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kintoneによる中小メーカーのDX挑戦記

2023年初noteは、業務改善ツール「kintone」を活用した弊社のDX(デジタルトランスフォーメーション)への挑戦を紹介します。導入のきっかけや選定理由、導入後3年間での変化をまとめてみました。

きっかけ

導入のきっかけは、営業担当者との同行訪問です。入社半年が経ち、ぼくは初めて得意先へ伺うことになりました。

訪問前の事前準備。売上高や販売品目といった定量情報は、社内システムにありました。しかし、最近の商談状況や先方のキーマンといった定性情報はどこにもありません

というのも、定性情報は営業担当者の脳内にありました。いわゆる情報の属人化です。このため、初同行時は行きの車中で情報共有を受けました。

誤解のないよう補足すると、営業担当者に問題があったわけではありません。聞けば何でも教えてくれるし、細かい情報も把握している。むしろ個々の管理能力は高いと思っています。

問題は会社として情報を共有・蓄積する仕組みがなかったことです。昔からの名残もあり、口頭共有で良しとされていました。

しかし、変化の速い時代において、タイムリーな情報共有は必要不可欠です。また顧客情報の属人化は潜在リスクです。

挨拶まわりを終え、「情報の共有・蓄積」に取り組むことを決めました。

選定理由

まず取り組んだことは、土台となるツール探しです。自社開発は時間も費用もかかるため、既存ツールから探すことにしました。

最初に注目したのは営業支援ツール(SFA)です。特にあてもなかったため、数社に問い合わせました。

しかし、詳細を聞けば聞くほど「うちでは無理だな」と思いました。月額利用料が想像以上に高く、テレビのリモコンと同じで明らかに使わない(使えない)機能が多かったからです。

ITリテラシーに不安のある中小メーカーが、使いこなせるイメージがわきませんでした。

あくまで目的は「情報の共有・蓄積」です。もっとシンプルなものでいい。

そこで注目したのが、プログラミング不要のノーコードツールです。なかでも、弊社がサイボウズofficeユーザーだったこともあり、同社の「kintone」には興味がありました。

kintoneを選んだ理由は3つあります。1つ目はアプリ作成の手軽さです。最初に作った商談情報を記録するアプリは、ネット情報を参考に1時間程度で完成しました。

2つ目が会社以外からでも利用可能なクラウド型システムです。特に営業担当者は外出も多く、場所を問わず登録・閲覧できることが重要でした。

3つ目は良心的な月額利用料です。営業支援ツールとの比較で割安感があったことは事実ですが、手を伸ばしやすい料金体系も魅力でした。

こうした理由を踏まえ、最終的にkintoneの導入が決まりました。

浸透に向けた工夫

無事にツールは決まったものの、1つだけ懸念点がありました。導入後の「浸透」です。きっかけとなった商談記録アプリだけでは、必要時しかkintoneにログインせず、浸透しない可能性がありました。

利用者全員がkintoneに毎日ログインする方法はないか。そこで思いついたのが、別システムを利用していた日報の移行です。「日報をkintoneに移行すればログインせざるを得ないはず」と。結果的にこれはうまくいきました。

あとは社長からの発信です。事あるごとに、kintoneの積極利用を促してくれました。トップの鶴の一声は効果絶大でした(笑)

アプリ紹介

弊社の代表的なアプリを3つ紹介します。

①商談記録

文字通り、取引先との商談情報を記録(共有)するアプリです。当初は得意先情報のみでスタートしましたが、その後kintoneが全社利用となり、現在は仕入先や外注先の情報もすべて集約されています。

登録画面
ボタン選択で報告先を瞬時に表示
顧客ページからは過去の商談記録を時系列で確認可能

②見積案件管理表

得意先への見積回答内容を登録し、進捗管理するアプリです。Excel管理をkintoneに移行しました。期日管理に通知機能をフル活用しています。

登録画面
後追い期日を過ぎると担当者や上長に通知が飛ぶ
蓄積データをCSV抽出し、Googleスプレッドシートで可視化

③提案管理

2年前より注力している提案制度(社内の改善提案)を管理するアプリです。改善写真や提案評価を一元管理しています。

登録画面

導入後の変化

導入後3年が経過し、アプリ数は37個に増え、利用も全部署に広がりました。kintoneは弊社にとって「なくてはならないツール」となりました。

トップページにアプリ一覧を表示(一部抜粋)

商談記録の登録数は2600件を突破。当初目的の「情報の共有・蓄積」は着実に進んでいます。電子化による紙削減にも一役買っています。

商談記録の一覧画面

今後の課題

とはいえ、kintoneによる業務改善の余地はまだまだあります。「アプリの品質安定」や「現場開発者の育成」は今後の課題です。

誰でも手軽に作成できるからこそ、使いづらいアプリの量産や車輪の再発明を防ぐ必要があります。また、より現場目線の開発を行うため、部署ごとで専任担当者を最低1名は置きたいと考えています。

勉強会による知識向上や作成アプリの品質管理を行いながら、さらなる活用方法を模索します。

最後に

世間ではDXが叫ばれて久しいですが、投資予算が限られ、アナログ作業も多い中小メーカーが一気に変わることは難しいと思います。特に社歴が長いほど、慣れた業務を新しいやり方に変えるハードルも高いです。

だからこそ、開発コストの低いノーコードツールを使い、日常業務の小さな改善から始めることがDXの第一歩ではないでしょうか。そういう意味で、kintoneは弊社にとって最適なツールでした。

まだ道半ばですが、これからもkintoneを通じて「あってよかった」の声を増やしていきたいと思います。

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