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『公園物語』 その5

僕はとにかく、高い山を作ることにした。

砂場もすっかり綺麗になって、娘も砂場に飽きてきて、
何をしようかと悩んだ末に、でっかい山を作ると決めた。

とにかく砂を集めていく。
100均で買ったスコップを僕が、冷凍庫で氷を掬う用のスコップを娘が持って、そのプロジェクトは動き出した。

これには理由があるんだ。
前の梅雨明けに学んだが、砂場は放っておくとどんどん草が生えてくる。
雑草の、根っこも種も根強く砂の中に残っているのだ。
それを全部取り切るのは無理だ。

どうすればいいかを考えた。
そして、「遊べば良い」と閃いた。

遊べば砂は混ざり合い、種や根っこが死んでいくのだ。
そして誰かが遊んだ形跡があれば、他の子たちも遊びたくなるだろう。
これぞ文化。これぞ循環。

とにかく高い山を作る。
崩れても崩れても、真ん中めがけて土を投げる。
自然と土台は大きくなって、高い山になっていくだろう。

その公園には水場がなかった。
だから余計にシンプルだ。

ザク、ザク、ザク。
積み上げていく。

ザク、ザク、ザク。
ひたすら、ひたすら。

ザク、ザク、ザク。
そのうち、小学生が集まってきた。

「何してんの?」
「え、山たっか!」
「踏んでいい?」
どんどん集まる。

「踏んでも良いよ」
と僕が言うとびっくりしていた。
山を高くすることが目的じゃないのだ。
山を作ることが目的なのだ。

「え、じゃあ踏むで?踏むで?」
いいよ、と言われると逆に躊躇する子どもたち。

ついに踏んで、嬉しそうにする少年。
それでも土を積み上げ続けると、今度は協力し始めた。

おお、仲間ってこうやって増えるのか。
嬉しい。

めちゃくちゃでかい山ができた。
まわりには10人ぐらいの小学生。
「よし!完成でええやろ!」
と言うと自然と拍手が起きた。

そのとき一人の少年が
「あ!」
と言うなり山を削りだした。
僕も他の子たちも「え!」となった。
「おい!やめろよ!」と、止める子どもたち。
止まらないその子。

いや、これは壊してやろうという目じゃない。
何かを閃いた目だ。
「いや、なんかおもろそうや!
 やらせてみよう!」
と、言って待ってみることにした。

そうすると出来上がったのは、
大きな椅子だった、、、!

つまり、大きな山を削って大きな背もたれにした。
そして足が入る穴を掘って、背もたれの横には肘かけまで作ってしまった。
銭湯のマッサージチェアみたいだ、、、

こんなことが起こるのか。
その時だ。子どもたちの中に眠る創造性に、僕が希望を持ったのは。

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