敵のアジトにて大激闘!狡猾な幹部の企て-あるマルチ団体との戦い(後編)-
この記事は後編である。
前編を読まれてない方はこちらからどうぞ。
前編を読んでくれた方たちからたくさんの感想をいただいた。
感想やいいねは嬉しいし、次の記事を作るときの力になる。
ありがとうございます。
そんな中数名から、このような感想をもらった。
ここで宣言させてもらうが、マジで盛ってないし、作ってない。
奥さんのシーンに至っては、発言の一言一句まで完璧に再現した。
後編も怒涛の内容となっているが、前編同様本当にあった話である。
かなり面白い内容になっていると思う。
後編をスタートする前に前編の内容を簡単に復習しておこう。
内容を覚えている方はどうぞ飛ばしてください。
さて、前編の内容を思い出してもらったところで、後編の始まりだ。
前編の最後のシーンだった、奥さんの発言の直後からスタートする。
前編の最後で適当に流してしまった場面から詳しく書いていく。
〜喫茶店の乱〜続きから
奥さん「お嬢ちゃん、あなたの負けよ。私もあなたと同じようなことをしているからわかるけど、彼らの言ってることは正しい。あなたは弱いところを突かれている。」
女性「あ、はい、、そうですよね」
奥さんに敗北を告げられ、女性は自分でも負けを認めたようだ。
すると夫婦の旦那さんの方が、女性に語りかけた。
ちなみに旦那さんは金持ちの雰囲気があった。
旦那さん「お嬢さん、ようわからん株のセミナーに2万も3万もお金を払うなら、野村証券の窓口行ったらよろしい。」
女性はなんか金持ちっぽくて凄そうな旦那さんが発言した瞬間、席を立ち、旦那さんの目の前に行き、直立不動で聞く体勢に入った。
その姿はまるで、弟子が師の臨終の時に最後に発する言葉を聞き入っているかのようだった。
ちなみに喫茶店のマスターによると実際に旦那さんは経営者で結構儲けているらしい。
旦那さん「人にようわからんセミナーを勧める前に、自分で実際に株を買って、やってみたらどうやねん。」
女性「おっしゃる通りです。」
旦那さん「今日の日経平均、昨日と比べて上がったか下がったかどっちや?」
女性「知らないです、、、」
旦那さん「円相場はどうや?」
女性「知らないです、、」
俺は会話を聞きながら、旦那さん、その女性は多分変動相場制も全く理解してないですよ、、、彼女はただ国を作りたいだけなんです、、、もうやめてあげてください、、、と思っていた。
旦那さん「日経平均の変動すら知らん人が、なんで株のセミナーを他人に勧めてるねん? まず自分でちゃんと勉強せえ。あんたはそのセミナー行ってるんやろ? そこで教えてもらわんかったんか? 株の初歩の初歩も教えてもらえへんセミナーなんて行かんでよろしい。」
女性「おっしゃる通りです。」
実際におっしゃる通りだ。
というより同じようなことを俺も女性に伝えたはずだ。
そして旦那さんは柴田にも語りかける。
旦那さん「そこのお兄ちゃん。あんた自分の考えがなさすぎる。それじゃああかんわ。すごくいい友達が周りにおるやん。それやのにそんなにひょろひょろ自分の考えを変えてたら5年後、10年後、友達無くすぞ??せっかくいい友達おるのに。」
柴田「はい、そこは反省してます。」
旦那さんがどんな人か俺は全く知らないが、言っていることは至極真っ当である。
喫茶店マスター「社長、もうそろそろやめときましょか笑」
旦那さん「やめとこか笑、ワシもおっさんやからな、許してくれ笑」
説教ムードになってきたので、喫茶店のマスターが助け舟を出す。
旦那さんもやめ時をわかっていて、ここまで完璧だ。
女性「いや!続けてください!!続けてください!!!」
旦那さん「ほな言わせてもらうとな、あんたなぁ、人の家転がり込むなら節度と立場をわきまえんとあかんのちゃうか?」
ここで女性は自ら説教タイムの延長を要求した。
そして、旦那さんは俺たちの会話をかなり聞いていたようで、状況をよくわかっている。
女性「おっしゃる通りです。」
旦那さん「こんなにあんたのことを思ってくれる友達がおるのにやな、大切にせなあかんぞ??この仲間は大事にせなあかん。この仲間って多分50歳になっても集まるぞ?」
旦那さん、最初にして最大のミステイク。
旦那さんには俺と女性が友人関係で、仲間内で説得をしているように映ったようだ。
俺は心の中で叫んだ。
「違うんです!!僕はこの人の仲間なんかじゃありません!!!アルティメット王国のメンバーじゃありません!!!」と。
女性「あぁ、確かに確かに!!おっしゃる通りです。」
お前は一体何を言っている??
なぜ俺が50歳になったときにお前に会うと思っている??
その後も旦那さんのありがたいお話は続き、女性は直立不動で話を聞いていた。
ありがたいお話が終わると、女性が席に戻ってくる。
俺「まさしの家から出ていくということと、もうまさしを勧誘しないこと。まさしは2daysには行かないこと。これ全部納得してもらえました?それとまさしが既に払ったセミナー代金も返金できるならしてください。」
女性「はい。全部納得した。」
俺「具体的には今月末までには出て行くってことでいいのかな?」
女性「うん!!それで大丈夫!!!」
俺「じゃあ約束ですよ?」
女性「はい!約束です!!」
俺「絶対ですよ?」
女性「疑わないでください!!絶対です!!!」
固い約束が交わされ、全てが一件落着したかに見えた。
女性「それとは関係なく、今日6時からの田中さんとのミーティングは来てほしいな。話聞くだけでいいから。まさしも行きたいやろ?」
柴田「まあ、話は聞いてみたいと思う。」
俺「あ、お前も行きたいと思ってるん??」
柴田「まぁ、、、そうやな。俺自身の人生の選択肢を広げる意味でも、いろんな人の話を聞いてみたいな。」
俺「…..」
柴田「まあでも、アルケミストに入る気はないし、マルチ商法も全く興味ないで。」
田中と女性と柴田の3人のミーティングは2daysの良さについて聞かされるというもので、ただの勧誘に他ならない。
2daysに数万円払って中身のないセミナーを受けるよりも、アルケミストに60万円を払って周囲の人間を勧誘するよりも、きっと大学の勉強を真面目にやっているほうが人生の選択肢は広がるだろう。
俺は柴田の目の前で、アルケミストそして2daysがどれほど柴田にとって不必要かを示したくなった。
女性は2daysやアルケミストに関してまともに説明してくれない。
というより彼女は自分自身アルケミストについて理解していないからまともに説明できない。
(彼女にとってアルケミストはアルティメット王国を建国する団体だ。)
これはマルチ団体の特徴なのかもしれないが、彼らは自分たちが何をやっているのか具体的に言わない。
ぼんやりと良いことだけを言い、女性のように、なんか凄いところだなあとぼんやり思った人が団体に入る。
彼らが具体的に何も言わないのは、「周囲の人からお金を巻き上げて食っていく団体です」などと説明してしまうと、楽園のように感じていた人の夢が醒めてしまうからだろう。
そして柴田もまた、ぼんやりと2daysが自分のためになると思っていた。
実際に何を学べるセミナーなのかは一切知らないのにもかかわらず。
彼がもし、イベントの詳細を知り、その上で強く行きたいと望んでいるのであればそれを止める権利は俺にはない。
柴田の目の前で、具体的にアルケミストが何をしているのか、2daysはどういうイベントなのか、幹部の田中との会話で明らかになれば、流石に柴田も2days、そしてアルケミストを自分自身で必要ないと思ってくれるだろう。
なぜなら彼はお金を強く欲していないし、マルチ商法もやりたくないと言っているのだから。
彼自身が自分で気づくことが、何より重要だと俺は考えた。
自分で気づくことができなければ、ぼんやりと良いと思ったものに飛びつく第二の女性のようになってしまうだろう。
ラスボス田中
結局、俺、柴田、共通の友人、女性、の4人でアルケミスト幹部田中に会いに行くことになった。
喫茶店の会話を録音してくれていた共通の友人は、田中との会話も録音してくれる。以下の田中との会話のシーンは全てその録音データを元にしている。
女性は、2daysについて話を聞きたい人が追加で2名いるということを田中に伝えてくれた。
田中は快諾してくれたようだ。(カモが二匹増えたと思っているわけだから、そりゃそうだ。)
女性に案内され、田中との決戦の地に向かう。
決戦の地は大阪の中心部、梅田のカフェだ。
前編の舞台だった喫茶店には顔なじみのマスターがいて、俺にとっては安心できるホーム球場のような場所だったが、梅田のカフェはアウェイに近いだろう。
梅田に向かう電車の中で、女性は田中のインスタグラムのアカウントを見せてくれた。
プロフィールの写真を見た第一印象は、横顔しか映ってないけど、体育会系の人で体鍛えててガタイ良さそう、だった。
横顔で何がわかるねんと思われるかもしれないが、間違いなく体鍛えてそうな横顔、だった。
別に喧嘩をするわけではないから、体を鍛えているかどうかなど全く関係ないけれど、少しだけ手強いかもしれないと無意識に思ってしまった。
営業職などで体育会系が強い理由が少し分かった気がする。
梅田に着き、人混みをかき分け、駅のすぐ近くの指定されたカフェに着いた。
約束の18時よりも10分ほど早く着いてしまったので、先に店に入ることになった。
席につき、田中の登場を待つ。
その時の店内の状況がこれだ。
一つのテーブルには6人まで座れるようになっていて、maxで3人と3人が向かい合わせになる。
店内には俺たちの他に、2組いた。
1組は俺たちの隣の隣の席の女と若い男で、女は小綺麗な服を着て、ルイヴィトンバッグを一番見えやすい場所にドンと置き、若い男に何やら語っていた。
この女をヴィトン女と名付ける。
ヴィトン女はテーブルの上に広げられたA3サイズくらいの大きな紙に何かを書きながら若い男に語りかけていた。その様子はさながら授業のようだった。
紙を見ながら説明を聞いている若い男は、茶化したくなるくらい希望に満ち溢れた顔をしていた。
もう1組は男とカップルで、男は小綺麗な服を着て、GUCCIバッグを一番見えやすい場所にドンと置き、カップルに何やら語っていた。
この男をGUCCI男と名付ける。
GUCCI男はテーブルの上に広げられたA3サイズくらいの大きな紙に何かを書きながらカップルに語りかけていた。その様子はさながら授業のようだった。
紙を見ながら説明を聞いているカップルは彼氏も彼女も茶化したくなるくらい希望に満ち溢れた顔をしていた。
この記事を前編から読んでくれてる方ならもうお分かりだろう。
彼らがものすごく怪しいということを。
俺は面食らってしまった。
今からマルチ団体アルケミストの幹部と会い、そしておそらく議論することになるこの場で、偶然怪しい人たちが2組もいたのだ。
マルチ団体もたくさんあるし、梅田くらい大きな都市に来れば偶然居合わせることもあるよね、と自分を納得させた。
思えば喫茶店で居合わせた老夫婦の奥さんも昔はマルチ商法をやっていたと言っていた。
マルチはマルチを引き寄せるのかもしれない。
奥さんの場合はあくまで昔の話だったが、今ここにいる2組はおそらく現在進行形で勧誘をしている。
そんな中俺は柴田にマルチが彼にとって不必要ということを示さなくてはいけない。
完全アウェイだ。
すると、俺たちの隣の隣の席からとんでもないワードが聞こえてきた。
若い男「そこらへんがまだ今ひとつ理解できてなくてぇ、、、」
ヴィトン女「大丈夫です。2daysでは、そこが全てわかりますよ!」
俺は思わずハッとヴィトン女の方を見てしまった。
なんとヴィトン女は、ただ怪しいだけではなく、アルケミストの一味だったのだ!
若い男「そうなんですねえ!(怒涛の勢いでメモをする)」
ヴィトン女から2daysの良さを説かれた若い男は、満面の笑みで自らのメモ帳にメモを書き殴っていた。
おいおい勘弁してくれよ、、と思っているとヴィトン女の後ろ側の席、GUCCI男からとんでもないワードが聞こえてきた。
GUCCI男「2daysは本当に人生変わりますよ」
飛び交う2daysというワード。
マルチ団体もたくさんあるし偶然他のマルチ団体の人と居合わせることくらいあるよね、という俺の希望的観測は外れてしまったようだ。
どうやら俺はアウェイどころか、敵のアジトに入り込んでしまったようだ。
そしてそのタイミングで、満を辞して田中が登場した。サンローランのバッグを持っていた。
ルイ・ヴィトンも、グッチオ・グッチも、イブ・サン=ローランも、自分たちが作ったアイテムがマルチ団体の勧誘の道具になっているとは不本意に違いない。
田中の姿を見た第一印象は「想像よりもはるかに弱そう」だった。
インスタのプロフィールの横顔とは全く違う雰囲気だった。
田中はハイブランド品を身につけるよりも先に、少しばかり筋トレでもしたほうが「出来る男」に見える気がする。
田中が女性の隣に座り、店内の状況はこうなった。
つまりこうである。
先に言っておくが、ここは普通のカフェだ。
看板に「アルケミスト以外の方はお断り」などとは書いていない。
田中は席に着くと、A3サイズくらいの大きな紙をテーブルに広げた。
まさに隣の隣のテーブルや、その後ろのテーブルに置かれているのと同じ紙だ。
いよいよ決戦の幕が開ける。
敵のアジトにて大激闘
まず田中が自己紹介を始めた。
田中「自分は東北大学工学部で、今は休学して色々と事業をしています。(かなりのドヤ顔)」
おそらくこの一文だけで、女性のような人は田中のことを全面的に信じてしまうに違いない。彼のドヤ顔には、今までにこの自己紹介で何人も落としてきたという自信が表れているように見えた。
そして「事業」というぼんやりワードを使ってきた。予想通りだ。
俺はすかさず聞き返す。
俺「なんの事業をされてるんですか?」
田中は少し嫌な顔をした。
おそらく具体的に内容を聞いてくる人が少ないのだろう。
前述の通り、彼らマルチ団体は具体的な説明を嫌がる傾向にある。
田中「えっと、まあ色々してますけど、主にこのアルケミストですね。」
つまり彼の自己紹介を要約するとこうだ。
「東北大学工学部を休学して、マルチ商法をしています。」
もし本当に田中が東北大学工学部の学生なら、個人的にはものすごくもったいない気がするが、まあそれは人それぞれである。
田中「今日は話を聞きにこられたんですよね?」
俺「はい。2daysがどのようなイベントで、アルケミストがどのような団体なのか、僕や柴田にもわかるように具体的に教えてください。」
田中「わかりました。」
俺「こいつ(柴田)が内容も知らないのに2daysっていうイベントにお金をぽんっと出してる現状が個人的には危ういと思ってます。この女性は2daysは良いところ、とは言うけれど具体的なことは何も教えてくれません。具体的に何が得れるのか、教えてください。」
俺はかなりしつこく具体性を求めた。
ちなみに、前編で書いたが、2daysに関する女性の説明がこちらだ。
この説明も凄いし、この説明で数万円払う柴田も凄い。
田中「わかりました!じゃあちょっと書きながら説明していきますね。」
そう言って田中はテーブルの上に広げられたA3サイズくらいの大きな紙にボールペンで色々と何かを書き始めた。(紙に書かれた内容はここで記すほどのことでもないので、以下では一切触れない。)
さぁ田中先生の"授業"の始まりだ。
田中「そもそもお金は好きですか?」
いきなり抽象的な質問きたああああああ。
田中、あんた言葉のキャッチボールが絶望的にできていないよ。
俺は田中のエラーを取り戻すべく、ちゃんとボールを返す。
俺「まあ、好きっていうか、必要以上に欲してはいないですね。」
田中「そもそもお金を稼ぐって何かわかりますか?キャッシュフローって知ってます?」
いきなり余計なところ具体的にしてきたあああああ。
いや、今キャッシュフローとかいらんのよ。
おそらくこれは田中のいつものやり方なのだろう。
これはあくまで田中先生の授業である。授業のやり方にケチをつけてはいけない。
俺「うーん、まあ詳しくは知らないですね。」
田中「例えばですよ? コンビニで働いてて1日100万円の売り上げがあったとして、まずバイトの人件費がかかりますよね? で、店長さんにバイトよりも高い賃金を払いますよね? で、仕入れ代とか家賃とか、電気代とかかかりますよね? それが大体15万円です。最初コンビニを建てるのに出資してもらった投資家がいますよね? で、その人に毎日10万円返すとしますよね?」
田中、絶望的に余分なところを具体的にしてくる。
あんた工学部なら実験レポートとか書いたやろ、それじゃあ単位もらえないのとちゃいますか??
というより、この例え、意味が分からなくて笑ってしまう。
ツッコミどころは山ほどあるが、最後の「投資家に毎日10万円返す」ってところに反応してしまった。
俺「毎日10万円返すんですか??」
田中「あ、この数字は説明のために適当に言ってるだけですよ笑」
いや知っとるわ。
それを知ってる上で揶揄しとるねん。
田中「それなら差し引き75万円残りますよね? その75万円がオーナーにいくわけです。要はお金を稼ぐ仕組みって時給〇〇円とかだけじゃないんですよ。僕の知り合いで一番稼いでいる人って、月4.5億なんですよ。時給では無理ですよね。(ドヤ顔)」
つまり彼の言いたかったことは、時給で働く以外にも不労所得で稼ぐ稼ぎ方がある、ということだろう。
(コンビニのオーナー業が不労所得なのかどうかは置いておく。というより、あらゆることを置いていかないと、この記事は永遠に終わらない。)
だんだんとそれっぽい話になってきた。
俺の反応があまりにも悪いので、田中の顔つきが少し変わってきた。
おそらく通常の授業なら、生徒の顔は既に希望に満ち溢れたものになっていて、田中先生に対する尊敬の気持ちが現れている頃だろう。
「僕の知り合いは月4.5億稼いでいる」と言ったら、生徒は「えええええ??すごーーーい!!!」となるのだろう。
ごめんなさい田中先生、僕は出来の悪い生徒なんです。
田中「僕は月に1000万円を稼ぐ人がいたら、稼ぎ方に関係なくその人めちゃめちゃすごいと思いますよ?(食い気味)
いろいろな稼ぎ方がある中で、確かに違法スレスレのこともやる人たち、たくさんいます。でも僕はその稼ぎ方はしていない。あれ、なんでこんな話してたんやろ。」
俺「2daysが何かってのを教えてもらってます。」
田中はようやく自分のエラーに気づいたようだ。
田中「ああそうですよね。そもそも、僕らアルケミストは株の専門学校みたいなものです。で、この株の専門学校に自分で入って学ぶこともできるし、口コミで広げていくこともできますよって仕組みなんですよ。」
俺「その口コミっていうのが、連鎖販売取引ってことですね?(ドヤ顔)」
田中「はい。MLMです。(ドヤ顔)」
俺はこの日に向けて、マルチ商法について少し勉強した。
「連鎖販売取引」とは「マルチ商法」をただ言い換えただけに過ぎない。
そして「MLM」も「マルチ商法」を言い換えただけに過ぎない。
俺と田中の言い換え合戦が始まったのだ。
アルケミストの人たちは「MLM」という言葉を好んで使う。
きっと横文字だからなんかかっこいいとか、そういう理由だろう。
勉強した中で、俺が一番言いたくてうずうずしていたのが、以下だ。
俺は田中との会話中に、然るべき場面があれば、
「あっ、それは特定商取引法の誇大広告の禁止に該当する恐れがあるので注意した方がいいですよ。」
と言いたくて仕方がなかった。
これはあくまで柴田に対して、マルチ商法はしょうもないんだぞ、場合によっては違法なんだぞ、と伝えるためである。
決して面白いから言うわけではない。
然るべき場面は来るのだろうか。
田中との会話は続く。
田中「そのMLMの仕組みを使って稼いでいる人がセミナーをしてくれるのが2daysです。参加費は2.5万円です。ここで学べるのは何かっていうと、MLMで結果が出やすくなるための方法を学べます。MLMに偏見はありますか?」
俺「偏見っていうか、僕は別に良いとは思わないですよね。他の人がやるのは全然勝手ですけど。」
田中「そもそもあなたはMLMに対して知識がないですよね?」
俺「んー、情報弱者からお金を巻き上げるって認識なんですけど、違いますか?」
この瞬間、隣の隣の席に座っていたヴィトン女がこちらを睨んできた。
奥のGUCCI男もチラチラこちらを見ている。
そりゃそうである。
このカフェはアルケミストのアジトであり、勧誘場所だ。
そこに入り込んできたやつが「情報弱者からお金巻き上げてるんですよね?」などと言っていたら営業妨害も甚だしい。
ヴィトン女は情報弱者であろう若い男から金を巻き上げようとしている最中で、成功しそうな雰囲気だった。俺の存在は邪魔そのもの。
結果ヴィトン女と若い男は席を移り、布陣が変わった。
つまりこうだ。
賢明な判断だと思う。
アルケミストになりかけている人たちを、アルケミストメンバーで挟み込むという作戦だ。
これならガッチリと、俺の存在も気にすることなく勧誘ができる。
田中は続ける。
田中「そもそもMLMをやったことないですよね?セミナーに行かれたことはありますか??」
俺「ないですね。」
田中「じゃあ当たり前ですけど、あなたはMLMに対して知識がないです。」
俺「はい。だから教えてくださいよ。」
田中「MLMに対しての知識に関しては、これはぶっちゃけ、ぶっちゃけですけど、やってみればわかります。」
何もぶっちゃけていない。
俺「えっと、じゃあ、情報弱者からお金を巻き上げるっていう認識はどこが間違っているのか教えてもらっても良いですか?」
田中「世界中の経営者がやってますよ??(食い気味)」
俺「まあ例えばアムウェイとかですよね? でもそれって結局上位何%しか儲からないんじゃないんですか? それを知ってて勧誘をしますよね?」
田中「まあでも全員が末端から始めますからね。」
俺「時間という軸がある時点で、上下関係は絶対に生まれますよね? で、末端から始める人は、結局友達を紹介してお金をもらうってことですよね?」
田中「いや、言い方悪くない?(薄ら笑い)」
俺「じゃあ違うんですか?」
田中「友達を紹介してお金をもらうっていうのは、やってることはそうです。やってることは自分の知り合いであったり、SNSで知り合った人を巻き込むことです。」
俺「ですよね。」
田中「そこに対する解釈が僕はいろいろやと思います。」
田中の必殺技「抽象化」発動。
適当に抽象的なことを言って、その場を切り抜ける作戦。
しかし残念ながら俺の目的は、アルケミストがどのような団体なのか、具体的に柴田にわかってもらうことだ。
友達を紹介してお金を稼ぐ団体に柴田は今入ろうとしている、そのことを自分自身で理解してもらいたい。
切り抜けられては困る。
俺「解釈が色々? 解釈はどう変わるんですか?」
田中「まあ解釈っていうか、僕は絶対に成功するって確信しているんで。」
おっと??
これはビッグチャンス到来ではないだろうか??
”確信”という言葉で少しだけ保険をかけているように感じるが、”絶対に成功する”、というワードを引き出した。
俺の必殺技「特定商取引法」を使う最大のチャンスが到来だ。
俺「なんでですか??」
田中「なんでですか????(困惑)」
俺「なんでうまくいくって確信できるのかなと。ビジネスに絶対成功するなんて無くないですか?」
田中「それはもう自分の心持ちです。」
俺「なんの根拠からそう思えるんですか?」
田中「心持ちに根拠は必要ですか??」
俺「では、心持ちだけでうまくいくって確信してるってことですね?(にやり)」
田中「いや、そんなわけないでしょ。(薄ら笑い)」
俺「えっと、じゃあうまくいくって確信できるデータとか、根拠はなんなんですか?」
田中「うーーん、、それは無いですけど、、、、」
俺の必殺技発動!
俺「根拠とか何も明示しないのに、絶対儲かるとか言っちゃうと、特定商取引法の誇大広告等の禁止に引っかかって規制対象になっちゃうかもしれないんで、気をつけたほうがいいですよ?(ドヤ顔)」
田中「ちょっとストップストップ。今日は何しに来られたんですか???」
俺「具体的に教えてもらおうと思って、わからないところを質問しました。」
田中「………………」
俺「なんか間違ってます?」
田中「いや、あのぉ、今日は聞きにこられたんですよね?」
俺「そうですね。で、質問していいって言われたので質問しました。」
田中、数秒の沈黙の後、思い口を開く。
田中「これから社会に出ていく上で聞き方ってのは考えたほうがいいと思います。」
俺は田中に説教された。
まあ、自分から進んで話を聞きに来た奴が、特定商取引法がうんちゃらなどと言い始めたら彼らにとっては邪魔でしかないだろうし、彼の言わんとすることはわかる。
今思うと、ここまで攻撃的なことを言わなくてもよかったのではないか、などとも思う。
だが俺は、アルケミストがどういうものなのか、アルケミスト幹部の男がどういう人間なのか、何も理解していない柴田の目の前で明らかにしなくてはいけないと感じていた。
そして、彼らが抽象的に聞こえの良いことばかり言うのであれば、俺は具体的に質問をするしかなかった。
彼らが抽象的にクリーンであることをアピールするなら、俺は具体的に特定商取引法に引っかかる可能性があることを示すしかなかった。
彼らがもし、
「特定商取引法スレスレのラインを攻めて、知人友人にうまいこと話をして中身の無い株の商材を買わせることができたら、あなたはお金がもらえますよ!」
というような説明をしてきたら、あとは柴田自身の判断に委ねるのみで、俺は何も言うことがなかった。
だが実際は、彼らは隠したいところを隠し、抽象的な言葉でごまかし、話をしてきた。
それは柴田にとってフェアではない。
もちろん、自分で情報を取捨選択できたらそれが一番いいのだろうけど、友人として柴田にフェアな状況を与えたかった。
また、勧誘をしたい彼らからしたら、隠したいところを隠すのは当然であるし、俺の存在は迷惑そのものだ。そのことは理解している。
俺は別に自分が正義だとは思わない。
だからこそ、これは「戦い」なのである。
俺は説教に対し、「ありがとうございます」と感謝の意を表した。
少しばかり沈黙の空気が流れ、田中が再び口を開く。
田中「で、結局何でしたっけ、2daysが何かって話ですよね。2daysでは先ほども伝えたように、MLMで稼いだ人たちが講演をして、MLMで稼ぐ方法を教えてもらえます。」
田中、この状況でちゃんと話を元に戻してくれた。すごい。
俺「なるほど。そもそも僕がおかしいと思ったのは、この方(女性)がなんのセミナーなのかも知らないのに勧誘していることと、こいつ(柴田)がなんのセミナーなのかも知らないのに行こうとしていることなんですよ。」
田中「それは確かにそうですね、、」
俺「だから今日はそれを聞きに来ました。彼(柴田)はMLMはやらないって宣言してるんですよ。それなのにMLMのことを教えてもらうセミナーに行こうとしてるっておかしいですよね??」
田中「そうなんですね、、それはそうですね、、苦笑」
ここで女性が口を挟む。
女性「私も、彼(柴田)はMLMはやらないっていう認識で2daysに誘ってました。(ドヤ顔)」
全く意味がわからない。
全く意味がわからないのに、なぜかドヤ顔だ。
彼女はたった一言で場をかき乱した。
本気で王国を建国しようとしているだけあり、さすがスケール感が違う。
俺「えっと、MLMをやらないって認識なら、このイベントを勧めるっておかしくない?? 詳細をちゃんとこいつ(柴田)に伝えて、こいつが行くって言ってるなら、それはまあ仕方ないけど、あなた詳細も何も言わずにお金払わせてるやろ??」
女性「私がなんでイベントの詳細を言わんかったと思う??」
俺「それはまじでわからん」
女性「それはその人の可能性を奪うことになるから」
俺「え??どゆこと??笑」
女性「詳細を言わんかったから、今こうして、田中さんに話聞けてるんやん!!(怒り気味)」
すごい理論だ。
俺「え?? でもこいつセミナーの分のお金払ったよね?? 何も理解してない人にお金を払わせてるのっておかしくない??」
女性「だから!!理解するために今日こうやって話聞きにきたんやん!!!!(キレてる)」
俺「え?? でももうお金は払わせてるんやんな??」
田中が苦笑する。
田中は味方であるはずの女性の暴走に困惑している。
見かねた共通の友人が田中に言葉をかける。
共通の友人「田中さんこっちの状況何も知らないですもんね笑」
田中「そうですね、そちらの状況は何も知らないんで、、笑」
女性「冷静になって田中さんの話聞こうや!!(怒り気味)」
俺「それあなたや」
一同苦笑。
こうして、ラスボス田中とのミーティングは幕を閉じた。
女性のおかげで、なんとなく和やかに終わった。
解散しカフェを発とうとすると、女性は、残って田中とミーティングを続けると言う。
俺は再び、「喫茶店で話した約束、お願いしますよ?」と確認し、女性も「もちろんです!」と応じた。
俺たちが店を出るとき、田中と女性はこちらを凝視しながら、何やら話をしていた、、、、
何か嫌な予感がした、、、
女性最後の悪あがき
店を出て、柴田家に戻り、俺たちは話をした。
田中とのミーティングを経て、柴田自身がどう思っているのか聞いた。
柴田の結論は
2daysには行きたくない
アルケミストにも入りたくない
女性も出て行って欲しい
返金もしてもらえるならしてもらう
だった。
その結論を、最後にちゃんと柴田が女性に直接伝えてこの一件は落着である。
俺と共通の友人はそれを見届けることにした。
というのも、それができないから柴田は今こういう状況に陥っているわけで、またしても女性に何も言えないという可能性は非常に高い。
そこで、俺たちは柴田と女性の2人の会話を外から聞くことにした。
つまり盗み聞きだ。
方法はこうだ。
電話を繋いだ携帯の片方を柴田の部屋に置いておく。
この時その携帯はスピーカーにして、周りの音を最大限拾うようにする。
そして俺はもう片方の携帯を持ち、外で2人の会話を聞く。
もちろん俺が持っている方の携帯はマイクオフにしておく。
俺や共通の友人がいない場面で、女性が柴田にどのような態度を取っているのかわからない上、柴田は明らかに女性に何も言えない状態なので、致し方ない作戦である。
(前編でも書いたが女性と柴田の間には明らかな上下関係があった。)
スタンバイ完了し、俺と共通の友人は外で待機する。
あとは、女性が帰ってくるのを待つのみ。
しばらく待っていると、柴田から緊急連絡が入った。
連絡内容はこうだ。
女性が最寄り駅に着いた。
駅に着いた瞬間、彼女はひどい腹痛に襲われた。
彼女は現在歩けないほど酷い状態なので、柴田に迎えにきてほしいと言う。
柴田「迎えに行ってくるわ」と言い、迎えに行く。
なんというか、すごいタイミングだ。
腹痛は仕方がないし、心配ではあるが、またしても彼女は俺の想定を超えてきた。
そしてこれは柴田にとっては出鼻をくじかれたことになる。
身体的に弱っている人間に、言いたいことは言いにくい。
10分ほど待つと、柴田と女性が帰ってきた。
いよいよ最後のミッション開始だ。
2人の声はちゃんと携帯から聞こえてくる。
盗み聞きは問題なくできそうだ。
あとは柴田が自分の思っていることを主張できるか、祈るのみ。
まずはなんでもない会話からスタートした。
腹痛で歩けなかった女性はどうやら無事のようだ。良かった。
というより、聞こえてくる声は元気そのものだった。
ん?本当に10分前まで歩けないほどお腹痛かったの??って思ってしまうくらいには。
もちろん数分で腹痛が治ることもあるだろうし、女性のことを疑うわけではないが、田中のニヤケ顔が俺の頭に浮かんできた。
もしもこの腹痛が同情を誘うための演技で、田中に指示されたものなのであれば、非常に厄介である。
俺は女性との約束を信じてはいたが、カフェを出る時に感じた嫌な予感を忘れられずにいた。
すると女性が切り出した。
女性「あーー、まさしとの生活、楽しかったなぁ、、」
柴田「….」
女性「でもそれももう終わりかぁ、、、」
柴田「…..」
女性「私、出ていくんやもんな、、、」
柴田「……….」
女性「まさしは、ほんまにそれで良いん??」
雲行きが怪しくなってきた!!
だが、柴田がちゃんと自分の主張をしたらなんの問題もない。
うん。それで良い。
その一言でいいのだ!!
その一言で全てが解決だ。
さあ柴田、言え!
言うのだ!お前が出した結論を!!
柴田「………………………………」
俺と共通の友人は思わず転げた。
すると女性はここぞとばかりに畳み掛ける。
女性「ひなたの言うことを聞いてたらまさし不幸になるって田中さん言ってたで。」
女性「ひなたみたいなタイプは一緒にいたら不幸になるって。」
女性「やから、ひなたの言うことは聞いたらダメ。」
女性「田中さんが言ってたけど、まさしはひなたに操られてる。」
女性「自分の選択をしなさい。」
すごい。
鳥肌が立った。
田中の不適な笑みが俺の脳裏に浮かぶ。
嫌な予感は的中してしまった。
俺たちがカフェを出たあと、田中は女性に上の文言を授け、柴田を再び引き込む作戦に出たのだ。
そして、女性は俺との約束を見事なまでに破った。
女性を正直者か嘘つきかで分類するなら、紛れもなく正直者だ。
前編でも書いたが、彼女はこの上なくバカ正直だ。
バカ正直と聞くと約束を破らないような気がする、否、そうではない。
相反する2つの事柄に対して、どちらに対してもバカ正直でいることはできない。
この場合、田中に対してバカ正直であり続けた女性は、俺との約束は破るしかなかった。
この状況が続いても何も好転しないと思った俺たちは、柴田の部屋に乗り込んだ。
女性が「ひなたに操られている」などと発言していたことから、今回は共通の友人が畳み掛ける。
共通の友人「今の会話全部聞いてましたよ!!約束と違うじゃないですか!!」
共通の友人「まさしがひなたに操られてるってどういうことですか!?操ってるのはあなたでしょ!!」
俺が発言しても、やっぱりひなたが操っている、などと言われるだけだったので、友人ナイスプレイ。
女性「口約束は守れません!!!」
あまりにも正々堂々と女性が宣言したので、俺たちは呆気にとられてしまった。
やはりこの女性、ただ者ではない。
共通の友人「じゃあどうしたら守ってくれるんですか?」
女性「誓約書と契約書があれば守る」
ということで、誓約書と贈与契約書を書くことになった。
誓約書には
今月末までに柴田の家から出ていくこと。
2度と柴田の家に立ち寄らないこと。
柴田と女性はお互いに今後一切の連絡をしないこと。
女性は柴田を今後一切勧誘しないこと。
現金〇円(セミナー代金とシェアハウス代金)を柴田に支払うこと。
を書き、
贈与契約書には現金の受け渡しについて詳しく書いた。
素人ながらに、調べながら作った。
女性も誓約書、契約書を作ることにはちゃんと協力してくれた。
ちなみに、女性がいくらのお金を支払うべきかということは、女性と柴田が話し合って決めていた。
その際、女性が「私、100万払う!」と言い出し、俺たち一同は困惑した。
女性は消費者金融に借金をしていた。
借金をしているのにも関わらず、彼女はこちらが求めてもいないのに100万円を支払うと言ってきた。しかも今回は誓約書、契約書にちゃんと記載されるのに。
彼女が100万円を提示してきた理由は、暗号通貨で稼ぐ目処が立っていて、3ヶ月後には月100万円稼げるから、だそうだ。
女性「私、100万円って数字を大切にしたい。だから100万円払いたい。」
そういえば100万円という数字に聞き覚えはないだろうか?
前編で女性のノートに書かれていたメモがあった。
「仲間を作り、3ヶ月後に月100万、5年後億万長者に」
"3ヶ月後に月100万"とは、暗号通貨で3ヶ月後には稼ぐ目処が立っているということだったのだ。
女性は暗号通貨で稼ぐ方法を教えてくれる団体に入会する予定らしく、そこに入会したら簡単に100万稼げると言っている。
もちろん2,3万円のセミナー代金とシェアハウス代金を足して100万円になるはずがないので、柴田側から適性額を提示した。
この体験は個人的にかなり勉強になった。
信用の下に何かを約束したなら、それが守られないことも想定するべきということ。
絶対に守らせなくてはいけない約束なら、きちんと書面で記したり、何らかの方法で効力を持たせられるようにすること。
皆さんも頭の片隅に入れて置いてはどうだろうか。
さて、誓約書、契約書を作り終えると、事は全てうまく進んだ。
俺たちは柴田に、自分の主張を言うべき時には言わないとまたこういうことになるかもしれないよ、と伝えた。
柴田自身そこは非常に反省しており、良い経験になったに違いない。
女性はきちんと退去し、適切な金額を柴田に支払った。
女性は風俗で重労働しているのにも関わらず消費者金融等に借金をしていて、かなりギリギリの状態だった。
その状態で、「100万円払う」と自ら言ってしまうのだから、先行きはかなり心配だ。
(ギリギリの状態の人ほど一発大きいのを当てたいという気持ちが働き、そういう団体に手を出してしまうのかもしれない。)
彼女は負のサイクル真っ只中だ。
マルチ団体に魅力を感じる
↓
借金して入会する
↓
稼げない。借金だけが残る
↓
新たなマルチ団体に魅力を感じる
彼女は今、新たに暗号通貨の団体に魅力を感じ、入会金を払おうとしている。
最後に俺個人の意見を伝えた。
「絶対稼げる、簡単に稼げる」って言ってるような団体とは一回おさらばして、ちゃんと時給をもらえるようなお仕事をして、コツコツ借金を返した方がいいと思いますよ。
あくまで俺の意見ですけど。
すると女性は、「わかった。ありがとう。ひなたの講義があったら為になりそうやし1万円までなら払って受けたい。」などと言ってきた。
俺は田中になりたくないので、「そういうところですよ。」と伝え、女性が今後うまくやっていけることを祈りお別れした。
おそらく多かれ少なかれ今後も女性は、金が欲しい人たちから金を巻き上げられるだろう。
アルティメット王国の話からもわかるように、女性はたとえ金を巻き上げられていてもそれに気づかず、いきいきと楽しそうにしている。
「本人が幸せならそれでいいじゃん」
と言うのは簡単だが、なんとも言えぬもどかしい気持ちになる。
その後
ここまで読んでくれた方なら恐らく柴田のことが心配だろう。
女性不信になってしまったのではないか。
ショックで寝込んでしまったのではないか。
覇気が一層強くなって、海賊王レベルに到達してしまったのではないか。
様々な心配があると思う。
だが、心配はご無用だ。
非モテ界シャンクスこと柴田には、この一件後しばらくしてから彼女ができた。
しかも今回は正真正銘本物の彼女だ。
仲良く、楽しそうに過ごしているみたいだ。(執筆現在まで継続中)
もう非モテ界シャンクスはいない。
それは喜ばしいことでもあり、少し寂しい。
そして、女性の身を案じている方も中にはおられるかもしれない。
アルティメット王国の野望はどうなったのか。
暗号通貨は稼げたのか。
金を騙し取られていないか。
だが、心配はご無用だ。
うん、心配は必要だ。
結論から言うと、アルティメット王国の野望は潰えた。
なぜか。理由はこれだ。
東京都内のセミナーとは恐らく2daysのことだろう。
アルティメット王国はあくまでアルケミスト主導の元(女性以外は誰も本気ではなかったのだろうけど)の話だ。
大元がこうなってしまったら、アルティメット王国を建国することはもう叶わないだろう。
そして女性は暗号通貨の団体にも結局お金を払ってしまったらしく、もちろん稼ぐことなどできなかったようだ。借金は増えている。
だが、女性は元気みたいだ。
今はコツコツと働き、借金をちょっとずつ返しているらしい。
億万長者になるという野望は、まだ持っているみたいだが。
彼女のバカ正直さが、いい方向に働くことを祈っている。
とんでもなく長くなってしまったが、ここでようやく幕切れだ。
ここまでお付き合いいただきありがとうございます。
感想等いつでも何でもお待ちしています!!
また気が向いたら何か書きたいと思っているので、そのときは是非目を通していただけたら嬉しい。
ではまた。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?