ、高齢層の個人金融資産というサウジアラビアの原油よりも豊かな“鉱脈”を掘り出さねばならない。

 ただし、利上げすればモラトリアム(支払い猶予)で延命されていたゾンビ企業が倒産するだろうし、利払いが増える国債のデフォルト(債務不履行)による国家破綻のリスクも高まる。まさに綱渡りの金融政策と財政運営が必要となるが、それを乗り切らなければ、この国の明るい未来を切り開くことはできないのだ。

【プロフィール】

大前研一(おおまえ・けんいち)/1943年生まれ。マッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社長、本社ディレクター等を経て、1994年退社。ビジネス・ブレークスルー(BBT)を創業し、現在、ビジネス・ブレークスルー大学学長などを務める。最新刊『日本の論点2024~2025』(プレジデント社)など著書多数。

※週刊ポスト2024年1月1・5日号

参考文献・参考資料

【国家と通貨の力学】自国の通貨を「アメリカ・ドル」にしたらハイパーインフレは収まるのか…?アルゼンチンの「ドル化政策」が意外と面白いワケ (msn.com)

人民元利用の国際化・自由化レベルが上昇、日本円を抜いて決済通貨4位に (msn.com)

日本経済を上向かせるには「賃上げ」より「利上げ」 「サウジの原油より豊かな“鉱脈”」となる高齢層の個人金融資産を掘り出せる (msn.com)

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