T. Tsugami

現代中国研究家 公益財団法人 日本国際問題研究所 客員研究員 本業、趣味とも中国屋です。

T. Tsugami

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    最近の記事

    丸川知雄教授にまたディスられた話

    数日前、フェースブックのタイムラインに突然、丸川知雄東大教授の投稿が出てきた。新聞の中国論調、及び寄稿を依頼してきた新聞協会の忖度姿勢を批判する内容だ(新聞協会寄稿の全文はここにアップロードされている)。 新聞の中国論調に対する批判については、私も共感する点があったが、投稿に載せられた寄稿の画像を斜め読みしていたら、私の名前が出てきた。 教授の判定では、私は嫌中日本人に「溜飲を下げさせる」類いの論者らしい。これをみて、「またか」とウンザリした。 丸川教授からディスられる

      • 人工知能(AI)よ何処へ行く?

        生成型AIと呼ぶのか、対話型AIと呼ぶのか…英語でも"Generative AI"と呼んだり”Conversational AI”と呼んだりと呼称が定まってない感じだが、あれこれネット情報を収集したり、自分でもChatGPTを触ってみたりすればするほど、とてつもないものが出現したという思いが強まる。 何年か前、「シンギュラリティ」って言葉が取り沙汰されたのを覚えている。「AIが人智を超える日」ってなイメージで、それが2045年頃に来るとか言われてた。 AIが成長するために

        • 李克強総理さようなら-全人大政府報告を聴いて

          5日、既に退任が決まっている李克強総理が最後の政府活動報告を行った。報告内容に目新しいものは無かったが、李克強総理の扱いがあまりに「過去の人」すぎて、ちょっとショックだった。 李克強総理、あからさまな「過去の人」扱い 全人代の報告は、前段で過去1年の政府の仕事を振り返り、後段で今年1年の目標を打ち出す習わしだ。過去の例では、前段の分量が全体の1/4、後段の今年の目標が3/4くらいの配分だったが、昨5日の報告は過去5年間の回顧に8割近くを当て、今年の目標については2割ちょっ

          • ユヴァル・ノア・ハラリの言説について ー「世界は多極化すべき」か?

            イスラエルの歴史家で著作『サピエンス全史』で評判を取ったユヴァル・ノア・ハラリの朝日新聞への寄稿を読んだ。 「自由主義のグローバルな秩序」が人類をどれだけ幸せにしてきたかを歴史的な証拠を挙げて力説している。例えば軍事費が国家予算に占める割合が劇的に低下し、国家はそのぶん医療や福祉や教育に予算を投ずるようになったことなどだ。 ほんとうにハラリの言うとおりか?には異論がある。軍事費が劇的に減少したのは、核兵器による相互確証破壊が成立したことに世界が気付いて以降のようだ。つまり

            中国は宇・露戦争の「ピースメーカー」になれるか?

            王毅の訪露、今日出すと予告している「ポジションペーパー」について、日本ではあまり関心がないか、さもなくば「中露の結束を誇示したいんだろう」的に先入観で見る向きがあるけれど、フィナンシャルタイムスはこの一両日、中国の意図に強い関心を持って、識者に手当たり次第に当たって、「中国が和平仲介に乗り出す」という見方をしきりに伝えている。主たる動機は「中・欧関係を改善したい」ということだとも。同紙だけでなく欧州全体が注目しているのだろう。 一方で、この記事は識者コメントを引用しながら、

            【謹告】「国際問題」誌に寄稿しました

            「中国の成長戦略は再調整されるのか 3期目に入る習近平政権を待ち受ける経済課題」(こちらをクリックすると、pdfがダウンロードされます。) 2月号表紙ページはこちら なお、3月15日には、本号執筆者によるウェビナ―も開催予定です。 「党大会後の習近平体制」を論じる(ご案内リンク) 以下、私の論考の要旨を貼り付けます。 中国経済はいまゼロコロナ政策による経済停滞という急性症と不動産問題という、より深刻な慢性症を患っている。不動産やインフラ建設は中国経済の成長に大きな役割を果

            【謹告】「外交」誌に投稿しました。 「中国ゼロ・コロナ政策撤廃と『白紙運動』」

            「外交」誌2023年1,2月号に「中国ゼロ・コロナ政策撤廃と『白紙運動』」と題して投稿しました。 「掌返し」という形容がぴったりくる中国のコロナ政策の180°転換。背後にどんな事情があったのか、この3年間の経験は今後の中国に何を遺すのか。現地に行けず、得られる情報も限られる中、私の見立てを書きました。 請うご笑覧。 このリンク⇩でpdf版全文をご覧いただけます(無料)。 http://www.gaiko-web.jp/test/wp-content/uploads/20

            【謹告】nippon.comに寄稿しました。習近平経済は「改革開放」路線に戻るのか、それとも社会主義色を強めるのか

            このリンクでご覧になれます。 https://www.nippon.com/ja/in-depth/a08801/amp/

            「中国の人口が減少に転じた」件

            1月17日、中国国家統計局が2022年の統計を発表、「中国の人口が前年比85万人の減少となった」と明らかにしたことが日本のTVや新聞各紙で大きく取り上げられた。 中国の人口問題は私の「十八番」のテーマで、10年前から取り上げてきた。拙著「中国台頭の終焉」(日経プレミア2013年1月刊)を書こうと思い立った動機の一つも人口問題だった。 その顛末は2年前にこのnoteウェブにも書いたが(「中国総人口が減少に転じた?」)、中国の人口政策には、この10年の間に大きなドラマがあった

            中国中央経済工作会議がコロナで延期!?いや、やるらしい-何だか浮き足立ってませんかね?習近平三期目政権

            産経新聞の「中国、経済会議延期か コロナ急拡大報道」という記事を見て、目を疑った。元ネタは13日のBloombergだというが、こちらは今日「予定どおり15日開催されるらしい」という訂正記事を載せた。 「目を疑った」と書いたのは、中国経済が深刻な落ち込み状態にある中で、政府が来年度打ち出す景気下支え策への期待が高まっているからだ。 それを決めるのが、翌年の経済運営方針を定める「中央経済工作会議」であり、既に12月6日には政治局で草案を討議、その骨格が「成長、雇用、物価の安定

            中国は新興国の債務危機を救えるかー新たな日中共同事業の可能性

            最近、各方面で活躍している金融アナリスト、大槻奈那さんが面白い仮説を披露しているのをyoutubeで観た(「2022/09/14 マネーフローに異変?中国覇権の新説 <萩野琢英 ×大槻奈那>」)。 大槻さんは、要旨次のように述べている。 すぐに想像がつくのは、「債務の罠を仕掛けている中国が途上国を助けるとか、どの手が助けるってんだよ?ww」といったネットツッコミが出るだろうということだ。しかし、せっかく興味や反論をかき立てる仮説が提出されたのに、検討もせずに脊髄反射するの

            中国の年金官民格差ー習近平主席へのお勧め政策レシピ

            最近ツイッターに上の写真がアップされた。読みづらいが、鄭拓彬という元大臣(1980年代に外経貿部(現商務部)部長)がもらっている年金の明細書だという。 月100万円相当の年金をもらう元大臣 「離休費」(狭義の養老金)は10,079元だが、他に生活補助25,798元、用人雇用費3,500元、離休補助9,810元だ何だで合計支給額が月額49,249.5元、いまの元/円レートで換算すると、約100万円だ。年金月額100万円は羨ましい! 真偽のほどは不明、本物だとしても何時の明

            テンセントやアリババが国家管理になる?

            テンセント、アリババ、京東の中国デジタル企業ビッグスリーが示し合わせたように、国有企業との提携を発表した。全容も背景も今はハッキリしないが、3期目習近平政権による「混合所有制改革」の新展開ではないかという観測が生まれている。 ただ、そこで取り沙汰されている「混改」には暗い含意がある。 1954年、全土を掌握し朝鮮戦争の難局も乗り越えた毛沢東政権は、抗日戦争と国共内戦の過程で世話になった民族資本家たちの企業を「公私合営」の名前の下でどんどん接収し始めたのだ。「釣った魚に餌は

            【謹告】朝日新聞デジタルにインタビューが掲載されました。

            第20回中国共産党大会の結果をどう見るか、今後の中国、世界はどうなるのか…朝日新聞デジタルにインタビューが掲載されました。 「嫌な予感がする」世界経済に迫る節目 バブル崩壊せぬ中国のゆがみ

            マイナンバーカードについて

            河野デジタル相が2024年秋に現行の健康保険証を廃止し、マイナンバーカードと一体化した「マイナ保険証」に切り替えることを発表したそうだ。 ところが、デジタル庁が今夏に実施した調査では、マイナ保険証の申し込みをしない理由として、「メリット・必要性を感じない」(29%)のほか、「情報流出が怖い」が15%を占めるなど、一部で不安を感じる人もいるという。 これを読んで感じたことを2点述べたい。 第一。「メリット・必要性」についてだが、政府も保険証といった狭い範囲の便益を性急に追い

            中国不動産問題について(続々)

            若き畏友、髙口康太兄が最近中国不動産バブルの行方を追いかけている。このコラムの副題「スイカやニンニクで物件購入?」というのは、「真の狙いは「形を変えた値引き」だ」と明かされる。相変わらず、掴み方が上手いねw。 地元政府が販売価格を規制しているので、意のままに値引きすることができない販売業者が編み出した脱法的値引き手段が「スイカやニンニク」だという。中国の不動産市場は、なかなか値崩れしにくい構造なのだが、需給が相当悪化していることの表れの一端だろう。 このコラムのポイントも