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『やる気を引き出し、人を動かす リーダーの現場力』に学ぶ、経営者のあり方

今回は『やる気を引き出し、人を動かす リーダーの現場力』を紹介します。

要約

ファンドより送りこまれた著者による、旧態依然とした老舗企業(ミスターミニット)を立て直した経緯とノウハウをまとめた1冊です。経営層や管理職向け。

所感

ミスターミニット(再建前)と家業の組織課題は似ている点が多く、自分にとってのベストプラクティスでした。

特に、
①経営者(リーダー)のあり方
②人材育成とモチベーション向上を両立させる仕組み
③組織がハマりやすい罠

の3つは参考になりました。

印象に残った内容(抜粋)

「自分は何をしてほしいか」の前に、「あなたは何をしてほしいか」を問う

小さな要求から多少コストがかかる要求まですべて、そしてなるべく早く実現しまくることだけを意識した。
(中略)
なぜか。現場を尊重していることを「形」にして示すためだ。それまでないがしろにされ続け、不信感しかない現場に、共感の気持ちを表現するためだ。そしてひいては、リーダーとして信頼してもらうためだった。

はじめから自分がやりたいことを押しつけず、まずは、相手の希望を叶えるところから始めよう。大きな施策に手を出すのは、フォロワーができてからでいい。「自分は何をしてほしいか」を伝える前に、「あなたは何をしてほしいのか」を問うのだ。

まずはgiveから。自分も「相手の要望を3つ叶えて、自分の要求を1つお願いする」を意識しています。現場からの信頼は、親身に話を聞くことではなく、不平不満を解決することでしか得られないと思っています。

組織の雰囲気はリーダーで決まる

短所に注目するリーダーは、自分も周りも疲れていく。

コミュニケーション不足はあっても、コミュニケーション過多はない。

どちらも短い言葉ですが、心に刺さるものがありました。組織の雰囲気はリーダー次第。

リーダーの自己成長なんていらない

リーダーは、自己成長なんて考えなくていい。そんな自意識なんて、いらないのだ。

自己成長が気になるレベルではダメということ。わかりみが深いです。

経営者の仕事は課題を変えること

経営者の仕事は、「現在の課題解決」ではなく課題を変えること。会社のステージを変える大きなアクションを取ることで、非線形の成長に導くことだ。

課題解決より課題設定。「ラクな方に逃げるな」というメッセージに聞こえました。

仕組みをつくる前に、邪魔な仕組みをやめる

仕組みをつくり直す前に「邪魔な仕組み」―やる気を削ぐような制度、挑戦を阻害している文化などを潰し、環境を整える必要がある。

そこそこの歴史を持つ会社には、「それが当たり前」「部下の仕事はそういうもの」という根拠不明の常識がたくさんある。これらの思い込みを取り除きムダな仕事をなくしていくのも、リーダーの役割だ。

うまくいっていない組織ほど、「始めること」より「やめること」のコスパがいいと思います。手っ取り早いし、現場の負担も増えない。

意識的に「スター社員」を生み出す

僕は社長になってしばらくは自ら率先して、そして人事権を委譲してからも意識的に「いままであり得なかった」抜擢人事を推奨する空気をつくっていった。

抜擢人事のいいところは、ついこの前まで同じ舞台で同じ役柄をもらっていた仲間がスターになって活躍することで、「自分もあの舞台に立ちたい!」「頑張れば自分もスターになれるかもしれない!」とみんなが期待し、全体が盛り上がるところだ。適切なチャンスは、組織を活性化する。

抜擢人事は勢いのある組織の共通点。「成長してから任せる」ではなく、「任せて成長してもらう」が正解なんでしょうね。

「火つけ」専門の役職をつくる

僕は気づいた。売上の低い社員は、ただやる気がなかったり、技術力が低かったりするばかりではない。「どうすれば売上が上がるのか」「どうすれば楽しく仕事ができるのか」のイメージを持てていない人も少なくないのだ、と。
(中略)
そこで、この「火つけ」専門の役職をつくってはどうかと、圧倒的な「やる気、技術、サービス力」を兼ね備えた2名の職人に「モバイルマネージャー」という職に就いてもらうことにした。特定の店舗には入らず、「モバイル」の名のとおり全国の各店舗を3~5日単位で飛び回り、一緒に働いて火をつける仕事だ。

モバイルマネージャーは、行ってしまえば優秀な社員を昇格させるだけなので低コストの割に、継続性も高い。ROI(投資対効果)に注目すれば、売上を伸ばすためには広告を打つより人を育て、人のやる気に火をつける仕組みに投資するのがいいのは明らかだった。

この仕組みは理にかなっているし、おもしろいと思いました。能力は高いけどチームマネジメントは苦手な人にも、新たなキャリアパスを提供できそう。

インセンティブはわかりすいことが大切

インセンティブはわかりすいことが大切だ。細かくてわかりづらいインセンティブは、あまり意味がない。
じつは僕もサービス強化のためにかつて人事評価の「サービス」の配分点を2倍にして給与に反映したことがあるのだが、それでも張り切る社員はほとんどいなかった。「2倍売ったらボーナス2倍」などインパクトの大きなインセンティブなら別だろうが、半年間頑張り続けてボーナスが2~3万円変わる程度のリターンのために、行動を変える人などほとんどいないのだ。

とても納得。弊社もインセンティブ施策に取り組んでいますが、支給要件は複雑にせず、シンプルさにこだわってます。

レイヤーをズラす会議

「どうすればもっと会社全体で情報共有や意思疎通がうまくできるだろう ? 」と考えたときにもっとも有効だったのが 、 「会議のつくり直し 」だった 。
(中略)
そこから発想したのが 、 「レイヤーをズラす会議」だ 。いままでの会議は 、役員の会議 、部長の会議 、店長の会議が分断され 、完全な横割りになっていた 。それを毎回数人ずつ 、自分のポジションよりも経営に近いレイヤーの会議に参加してもらうようにしたのだ。

この会議には情報共有だけでなく 、経営に近い人たちがどんなことを考えているのかをリアルに感じてもらえるメリットもある 。普段は触れる機会のない会社運営への実感を持ったり 、仕事により責任感を持つようになったり 、直接議論することでポジションごとの壁がなくなったりと 、それぞれいい経験ができているようだ。

この発想はなかったです。早速、管理職主体の会議に若手(幹部候補)を議事録担当としてアサインしたいと思います。

「なんとなく正しそう」は正しくない

「なんとなく正しそう」な戦略にとりあえず食いつくのは、正しくない選択である可能性が高い。「正しそう」は、ぼんやりとした一般論にすぎない。さらにそれが自分の会社にも当てはまるかどうかは、まったくの別問題なのだ。

手段の目的化。自分も他業界の成功事例を聞くとすぐに試したくなりますが、「なぜやるのか」があってこそですね。

「採用を控える=現場には投資しない」というメッセージ

「採用を控える」という経営判断は、「現場には投資しませんよ」という現場へのメッセージだ。そんな逆ラブレターのようなメッセージを受け取れば、おもしろくないに決まっている。

100%同意。自分も「採用は未来の売上をつくるための投資」という考えです。採用抑制によるコスト削減は最終手段と思っています。

ダメになっている会社はやめることもできない

ダメになっている会社は、新しいことを始められない一方、やめることもできなくなっている。僕は「『なんとなく』はすべて止める」と腹をくくり、そこで浮いた人やお金を現場に投資することにした。

弊社も付き合いでの顧問契約や使いこなせていないITツールなど、なんとなく続けていた投資をすべてやめました。「やめることができない」は、「やめるライン(いつまでにどのような成果)を決めていない」から起こる仕組みの問題だと思っています。

最後に

というわけで、『やる気を引き出し、人を動かす リーダーの現場力』の紹介でした。

本書を初めて読んだのは、前職のマネージャー時代。当時もたくさんの学びを得ましたが、家業入社後に読み直すと納得感が増しました。

これからも折を見て読み返したい1冊です。

(最後までご覧いただきありがとうございました)

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