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【元アイドル社長&政治家が解説】アイドルになる時の「働き方」や「契約」のいろは~アイドル活動を決めた人、そのご家族の方々へ~

初めに

自己紹介

こんにちは。
渋谷区議会議員/株式会社ツギステ代表の橋本ゆきです。

政治家としてのキャリアは6年目を迎え、
女性の健康支援やエンタメ・カルチャー支援、多様な選択肢があるまちづくりに取り組む一方で、
株式会社ツギステを立ち上げ、アイドルのセカンドキャリア支援を行っています。

なぜ政治家がアイドルのセカンドキャリアを支援しているかというと、私自身17歳から9年アイドル活動を行っていたこともあり、アイドル卒業後のキャリアに悩む仲間を身近で見てきたことが背景にあります。

また、アイドル現役時代も「この先どうやって生きていくのか」という漠然とした将来への不安を抱えながら活動していた子は、私も含め、多かったように感じていました。

アイドル活動自体は、自己表現力や、目標達成力、チャレンジ精神、コミュニケーション力などを鍛えることができたとても良い場所であったと思っていますし、ユニークな経験ができるという意味でも、「やって良かった」と心から思っています。
(アイドルをやっていなかったら政治や起業に挑戦することもなかったと思います…!)

ただ、そうして夢に挑戦した若者たちを次のキャリアに繋げることができないという課題が一部であるのも事実です。
その課題解決としてアイドルセカンドキャリアの支援を始めました。

アイドルの舞台裏

アイドルといえば、煌びやかなステージ。

そこに憧れてアイドルに挑戦する方もどんどん増えています。
今、日本にアイドルグループは1,500組以上、人数にして1万人のアイドルがいると言われています。

アイドルをサポートする側になって、新たに感じた課題が、

アイドルを始める前に、もしくは現役中に「アイドルとして働く」ということの意味をよく理解することが大切だ。』

ということです。

私も、アイドルとして収入を得て生活するということが
「フリーランス」にあたるということ
 ※「フリーランス(従業員等を雇わずに一人で働いている者等)と定義させていただきます」
・確定申告を毎年しなくてはいけないこと
・国民健康保険に加入するということ など
初めて知ることばかりでした。

「フリーランス」は事務所に雇われている「労働者」ではないので、
怪我や病気をしても補償がなかったり、労働時間を定めている労働基準法の対象にならない、なんていう当たり前のようなことも実はよく理解せずに活動をしていました。

業界自体も特殊ですし、夢を与えるお仕事であるが故にその舞台裏の情報が見えにくいので、やってみないとわからないことばかりなのです。

もっと言えば、
契約条件に関する知識や社会制度についてはよく分からないまま活動している方も多くいらっしゃるのではと思います。

タレントやアイドルのことをしっかりと考え・サポートされている素晴らしい事務所もたくさんある一方、裾野が広がったことにより、環境が整いきっていない事務所も事実として多く存在しています。

「労働者として法的に守ってもらえない」
「裏側が見えづらい」「表に出る職業のため、気軽に相談できない」
そうした環境の中で、本人に不利な契約による搾取や、タレントへのパワハラや性被害などは、今となっては社会問題として提起されています。

フリーランスを守るための法律として
令和6年11月にはいわゆる「フリーランス新法」が施行されますが、
それによって業界がどのように変わっていくのかは未知数です。

「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(フリーランス・事業者間取引適正化等法)
個人で働くフリーランスに業務委託を行う発注事業者に対し、業務委託をした際の取引条件の明示、給付を受領した日から原則60日以内での報酬支払、ハラスメント対策のための体制整備等が義務付けられます。

「厚生労働省」HPより

推し活の隆盛

また、アイドル業界に限らず「推し活」という言葉の認知度が上がり、若年層(小~中学生層)にも広がっています。
現代において「推し活」は、個人のアイデンティティ形成やコミュニティの一部として機能しています。
自分の好きなものを他者と共有し、共感を得ることで承認欲求が満たされるなど、特に若年層において重要な文化的要素となってるのではないでしょうか。
このような背景の中で、アイドル的なフリーランスとしての働き方をする人は、今後益々増加していくと考えられます。
そうなった時、これらは業界の小さな課題では無く、今の若年層を含めた社会全体の課題として浮かび上がってくる可能性もあります。

自分の身は自分で守る?

ハラスメントや性被害、不利な契約による搾取に対して「自己責任だ」という声もあります。

「自分がやりたくてやっている。」
「分かって入ったんだから。」
このような言葉も多く聞こえてきますし、そのように思う気持ちも理解できます。

しかし、中学生、高校生から芸能界に入るという方もいますし、
まだ社会に出た経験のない若い方々に「自己責任論」のみで片付けるのは、挑戦する若者を減らしてしまう可能性もあるのでは無いでしょうか。

また、本人のご家族や周囲の方々が責任を持つとしても、
先述したように、
アイドルというのは「特殊な業界でのフリーランス」であり、契約者の報酬や権利といった情報が調べてもほとんど分からないお仕事です。

そんなお仕事に対して、業界や社会制度を理解して、「何が妥当な契約なのか」「どういうリスクに気をつけなければいけないのか」などを考え、意思決定を行うというのは非常に難易度の高いことだと思います。

自己責任論の限界

アイドルに挑戦した当人、そのご家族のみに、リスクや堅苦しい制度の前提を一方的に理解しろというのは、自己責任と言われればそうかもしれませんが現実的には難しいことだと感じます。

ただ、少しでも前提知識があれば、自分自身、もしくはこれからアイドルに挑戦するご家族も、安心して挑戦や応援ができるかも知れません。

これからアイドルを始めようとしている方、今まさに活動している方、
そしてそれを支える方々に是非見ていただき、不透明感を解消して欲しいと思い、本文を編集いたしました。

アイドルに限らず、個人として芸能などの特殊な業界に挑戦する若い方々に共通する項目も多いと思いますので、
【誰もが安心して挑戦するためのチュートリアル】として、ご覧いただければ幸いです。



第1章:アイドルとしての働き方について

1.アイドルの就業形態

アイドルは”フリーランス”

「アイドル」小さな頃から憧れていたものになった17歳の頃の私は、「芸能界」という特別な世界で、「特別なお仕事」をしているんだと思っていました。
ライブ、撮影会、レコーディング、新曲の振り付け、生配信…アイドルとしての日々は忙しく、学生時代の当時の周りの学生たちと比べてもその忙しさのレベルは段違いでした。

「それって労働基準法的にどうなの?」
あまりの忙しさと睡眠不足でげっそりとした私にとある友人がぽつりと言いました。
17歳であまり法律的なことや働き方の種類やルールに詳しくないままアイドルを始めた私にとっては当たり前の働き方だったことが、周りには異常に見えていたようです。

「長時間労働」や「最低賃金」といった労働基準法関連のニュースなどでよく取り上げられるフレーズはなんとなく知ってはいるものの、
私が身をおいている芸能界にはそんなものは関係ないのだと当たり前に思っていました。

そして、
改めてアイドルとはどういう働き方なのかを調べ、私が結んだ契約書にももう一度目を通したりして再確認したことは、

私は「フリーランス」で
雇用されている「労働者」じゃない
ということでした。
労働者じゃないので労働基準法で権利を守ってもらえるわけではないのです。
だから長時間働こうとお給料が少なかろうと契約違反でない限り問題ない…ということです。

その時に初めて、
アイドルは事務所と契約を結ぶ「フリーランス」で、自分のことを自分でマネジメントしなくてはいけない職種なのだ。
と、社会の仕組みの中でアイドルがどういうものに位置付けられるのかを認識しました。

確かに特殊な業界ではありますが、
社会の中では、フリーランスのイラストレーターや税理士のような、数多くいる個人で事業を営む人たちの1人だったわけです。

そこで
「そういえば開業届とか確定申告とか母にやってもらっていたっけな。あれはフリーランスとしての個人事業の開業手続きだったのか。」
とやっと理解しました。

お恥ずかしながら、
「フリーランスとしてやること」なんて高校でも予備校でも大学でも教えてもらえないものですから、
意味も分からず色々な手続きを母に丸投げしてやってもらっていたのです。

「確定申告などの手続きがなぜ必要なのか」も
「会社で働く労働者とフリーランスがどう違うのか」も
もちろん理解していませんでした。

でも、アイドルとして「働く」という以上、
その働き方の
お給料、税金、社会保障etc…がどうなっていくのかは知っておいた方が良い!
と今の私は思います。

お給料の形態を理解すれば、
貯金の見通しや副業なども検討しやすくなりますし、
税金の払い方をわかっていれば、税金を払いすぎずに済みます。
社会保障のことを理解していれば、自分が高齢者になった後や病気になった時の備えも考えられるようになります。

自分の人生をどう歩んでいくかと
自分の働き方にどういうメリットデメリットがあるのかはとても深く関係がある
ことなのです。

この章では、アイドルとしての働き方についての基本を紹介していきます。 


会社員との違い

多くのアイドルは「フリーランス」として事務所に所属し、マネジメント契約を結んでいます。
少数ですが、事務所の社員として会社員の形態で働くアイドルも存在します。
フリーランスと会社員の働き方には大きな違いがあります。

個人的事業主は会社に雇用されるのではなく、自分で独立して仕事を請けます。
働く時間や仕事の選択は自身で決められるため、自由度の高い働き方ができると言われています。
(アイドルは事務所との契約内容や関係性によって自由度は左右されると思いますが…)
反面、困った時のセーフティネットが多くはありません。
雇用保険に加入することはできませんし、原則として厚生年金や健康保険、育児休業などの会社が提供する社会保障も受けられません。
また、納税も自分で確定申告を行う必要があります。

一方、会社員は会社の一員として、所属する会社の方針や指示に従って働きます。収入が安定しているので、フリーランスよりも社会的信用が高かったりもします。
会社の社会保障制度に加入でき、労働時間が基準を超えた場合には残業手当が支給されたり、

有給休暇も取得できたり、ある程度の保障や休暇制度が約束されています。
さらに「不当に解雇されない」といった権利も守られていたりと、会社員は安定しているといわれるのも納得です。そして、納税は会社が源泉徴収や年末調整を代行して行います。
反面、仕事内容や勤務時間などは会社のルールに従う必要があるので、
フリーランスに比べると働き方の自由度は低いということになります。

この二つの働き方はどちらが良いのでしょうか?
結論から言うと、働き方の問題ですのでどちらにもメリットとデメリットがあり、一方が良い/悪いということはありません。
ただ、仕組みを「知らない」ことで将来的なリスクを抱えてしまう可能性はありますので、アイドルの皆さんには自分の就業形態について少しでも意識してもらえれば嬉しいです。


報酬の貰い方~成果報酬と固定報酬~

アイドルの報酬形態は、所属事務所の方針や運用形態、契約内容によって様々です。
一般的には、ライブやイベントの出演回数、物販の売上などに応じた成果報酬が多いですが、固定報酬型の契約もあります。

成果報酬型は、
活動実績が収入に直結するため、やりがいがありますが、収入が不安定になります。
例えば、ライブの出演料やファンからのプレゼント売上が収入源となる場合、人気が出て売り上げが上がればその分高収入が期待できますが、イベントが少ない時期やその時の人気によって収入が減少するリスクもあります。
コロナ禍ではイベント自粛の影響で多くのアイドル、エンタメ関係者の生活が危うい状況になったことは記憶に新しいですよね。

固定報酬型は、
月々の収入が安定しており、生活を安定させやすいというメリットがあります。
ただ、成果に関係なく一定額しか支払われないため、大きな成果を上げた場合でも報酬に反映されにくいのでモチベーションが上がりづらいというデメリットもあります。


2.税金や社会保障

税金の払い方は?

フリーランスとして活動するアイドルは、自分で税務申告を行う必要があります。
年に一度、確定申告を通じて収入や経費を申告し、所得税や住民税を納めます。
経費として認められるものには、衣装代、交通費、プロモーション費用などが含まれます。

経費を計上する際には、領収書やレシートをきちんと保存して、自分のお仕事による収入と支出を明確に把握することが必要です。
しっかりと記録をつけていれば、
オンラインで自分で確定申告もできますし、
税理士などに依頼して確定申告の手続きを代行してもらうこともできます。

アイドルの仕事専用の銀行口座を開設し、
プライベートな支出と分けて管理すると
確定申告時にスムーズに対応できるようになるのでおすすめです。


社会保障は?~病気やケガで働けない時は~

公的医療保険制度には、
おもに自営業者やフリーランスの方などが加入する「国民健康保険」と、
会社員が加入する「健康保険」、
公務員や学校の私立教職員が加入する「共済組合」
があります。

病気やケガで一時的に働けない場合、会社員であれば健康保険から傷病手当金が支給されることがありますが、自営業者やフリーランスの方が加入する国民健康保険にはこのような保障がありません。

そのため、
自主的に健康診断を定期的に受けるなどの健康管理や
病気やケガで働けなくなった場合に備えて、収入補償保険に加入し、長期的に働けなくなる万が一の事態に対応できるようにするなどの備えも検討して良いと思います。


将来の年金にも違いはあるの?

年金についても大きな差があります。
会社員は国民年金に加えて厚生年金に加入しているため、将来受け取る年金額が比較的安定していますが、
フリーランスは国民年金のみの加入のため、会社員より受け取れる年金が少ない仕組みとなっています。
場合によっては追加の積立なども選択肢です。

また、会社員は雇用保険に加入しているため、失業時の給付を受けられますが、
フリーランスはこれにも該当しません。


失業保険の代わりと言うと少し違う気もしますが、
一定期間生活できるだけの貯金を自分で用意したり、
必要に応じて民間保険への加入をしたりも一つの備えだと思います。


労災について~仕事中に事故やケガに際には?~

アイドル活動中に発生する事故や怪我は意外と多いです。
私の場合はライブ中に骨折したり、マイクとぶつかって歯を折ったり、声の出し過ぎで声帯に結節ができて手術をしたり、メンタルでは不安障害を患ったりと、かなり医療費がかさみました。

そういう時の保障はどうなっているのでしょうか?

会社員などには「労災保険」という
業務上、もしくは通勤において労働者が怪我をしたり病気になったり、障害を負ってしまったり、死亡してしまった時に
労働者やその遺族のために、必要な保険給付を行う制度があります。

そのため原則として、フリーランスの方は労災保険に加入できません。
労災保険は、会社に雇用されて仕事をおこなう労働者を対象にした制度だからです。
つまり基本的に、アイドルの方は業務中の災害で怪我をしたり、病気にかかったりしても、国からの補償を受けられません。国民健康保険を活用するなどして、自ら必要な費用を負担する必要があります。

しかし、労災保険制度には「特別加入制度」が導入されており、業務の実態に応じて、労働者と同じように保護することがふさわしいと見なされる人に、条件付きで労災保険に特別に加入することが認められています。

そして令和3年4月1日より、
芸能関係者の方々も特別加入制度の対象になりました。

労災保険の適用:事務所が労災保険に加入しているか確認し、怪我や病気に対する保障があるかを確認しましょう。
事故や怪我の対応:事故や怪我が発生した場合の対応方法や、治療費の負担について契約書で確認しましょう。
労災保険特別加入制度の検討:アイドルが加入できる労災保険特別加入制度の利用を検討しましょう。加入したい団体の窓口から申請することで加入できます。


3.フリーランスとして必要なこと・備えた方が良いこと

◎経費の管理と記録
 必要な理由:適切な経費管理は、確定申告の際などに
       正確な経費計上ができるため、
       節税効果を最大限に引き出すことができます。
 具体的な方法:①収入と支出の明確な記録をつける、
        ②領収書やレシートを保管する、
        ③事業専用の銀行口座を開設するなど
税金の知識の習得
 必要な理由:税金の知識を持つことで、確定申告や税金の支払いを
       スムーズに行うことができ、税務署とのトラブルを
       回避できます。また、適切な税額を納めることで、
       払い過ぎを防ぐことができます。
 具体的な方法:経費の考え方など、確定申告の方法を学びましょう。
        必要に応じて税理士に相談することもおすすめです。
万が一に備える(保険の加入や貯蓄)
 必要な理由:病気やケガで働けなくなった場合に
       医療保険や所得補償保険、労災保険に入っていれば
       収入減や医療費の負担を補うことができます。
       また、国民年金基金や個人型確定拠出年金(iDeCo)で
       備えておくと将来受け取れる年金を増やすことができます。
 具体的な方法:医療保険や所得補償保険を検討する。
        国民年金基金やiDeCoを活用して
        将来の資金を積み立てるなど。
        ※参考:国民年金基金とidecoの違い
        https://www.npfa.or.jp/state/about.html

まとめ~アイドルとしての働き方~

アイドルの多くはフリーランスとして事務所とマネジメント契約を結んでいます。
この働き方は社会保障や安定性に欠ける面が多々あります。
周囲の方々には、アイドルが不安定でも夢のために頑張りたいという想いと心理的なプレッシャーを理解していただき、必要なサポートをしていただければと思います。

アイドル自身が長期的なキャリアプランを考える機会をつくることやこの章で紹介したような社会保障の情報提供なども、サポートのひとつです。

周囲の支えがあってこそ、アイドルはその才能を最大限に発揮することができるのだと思っています。


第2章:アイドルと契約~契約の確認~

ここまでお話してきた通り、
アイドルは「フリーランス」として事務所と契約する場合がほとんどです。

フリーランスの場合は会社員などの従業員と異なり、
雇用契約がありません。
「労働基準法」や「労働契約法」の保護対象にならないため、不利な契約や条件で縛られてしまうこともしばしば。

この章では、後々のトラブルを防ぐためにも、契約を結ぶ前に確認しておいた方が良いことを紹介します。

1.所属の内容と契約形態

過大なオーディション広告やセリフには注意!

オーディション広告やアイドルの募集は華やかに見えることが多いですが、過大な期待を抱かせるような広告やセリフには注意が必要です。

「契約してレッスン料や入会金を払ったけど、
ステージにも立てずお金を払っただけ…」
という事例も少なからず存在します。

契約の際に注意した方が良いポイントを紹介していきます。

実績の確認:オーディションを主催する事務所や企業の実績を確認します。過去にどのようなアイドルが育成されデビューしたのかなど、その実績が信頼できるかを調べます。
口コミや評判:ネットの口コミや評判をチェックします。過去に関わった人たちの意見や体験談を参考にして、信頼性を確認します。
契約内容の慎重な検討:いくら魅力な条件を言われても、契約内容は慎重に確認してください。具体的な報酬、活動内容、契約期間、解約条件などをしっかりと確認し、疑問があれば専門家に相談することをおすすめします。違和感を感じたら「この業界ではこういうものなんだ」で済ませないことが大切です。

入所金やレッスン費の有無

事務所との契約には、入所金やレッスン費が必要な場合があります。
こうした支払わなければいけない費用については明確にしておきましょう。

費用の明細:契約前に入所金やレッスン費の明細をしっかり確認し、どのような費用が含まれているのかを把握しましょう。費用が不明瞭な場合は、詳細を事務所に問い合わせましょう。
追加費用の確認:契約後に発生する可能性のある追加費用についても確認しましょう。例えば、衣装費や交通費、イベント参加費など、他にも自己負担がないかどうかを確認しましょう。
返金ポリシー:何らかの理由で活動を続けられなくなった場合の返金ポリシーや契約違反についても確認し、必要に応じて契約書に明記してもらいましょう。
レッスン内容の確認:そのようなレッスンがあるのかもしっかり確認しましょう。自分が望んでいる、必要レッスンを行ってくるかも非常に大切です。

所属か預かりか、レッスン生としての契約か

アイドルとしての契約形態には、所属、預かり、レッスン生などがあります。それぞれの形態について理解し、自分に最適な契約を選びましょう。

所属契約:正式に事務所に所属する形態。「専属契約」の場合には事務所からの全面的なサポートを受けられる一方で、契約期間中は事務所の指示に従う義務がある場合がほとんどです。報酬や待遇、活動内容が明確に定められています。
預かり契約:事務所に所属する前段階の契約。デビュー前の準備期間として位置付けられ、正式な所属よりも自由度が高い場合がありますが、サポート内容が限定的なこともあります。
レッスン生契約:レッスン生として事務所のレッスンを受ける契約。デビューを目指してスキルを磨く段階であり、所属や預かり契約よりも活動の自由度が高いですが、デビューの保証はない場合があります。

望んでいないレッスン契約をしてしまったら?

「聞いていた内容とは異なる契約だった」、
「圧に耐えきれずに契約を結んでしまった」
などの場合には、内容や締結の背景にもよりますが、消費者契約法の対象になり、契約の解約・返金の申し出を行うことが出来る可能性があります。

悩んだとき・困ったときには消費者庁や弁護士などの専門家にまずは相談を!


2.働き方の内容と契約形態

報酬の詳細

契約書には報酬の支払い方法や支払時期、報酬の計算方法などが明記されています。これらの項目を確認することで、収入がどのように決まるのかを理解し、後のトラブルを防ぎましょう。

支払い方法:報酬の支払い方法(現金、銀行振込など)を確認する。
支払時期:報酬が支払われる時期(月末、翌月末など)を確認する。
成果報酬と固定報酬:報酬が成果に基づくものか、固定給かを確認し、各々の計算方法を理解する。また「交通費」などの経費分担がどちらにあるのかを確認しましょう。

働く条件

勤務条件について明確に記載されているか確認することも重要です。勤務時間や休暇などについての取り決めを把握することで、働く環境についてあらかじめ理解することができます。

拘束時間:1日の拘束時間の目安や週の稼働時間ついて確認する。
休暇:休暇の取り方や病欠時の対応について確認する。

契約期間と解約条件

契約の有効期間と解約条件についても注意しましょう。
「知らない間に契約が更新されていてあと○年辞められない!」なんてことがないように、
契約期間が明確に定められているか、
更新条件や解約条件についてはよく確認し、
要望があれば条件の交渉をしましょう。

契約期間:契約の有効期間(例:1年間、2年間)を確認する。
更新条件:契約を更新する際の条件や手続きを確認する。(例:契約有効期限の半年前に申し出なければ自動更新される)
解約条件:契約を解除する場合の条件やペナルティについて確認する。(例:アイドル側の契約違反が理由で契約解除となる場合は違約金が発生するか)
解除権の放棄規定:「いかなる理由でも解除できない」など、契約の解除権を放棄させる条項の有無も確認する。

未成年の働く条件

未成年のアイドルの場合は特に働く条件に注意しましょう。未成年者の労働は法律で保護され、過度な労働や夜間労働は禁止されていますが、日本には未成年のフリーランスを守る法律はありません。
以下の点に注意して、未成年者の権利を守りましょう。

稼働時間:働く時間や日数の上限等を確認しましょう。
夜間の稼働:未成年者の夜間労働は禁止されているが、アイドルとしてはどうなるのかを確認しましょう。
学業との両立:学業とアイドル活動で適切な時間配分をしてもらえるか。両立にあたったどのような対応や配慮があるかを確認しましょう。

3.その他の権利や法務で留意するべきこと

SNSの帰属

SNSアカウントの管理や帰属についても確認が必要です。活動期間中に使用するSNSアカウントは誰のものなのか、卒業後の取り扱いについても明確にすることが重要です。

ちなみに、私はアイドル活動中から使っていたブログやSNSアカウントを今も継続して使っていますが、
アイドルを卒業するとSNSアカウントも消されてしまう場合もよく目にします。

SNSのアカウントは今や自分の活動記録であり自分が何者かを証明するツールであり、自分のファンに発信することもできる、財産ともいえるものだと思います。
こうしたものが、どういう扱いになるかは確認しておきましょう。

アカウント管理:SNSアカウントの管理権限が誰にあるのか確認する。
投稿内容:SNSに投稿する内容について、NGがないかなどのガイドラインを確認する。
卒業後の帰属権:卒業後にSNSアカウントがどうなるのか(事務所の管理に残るのか、個人に移管されるのか)を確認する。

著作権・著作隣接権等の取扱い

アイドルとしての活動には、楽曲やパフォーマンス、制作物の著作権も関わってきます。
著作権の取り扱いについてしっかりと確認し、自分の権利を守りましょう。

楽曲やパフォーマンスの著作権:自分が作詞・作曲した楽曲や、自身のパフォーマンスに関する著作権が誰に帰属するのかを契約書で明確にします。通常、事務所が権利を持つことが多いですが、自分の権利を主張するために詳細を確認します。
肖像権:自身の写真や映像がどのように使用されるのか、肖像権についても契約書で確認します。事務所が管理する場合が多いですが、使用範囲について明確にしておきます。
パブリシティ権:法律上明示的に定義はされていませんが、裁判例を通じて認められてきた権利です。たとえば、著名人の名前を勝手に商品の宣伝に使用する、有名人の写真を勝手に商品パンフレットへ掲載するなどの行為はパブリシティ権侵害に当たります。
パブリシティ権を侵害された場合は、侵害者に対して差し止めなどを請求可能です。
収益分配:著作権に基づく収益分配についても確認します。楽曲の配信や販売、ライブパフォーマンス、出版した本などの収益がどのように分配されるか、契約書に明記されていることを確認します。

まとめ~契約の確認~

アイドルに限らず、契約を締結する前に確認することは、実はたくさんあります。
後々のトラブルを防ぐために契約書の内容をしっかりと理解し、「権利関係がどこに帰属するのか?」「どのような義務があるのか?」など認識のすり合わせを事務所と行うことが大切です。

報酬形態やSNSアカウントの管理、著作権についてなど、1人では確認しきれないほど注意することがあるので、そういった契約確認のサポートも必要です。
時には専門家にも相談しながら、ご家族や周囲の方々がこれらの点を確認することで、安心してアイドル活動を始めることができると思います。


第3章:女性としてのアイドル

女性特有の健康問題

アイドル時代、幼い頃に憧れていた女性アイドル達が子どもを出産し、”ママタレント”として活躍している様を見て、アイドルを卒業した後も女性としての人生が続くことはなんとなく意識していました。当たり前のようにいつか私もママになるのかなんて考えていたのです。

しかし、実際の当時の私は、過度なダイエットで生理が何年も来ていないのに放置していたり、ストレスでホルモンバランスが乱れたことで多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)や高プロラクチン血症といった婦人科系の疾患を抱えていました。
こうした疾患は、無月経や月経不順、にきび、多毛、肥満などの症状が出たり、排卵しないことで不妊の原因になることもあります。
「いつかママに」と思っているくせに、女性としての体の機能に異常が起きていること無頓着で、「生理が来ないのは楽だからいいや」で済ませてしまっていたのです。

20代後半になって初めて産婦人科に行って生理が来ないと相談した時には「もっと自分の体を大切にしなさい」と婦人科の先生にこっぴどく叱られました。
それからは病院に通って薬を処方してもらい、生理も戻ってくるようになりましたし、無事に子どもも授かることができました。

「おかしいな」と思った時の適切なケアや
女性特有の健康問題について知っていただければと思います。

生理との付き合い方

「生理」は女性の体の仕組みとして、とても大切なものです。
とはいえ、多くの女性が悩まされるものではないでしょうか。
およそ25日〜38日周期でやってくる生理には、煩わしいだけではなく、
心身の不調が伴う方も多くいます。
生理痛や頭痛、腰痛、吐き気などの症状が日常生活に影響をきたすほどになる月経困難症、
人によっては生理期間の前にもPMS(月経前症候群)やPMDD(月経前不快気分障害)などの症状があります。

アイドルというお仕事では、
いくら生理やPMS/PMDDが辛くても、ライブや撮影会、配信などのお仕事は笑顔でこなし、激しいパフォーマンスをしなくてはいけないということは多々あります。

でもそれは、「我慢しなくてはいけないもの」ではありません。
「辛いな」「おかしいな」と思った時には適切な対策やケアをすることで症状が緩和されたり、病気の早期発見に繋がります。

そして、適切なケアは生理が止まっている時や、生理じゃないのに出血している場合にも必要です。

異変に気づくためにも、辛い症状を我慢せずにすむためも、
よくある症状や適切なケアを確保するためにできることをぜひ知っておいてください。

【よくある症状】
月経異常生理が3ヶ月以上来ない無月経24日以内の周期で生理がくる頻発月経40日以上3ヶ月以内の周期で生理がくる稀発月経、夜用のナプキンが1時間も持たないほど経血量が多い過多月経など様々な症状があります。無月経は過度なダイエットやストレスでよく起こり、不妊症につながるリスクがあります。
頻発月経は甲状腺系の病気の可能性、過多月経の場合は子宮筋腫や子宮腺筋症の可能性があります。

月経困難症日常生活に支障が出るほどの生理痛や頭痛、腰痛などの症状です。子宮内膜症や子宮筋腫などの病気が隠れていることもあります。低用量ピルの服用などで改善される場合もあるので、早めに婦人科へ行きましょう。

PMS(月経前症候群)/PMDD(月経前不快気分障害)月経の3~10日前に起こる不快な症状です。症状は人それぞれで、頭痛・腹痛・眠気・肌荒れ・便秘といった体の不調や、イライラ・無気力・不安感・感情のコントロールができないなどの精神的な不調があります。特に精神的な症状が強く、日常生活に支障をきたすものをPMDDといいます。

【できること】
生理周期の管理:アプリなどを利用して自分の生理周期を管理し、把握しておくと異変に気づきやすくなります。

鎮痛剤や漢方を飲む:薬局で手に入る鎮痛剤や漢方薬などで症状が軽くなることがあります。

医療機関にかかる:異常を感じた時は、婦人科にかかり、病気ではないかの検査や症状を改善する薬の処方を受けましょう。

低用量ピルを飲む:低用量ピルによって月経周期を整えたり、大切な予定と生理をずらしたり、月経困難症やPMS/PMDDを改善することができます。婦人科で処方してもらえます。月経困難症の場合は1ヶ月1600~2600円、自費の場合は2000~3000円程度の負担になります。

休養の確保:無理をせず、限界の時には周囲にも相談して休みましょう。

子宮頸がんは若くても罹る、予防ができるがん

子宮頸がんは子宮の入口にできるがんで、ヒトパピローマウイルス(HPV)という誰もが感染する可能性のあるウイルスの「高リスク型」のものが原因です。なので、誰がなってもおかしくないがんです。

かかる人が最も多いのは、30~34歳の女性ですが、発症が低年齢化していて、出産を考える前に子宮の一部または全部の切除を余儀なくされる女性が増えています。
20代で子宮頸がんにかかる人も少なくなくありません。日本では20代のがん検診の受検率が低く、妊娠して初めて産婦人科を受診した際にがんが見つかる例が少なくありません。

初期の頃は子宮の入り口を少し切り取る手術だけで済みますが、進行すると子宮の全摘出やリンパ節などを取り除く手術を行うことにまります。
自分のために、将来子どもを持つという選択肢のために、子宮頸がん予防のワクチンと子宮頸がん検診を受けることをお勧めします。

■子宮頸がん予防ワクチン(HPVワクチン):HPVワクチンは予防接種法に定められた「定期接種」で、対象年齢である小学校6年生~高校1年生までの間であれば、無料でワクチン接種を受けられます。 一方、対象年齢を過ぎてしまった方が接種を希望される場合、3回分の接種で約5万円程度の費用がかかります。

子宮頸がん検診を受ける:HPVに感染が続いた場合には数年~10年余を経て、子宮頸部を覆う上皮の細胞に異常が発生し、一部はがんに至ります。 この細胞の異常が軽いうちに定期的な子宮頸がん検診で早期発見すれば、がんに至る前に部分切除し、進行がんの発症を予防することができます。子宮頸がん検診は、子宮頸部の細胞を採り、細胞の異常を見つける検査です。20歳を過ぎたら、2年に1回の子宮頸がん検診を受けましょう。検診費用は多くの自治体で検診費用の助成や無料クーポンなどがあるので、お住まいの自治体での制度を調べてみてください。


第4章:自分のココロやカラダを守るために

アイドル活動に限らず、「表に出る仕事」には、「プレッシャー」「人気競争」「批判に晒されやすい」など特殊な環境下でのストレス要因がつきものです。
そうした環境下で、心を壊してしまうアイドルを私も何度となく見てきましたし、私自身も突然ステージに立つことが怖くなり、電車に乗ったり人の多い場所へ行くこともままならなくなった時期がありました。私の場合、心療内科で「不安障害」と診断され、少しお休みの期間をいただき、症状が改善されたので復帰をすることができましたが、心を壊してしまってそのまま復帰できなくなってしまうアイドルも少なからずいると感じています。

2024年1月に行ったツギステの独自調査では、アイドル経験者の52%が活動期間中に精神疾患を患ったと回答しました(※あくまで自己申告であり、症状の裏付けや医師による診断書の提出などを確認した割合ではありません)。

あくまで独自調査ではありますが、
本調査ではストレスを感じる要因として「お金の問題」「将来への不安」「グループ内での対人関係」「外見のコンプレックス」「睡眠不足」「休みがない」なども多く挙げられており、こうして様々なことにストレスを感じているにも関わらず、4人に1人が「誰にも相談できなかった」と回答しています。

確かに、グループ内での悩みや将来の不安を事務所やメンバーの相談すると「関係性に影響が出るのではないか」「活動しにくくなるのではないか」「仕事や立ち位置に影響が出るのではないか」と不安になるのも理解できます。
しかし、だからと言って感じている不安や悩み、ストレスをケアしないまま放っておいてしまうと、心を壊してしまいかねません。

この章では、ココロとカラダを守るための適切なケアと事務所内でのトラブル対応として知っておいた方が良いことやできることを紹介します。

心を壊さないためにできること

先述したように、アイドル活動には様々なストレスがつきものです。さらに女性の場合、生理前や生理期間中に、イライラや不安感、無気力などの精神的不調が現れる人もいます。こうした症状を軽減するためには、以下のような対策が考えられます。

■医療機関にかかる:日常生活や仕事に支障が出るほど不安やストレスを感じる場合は心療内科、生理前後の精神的不調は婦人科へ。適切なアドバイスや症状が改善される薬を処方してもらえます。病院に行くことも薬に頼ることも変なことや悪いことでもありません。誰でも心が風邪をひくことがありますし、他の病気と同じように早期発見と早期治療が大切です。

国や自治体等の相談窓口を活用する:電話相談やLINE相談で悩みや不安を話すことができます。専門の相談員は当然秘密を守ってくれます。

心理カウンセリングを受ける:専門のカウンセラーに相談することで不安が解消されやすくなります。

身近な人に相談する:抱え込むより話すことで心が軽くなることもあります。また、大切な人と話すこと自体がリフレッシュにもなります。

定期的にリフレッシュを行う:好きなことをする時間を意識的に設けることでストレス解消を行います。

休みをもらう:限界が来る前に、事務所にも事情を話して休養をもらいましょう。一度今の環境から離れることで、自分の悩みや不安が解消されたり、自分がどうしたいかを見つめ直すきっかけにもなります。

【関連リンク】
厚生労働省:困った時の相談方法・窓口まとめサイト
東京都こころいのちのほっとナビ(電話相談・LINE相談)
厚生労働省:医療機関検索サイト「ナビイ」

どこまでがOKでどこからが嫌なのか「自分の境界線」を大切に

アイドルという職業では、様々な衣装を着る機会、物販などでファンの方と接触する機会があります。誰であっても、他者に自分の体を見せること、他者と自分の体が接触することにおいて「どこまでが自分が望むことで、どこからが望まないことなのか」を決める権利は自分自身にあります。

この自分の体に関する境界線の概念を「バウンダリー」といいます。このバウンダリーは人によって異なるので、周りが良しとしているからといって、「自分の体」に関して、自分が嫌だと思うことを「アイドルとしては当たり前のことかもしれない」と我慢する必要はありません。

例えば、「ミニスカートは良いけど水着を着る仕事はしたくない」「物販で握手はいいけどハグはしたくない」「撮影会でこのポーズはしたくない」「同性のメンバー同士でもキスはしたくない」など人それぞれのバウンダリーがあるのです。
どんなに親しい関係でも、ファンのことを大切に思っていても、嫌なことは嫌で、踏み越えてほしくない線というものは誰にでもあります。こうした自分のバウンダリーを尊重してもらえるように、事務所と相談することはココロとカラダを守るためにも大切です。

ハラスメントに遭ったらどうする?

ハラスメントは、アイドル業界に限らず、どの職場でも発生する可能性があるものです。ハラスメント被害に遭った時に適切に対処するためには、「何がハラスメントか」「どこに相談すれば良いのか」を知っておく必要があります。

【ハラスメントの例】
①パワーハラスメント:上下関係がある間柄での身体的・精神的苦痛を与える行為
・メンバーの目の前で、大声を出して威圧的に叱責することを繰り返す
・能力を否定し罵倒するような内容のメールを、他のメンバーやスタッフを宛先に含めて送信する
・意に沿わないメンバーをライブや物販に参加させない
・意に沿わないメンバーに「フォーメーションの立ち位置を下げる」と脅す
・たたく、殴る、蹴るなどの暴行を行う

②セクシュアルハラスメント:相手の意に反する性的な言動によって苦痛や不快感を与える行為。
・性的な関係を拒否した者を解雇する、歌割りを減らす、立ち位置を後ろに下げるなどの不利益を与える
・お尻や胸に触る、抱きつく
・性的な話題や質問をする
・スタッフに交際をしつこく迫られ、仕事に行きたくないと思うほどになる
・恋愛経験を執拗に尋ねる

③モラルハラスメント:
言葉や態度によって行われる嫌がらせやいじめなどで、上下関係に関係なく行われる行為。(メンバー間でも起こり得ます。)
・人格を否定するような侮辱をする
・無視をする
・悪口を言う
・プライベートの過度な詮索や監視をする

【ハラスメントへの対処法】
信頼できるスタッフに相談する:事務所内の問題を、事務所の方に相談するのは抵抗があるかもしれませんが、信頼関係が築けているスタッフには相談するのは効果的です。 口が堅い人かどうか、権限がある人かどうかに注意して相談すると良いです。
外部の公的機関に相談する:事務所内に相談できる人がない、相談すると不利益な扱いを受けそうで怖い場合には事務所外の窓口に相談しましょう。

【関連リンク】
厚生労働省:ハラスメント悩み相談室
みんなの人権110番(全国共通人権相談ダイヤル)

まとめ~ココロやカラダを守る~

アイドルという職業では、特殊な環境下でのストレスや、「性」に関わる問題がつきものです。女性ならではの健康問題についても、メンタル面での問題についても知識がないために、気付かないうちに慢性化・深刻化してしまうケースもあります。

自分自身のココロとカラダを守りながらアイドル活動をするためにも、知識を持つこと、専門相談や医療機関に相談することが大切です。アイドル本人だけでなく、そのご家族や友人、周囲の方々も、情報提供や声をかけることで活動のサポートができます。

安心して夢に挑戦するために、そしていつかアイドルを卒業した後の人生のためにも、ココロとカラダを大切にして欲しいと思います。


第5章: 表に立つ人としての心構え

「おはようございます!○○です!よろしくお願いします!」

と挨拶をすると

「さすがアイドル」と声をかけられることがあります。
アイドルといえば決まり文句やキャッチフレーズを交えた元気な挨拶。
そんなイメージを持つ方も多いのではないでしょうか。

実際、アイドルの子たちが挨拶や自己紹介をする場にいると、
その場がぱっと明るくなるような不思議な効果を感じます。

このアイドルの特殊な力はアイドルを辞めた後も
人としてとても大切なスキルになったりします。

アイドルをやる上でのプロ意識が
人としての成長や魅力にも繋がっているのだと思います。

この章では、表に立つ人としての心構え…というと堅苦しいし押し付けがましいのですが、
9年間アイドルをしていた私が個人的に気をつけていたこと、アイドルをしながら学んだことを共有していきます。

元気な挨拶を徹底する

元気に挨拶ができるというだけで、
人への印象が良くなるのは、アイドル界でも同じです。
現場に入る時も、帰る時も
その場にいる人たちに挨拶をする。
当たり前のようで疎かになりがちなことです。

私がアイドルの頃は
「挨拶がちゃんとできていないから毎日挨拶運動をしなさい」と事務所に言われて
朝メンバーが集まった後、円になって
「おはようございます!」「よろしくお願いします!」「ありがとうございます!」「失礼します!」「お疲れ様でした!」を大きな声で復唱するという訓練が行われていた時期もありました。
体育会系にもほどがあります。
それでもそれからはメンバー全員が挨拶をちゃんとするようになった(できていないと更なる訓練が加わる恐れがあるとはいえ)ので、意味はあったと思います。

こんな訓練なんてなくても、気持ちよく挨拶ができる。それだけで人として好感を持ってもらえることは多いですし、人と人のご縁が仕事につながる世界ですので、現場の誰もに好印象を持ってもらえる手段のひとつとして挨拶を考えてもらえればと思います。

過度なダイエットはあまり意味がない

人に見られるお仕事である以上、
「綺麗に見られたい」と思うことは自然なことだと思います。
綺麗になりたい!自分を磨きたい!と思うこと自体は良いと思うのですが、自分の体とは一生付き合っていくものなので、体を大切にすることを忘れないで欲しいのです。

私自身も過度なダイエットや効果が定かではない美容への浪費など、色々と失敗をしてきました。
過度なダイエットは第3章でも挙げたように生理不順に繋がったり、疲労骨折や拒食症などの摂食障害の原因になったり、そしてダイエットによるストレスでメンタルにも影響が出ます。
私自身も、極端に食べないダイエットをしていました。
主食は「千切りキャベツ」で、お腹が空いたらガムを噛んで紛らわせるという今思えばとても危険なものでした。
当然、周りが心配するくらいにガリガリに痩せたのですが、
生理もこなくなり、骨が弱って疲労骨折もして、メンタルも壊すという結末になりました。
そしてそのダイエットを辞めたらすぐにリバウンドしてしまいました。
過度なダイエットで痩せたとしてもそれを維持するのは難しいし、
そんなダイエットを、長期的に続けるリスクはとても大きいということを身をもって知りました。

むしろ、体づくりは食習慣やトレーニングなどによって時間をかけて行っていくもので、
スタイルを維持する"生活習慣"の方が大切だとやっと理解をしたのは、アイドルを卒業した後の筋トレマニアの夫と出会ってからでした。
アイドル時代に知っておきたかったです。

過激なダイエットに逃げずに、
「健康的な食習慣でしっかりと栄養をとりながら必要以上にカロリーを摂らない」(=必要なカロリーと栄養はとる)ことが大切です。

パブリックイメージとプライバシー

アイドルを始めとした芸能界の人は、イメージが非常に重要です。
ちょっとしたSNSの発言や表現で炎上する今は、良いイメージを保つことがどんどん難しくなってきているように感じます。

私も何度かSNSでの発信に対する反応を見て、「こういう言い方をするとこんな風に受けられるのか」「こう感じる人もいるのか」などとまだまだ学んでいる途中ですが、
こうした「パブリックイメージを守るための言動をどうするか」という感度は、
アイドルとしても、アイドルを卒業した後も大切なものだと思います。

また、表に立つ職業である以上、いつ誰に見られているかわかりませんし、
自宅や本名が特定されたりプライバシー情報が漏れてしまうと生活の安全にも影響が出ます。

そして、そうした「特定行為」は簡単にされてしまいます。

ライブ後の「帰宅しました〜!」のポストに対して、
「その時間に家に着いたとすると大体家はここら辺か〜というリプが飛んできた(そして当たっていた)時は、正直ゾッとしました。
「自分が今、どこにいるかなどのリアルタイムの情報は出さないようにしよう」と肝に銘じました…

他にも、
自宅まで跡をつけられたり、
ファンの方から殺害予告を受けて怖い思いをしたことがあります。

何かあった後では遅いです。
自分の身を守るためにしっかりとしたプライバシー対策をしましょう。

・プライバシーを守る:プライバシーを守るために仕事上配慮して欲しいことを確認し、事務所にも伝えましょう。(学校の名前は出したくない、出身地を明かしたくない、など)SNSの管理:SNSの利用に関するルールを作り、プライベートな情報が出ないように気をつけましょう。("今"・"ここ"が特定される情報を出さない、どこにいるか、誰と一緒にいるかが特定されないよう、写真の写り込みに気をつけるなど)
公私の区別:仕事とプライベートを明確に分ける習慣をつけましょう。(アイドルとしてのSNSで友人のアカウントをフォローしたり、コメントを送らないなど。)※私はいいねとフォローの一覧からプライベートの友人を特定されたことがあります。
ネットリテラシーを身につける:一度世に出てしまった発言や画像を簡単になかったことにすることはできません。SNSで発信をする前に「本当にその発言をして良いのか」「誰かを傷つける発言ではないか」をよく考えましょう。また、親しい間柄であっても、やりとりが流出することがあります。親しい間柄間での発言や送る画像も、「最悪流出しても大丈夫」というものかどうかを気をつけましょう。

メディアでの対応力を上げるために

メディアに出てコメントをする機会もアイドルではよくあります。
記者会見やインタビューでの対応は、イメージやブランディングにも大きく影響するので、メディアへの出演が決まったら受け答えがしっかりできるように準備をしましょう。

メディアトレーニング:適切な表現や言葉選びに気をつけましょう。自信がない場合には、事前に事務所のスタッフや周りの人に確認をして、問題がない表現が確認しましょう。
事前準備:記者会見やインタビュー前に想定される質問と回答を準備しましょう。題材や共演者についても下調べしておくと尚良いです。

まとめ~表に立つ人として~

表に立つお仕事としてのアイドルは、
健全に活動していくために、
自分の健康も、イメージも、プライバシーも守っていかなくてはいけません。
そのためには、健康管理から始まり、
適切なメディア対応やネットリテラシーを身につけたり、
プライベートとの線引きやプライバシー対策をしっかり行うことが重要です。
アイドルとしての"プロ意識"は「自分が嫌だと思うことも笑顔で我慢すること」ではなくて「自分を守りながら、自分を大切にしながら、表に立つことで健全に活動を続けられること」なのではないかと思います。


第6章:アイドルからはじまるキャリアの道

この記事の序盤にも言ったように、今日本には1万人を超える女性アイドルがいます。
地下アイドルからメジャーシーンで活躍するアイドルまで多様な層がいるものの、アイドル業界は拡大しています。
その中でも、「一生アイドル」という道を進む人、タレントや女優など芸能界でアイドルの次のステージに進む人はほんの一握りです。

多くのアイドルは、いつかアイドルを卒業しますし、
その後の人生はまだまだ長いです。

アイドルという経験をステップにして、
キャリアを築けるように、私たちは会社としても支援していますが、
その中でアイドルセカンドキャリアの課題もよく見えてきました。

働く選択肢は最初は少なくても、増やしていくことができる

もちろん、アイドルの次に挑戦したいことが明確にある方はそれで良いと思うのですが、そうでない場合の方が多いように感じています。
「卒業後、何をしたら良いかわからない」
「やりたいことが見つからない」という声をよく聞きますが、
そんな方こそ、就活の準備に早めに取り掛かると良いと思います。

これまでの章で紹介したように、会社で働くことで、給与や社会保障の面で生活が安定することはもちろん、経験を積むことで働くための選択肢が広がるようになるからです。

会社としてアイドルのキャリア支援をしていても、企業からは年齢が上がると共に経験が求められることが多いと感じます。
そのため、いきなり自分が希望する職種に就くことはなかなか難しかったりします。
だからといって、就職を諦めるのではなく、
自分がやりたい仕事は何かを考えたり、
自分がやりたい仕事へのステップアップを狙うために、まずは思い切って就職をしてみるということをおすすめしています。

アイドルもいきなりやりたい仕事をもらったり、でたいイベントに出演できるわけではないように、企業の世界でも下積みが必要なのです。

キャリアの考え方

とはいっても、アイドルは「経験ゼロ」の人材ではありません。
アイドル活動で身につけた対応力やコミュニケーション力、発信力などは企業でも活躍できる立派なスキルですし、アイドル経験が評価されて採用が決まるケースも増えてきています。

アイドルとしての経験や、自分の強みが
どんな場所で、どんな仕事で活かすことができるのか。

就職やセカンドキャリアを考える際には、
そうした自己分析と企業ニーズの把握が大切です。
例えば、
「私はSNSをバズらせたり、自分をどう見せるかのセルフプロデュースが得意だから広報の仕事が向いてそうだな」
とか
「私はとにかく神対応って言われるし、ファンも多いから営業は得意だと思う」
とか
そんなことで良いのです。

ツギステの支援では丁寧なカウンセリングからこうした「得意なこと」を見つけるお手伝いもさせていただいています。
アイドル経験を活かして、次のステージへ踏み出すお手伝いをこれからもできればと思います。

働き方は1つじゃなくてもいい

今は、多様な働き方を選択できる時代になっています。

フリーランスで働く、
会社に勤めながら副業をする、
リモートワークに切り替えるなど、
様々な働き方があります。

アイドルとして活動しながら他の仕事を兼業することももちろんアリです。

「アイドル一本で勝負する」というのも、
「アイドルと仕事を両立する」というのも、
どちらも挑戦です。
自分がどんな働き方をしたいか、様々な選択肢を含めて考えても良いと思います。

「自分が制度の対象者だと思えない」という課題

キャリアについては、「何をどう調べればよいか分からない」という状況の方も多くいます。

履歴書の書き方も調べれば情報はいくらでも出てきますが、自分で調べられない、調べたところでどうすればよいか(これで合っているのか)分からず、「ツギステの伴走・サポートがあって初めて動き出せた」という声もあります。

中には、「自分がサービスや制度の対象者だと思えない」という声もありました。自治体や企業が提供する教育プログラムや資格取得の機会も多くありますが、用意して待っているだけでは必要な方に中々届かないという現状があります。

「知る機会」をどこで作るか?

"困っているのに必要な情報にたどり着けない"
"何に困っているのか、今後何に困るのか自覚がなく、必要なサポートまでたどり着かない"
という状況は、
情報があふれる現代では
アイドルに限らず、経験や前提知識の少ない若い世代の共通の課題
かもしれません。

ご家族やアイドルを支える周囲の方々には、
こうした状況を踏まえて、
積極的に情報提供や支援を行っていただきたいです。
知る機会があるかないかでは大きな違いになります。

まとめ~アイドルとキャリア~

アイドル卒業後も芸能でキャリアを続けられる方は現実的にはほんの一握りですが、他にも活躍できる場所はたくさんあります。
アイドル経験を活かして企業で働くという事例も増えてきているので、企業に就職すること、キャリアを作っていくことを諦める必要は全くありません。
アイドル卒業後のキャリアについて考えること、見通しを立てることで、アイドル活動中に漠然とした将来への不安を感じることも少なくなるはずです。
ただ、そうした就職やキャリアについての情報を知る機会がなかなかないのも事実。
ご家族や周囲の方が情報を共有していくことも一つのサポートになります。


最後に:『誰もが安心して挑戦できる社会へ』

アイドル活動を経て、政治家になり、そしてアイドルのキャリアを支援する会社を立ち上げたという経験の中で、現役アイドルや、これからアイドルになろうとしている方、そしてそのご家族や周囲の方に知っておいて欲しいことを綴らせていただきました。

夢や憧れに向かって挑戦することは尊いことです。
一度きりの人生ですから、
今しかできないことを思う存分やって良いと思います!


そんな挑戦を選んだ若い世代が、
トラブルに巻き込まれたり、
何かあった時に頼れるものがなかったり、
心や体を壊してしまったり、
キャリアにつまずいたり。

そんな悲しいことが起きないように、
ぜひご家族や周囲の方はサポートをしてください。
そして、アイドル本人は自分を大切にしながら
今しかない時間を楽しんで、時には誰かに頼ってください。

私たちはこれからもアイドルのセカンドキャリア支援を通して、

目標に向かって走ってきた
ユニークな経験や挑戦が評価されて、
ひとりひとりが社会での活躍の機会に繋がっていくような、
夢を追いかけたことを後悔しない、
「誰もが安心して挑戦できる社会」を作っていきたいと思います。

株式会社ツギステ 代表取締役社長
渋谷区議会議員


お問い合わせについて

株式会社ツギステは、不安無く夢を追いかけることが出来る社会の実現に向けて、引き続きアイドルのキャリアサポートに邁進してまいります。

・共感や連携の可能性を感じていただける企業様
・キャリアについての相談やちょっとでも悩みのあるアイドルの方

ぜひお気軽にご連絡ください。

■アイドル/アイドル経験者の方(ツギステ公式LINE)

■アイドル人材に関心のある企業の方
【お問い合わせメールアドレス】

info@tsugisute.com

「ラストステージより、輝く日常を。」
株式会社ツギステ


元アイドルさん、現役アイドルさんみなさんが輝き続けられるよう活動をサポートさせていただいています! 全てのアイドルさんが安心して全力でご活躍できる社会を目指して。 応援していただけると嬉しいです!!