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【詩】野生の新聞紙を拾った

散歩した
風がビュウビュウ吹いているのに
散歩した

頭のモヤモヤを晴らしたくて
風が飛ばしてくれるかなって
思ったから散歩した

モヤモヤではなく
グチャグチャの
新聞紙が
飛ばされているのをみた

道路を横断し
私のほうへ飛ばされてきた

このまま放っておいてもいいけど
かわいそうな気がしたし
放っておく罪悪感とか
残していくことへの後ろめたさを感じて
私は野生の新聞紙を拾った

あんたはどこから来たの
多分そこらの畑でしょう
いらないゴミとか
出来損ないのお野菜とか
そういうのを包む役割を終えて
ほっぽり出されたの
それとも
何もかも嫌になって
逃げてきたの

何があったか知らないけど
いまは一緒に海を見よう
壮大な自然でも見れば
嫌なことも忘れられるんじゃない
ちっぽけだったって
思えるんじゃない

ちっぽけじゃないよね
ごめんね
苦しいことは本当なのに
ちっぽけだなんて
言わないでよね

海は荒れ狂っていた
別にいいじゃんね
そんな日があったって
いいじゃんね

グチャグチャの新聞紙
開いてみると
2年前の新聞だった
どっかのおじーさんが
しわくちゃ顔で
微笑んでいる

さいごに出会えたの
私でよかったですか
なんて
調子に乗ったこと思ってみる
私は
あんたに出会えてよかったよ

家に帰った
拾った新聞紙は
ゴミ箱に葬った

ありがとう
さようなら
さようなら